読書バリアフリー法を求めて

 読書は、人類が長い歴史の中で蓄積してきた知識や知恵の継承と、豊かな人間性を養い育てる為に不可欠な活動であり、知的で心豊かな人生を送る上で欠かせないものです。

 しかし、通常の活字の本は視覚障害者にとって自力で読むのは困難です。そこで長年視覚障害者の読書は、点字図書館(視覚障害者情報提供施設)、点訳ボランティア、音訳ボランティア、拡大写本ボランティアなどによって支えられてきました。近年はデジタル化の流れを受け、電子書籍が普及したことにより、視覚障害者でも自力で本を読める可能性が出てきました。
 サピエ図書館(※1)には、約18万タイトルの点字データや約7万タイトルの音声デイジーデータ、約2千タイトルのテキストデイジーデータなどがアップロードされています。さらに、毎年約2万タイトルが追加されています。
 一方、我が国で発売された本のほとんどが納本されている国会図書館には、既に1000万タイトル以上の本が所蔵されており、毎年新たに5万タイトル程度の本が発売されていると言われています。

※1…サピエ図書館(視覚障害者情報総合ネットワーク)とは、インターネット上で点字データや音声データとして図書の貸出が可能なサービス。

読書環境の改善に関する条約・法律

 視覚障害者の読書に関する条約や法律は以下のようなものがあります。

1. 障害者権利条約(2014年(平成26年)1月批准)
 第三十条において、「障害者が、利用しやすい様式を通じて、テレビジョン番組、映画、演劇その他の文化的な活動を享受する機会を有すること」を確保するための「全ての適当な措置をとる」ことが定められています。
 また、同じく第三十条において、「締約国は、国際法に従い、知的財産権を保護する法律が、障害者が文化的な作品を享受する機会を妨げる不当な又は差別的な障壁とならないことを確保するための全ての適当な措置をとる」と定められています。

2. 文字・活字文化振興法(2005年(平成17年)7月制定)
 第三条において、「文字・活字文化の振興に関する施策の推進は、すべての国民が、その自主性を尊重されつつ、生涯にわたり、地域、学校、家庭その他の様々な場において、居住する地域、身体的な条件その他の要因にかかわらず、等しく豊かな文字・活字文化の恵沢を享受できる環境を整備することを旨として、行われなければならない。」と定められています。

今後の課題

上記の条約や法律の理念を具現化するためには、障害者や高齢者の読書環境の改善に関する法制度が必要です。
 具体的には、

  • 発売される電子書籍が合成音声による読み上げに対応すること
  • 画面上での拡大や色の調整ができるようになること
  • 公共図書館や学校図書館でも障害者サービスが充実されること
  • 国立国会図書館の電子図書館も視覚障害者でも利用できるようにすること

などが望まれます。また、読書のバリアフリー化に足かせとなるような著作権法の改正も必要です。

 読書バリアフリー法(仮称)の制定は障害者の自立と社会参加の礎となるだけでなく、今後我が国が迎える高齢化社会においても大きな意味を持つものです。
 本連合は、視覚障害者の読書環境の改善のため、法制定を目指して啓発活動などに力を入れてまいります。