自由民主党 ユニバーサル社会推進議員連盟の開催

2016年10月11日

 10月5日(水)、日盲連は自由民主党本部にて開催したユニバーサル社会推進議員連盟に出席しました。
 当日は、各府省庁の担当者より障害福祉やバリアフリーに係わる平成28年度補正予算と平成29年度概算要求の報告が行われ、その後、出席をした障害関係団体(合計11団体)より、事前に提出した要望書を元に意見表明を行いました。
 日盲連からは橋井正喜常務理事が意見表明を行い、要望書(14項目36点)の中から鉄道駅での安全対策を中心に要望し、次の4点については強く要望を行いました。

・ホームドアの設置は前倒しをしてでも早期に設置すること

・ホームドア設置における費用負担について、国・地方自治体・鉄道事業者の折半が円滑に進むよ う、国が主導して話し合いの場を作ること

・安全対策においては弱視者への配慮も必ず行うこと

・ホームに監視員を必ず配置すること

 そして、各団体からの意見表明終了後、参加した国会議員からの質疑応答が行われました。質疑応答においては、同議員連盟の事務局長を務める盛山正仁衆議院議員より、日盲連から要望した鉄道駅ホームの安全対策について、引き続き国土交通省と当事者団体が連携して安全対策を進めて欲しいこと、建物の設計段階から弱視者への配慮を盛り込むには設計士などへの指導が必要なこと等のご助言をいただきました。

 なお、日盲連から提出した要望書については、各府省庁よりご回答を頂きました。資料として日盲連が提出した要望書と各府省庁からの回答を掲載いたします。

各府省庁からの回答(PDF形式489KB)  ・各府省庁からの回答(テキスト形式36.0KB)

日盲連発第84号
平成28年10月5日

自由民主党
ユニバーサル社会推進議員連盟
会 長    石 破  茂  様

社会福祉法人日本盲人会連合
会長 竹 下 義 樹
(公印省略)

 

要望書

 

 日頃より、障害者の福祉殊にユニバーサルデザイン社会の実現に向けて日々ご尽力いただいておりますことに心より敬意を表します。
 本年は、オリンピック・パラリンピック リオデジャネイロ大会が開催され、いよいよ2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催準備が本格的に始動します。これを契機に日本が世界に誇れるユニバーサル社会となるよう精力的にお取り組みいただきますよう要請申し上げます。
 また、本年7月、相模原市の障害者施設において多数の障害者が殺傷されるという極めて凄惨な事件が発生し、8月には地下鉄駅ホームから盲導犬使用の男性が転落し死亡されるという痛ましい事故も発生しました。これらの事件・事故は私ども障害者が障壁なく地域に溶け込み、私どもはもとより、国民一人一人がいかに互いを尊重し、安心して暮らせるユニバーサル社会が実現できるかと問いかけているものと思います。
 こうした状況を受けまして、この度の懇談会にあたり、改めて視覚障害者団体として次のように要望事項をとりまとめました。ご理解いただきまして、実現に向けお取り組みいただきますようお願い申し上げます。

1 鉄道駅の安全について

(1)全ての鉄道駅の安全点検を行い、ホームドアについては既に計画のある駅に対しての前倒し設置と危険な駅への早期の設置を要望します。併せて当面の措置として、危険箇所の早期改善を要望します。

(2)ホームドアの設置については、国、地方自治体、鉄道事業者の三者の計画が出揃うことで初めて着工可能となるため、思うように設置促進できないという課題があります。そのため、立法措置を含め、設置の障壁を取り除く施策の確立を要望します。

(3)駅の安全確保のためにはホームドアの設置のみならず、エスカレータと階段への誘導ブロックの設置、誘導音装置の設置などの安全対策を早期に実施いただくよう要望します。また、弱視者が視認可能となるよう、壁、柱、床面のコントラスト、照明などの改善も併せて実施することを要望します。

(4)全ての駅に安全監視員の配置を要望します。

2 移動のバリアフリーについて

(1)視覚障害者の安全な移動を確保するため、視覚障害者用誘導ブロック、エスコートゾーン、歩車分離式信号機、音響式信号機、LED信号機のさらなる設置を要望するとともに、室内用誘導ブロックの敷設の促進を要望します。

(2)弱視(ロービジョン)者のために公共施設や交通機関の照明、表示、サインを見やすくするよう要望します。

(3)自動車の安全対策については、視覚障害者に対する静音対策の実現と、全ての自動車に車両接近通報装置の搭載を要望します。特に、車両接近通報装置については、既に搭載されている自動車でも運転手が意図的にスイッチを切り、視覚障害者が被害にあった事故が発生したことから、このスイッチを意図的に切れない構造にすることを要望します。

