音響式信号機

 視覚障害者が横断歩道を安心して横断するには音響式信号機が有効です。また、白杖を使っている人が長い横断歩道を渡る場合、音響式信号機と共にエスコートゾーンの敷設も必要です。ここでは音響式信号機の課題などについて解説します。

1.音響式信号機とは

 音響式信号機とは、信号機が青になったことを視覚障害者に知らせる為、誘導音を出す装置がついている信号機のことです。
 音響式信号機には以下の2種類あります。
(1)メロディ式…「とおりゃんせ」や「故郷の空」等の音楽が流れる方式です。
(2)擬音式…「ピヨピヨ」や「カッコウ」等の音が流れる方式です。

 警察庁によると、音響式信号機は、平成31年3月末現在、全国で約20,013基(メロディ式約442基、擬音式約19,571基)が設置されており、約98%が擬音式となっています。警察庁は平成15年から擬音式の異種鳴き交わし方式の整備を進めています。
 しかし、視覚障害者の中には「メロディ式の方が青信号に変わってからの時間が分かりやすい」とか、「メロディ式の方が音が連続しているので方向が認識しやすい」といった声もあります。

 また、音響式信号機ではありませんが、押しボタンのところで「信号が青に変わりました」と発する信号機もあります。比較的狭い道路では、コストも低く抑えられるこのような設備で十分な場合もあります。

2.音響式信号機の課題

(1)押しボタンの種類・位置

 音響式信号機は、押しボタンを押さないと音が鳴らないものと、決められた時間は押しボタンを押さなくても自動的に鳴るものがあります。
 自動的に鳴る信号機の場合、午前8時から午後8時までに設定されているところがほとんどです。それ以外の時間帯や押しボタンを押さないと鳴らない信号機の場合、視覚障害者が押しボタンの場所を探せないことがあります。
 常時「プップッ」という音を発している押しボタンは視覚障害者にとってとても有効ですので、このような設備の普及を求めています。
 尚、少し離れたところからリモコンで押しボタンを押すことができるような仕組みもあります。

(2)スピーカーの位置や指向性

 警察庁は音響式信号機のスピーカーの高さをおよそ3.3メートルと定めています。しかし、視覚障害者の中には、音源の位置が高すぎて方向が取りにくいという声があります。理想的には耳と同じ高さがよいのでしょうが、それは物理的に難しいので、人がぶつからない程度でもう少し低く設置してもらえるよう対応が望まれます。
 また、最近の音響技術ではかなり指向性のはっきりした音源を出すことも可能になっています。視覚障害者が横断歩道をまっすぐ歩くためにも、また近隣住民への配慮のためにも、スピーカーの高さや指向性については開発が進むことが望まれます。