【第三報】青山一丁目駅転落事故を受けて日盲連が事故現場を調査(2)
東京メトロ銀座線青山一丁目駅における盲導犬利用者の転落死亡事故を受けて
『胸のつぶれる思いを抱くとともに、同じ仲間として強い憤りを禁じ得ない』 日盲連 竹下義樹会長
東京メトロ銀座線青山一丁目駅(東京都港区)で8月15日、盲導犬を連れた男性がホームから転落し、電車にひかれて死亡するという事故が発生しました。
日本盲人会連合の竹下義樹会長は、本連合が先日発表した声明文において哀悼の意を表し、『無念にも人生を閉じられた仲間の悲しみと痛みを共有し、二度とこのような事故が生じないよう全力を上げて取り組む』ことを宣言しました。
日本盲人会連合 橋井正喜常務理事・藤井貢組織部長/東京都視覚障害者生活支援センターの長岡雄一所長が事故現場を調査
19日、日本盲人会連合の橋井正喜常務理事と藤井貢組織部長が事故現場を調査するため、青山一丁目駅を訪れました。また、この調査には専門家による分析も必要との判断から、東京都視覚障害者生活支援センター所長で歩行訓練士の長岡雄一氏が同行しました。
事故現場で3名は黙祷を捧げた後、東京メトロ担当者から事故発生時の状況など詳しい報告を受け、ホームへ移動しました。
多くの報道陣が見守る中、橋井常務理事と藤井組織部長が白杖をつきながらホームを歩きました。ホームの幅は約3メートルと狭く、点字ブロックの一部にかかる形で柱が並びます。
また、丸ノ内線・銀座線など古い地下鉄には走行用レールのほかに給電用レールが敷設され、転落した際に誤って触れてしまうと感電する可能性もあります。
調査終了後、長岡氏は「音の反響がすごい。歩行訓練士としては(ホーム先端の)点字ブロックよりも、壁側の移動を勧める」と見解を述べ、藤井組織部長は「視覚障害者にとって歩きにくい駅だと感じた。安全に移動できる駅作りを日盲連として目指していきたい」と、国土交通省や東京メトロに改善策を求めていく考えを示しました。
転落事故に関するアンケート調査結果(平成23年2月実施)
平成23年に日盲連が加盟団体の会員や情報誌購読者等にアンケート調査を実施したところ、回答者252名のうち約4割の視覚障害者がホームから転落した経験があると回答。また、約6割が「転落しそうになったことがある」と回答しました。
また、「どのようにしたら転落を防げると考えますか?」との設問には、約6割の視覚障害者が「ホーム柵の設置」を希望しました。
資料:『転落事故に関するアンケート調査結果』 Excel形式(13KB)/PDF形式(126KB)
日盲連の今後の取り組みについて
※声明文から引用→全文はこちらから
本連合は、盲導犬使用者はもとより、その育成・貸与を担う関係諸機関、研修機関とも連携し、盲導犬使用中の安全について研究を進める決意である。
関係機関、鉄道事業者に対しては、視覚障害者の安全の確保と移動の自由を保障するため駅ホームからの転落防止のための抜本的な対策を強く求める。
当面の対応として以下のことを求める。
- 事故原因の究明にあたっては、本人の責任に転嫁しないことを前提に、盲導犬の使用並びに本人の歩行訓練の状況を含め事故原因を深く究明し、今後の施策に生かすこと
- すべての駅ホームの危険箇所の実態を調査し、危険箇所(特に侠矮で障害物の多い駅ホーム)の優先的な対策を実施し、駅ホームのみならず鉄道駅全体の安全が確保できる対策を行うこと
- 計画対象駅ホームへの転落防止柵の設置を急ぎ、更なる計画拡大を求めること
- すべての駅ホームに内方線付き点状ブロックを敷設すること
- 駅ホームへの警告用ブロックの敷設の在り方について改めて検討すること
- 駅ホームからの転落事故に備え、ホーム下等に転落者の退避空間を設けること
- すべての駅に安全監視員を配置すること
- 法令によって駅ホームの安全対策を義務付けること
- 駅ホームでの歩きスマホを禁止すること
- 危険に遭遇しようとしている視覚障害者に対する適切な声かけ・援助の仕方について研究し啓発を促進すること
- 視覚障害者の安全な移動について国民全体の理解を高めること
- 歩行訓練士など視覚障害者の安全な移動を支援する専門家を育成し、視覚障害者自ら歩行能力を高められる施策を早期に実施すること
- 盲導犬育成・貸与を担う訓練機関等と連携し盲導犬の育成と使用者の訓練におけるホーム上の誘導内容、転落防止のための訓練等について改めて検証すること