中途視覚障害の初期相談の意義

1.はじめに

 目から得る情報は、80%を超えると言われます。
 視覚障害によって文字処理ができなくなった時、会社から不当に扱われたり、今までできていたことができなくなる等、不自由さが顕著になり始めます。
 中途で目が不自由になった場合は、これを契機に、初めて体験する「見えない・見えにくい」世界において、今後の自らの人生設計をどうするかを、手探りで始めていかなければなりません。

2.初期相談の意義

 中途視覚障害は、けが、または疾病によってもたらされます。
 けがは衝撃的ですが、何らかの理由でメガネを使用している人でも、自らが不治の病になると予見できている人は、少ないと言えます。

 中途視覚障害者の多くは、眼科で病名を告知され、その説明を受けて初めて、事態の重大さに驚き、予備知識などがないために取るべき行動がわからず、途方にくれてしまうのが一般的です。
 抱えている課題は、独身者・妻帯者によっても異なりますが、継続就労とか再就職、職業訓練などは初期的課題として共通して存在します。
 特に妻帯者は、子どもの教育費、家賃、住宅ローン等、経済的問題の他、両親の介護等、いくつもの複雑な課題をかかえている場合が多くあります。
 このような困難な課題の解決は、途方にくれている状態では、適切な判断ができないばかりか、状況を悪化させることもあります。
 そのような場面では、先輩である視覚障害当事者が、課題解決のため、医療・労働・福祉・訓練制度等や、活用すると便利になる補助機器等々に関し、初期相談の機会をこちらからつくることが望まれます。同じ障害を持つ立場から、多方面から適切なアドバイスをし、方向づけをしていく為です。

 このように障害当事者による初期相談が、中途視覚障害者の生活の質(QOL)の向上を図るために大いに役立ちます。

3.課題

 社会資源的には、各分野において多くの施設や機関がたくさん設置されていますが、それらはそれぞれ独立単体であって、横の連携協力関係や、情報の共有がとられていない現実があります。
 中途視覚障害者が困難な状況に陥るのも、このようなところに遠因があると指摘できます。実際、本人が初期段階で行政に相談に行っても、たらい回しにされたり、的外れな説明を受けた等の事例も多くあります。

 初期相談は、その人の将来設計の「方向づけ」や「生き甲斐」を示唆してやるところに大きな意義があります。
 そのために、相談にのる側は、日ごろから、関係機関との連携協力や情報交換を怠らず、自ら地道に切磋琢磨し、常に相談者のニーズに応えられるように備えていなければならない課題が課せられています。