視覚障害者教育の概要

 ここでは視覚障害児にどのような就学先があり、どのように教育をうけているかについて解説します。

 まず視覚に障害のある児童・生徒が教育を受ける場として視覚障害特別支援学校(以下、盲学校とする)や地域の学校の通常の学級、特別支援学級などがあります。

1.学校教育法施行令の改正

 2012年までは、視覚障害者は盲学校への就学が原則であり、例外的に認定就学者として小中学校へ就学することが可能となっていました。

 2013年(平成25年)に学校教育法施行令が改正され、その規定が改められました。現在は、個々の児童生徒等について、市町村の教育委員会が、その障害の状態等を踏まえた総合的な観点から就学先を決定する仕組みとなっています。
 この改正の趣旨は、障害の状態、本人の教育的ニーズ、本人・保護者の意見、教育学、医学、心理学等専門的見地からの意見、学校や地域の状況等を踏まえた総合的な観点から就学先を決定するというものです。
 地域の学校に進学するか、盲学校に進学するかは本人や保護者の意見が最大限尊重されるべきですが、同時にその選択においては十分な情報が提供されることが必要です。地域の学校に進学した場合の支援体制はどうなっているのか、介助員はつけられるのか、盲学校のクラスメイトは何名になるのかなど、事前に必要十分な情報が本人、保護者に提供されることが適切な判断を行う大前提と言えます。

2.特別支援学級

 地域の学校によっては特別支援学級(弱視学級)を設置しているところもあります。通常の学級で大半の授業を受け、一部の授業だけを弱視学級で受けるということもありますし、その反対に大半の時間を弱視学級で過ごし、ホームルームや行事などの一部の活動を障害のない子どもと共に行うというケースもあります。

 この弱視学級は地域によってさまざまな名称がつけられていますが、課題としては弱視学級担当者の視覚障害教育の専門性をどう担保するかということがあります。

3.通級

 盲学校や弱視学級において通級による指導も行われています。通級とは、週に1回程度、盲学校や弱視学級に通い、視覚障害を補うための補助具の訓練を行ったり、見えにくさのために授業内容が分からなかった部分を補ったりしています。
 自治体によっては、視覚障害児が地域の学校に就学した場合、介助員を配置しているところもあります。

4.視覚障害児の数

 次に全国の視覚障害児の数についてです。盲学校に在籍している児童・生徒数は毎年全国盲学校長会によって調査されていますが、地域の学校に在籍する視覚に障害のある児童・生徒数については調査が行われていません。
 しかし、2009年(平成21年)に、文部科学省がすべての小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校に在籍する視覚に障害のある児童・生徒を対象に、使用教科書に関する調査を行いました。
 その調査結果によると、2009年段階で全国の視覚障害児童・生徒数は6825人ということです。
 使用教科書別に見ると点字教科書を使っている児童・生徒数は419人(6.1%)、拡大教科書は2087人(30.6%)、通常の検定教科書は2277人(33.3%)、絵本等の一般図書(※1)は2042人(29.9%)でした。
 弱視の児童・生徒の場合は地域の学校に就学することが多いのですが、近年は点字を使用する児童・生徒でも地域の学校に進学することもあります。

※1 絵本等の一般図書とは、学校教育法附則第9条に規定されている教科用図書のことで、通常の検定教科書や文部科学省著作教科書の代わりに使用される絵本などの一般図書のことです。

5.支援制度

 盲学校等には就学奨励費制度があります。
 就学奨励費とは、障害のある幼児・児童生・徒が盲学校や小・中学校の特別支援学級で学ぶ際に、保護者が負担する教育関係経費について、家庭の経済状況等に応じ、国や自治体が補助する仕組みです。なお、平成25年度より、小・中学校の通常の学級で学ぶ児童生徒(学校教育法施行令第22条の3に定める障害の程度に該当)についても補助対象に拡充されています。対象となる経費は、通学費、給食費、教科書費、学用品費、修学旅行費、寄宿舎日用品費、寝具費、寄宿舎からの帰省費などです。
 しかし残念ながら、この対象に高等学校は含まれていません。盲学校の高等部や小・中学校と同じように視覚に障害のある生徒が高等学校に進学した場合も就学奨励費制度が適用になることが望まれています。

 就学先決定に当たっては、それぞれの学校の教育相談を受けたり、視覚障害の先輩の話を聞いたりしながら、幅広い角度から情報を収集し、決定されることをお勧めします。