日盲連発第152号 平成27年1月16日
厚生労働大臣 塩崎 恭久 様
社会福祉法人日本盲人会連合 会長 竹下義樹
障害者総合支援法見直しに係る論点整理のための意見書
視覚障害者の自立と社会参加、福祉の増進に対します弛まざるご努力に心より敬意を表します。 さて、このたびは障害者総合支援法見直しに係る論点整理につきまして、私共視覚障害者に係る課題につきまして以下のとおり意見を申し述べます。
1、意思疎通支援事業について ①点訳・音訳者養成事業も、意思疎通支援事業に組み入れていただきたい。 (説明) 障害者自立支援法の制定に伴い従来のコミュニケーション支援事業を意思疎通支援事業とされたのは、双方向のコミュニケーションを想定されたものと理解しております。 地域生活支援事業の中において「意思疎通支援を行う者の養成」とあります。意思疎通を支援する手段としては聴覚障害者の手話通訳・要約筆記の他に、盲ろう者の触手話・指点字や視覚障害者の代読・代筆などもその一部として説明されています。また、これまでは視覚障害者のための音訳・点訳もコミュニケーション支援事業として位置付けられてきました。しかし、音訳・点訳は娯楽や一般教養に加え専門分野の音訳・点訳も含まれているにもかかわらず、これまではボランティアの支援にのみ頼ってきました。専門書の点訳者や音訳者を養成し、録音図書や点字書を製作することは、極めて専門性の高い作業であり、いつまでも無償の奉仕活動では視覚障害者のニーズに応えることはできません。点訳・音訳者養成事業も、自立支援給付としての意思疎通支援事業に組み入れるべきと考えます。
②全盲者に限らず弱視者への情報保障としてテキストデイジー制作員、マルチメディアデイジー制作員などの「データ作成の支援者の養成」を事業として組み入れていただきたい。 (説明) テキストデイジー、マルチメディアデイジーは、弱視者が自分にあった文字の大きさで、音声を聞きながら活字を見ることのできる媒体です。聞きながら見ることにより、弱視者の読書環境は格段に改善されます。 2010年の著作権法の改正により「視覚著作物をそのままの方式では利用することが困難な者」として、サービス対象者を視覚障害者以外にも拡大されました。また、発達障害者などの読書にテキストデイジーなどが有用であることが指摘されるようにもなってきました。幅広い障害者が活用している媒体であり、情報保障の観点からデータ制作の支援者の養成も意思疎通支援事業に組み入れていただきたい。
2,同行援護・移動支援について ①同行援護、移動支援事業の制限を緩和し、通勤介助、通学介助、自営業者の出張などにも拡大してください。 (説明) 就学については教育保障の観点、通勤については就労保障の観点、自営業者の出張については就業保障の観点からそれぞれ教育機関、事業主あるいは個人事業主の負担に係るものとの考え方もあります。しかし、視覚障害者の生活と社会参加を保障し、とりわけ職業的自立を目指し自己実現を包括的に支援するという立場が重要です。他方、個別の教育機関や事業主が独自に当事者の必要に応じた移動保障に従事する要員を確保することはその性質上困難です。むしろ移動支援ないし同行援護事業の一環としてそれらを保障することが現実的です。
②同行援護に同行援護事業者の車両を用いることについてご検討いただきたい 中山間地域、過疎地域においては、公共交通機関が利用できない場合が圧倒的に多いため、視覚障害者の移動手段が奪われています。そうした地域において同行援護事業を利用して外出しようとしても、自家用車を使用しない限りは現実的には移動(外出)を保障することができません。同行援護事業によって視覚障害者の移動(外出)を保障するためには、同行援護事業者(時にはヘルパー)の車両を利用することが必要不可欠です。
3,就労支援について ①就労支援事業(A型・B型作業所)の人数制限を緩和いただき、最低10名程度としていただきたい。 (説明) 視覚障害者の場合、都市部以外で就労支援事業所を立ち上げる場合、現在の要件(とりわけ人数)は厳しすぎるため、働く場を確保することができません。現状のままでは、視覚障害者の場合、都市部以外では人数を確保することができないため、新規算入が困難であり、当事者にとっても不利益になっています。
②自営業者に対する職務介助者制度(仮称)を作ってください。 (説明) 視覚障害者が就労により職業的自立を図るためには、情報処理は必要不可欠です。たとえば、視覚障害者の中心的職業であり、最も多数の視覚障害者が就労している鍼灸マッサージ業において施術所を営むためには、受付業務、顧客管理(カルテ管理を含む)、医療保険の請求業務だけでなく、保健衛生上の確保からも、業務介助者による支援は必要不可欠です。
4,65歳を超えて障害となった場合の障害福祉サービスの提供について 65歳を超えて障害となった場合にも、障害福祉サービスが受給できるようにしてください。 (説明) 高齢化に伴い、65歳を超えて失明する国民が増加しています。しかし、そうした中途視覚障害者が移動支援(同行援護事業を含む)や居宅支援を受ける場合、障害の特性に応じた支援が必要であって、介護保険給付による支援では、その障害の特性に対応することはできません。視覚障害者に対する支援は、如何なる場面においても情報保障がその支援の中心をなすからです。
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