愛盲時報 第228号(テキスト形式・全文)

2010年10月1日

 愛盲時報 第228号 平成22年10月1日(金)

 ≪1.厚労省平成23年度概算要求 ~障害福祉関係1兆1904億円~≫
 厚生労働省は8月26日、平成23年度予算の概算要求を公表した。一般会計総額は今年度当初予算比4.5%増の28兆7954億円。障害福祉関係では1兆1904億円(前年度予算額1兆901億円)を、また障害者雇用施策関係では221億900万円(同212億3900万円)を要求した。
 身体障害関係の主な項目は次の通り(カッコ内は前年度予算額)。
 A.障害者支援の総合的な推進
 1 障害福祉サービスの確保、地域生活支援などの障害者支援の推進
 (1) 良質な障害福祉サービスの確保:6492億円(5719億円)
 障害者等が地域で暮らすために必要なホームヘルプ、グループホーム、就労移行支援等の障害福祉サービスを計画的に確保する。
 (2) 地域生活支援事業の着実な実施:460億円(440億円)
 移動支援やコミュニケーション支援など障害者の地域生活を支援する事業について、市町村等における事業の着実な実施及び定着を図る。
 また、障害者の地域移行・地域生活支援のための緊急体制整備として、市町村による地域移行推進重点プラン(24時間緊急対応や緊急一時的な宿泊等、障害者が地域で安心して暮らすための地域支援策を盛り込んだプラン)を作成すると共に、これに基づき、面的な障害者の地域生活支援体制の整備を進める。
 (3) 障害者に対する良質かつ適切な医療の提供:2106億円(1954億円)
 心身の障害の状態の軽減を図る自立支援医療(精神通院医療、身体障害者のための更生医療、身体障害児のための育成医療)を提供する(利用者負担のあり方については、年末に向けて引き続き検討する)。
 (4) 障害福祉サービス提供体制の整備:136億円(124億円)
 障害者の地域移行・地域生活支援の充実を図るため、生活介護や就労継続支援等の日中活動に係る障害福祉サービスの基盤整備を推進する。また、障害者の住まいの場であるグループホーム等の緊急整備を図る。
 (5) 障害者虐待防止等に関する総合的な施策の推進:4億7000万円(前年度と同額)
 障害者虐待の未然防止や早期発見、迅速な対応、その後の支援を行うため、地域の関係機関の協力体制を整備するとともに、家庭訪問や24時間体制の相談窓口の設置、関係機関職員への研修等による支援体制の強化を図る。
 (6) 全国在宅障害児・者実態調査(仮称)の実施:4億2000万円
 制度の谷間のない「障害者総合福祉法」(仮称)の検討や施行準備の基礎資料とするため、障害児・者(これまでの法制度では支援の対象とならない者を含む)の生活の実態とニーズを把握するための調査を実施。
 B.障害者に対する就労支援の推進
 1 雇用率達成指導の強化と地域の就労支援の強化
 (1) ハローワークを中心とした地域の関係機関との連携による「チーム支援」の推進:6億8000万円(6億2200万円)
 ハローワークが中心となって地域の福祉施設、特別支援学校等の関係機関と連携した「障害者就労支援チーム」を編成し、就職から職場定着まで一貫した支援を行う「チーム支援」を推進するとともに、「就職ガイダンス」等の実施によりハローワークのマッチング機能の向上を図る。
 (2) 雇用と福祉の連携による地域に密着した就労支援の実施:42億6700万円(38億2000万円)
 障害者の身近な地域において就業面及び生活面における一体的な相談・支援を行う「障害者就業・生活支援センター」について、全障害保健福祉圏域への設置に向け、設置箇所数の拡充等を図る。(設置箇所数282を322に)
 (3) 障害者試行雇用事業の推進:8億6400万円(9億9400万円)
 事業主に障害者雇用のきっかけを提供するとともに、障害者に実践的な能力を取得させて常用雇用へ移行するため、短期間の試行雇用
(トライアル雇用)を実施する。(対象者数9O00人)
 2 障害特性や働き方に応じた支援策の充実・強化
 (1) 障害特性に応じた総合的な雇用支援の実施:21億400万円(18億6900万円)
 (2) チャレンジ雇用の推進:5億9800万円(2億5800万円)
 (3) 在宅就業支援制度の活用促進:3000万円(新規)
 在宅就業支援制度について、事業主及び地方自治体へ当該制度周知のためのリーフレット送付、及び現在、在宅就業支援団体として活動している事例等を交え制度を紹介するセミナーを実施し、活用促進を図る。
 3 障害者の職業能力開発支援の強化
 (1) 民間を活用した機動的かつ実践的な職業訓練の推進:18億4300万円(18億2400万円)
 企業、社会福祉法人等の多様な委託先を活用し、様々な障害の態様やニーズを踏まえた職業訓練を実施するとともに、特別支援学校と連携したより早い段階からの職業能力開発機会を提供し、一般就労に向けた切れ目のない支援を実施する。また、在職障害者を対象として職場定着や職種転換に伴い必要となる職業訓練を実施する(対象者数9550人)。
 (2) 地域における職業能力開発推進基盤の強化:1億3300万円(1億9100万円)
 教育・福祉の実施主体である都道府県並びに政令指定都市の資源を有効活用することとし、職業訓練をより効果的・効率的に推進するための事業を実施する(実施箇所数15自治体)。
 (3) 一般校を含めた公共職業能力開発施設における障害者職業訓練の推進:38億2100万円(38億4600万円)
 障害者職業能力開発校において、「職業訓練上特別な支援を要する障害者」に重点を置いた支援を実施するとともに、一般の職業能力開発校において知的障害者を対象とした訓練を推進し、身近な地域において職業訓練機会を提供する。

