事務系就労問題

1.はじめに

 事務系の仕事は、「読む・書く」という文字処理が必須のため、視覚障害者は、長年、企画立案等の能力があっても排除されてきました。

 それが、機能アップした拡大読書器や、IT化時代と言われ「Windows95」や、画面読み上げソフトが発売されたことで変化が起きました。

 昨今は、晴眼者が「あんま、はり、灸業」へ進出し、視覚障害者が事務職へ進むという反転現象もみられています。

2. 就労への課題

 視覚障害者は、かつて職業選択の自由が少ない状況にありましたが、IT化のお陰で事務作業が以前より容易となり、事務職等の就職可能な職種が増えました。
 しかし、視覚障害者が事務系の職種で働くにあたっては、次のような課題が山積しています。

(1)企業側の無理解による課題

(ア)未だに視覚障害者の仕事は「あんま、はり、灸」しかないと思っている
(イ)視覚障害者が事務作業をできることを理解していない
(ウ)社内で視覚障害者にできる仕事を思いつけず、ノウハウも持っていないことで気後れしている
(エ)視覚障害者にとっての職業リハビリテーションの意義が理解できず、訓練受講のための休職等を認めない

(2)企業側の安全・費用面での懸念

(ア)通勤時、社内移動時の安全確保、万一の事故を懸念している
(イ)常時一人の晴眼者をサポートにつける必要を考えると、損失が大きくなることを懸念している
(ウ)基本的に業務効率が悪いだろうと、経営面に響くことを懸念している
(エ)音声ソフトや拡大読書機導入の費用や手間に対し、費用分の働きができるのか、または利用者不在になった場合の損失を懸念している
(オ)上記の理由等により、視覚障害者が職業リハビリテーションを受けた後でも、音声ソフト・拡大読書器の導入を認めない

(3)企業側の企業倫理の問題

(ア)事務職等、視覚障害者に適正のある部署への配置換えを配慮してくれない
(イ)わざと仕事をさせない、無視をするなどのパワーハラスメントがある

(4)視覚障害者・社会全体の課題

(ア)福祉施設に比べ、職業リハビリテーションを行う施設の数が少ないため、職業訓練の受講機会が得にくい
(イ)パソコンのソフトがバージョンアップされることに伴い、写真や画像が多用されることが多く、音声ソフト利用者は対処が難しい
(ウ)地方の場合は通勤手段の確保が困難なため、就労が難しい

3.課題改善のために

 課題の改善のためには、視覚障害者は文字処理ができないという先入観を払拭することが大切です。

 また、IT化が晴眼者にもたらした便利性・効率性が、視覚障害者にも同様にもたらされていること、特に音声ソフトを併用することで文字処理技能が向上していること、さらに、「障害者差別解消法」の成立等で社会制度に変化があったことを周知し、社会全体に理解してもらう必要があります。

 そして、社会全体で積極的に職業リハビリテーションの受講を推進すると共に、企業は視覚障害者への理解を深め、「見えなくてもできる仕事」へ配置換えする等の合理的配慮を行うようになることが望まれています。