同行援護事業とは

 障害福祉サービスである同行援護は、障害者団体や関係者の強い要望があって法律に規定されました。

 社会福祉法人 日本視覚障害者団体連合(以下、「日視連」という)は、障害者自立支援法が施行された直後から、市町村地域生活支援事業における移動支援とは異なる自立支援給付として、同行援護の規定を厚生労働省に訴え、要望してきました。

 そして、2008(平成20)年12月16日に取りまとめられた「社会保障審議会障害者部会報告―障害者自立支援法施行後3年の見直しについて―」において『重度の視覚障害者の同行支援について自立支援給付とするなど、自立支援給付の対象を拡大することを検討するべき』旨が明記されました。

 同年には、厚生労働省は、「視覚障害者移動支援事業資質向上研修(指導者養成)」を日視連に委託し、移動支援の資質向上を推進してきました。また、厚生労働省の障害者保健福祉推進事業障害者自立支援調査研究プロジェクトによる「平成18年度視覚障害者の移動支援に関するあり方検討事業調査結果報告書」(日視連)がまとめられました。

 さらに、「視覚障害児・者の移動支援の個別給付化に係る調査研究事業報告書」(2010(平成22)年3月、株式会社ピュアスピリッツ)、「地域生活支援事業における地域間の差異に関する調査」(2011(平成23)年3月、NPO法人神奈川県視覚障害者福祉協会)などの調査研究が実施され、視覚障害者(児)の移動支援に関する実態が明らかになり、視覚障害のある人の同行援護を規定するための基礎資料を集約しました。

これまでの流れ

 障害者が地域で生活することの重要性が認識され、2003(平成15)年4月からスタートした「支援費制度」によって、自己決定の重視や利用者本位のサービス提供などが充実されました。

 その後2006(平成18)年より障害者自立支援法により、サービス実施主体を市町村に一元化したものとなりました。

 地域の特性や利用者の状況に応じて柔軟に実施することにより、効率的・効果的な事業実施が可能である各種の事業を地域生活支援事業に位置づけています

支援費制度における制度

 2003(平成15)年、支援費制度導入に伴い視覚障害者の移動支援も支援費の対象サービスに位置づけられました。

 対象者は、屋外での移動に著しい制限のある視覚障害者とされました。このときからガイドヘルパーには、厚生労働省告示によって定められた外出時における移動の介護に関する知識および技術を習得することを目的として行われる研修修了者という資格要件が設けられたのです(平成15年3月24日厚生労働省告示第110号)。

障害者自立支援法による制度

 2006(平成18)年4月に、障害者自立支援法の一部が施行され、第1次施行における障害福祉サービスが実施されました。

 移動支援の内容としては、基本的に支援費制度におけるサービス体系を継続しています。

 同年10月に障害者自立支援法が全面施行され、ホームヘルプサービスおよびガイドヘルプサービスは、「介護給付」と「地域生活支援事業」に移動支援は「地域生活支援事業」に位置づけられ、視覚障害者に対するマンツーマンの支援、グループへの同時支援、突発的なニーズへの対応など柔軟性のある支援を提供することができるようになりました。

 2011(平成23)年10月から、移動支援事業のうちの重度視覚障害者に対する個別支援を「同行援護」として創設し、自立支援給付に位置づける改正が行われました。

 対象者は、視力障害、視野障害、夜盲などによる移動障害について、独自のアセスメント票を使用して判定することとし、業務の内容に「代筆と代読」が含まれることが明確化されました。

 さらに、ガイドヘルパーも同行援護従業者として同行援護従業者養成研修を受けることが義務づけられ、従事者の技術の向上がはかられることとなりました。

 移動支援(現在は同行援護)とは、障害者自立支援法第5条第4項において、「視覚障害により、移動に著しい困難を有する障害者等につき、外出時において、当該障害者等に同行し、移動に必要な情報を提供するとともに、移動の援護その他の厚生労働省令で定める便宜を供与すること」として規定されています。

 地域で生活をする視覚障害者にとって有益な同行援護従業者とは、移動支援技術を学んだだけの人ではありません。

 支援技術を学ぶだけで、障害特性に合った同行援護を提供できるわけではありません。

 同行援護従業者は利用者の障害特性を理解したうえで最低限のマナーとルールを守り、サービスを提供することが重要です。常に視覚障害者の人権を尊重し、それぞれの個性を尊重して業務を遂行することが求められます。