 ≪2.第56回全国盲青年研修大会 福岡で開催≫
 第56回全国盲青年研修大会福岡県大会が、日本盲人会連合並びに同青年協議会、福岡県盲人協会並びに同青年部の主催により、7月17日~19日の3日間、「めざそう!安心福祉のみんなの街、続けよう!若い力の社会参加、つなげよう!人と人との心の絆」の3つのスローガンのもと、福岡市の福岡東映ホテルで開催された。
 18日の全国代表者会議では、平成21年度事業・決算・監査報告、平成22年度事業計画・予算などを審議。続いて開かれた第1~第3の各分科会では、日本盲人会連合の竹下義樹副会長らを助言者に迎え、「交通」「生活・バリアフリー」「職業・制度」の各テーマについて討議、大会提出議案の選択も行った。
 午後からの第1研修会「経絡治療の実際」は回生堂鍼灸療院長・馬場道敬氏による講演と実技、第2研修会「明日への挑戦」はパラリンピック金メダリスト柳川春己氏の講演が行われ、第3研修会では九州国立博物館、太宰府天満宮を見学。全国委員会では各分科会で採択された議案から3本を選び、来年の全国盲人代表者会議の提出議案を選択、代表者会議から付託された宣言案と決議案を、原案どおり採択した。
 最終日は、会議等報告会に続き大会式典が開かれ、宣言・決議を採択、福岡県盲人協会には日盲連青年協議会から感謝状が贈呈され、3日間の大会を終了した。来年の大会は、宮城県仙台市で開催される予定。
 決議された要望事項は次の通り。
 1、多くの視覚障害者が生業としている鍼灸マッサージ師の権益と国民の安全を守るため、鍼灸マッサージは有資格者のみが行えることを広く社会に啓発し、無資格類似行為者の一掃とタイスパセラピー導入阻止を強く要望します。
 1、障害者総合福祉法(仮称)の制定において、現在生じているサービスの地域間格差を解消すると共に、個々の障害者の生活実態をふまえたものとなるよう強く要望します。
 1、公共施設や交通機関における音響や触覚、または表示文字サイズや色彩など、視覚障害者の特性に配慮した案内システムの構築を強く要望します。
 1、駅におけるホームドア設置、全てのハイブリッドカーや電気自動車への発音装置搭載の義務化、歩道上の違法駐車や自転車による危険走行の取り締まり強化など、安全対策を強く要望します。
 1、家電製品やIT機器の開発において、操作しやすいスイッチ類や音声ガイドの充実に加え点字や拡大文字、見やすいホームページによる情報発信など、視覚障害者の意見を取り入れたものになるよう強く要望します。
 1、多くの視覚障害者の情報源となっているテレビ放送において、全ての番組に音声解説を付加すると共に、視覚障害者に利用可能な地上デジタル放送受信端末の開発を積極的に行うよう強く要望します。
 1、金融機関や保険会社などにおいて、代筆サービスを容易に受けられるなど、視覚障害者の利便性に配慮することを強く要望します。
 1、裁判員制度において、視覚障害者裁判員の移動や裁判資料の点字や音声、拡大文字やテキストデータでの提供など、個々のニーズに応じた対応がなされるよう強く要望します。
 1、障害者ゆえに生じる経費負担を軽減するため、障害基礎年金を1級は月額12万円以上に、2級は月額10万円以上に引き上げると共に、所得制限の大幅な緩和を強く要望します。