3 障害者施設の利用について

(1)全ての障害者施設が利用者にとって安全で安心して暮らせ、地域に開かれた施設となるよう施策の確立を要望します。

4 障害者の被災対策について

(1)災害時の人的支援について再度検討をいただき、被災した視覚障害者の早期の生活再建が可能となるよう要望します。

  (説明)
 本年4月に熊本県と大分県で発生した巨大地震では、視覚障害者が避難所に避難し続けるための条件が整わない、二次避難所としての福祉避難所の絶対数が足りない、仮設住宅への移転や生活再建が困難であることなど、多くの課題が明らかになりました。また、被災した視覚障害者に対する情報提供などの人的支援者は、点訳者・音訳者より歩行訓練士などが必要であり、この認識が国や被災自治体の担当者に十分な理解を得られないため、被災した視覚障害者は今もなお必要な人的支援が受けられず、生活再建が難しい状況が続いています。

5 障害者差別解消法について

(1)視覚障害者に向けた環境整備の徹底を要望します。
 (説明)
 障害者差別解消法の施行に併せ、基本方針、ガイドライン(各省庁における対応指針・対応要領)が示され、法律の具体的運用が精力的に進められていますが、同法第5条の環境整備については、今後の課題と言えます。そのため、環境整備の促進に向け、計画案の策定を要望します。特に、視覚障害者に対する情報提供、窓口における代読・代筆の体制確立などは早急に計画を策定することを要望します。
 また、弱視者に対する対応については、これから取り組まなければならない課題であり、体制整備にあたっては弱視者の意見や要望を十分に取り入れ、継続的に検証できる体制を要望します。

(2)コミュニケーション保障の観点から、行政手続き、金融機関などでの契約において代読・代筆を可能とできるよう、引き続き特段の配慮を要望します。
 (説明)
 特に、住宅ローンなどの消費貸借契約、不動産などの取引、賃貸借契約、生命保険などの契約時に自筆による署名を求められるため、視覚障害者がこれら契約から排除され困難となる場面があります。代筆による契約など、視覚障害者が自由に契約できる社会の実現を要望します。

(3)公務員である視覚障害者が、国民に対して「合理的配慮」を提供するために必要な情報提供などの配慮を要望します。

6 障害者総合支援法について

(1)点訳者・音訳者育成事業を都道府県の必須事業に位置付けられるよう、環境を整備いただき、早期の必須事業化を要望します。
 (説明)
 視覚障害者が点字資料や音訳資料を入手するためには、常にボランティアに依存しているという実態があり、専門家はほとんどいません。そのため、学校教育、特に高等教育や様々な専門分野の点訳・音訳が満足に対応できていない実情があります。また、障害者差別解消法が施行され「合理的配慮」の一環として視覚障害者への情報提供の機会が増えてきますが、それを賄うだけの点訳者・音訳者の絶対数が足りません。
 コミュニケーション保障については、意思疎通支援事業の中に入っていると認識していますが、点訳者・音訳者の育成事業は未実施の地域が多くあります。ぜひ、専門家・指導者の育成を必須事業に組み入れていただき、早期に環境を整備いただくことを要望します。また、新たにテキストデイジーやマルチメディアデイジーの作成を事業の中に組み入れていただき、視覚障害者が情報を自由に活用できる体制の確立も要望します。

(2)各都道府県に生活訓練士・歩行訓練士の最低配置基準を創設いただくよう要望します。

(3)同行援護事業の報酬について、現在の「身体介護有り」と「身体介護無し」の区分を一本化し、報酬の見直しを行うことを要望します。

(4)視覚障害の特性を踏まえた障害支援区分については、障害者権利条約の原理と原則である障害者の「自主選択権」「自主決定権」を原則とした視点に基づき、障害支援区分の改正を要望します。

(5)65歳以上の障害者に対する福祉サービスについては、介護保険制度への移行に伴う負担増に対し一定の軽減措置が図られましたが、不十分な内容のため、更なる改善を要望します。また、65歳以降に視覚障害になった場合、一部の障害福祉サービスが受けられないことについては、早期の解決を要望します。

(6)補装具と日常生活用具の給付においては、地域間格差を解消するために、品目や耐用年数の指定を国において一定の指針を示すとともに、自治体職員の教育を充実させ、当事者のニーズに合った支給が実現されることを要望します。

