歩行移動時における弱視者の不便さ

 自動車や自転車に乗れない視覚障害者にとって、目的地まで安全に、かつ確実に歩いていくことは日常生活の中でとても大切な要素です。
 ここでは特に弱視者が道路を歩いたり、公共交通機関などを利用し移動する時に困ることについて解説します。

1.信号機の問題

 例えば横断歩道を渡る時、弱視者にとって道路の反対側にある歩行者用信号が見えないことがあります。
 この対策として音響式信号機がありますが、横断歩道の手前において目の高さで見ることができるLED付き補助装置なども開発されています。現に一部の自治体では既に設置されているところもあります。
 このような装置は弱視者だけでなく、高齢者や子どもにとっても有効な設備と言えます。

2.点字ブロックに関する問題

(1)点字ブロックの色

 弱視者も点字ブロックに沿って歩けば安全ですので、白杖を使わない弱視者でも点字ブロックを視覚的に見ながら歩くことがあります。しかし、点字ブロックの色が周囲の色と同系色だった場合、コントラストがはっきりしないため、点字ブロックが視覚的には頼りにならなくなります。

(2)点字ブロックの上の障害物

 点字ブロック上に自転車や物が置いてあったり、人が立ち話をしていても困りますし、自動車が駐車した場合は大変危険です。点字ブロックがない歩道を歩く時には、放置自転車にぶつかることもありますし、歩道にはみ出た看板にぶつかることもあります。
 点字ブロック上や歩道上には自転車を放置したり、自動車を駐車したり、看板や物などが歩行の妨げにならないよう、ご理解とご協力をお願い致します。

3.トラック

 トラックについては思わぬ怪我の原因となることがあります。
 トラックが道路上に駐車している場合、サイドミラーが収納されていないと空中に飛び出している状態になります。白杖を使っていても空中の突起物は感知できませんので、顔面をぶつけるという事故が起こっています。
 また、トラックの後方部の荷台や、荷台に積んである物が飛び出している場合も大変危険です。

4.建物の入り口

 弱視者がある建物を目指して移動している時に困ることとして、ビルの名前が分からなかったり、建物の入り口が見つけられないということがあります。
 ビルの名称が高い位置にしかも小さな文字で表示してある場合はなかなか弱視者が認識するのは難しいものです。また、ガラス張りになっているような建物ではどこが窓でどこがドアなのかが識別できないこともよくあります。

5.公共交通機関利用時の問題

(1)表示

 弱視者が駅などの公共交通機関を利用する時の問題として表示の見えにくさがあります。
 ICカードの普及により、目的地までの運賃を駅で見る必要はなくなりましたが、何番線の電車に載ったらよいのかが分からず、右往左往することがあります。複数の鉄道会社が乗り入れている駅や構内に商業施設がある場合などは表示形式もバラバラになっていることもよくあります。
 表示はできる限り目の高さに設置し、コントラストのはっきりした認識しやすい文字で示すことが望まれます。

(2)運賃の割引率

 また、障害者は鉄道やバスを利用する時に運賃の割引制度がありますが、この割引の基準が各鉄道事業者ごとに違うため、戸惑うこともよくあります。初めて載る電車では近距離でも割引になるのか、50キロや100キロを超えないと割引にならないのか、分かりません。またどこまでで50キロや100キロを超えるのかも分かりにくくなっています。
 鉄道事業者には、公共交通機関として全国的の鉄道の割引基準を統一するなど、障害者の鉄道利用の利便性の向上が求められます。