 ≪3.第56回全国盲女性研修大会 長崎で開催≫
 第56回全国盲女性研修大会長崎県大会並びに第42回九州盲女性研修大会が、日本盲人会連合、同女性協議会、長崎県視覚障害者協会、同女性部、九州ブロック協議会の主催により、9月1日から3日の3日間にわたって長崎県で開かれた。3日は長崎市のベストウェスタンプレミアホテル長崎に、全国から視覚障害女性及び関係者約400人が集まり、盛大に大会式典などが行われた。
 式典では厚生労働大臣の祝辞が代読され、長崎県からは副知事が出席して挨拶。また、主催者側を代表して日盲連の笹川吉彦会長と新城育子女性協議会長、開催地元を代表して長崎県視障協の野口豊会長と藤本千賀女性部長、衛藤良憲九州ブロック協議会長から挨拶があった。
 続いて議事では、代表者会議並びに研修会の報告を満場一致で承認、大会宣言と決議も採択された。最後に、平成23年9月13日から3日間の日程で開かれる予定の次回大会開催地元を代表して、福井県視覚障害者福祉協会の小山尊会長から、多くの参加を呼び掛ける挨拶があり、3日間にわたる大会は閉会した。
 決議された要望事項の概要は次の通り。
 1、障害者の基本的人権保障を内容とする総合福祉法の制定を急ぎ、障害者がそれぞれの地域で、格差なく安心して生活できる環境を整備するよう強く要望します。
 1、障害者権利条約の早期批准を図るとともに、障害者差別禁止法または、差別禁止条令を早期に制定するよう要望します。
 1、就労困難な視覚障害者の生活を保障するため障害基礎年金を、1級は月額12万円以上に、2級は月額10万円以上に引き上げ、また、所得制限を大幅に緩和するよう強く要望します。
 1、視覚障害者の社会参加を保障するための移動支援事業と外出先での情報処理やコミュニケーションをも加味した同行援護事業を早急に制度化するよう強く要望します。
 1、視覚障害者本人が入院した際、病院内でホームヘルプサービスを受けられるよう、また、急病や怪我など、緊急時に24時間対応でガイドヘルプサービスが利用できるよう強く要望します。
 1、金融機関に設置のATMを音声化するとともに、窓口での行員による代筆・代読を行うよう要望します。
 1、情報バリアの解消を図るため、自治体が発行する文書には、音声コードを添付するよう強く要望します。
 1、トイレ内の操作ボタン等を基準に合わせること、電化製品やリモコン等操作しやすいようにすること、食品の表示内容が分かるようにすること等、視覚障害者の生活環境充実が図られるよう強く要望します。
 1、エスコートゾーンの設置、音響式信号機整備、階段段鼻の色づけ等、視覚障害者の歩行の安全確保に万全の措置を講ずるよう要望します。

