インクルーシブ教育

インクルーシブ教育とは、障害のある子どもと障害のない子どもが同じ場で共に学ぶ教育のことです。
我が国ではこれまで盲・聾・養護学校を設置し、制度上はいわゆる分離教育を行ってきました。しかし実際には1970年代頃から視覚障害児が、盲学校ではなく地域の学校に就学するケースもありました。これは当時、統合教育と呼ばれていました。

1.視覚障害児が地域の学校へ

2002年(平成14年)に学校教育法施行令が改正され、盲学校に就学すべき障害児であっても、小学校又は中学校において適切な教育を受けることができる特別の事情があると認められた場合は、認定就学者として地域の学校に就学することができるようになりました。

2.障害者権利条約

 2006年(平成18年)に国連で採択され、我が国も批准している障害者権利条約では、「障害者が障害を理由として教育制度一般から排除されないこと及び障害のある児童が障害を理由として無償のかつ義務的な初等教育から又は中等教育から排除されないこと。」「障害者が、他の者と平等に、自己の生活する地域社会において、包容され、質が高く、かつ、無償の初等教育の機会及び中等教育の機会を与えられること。」という条文が盛り込まれ、インクルーシブ教育が推奨されました。

3.インクルーシブ教育の制度化

このような流れの中、内閣府の下に設置された障害者制度改革推進会議や、文部科学省の中教審の下に設置された特別委員会において、我が国のインクルーシブ教育への対応が議論されました。
2012年(平成24年)7月、中教審から「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進」という報告書が公表されました。この報告書を受け、文部科学省は2013年(平成25年)8月学校教育法施行令を改正しました。
この施行令では、教育委員会は障害児の就学先を決定するに当たり、保護者及び教育学、医学、心理学その他の障害のある児童生徒等の就学に関する専門的知識を有する者の意見を聴くことが義務づけられています。
また、障害児が地域の学校ではなく、盲学校に就学する場合は認定特別支援学校就学者と位置づけられることになりました。

4.今後の課題

このように制度化されてきたインクルーシブ教育ですが、成否の鍵は次のような課題にあります。

(1)地域の学校に就学している障害児の数や程度の正確な把握

 まず地域の障害児数や程度を定期的に正確に把握するための実態調査が必要です。毎年行われている学校基本調査などを活用し、その実態を確実に把握することが第一歩と言えます。

(2)教育委員会による支援体制の整備

(1)の結果に基づき、教育委員会は盲学校(特別支援学校)などの支援機関と連携し、地域の学校に就学する障害児に必要な支援を行うための体制を整備していく必要があります。
例えば、一部の自治体ですでに行われているように、地域の学校に就学する障害児には希望に応じ「支援籍」というような副籍を設け、確実で切れ目のない教育支援体制を作っていくことも有効な施策と考えられます。

(3)教材の確保

また教科書をはじめとする教材の確保なども重要な要素です。各生徒の障害の程度に合わせた教材は、インクルーシブ教育には不可欠です。