交通バリアフリー法

 日常生活の中で、視覚障害者にとって交通のバリアフリー化は、生命の危険に直結する切実な問題です。
 本連合では、国土交通省が主管する各種バリアフリー委員会において、当事者委員のひとりとして役員を派遣し、安全性と利便性の向上に向けた観点から、意見や要望を出しています。
 また、鉄道事業者などに対して、個別に改善を要望したり、東京の地下鉄駅情報の「触図編」や「デイジー編」などの編集を手掛けたり、種々の実践的な取り組みもしてきました。
 ここでは、その交通バリアフリーに関し、法律として制定された法制度や課題について解説します。

1.バリアフリー新法について

 2000年(平成12年)5月、障害者団体などの運動により、「交通バリアフリー法」が成立しました。正式な法律名は「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律」です。目的は文字通り、公共交通機関の駅や電車などの乗り物をバリアフリー化することでした。
 この法律により、駅構内へのエレベーター、エスカレーター、スロープなどの設置や運賃表、ホームへの案内板などの点字表示などが改善されるようになりました。

 また、1994年(平成6年)には、「高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律」、いわゆるハートビル法が成立しました。
 この法律は、高齢者や身体障害者が、困難なく利用できる建物の建築促進を目的としたものです。この法律により、鉄道駅や百貨店、ホテルなどといった、不特定多数の人が出入りする公共的な建物で、高齢者や身体障害者などへの対応が、建物の保有者に義務付けられました。
 視覚障害に関する項目の一例として、エレベータのバリアフリー化も含まれていましたので、音声による階数案内やボタン横の、点字表記、点字が分からない視覚障碍者のために立体的に浮き出された数字ボタンなどの普及が進みました。

 これらの2つの法律が統合され、2006年(平成18年)6月、「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」、いわゆるバリアフリー新法が制定されました。

 バリアフリー新法では、新たに特定道路や特定公園のバリアフリー化についての規定が追加され、公共交通機関と不特定多数の人が利用するような建物の一体的なバリアフリー化が促進されることになりました。
 法律の目的は、「高齢者、障害者等の移動上及び施設の利用上の利便性及び安全性の向上の促進を図り、もって公共の福祉の増進に資すること」と、定められています。公共交通機関の旅客施設や車両、道路、駐車場、公園などの構造や設備を改善するための措置、建築物や道路、駅前広場、通路その他の施設の一体的な整備が求められます。

2.ホームドアと点状ブロックの必要性

 このような法制度の下、国土交通省は障害者の移動の安全と利便性の向上を目指し、様々な施策を推進しています。安全性の観点でもっとも充実が期待されているのが鉄道駅のホームドアです。新しくできる駅ではホームドアの設置は義務付けられていますが、既存の駅では努力義務とされており、国土交通省は1日の乗降客が10万人以上の駅には設置が望ましい、としています。
 しかし、実際は乗降客10万人以上の駅でさえ、設置率は半数程度に留まっています。

 また、視覚障害者がホーム上を安全に移動するためには、点状用ブロックも必要です。現在の基準では、ホームドアのあるホームではドアの開口部に警告ブロックを敷設する、ということしか定められていません。視覚障害者が階段から目的のドアまで、どのように移動するか、鉄道事業者ごとの基準ではなく、国として統一された基準を検討していくことが必要です。

3.利便性向上の課題

 鉄道利用の利便性向上についても、いくつか課題があります。

 視覚障害者にとって最も分かりにくい点は、障害者割引の基準が鉄道会社ごとに違うことです。
 1種の障害者手帳を持っている場合、JRなどでは100㎞以上乗車した時に運賃は半額となります。一部の私鉄では、50㎞以上と定めているところもあります。また、距離による制限は設けず、1駅でも半額になる鉄道事業者もあります。東京メトロは、地下鉄だけでは100㎞になりませんが、直通運転などの近郊連絡があれば、乗車距離の合計が100㎞以上の場合、半額運賃が適用となります。
 しかし、このような仕組みでは、初めて利用する鉄道の場合、半額切符で乗車できるのかどうかは駅員に都度確認しなければなりませんし、乗車距離が50㎞や100㎞を超えているかどうかも確認が必要になります。

 一方、2014年(平成26年)1月に我が国も批准した障害者権利条約には、「障害者が、自ら選択する方法で、自ら選択する時に、かつ、妥当な費用で個人的に移動することを容易にすること」とあります。
 妥当な費用とは何かについては、議論が必要ですが、交通弱者である障害者の多くが年金暮らしであったり、働いている障害者の収入の平均額が、健常者の平均に比べはるかに低いことを考慮すれば、乗車距離に関わらず、障害者割引が適用されることが望まれます。
 そして、仮にすべての鉄道で隣駅からでも半額になれば、障害者のICカードの発行も大きなシステム変更なく、可能になると考えられます。これは、子どものICカードと同じシステムを利用し、現行の子ども料金と同じ扱いができるからです。そうなれば全国どこでも、毎回事前の下調べをせずに、障害者もICカードを改札でタッチするだけで電車が利用できるようになります。
 これは、障害者にとって公共交通機関の利便性が大きく向上すると言えるでしょう。