あはき業と柔整師問題

 あはき師(あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師)と柔整師(柔道整復師)は、厚労省によると対等の医業類似行為とされています。
 しかし、1970年(昭和45年)にあはき師とは別の法律で柔整師法が分離して以来、両者の社会的格差が次第に広がっていきました。背景には、健康保険療養費取り扱いにおいて、柔整師にとって極めて有利な制度が認められており、この優位性を利用して、柔整師が不正ないしは不法な健保取り扱いをしてきた実態があります。

1.あはき師と柔整師の違い

 ここで簡単にあはき師と柔整師の違いについてご説明します。

(1)あはき師とは

 あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師の総称。肩こり・腰痛等の慢性症を施術対象とします。医師の同意がなければ、健康保険を適用した施術はできません。

(2)柔整師とは

 正式名称は柔道整復師。打撲・捻挫などの外傷性疾患が主な施術対象です。これらの治療は緊急性を伴う場合があるため、医師の同意を得ずに健康保険を適用した施術をすることが可能です(ただし骨折や脱臼の場合は、応急処置時のみ)。

2.柔整師の問題点

 本来、柔整師の場合は、慢性の肩こり・腰痛は健康保険適用外の治療になります。健康保険適用内での肩こり・腰痛の治療は、あはき師が医師の同意を取った上でのみ許可されています。

 しかし社会では、柔整師の経営する、いわゆる接骨院において、慢性の肩こり・腰痛等を施術していると広く認識されています。
 これは、柔整師が、打撲や捻挫ならば医師の同意を得ずに健康保険適用内で治療ができる点を利用し、健康保険で施術料を請求する際には、実際には肩こりの治療であっても、打撲や捻挫の柔整施術として振替えているためです。

 すなわち、医師の同意書が無いにも関わらず、健康保険適用による、肩こり・腰痛へのあはき施術が行なわれてしまっているのです。

 これは、あはき師に対する業権侵害であり、詐欺的な行為であると指摘する向きも多くなっています。

3.柔整師を取り巻く状況

 会計検査院は過去2回にわたり実態調査を行ない、その都度厚労省に対し「事態改善勧告」を発してきました。これは国民健康保険に税金が含まれている点を会計検査院が重視したためです。
 改善勧告にもかかわらず、厚労省の対応は残念ながら緩慢で、柔道整復師の健保取扱高が約4000億円に達するに至って、他の方面からも事態を問題視する声が近年増え続けています。

 2010年に入ってからは、マスコミでも柔整師の健康保健取り扱いのあり方の問題点を取り上げるようになっています。また、厚労省においても、健康保険療養費のあり方を検討する専門委員会を設置しています。2014年(平成26年)3月18日に開かれたこの専門委員会では、幾つかの事情があり、制度の見直しは先送りとなりました。

 しかし、事態は急を要するので、厚労省に対し、本連合も含めて関係団体が、何らかの抜本的な対応を求めなければならない実情です。

4.今後の動きについて

 今年、2014年(平成26年)2月に厚労省は、柔整師とあはき師の健保療養費取扱高を公表しました。それによると柔整師の額は、4085億円で伸び率はわずかに0.4%にとどまっています。この伸び率は、過去最低です。毎年数千人の柔整師が国家試験を経て、社会に輩出していることを思えば、厚労省の改善策やマスコミ等の攻勢やあはき師側の働きかけが有効であったと考えられます。

 本連合は視覚障害あはき師の業権を擁護するため、今後とも関係団体とともに関係省庁に働きかけていきます。ご理解とご支援を賜りますよう、お願い申し上げます。