視覚障害者リモート将棋大会 結果報告
日本視覚障害者団体連合主催による「視覚障害者リモート将棋大会」が令和2年12月12日(土)と13日(日)の2日間にわたり開催されました。
1.はじめに
今年度は、新型コロナウイルス感染拡大にともない例年開催している「全国視覚障害者将棋大会」の見送りを余儀なくされました。しかし、多くの将棋愛好家の皆様から、何らかの形で大会を開催してほしいという声が寄せられ、ウェブ会議システムのZoomを利用して開催しました。
オンライン開催は初めての取り組みであったため、手探り状態で準備が始まりました。実施方法の検討、Zoom利用の試行、対局規定の整備、事前テスト等の試行錯誤を重ね、参加者及び審判員の皆様のご理解とご協力のもと開催することができました。
本大会には、有段者の部16名、級位者の部16名の32名の参加をいただきました。また、公益社団法人日本将棋連盟より、中川大輔八段を審判長に、竹部さゆり女流四段を大盤解説のアシスタントとしてお迎えしました。そして、審判員として富士通株式会社の将棋部、関東の大学の将棋部、棋友館の方々にご協力いただきました。2日目には、対局と並行して中川大輔八段と竹部さゆり女流四段のお二人によるイベントを行いました。
Zoomのホスト用PC、審判員用PC、イベント用PCを日本視覚障害者センターに置き、参加者は自宅からリモートで参加されました。2日間にわたる大会を通じて、白熱した対局が展開されるとともに、参加者同士の親睦や交流を図ることができました。
2.対局
参加者は主に、全国視覚障害者将棋大会に出場経験のある人、また日頃からオンライン通話サービスのSkypeを利用して将棋の対局を楽しんでいる方々でした。12日(土)は、各部の予選トーナメントを実施し、16名から翌日の決勝トーナメントに進むことができる8名を決定しました。13日(日)は、各部の8名による決勝トーナメントを実施しました。
(1)対局方法
Zoomのブレイクアウトルームを活用し、参加者2名と審判員にグループ分けして対局をしました。参加者は、将棋盤に駒を並べながら、自分と相手の駒を動かし、審判員は棋譜ソフト(Kifu for Windows)を用いて対局の棋譜を入力しました。
審判員が、棋譜ソフト(Kifu for Windows)で入力できない指し手は言い間違いとし有段者は2回、級位者は3回まで救済、持ち時間を過ぎた後に考慮時間を設ける等のリモート対局ならではの対局規定を用いました。
また、聞き間違いを防ぐことを目的に、審判員は、対局者が棋譜を発したら、時間を止めて棋譜を復唱し、棋譜を入力することに努めました。初めてのリモート大会だったので、言い間違い等はあったものの、大きな混乱はなく白熱した対局を行うことができました。
(2)各部の入賞者
2日間にわたる熱戦が繰り広げられ、各部の入賞者が決まりました。
①有段者の部
優 勝 石川 准(いしかわ じゅん)さん(静岡県)
準優勝 御神本 章(みかもと あきら)さん(島根県)
第3位 鈴木 勝(すずき まさる)さん(横浜市)
②級位者の部
優 勝 石黒 知頼(いしぐろ ともより)さん(新潟県)
準優勝 宮本 博(みやもと ひろし)さん(東京都)
第3位 中山 文夫(なかやま ふみお)さん(東京都)
3.イベント
トーナメントで惜しくも敗れてしまった参加者及び視覚障害のある将棋愛好家の皆様に楽しんでいただくことを目的に、13日(日)に対局と並行してイベントを行いました。多くの方が参加されました。
(1)中川大輔八段と参加者による意見交換
中川大輔八段へ参加者から多くの質問が寄せられ、思い出に残っている対局、勝負飯や趣味のお話から、将棋の戦術まで活発な意見交換ができました。
中川大輔八段の一番思い出に残っている対局は、約30年前に師匠である米長邦雄永世棋聖と全日本プロトーナメント(現:朝日杯)の3回戦で対局したことだと語られました。中川大輔八段が得意としていた「角換わり腰掛銀」の戦法で対局を受けてくれたことが印象に残っており、すごく嬉しくて自信がついたそうです。
勝負飯は、日本将棋会館の近くにある蕎麦屋「ほそ島や」の冷やしたぬきそばにおもちを入れることを紹介し、趣味は登山のお話しをしてくれました。参加者は、中川大輔八段の意外な一面を見ることができたこと、ざっくばらんに意見交換ができたことを喜んでいました。
(2)中川大輔八段の将棋講座
中川大輔八段の「右四間飛車」戦法の将棋講座を行いました。講義のあと、参加者との質疑応答が活発に行われました。参加者から、「勉強になった。これからこの戦法を活用していきたい」等の声がありました。また、もっと将棋が強くなりたいという意見に、中川大輔八段は、「楽しみながら3手・5手の簡単な詰め将棋をたくさんこなすことや対戦を多く経験してほしい。また、終盤戦では、迷いが生じることで、弱気になりスキが生じる。自分の第一感を信じて、思いっきり指してほしい」とエールを送られました。
(3)中川大輔八段・竹部さゆり女流四段による大盤解説(有段者の部決勝戦)
有段者の部の決勝戦、先手御神本さん対後手石川さんの対局を中川大輔八段と竹部さゆり女流四段が大盤解説を行いました。
中盤・終盤の白熱した対局になると解説は大いに盛り上がり、お二人の解説をイベントの参加者は聞きいっていました。
対局終了後に、中川大輔八段と竹部さゆり女流四段から石川さんと御神本さんへ、棋力の高い将棋を指していると驚きの言葉と、今後も頑張ってほしいとエールが送られました。
大盤解説の動画はこちら