中途視覚障害者の職場復帰の現状

1.はじめに

 中途視覚障害者が職場で働き続けるためには、目が不自由になった状態を訓練等により改善し、仕事ができるようにする必要があります。

 その方法は、いわゆる「視覚障害リハビリテーション」(以下、リハという)と言われているもので、歩行訓練を含む生活訓練、職業訓練の二つを受講することを指し、日常生活や仕事を遂行するために必要な訓練を一定期間受けることをいいます。

 職場復帰の現状は、これらの訓練を受けて職場に復帰する形式によって、「継続型」、「復職型」、「再就職型」の三つに分けられます。

2.各形式の特徴

 各形式は、各人の様々な事情や職場の事情によって決まりますが、それらの特徴は次のようになります。

(1)継続型

 休職せずに、在職した形式のまま、研修制度等に基づき、職業訓練を受ける形式です。
 これは、身分が保証されると同時に、給与やボーナスなどに影響が少なく、退職金の算定にも影響しません。訓練を受けている最中、業務に必要な技能を直接学習できる利点があります。

(2)復職型

 病気休暇や休職をとって、その期間中に「リハ」を受講し、休職期間終了間際に職場にもどる形式です。これは、休職承認を得る際、必ず職場復帰できるという確証を得ておく必要があります。時には、休職期間満了日をもって、退職に追い込まれることもあるので、事前に確証を得ておくことが必須要件になります。
 身分の保証の不安定、給与や退職金算定が不利になります。

(3)再就職型

 解雇、または退職に追い込まれた結果、リハを受講し、就職活動の末、新しい職場に就職する形式です。解雇されたり、退職に追い込まれたりする背景は、様々なことがあってのことが考えられますが、早めに対処するようにするのが望ましいです。

3.昨今の職場復帰の現状と課題

 1980年代は、「退職勧奨」により、「自己都合による退職」という事務処理が一般的に採られていましたが、これは減少しつつあります。前からあったことですが、休職期間満了をもって、退職へ持ち込む事例は今でも行われているので、注意を要します。

 一方、変化の兆しが見え始めているものもあります。
 IT化が普及発展し、視覚障害者が自力で音声パソコンの活用法を学習したり、「リハ」の重要性が当事者団体等から発信されたりしたこと等により、2000年代からは定年退職まで、そして2006年からは再雇用制度により65歳まで勤めるケースが増えるなど、潮目は確実に変わってきています。

 このような変化の中でも、未だに地方によっては労働部門を受け持つ職業訓練施設が少なく、大都市圏に偏った設置になっているなどの状況があるので、地方が不利になっている点の改善が望まれています。