7 弱視(ロービジョン)者対策について

(1)各地の医療機関及び訓練施設においてロービジョンケアが実施されることを要望します。

8 医療費負担と福祉サービスの利用者負担の見直しについて

(1)医療費負担と福祉サービスの利用者負担は障害者の生活実態に見合った見直しを要望します。
 (説明)
 医療費の個人負担は障害者の生活実態を踏まえ極力負担が生じないよう予算を確保いただき、福祉サービスにおける利用者負担についても無料を原則とするよう制度の見直しを要望します。なお、応能負担とする場合は「20歳以上は個人単位(利用者本人、配偶者を含まない)」にすることを要望します。

(2)地方自治体で実施している重度障害者に対する医療費の上乗せ給付(現物給付)を理由として国民健康保険の国庫負担金の一部削減措置を止め、自治体が独自に医療費の上乗せ給付が出来るよう要望します。

9 障害基礎年金の増額について

(1)障害者の最低生活を維持し、福祉サービスの費用負担が生じる場合にも、その負担の支払いができるようにするため、障害基礎年金を1級は月額12万円以上、2級は月額10万円以上に引き上げることを要望します。

10 視覚障害者の雇用と就業、経済的自立の支援について

(1)視覚障害者の経済的自立のため、自治体(市区町村役場など)において視覚障害者の雇用を積極的に行うことを要望します。
 (説明)
 特に、公務員の採用試験については未だ点字受験が実施されていない自治体があり障壁が存在します。また、採用試験時に「活字による受験が可能な者」など実質的に視覚障害者を排除する採用条件を掲げる自治体もあります。

(2)視覚障害鍼灸マッサージ師の経済的自立を妨げている無資格者に対して、更なる取り締まりの強化を要望します。

(3)就労における「合理的配慮」を実現するため、情報障害である自営業や公務員の視覚障害者に対して、必要とする情報機器の貸与、職場介助者の配置を適用することを要望します。

11 外出保障について

(1)視覚障害者の外出について同行援護事業を中心として優先利用ができる制度の確立を要望します。
 (説明)
 視覚障害者の外出に関しては、同行援護と通院介助などいくつかの手段があります。しかし、これらの利用の仕方(組合せや優先順位など)に関しては地方自治体ごとにその判断が異なっているのが現状のため、不均衡が生じています。

(2)当事者が要望する支給量を地方自治体が決定することを要望します。
 (説明)
 同行援護事業の支給量は、個人の状況に応じてその必要性を満たすことを国から通知されているにもかかわらず、地方自治体ごとに支給量が大きく異なっており、地域間格差が生じています。

(3)視覚障害者はあん摩マッサージ指圧を生業とする人が多いことから、往療時に同行援護が利用できるよう要望します。

12 視覚障害者に対する情報保障について

(1)視覚障害者への情報提供のため、行政機関や公益企業の広報誌や会議資料などは、点字、音声、拡大文字、テキストデータなど本人が要望する媒体で提供をすることを要望します。

(2)「選挙公報」は情報提供の在り方を検討いただき、法律改正を含め選挙管理委員会の責任において、点訳、音訳並びに拡大文字化をして配布することを要望します。また、選挙管理委員会にも、障害者差別解消法などに基づく「対応要領」の制定を要望します。

(3)視覚に障害があっても教育を受けることに対する差別がないよう、使用する教科書は点字、音声、拡大文字、テキストデータなど本人が要望する媒体で提供をすることを要望します。

13 情報アクセシビリティーの確保について

(1)テレビ放送のニュース番組における字幕スーパー、テロップ、および緊急・臨時放送チャイムの後の字幕スーパーの音声化を要望します。

(2)スマートフォンやタブレット端末などの新たな情報端末を視覚障害者も容易に活用できるよう基準化を図ることを要望します。

(3)個人認証やセキュリティー対策のための画像認証、分かりにくいIDやパスワードなど、実質的に視覚障害者を排除する効果のある認証方式を改め、視覚障害者も利用できるインターネット環境が構築されることを要望します。

14 マラケシュ条約批准と「(仮称)読書バリアフリー法」制定について

(1)著作権法第37条第3項により複製が認められているものの規制緩和を要望します。

(2)拡大図書、録音図書、電子図書が簡易に製作できる制度を要望します。

(3)著作権法第37条第3項における受益者の範囲の拡大を要望します。

(4)受益者への公衆送信の法定化を要望します。

(5)読書障害者が著作物を自由に読める読書環境を整えるための「(仮称)読書バリアフリー法」の制定を要望します。