 ≪4.金融機関の代筆・代読実現へ 日盲連が直接陳情≫
 日本盲人会連合の笹川吉彦会長らは8月25日、東京・霞が関の金融庁に自見庄三郎金融・郵政改革担当大臣を訪ね、視覚障害者が金融機関の窓口を利用する際の代筆・代読など、要望事項を直接陳情した。
 大臣からは、全ての金融機関に対し、視覚障害者団体などと連携を取りながら、積極的に取り組むよう文書で通知するとの回答があった。また、金融機関との意見交換会の開催も決まった。
 日盲連が陳情した要望事項は次の通り。
 (1)すべての金融機関において、視覚障害者のための代読、代筆が認められるようにしていただきたい。また、そうした合理的配慮を確実なものとするために、代読、代筆を法的に位置付けていただきたい。
 (2)ATMを音声化するなどして、視覚障害者が単独で容易に使えるATMを新・増設していただきたい。また、弱視者のために画面を拡大するとともに、操作はタッチパネルではなくボタン式にしていただきたい。
 *代筆・代読実施 意見交換会で確認
 日本盲人会連合をはじめとする視覚障害者団体と、金融機関等関係30団体による初めての意見交換会が9月8日、東京・霞が関の金融庁特別会議室で開催され、日盲連からは笹川吉彦会長、加賀谷睦子女性協議会副協議会長、中山政義参与、鈴木孝幸情報部長らが出席した。
 笹川会長は冒頭、この意見交換会が総務省からの声掛けにより初めて開催されたもので、これまでの度重なる陳情・運動にもかかわらず、金融庁からは前向きな対応が示されてこなかったと指摘、さらに金融機関の調査報告では、ほとんどが代筆を行っているとしているのに、視覚障害者の全国大会等で毎年、代筆・代読についての要望が出されているのは、各金融機関への指示が徹底していないためではないか、と述べた。
 次に各金融機関等が取り組み状況を発表し、続いて行われた意見交換では、日盲連から各金融機関に対して、今後は代筆・代読サービスを確実に実施するよう改めて確認。各金融機関からは、特段できないとの発言はなく、日盲連が長年要望してきた金融機関窓口での代筆・代読が、ようやく実現されることとなった。
 日盲連からはさらに、各金融機関の内規にどのように「代筆・代読」が規定されているか、また、各金融機関における相談窓口の連絡先を教えてほしいなど、情報の提供を求めた。今後、意見交換会を継続して行うことについても双方で確認された。

 ≪5.短信≫
 *厚生労働省人事 
 7月30日付けで次の方々が新たに就任。(敬称略)
社会・援護局総務課長:寺尾徹
社会・援護局障害保健福祉部企画課長:中島誠
社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課長:土生栄二
職業安定局高齢・障害者雇用対策部長:中沖剛
医政局長:大谷泰夫
医政局医事課長:村田善則
 *新加盟団体長就任 
 社会福祉法人石川県視覚障害者協会では、昨年10月22日に逝去された石原直行理事長の後任として、村上喜太郎氏が新理事長に就任した。

 ≪6.ふれてみよう!日常サポートから最先端テクノロジーまで≫
 第5回視覚障害者向け総合イベントサイトワールド2010
 日時:平成22年11月1日(月)、2日(火)、3日(水・文化の日)
 午前10時~午後5時(3日は午後4時まで)
 会場:すみだ産業会館サンライズホール
 (JR・地下鉄半蔵門線 錦糸町駅前 丸井錦糸町店8階・9階)
 入場料:無料
 主な内容
 【9階イベント会場】
 1日 ・シンポジウム「視覚障害者と情報・通信・技術」
 (2010年WBUAP中期総会行事)
 ・ドキュメンタリー映画「瞽女さんの唄が聞こえる」
 2日 ・ライフサポート学会学術発表会
 3日 ・サイトワールド・アクセシビリティ・フォーラム
 ・セミナー「次世代GPS歩行支援システムの開発」
  *点字制定120周年記念企画「身近になった点字~日本における点字とアクセシブルデザイン」は3日間を通して開催
 【8階展示会場】
 出展予定は、歩行誘導装置、拡大読書器、活字読み上げ器、パソコンソフト各種、点字プリンタ、点字ディスプレイ、DAISY機器ほか
 詳細はホームページ(http://www.sight-world.com/)に掲載。
 主催:社会福祉法人 日本盲人福祉委員会(サイトワールド実行委員会)
 共催:社会福祉法人 日本盲人会連合
 社会福祉法人 日本盲人社会福祉施設協議会/全国盲学校長会
 社会福祉法人 日本点字図書館/社会福祉法人 日本ライトハウス
 社会福祉法人 視覚障害者支援総合センター