国家公務員障害者選考試験における 視覚障害者に対する合理的配慮について(声明)
平成30年10月31日
国家公務員障害者選考試験における 視覚障害者に対する合理的配慮について(声明) ~視覚障害者の実態を踏まえた配慮を~
社会福祉法人 日本盲人会連合 会長 竹下 義樹 中央省庁及び地方自治体等の「障害者雇用水増し問題」を受けて、人事院は本年10月24日、障害者を国家公務員の常勤職員として採用する統一選考試験を平成31年2月3日に実施すると発表した。この発表によると、点字と拡大文字による出題や時間延長の合理的配慮が行われるが、点字受験に限り、希望すれば音声パソコンの併用が補助的に認められるとの内容であった。 これは視覚障害者に対する合理的配慮として極めて不十分である。つまり、受験したくても試験そのものが受けられない視覚障害者を多数生み出すことになり、試験の実施において不必要な差別を生みだすことにつながる。 ついては、国家公務員障害者選考試験の早急な改善を求め、以下に声明する。 記
一 受験者と試験実施者との間で、個別の配慮に関する十分な話し合いがもたれること 一 拡大文字についても音声パソコンの併用を認めること 一 音声パソコンのみでの受験も認めること 一 作文についても時間延長を認めること 一 今後、音声パソコン以外の音声媒体も検討し、受験者が選択できるようにすること 以上 【声明に関する主旨】 1 視覚障害者と国家公務員試験について 視覚障害者は平成3年まで国家公務員採用試験から実質的に排除されていた。そのため、国家公務員の点字採用試験の実施を求めて10数年にわたる運動を展開し、ようやく平成3年度から実現に至った。しかし、視覚障害者の公務員採用はいまだに狭き門であり、国家公務員一般競争点字試験による事務職での採用はⅡ種で1名にとどまっている。これまでの経過を踏まえると、今回は視覚障害者にとってまさに千載一遇のチャンスであり、その意味で、一人でも多くの視覚障害者の受験を期待する。そのために、人事院に対して早急な改善を求めるものである。 2 障害者雇用に関する国の責務について 今回の試験実施は、本年8月にマスコミにより報道され、大きな社会問題となった中央省庁の障害者雇用水増し問題に端を発している。障害者雇用促進法を率先垂範すべき立場の中央省庁において、このような偽装行為が行われてきたことは誠に遺憾であり、今回はその反省のもとに行われる特別な試験である。人事院は「公務部門における障害者雇用に関する基本方針」(平成30年9月23日、関係閣僚会議決定)に基づき、多くの障害者に受験機会を広く提供しなければならない。そのことを通して、「障害者が、希望や能力等に応じて活躍できることが当たり前の社会を実現」(「働き方改革実行計画」平成29年3月28日働き方改革実現会議決定)が達成されるものであり、人事院も積極的にその責務を果たすべきである。 3 視覚障害者への合理的配慮の必要性について 視覚障害者の文字処理においては、今や音声パソコンは不可欠のものとなっており、とりわけ視覚障害者の高等教育や就労の場において必要とされている。特に、ロービジョンケアという視点からは、文字処理において疲労やストレスをできるだけ少なくする配慮が必要とされており、各種の視覚補助具として、拡大読書器や音声パソコンの活用が有効とされている。そのため、拡大文字での受験では、一定の読み速度に達しない場合、音声パソコンを併用することが必須とされている。 一方で、視覚障害者の見え方は極めて個人差があることを考えると、全盲者は点字、弱視者は拡大文字又は拡大読書器という固定観念で割り切ることは難しく、点字も拡大文字も使えずに音声パソコンしか使えない視覚障害者も多数存在している。 このような視覚障害者の実態を踏まえると、点字に限らず、拡大文字でも音声パソコンを併用できるようにすべきであり、ひいては音声パソコン単独での受験も可能とすべきである。また、点字や拡大文字、音声で試験問題の読み取りや修正を行うことは、根本的に時間がかかるため、試験時間を延長することは必須である。 今回のような職員採用試験においては、全ての受験希望者が差別されることなく平等に受験機会が与えられなければならない。これらの配慮は、人事院にとって決して過重な負担とはならないので、早急な改善を行うべきである。 【参考】 http://www.jinji.go.jp/saiyo/siken/senkou/senkoushiken.htm その中から、視覚障害者に対する受験上の配慮を以下に抜粋する。 ア 点字による試験 イ 試験時間の延長 ウ 拡大文字による試験 |
※資料
『国家公務員障害者選考試験における視覚障害者に対する合理的配慮について(声明)』
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