埼玉県川越市における、全盲女子生徒の傷害事件等に関する声明

2014年9月12日

 2014年9月8日、埼玉県川越市のJR川越駅前で、同県立盲学校「塙保己一(はなわほきいち)学園」に通う全盲女子生徒が何者かに足を蹴られ負傷するという事件が報じられた。

 報道によると、何者かが白杖に引っかかって転倒した直後に、無言で女子生徒の背後から右膝の裏を強く蹴り、女子生徒がけがをしたという。この生徒は白杖を持ち点字ブロック上を歩いていたとのことから、視覚障害者であることは明白であり、そのうえで、一方的に暴力を加えるというのは社会的に許される行為ではない。

 近年、誰もが安心して住みやすい街づくりの機運が高まっている一方で、こうした視覚障害者に対する事件が後を絶たない。4月には神戸のスーパーで、やはり白杖を持った視覚障害の女性が、脚に躓いた男性に殴られ、顔面骨折の重傷を負った。更に7月には、埼玉県内で盲導犬が、その使用者の気づかないうちに刺されるという痛ましい事件が起きている。

 今回の事件を含め半年間に3件も、明らかに視覚障害者であることを承知の上で危害を加えるという非道な行為を、私たち当事者は看過するわけにはいかない。一歩踏間違えれば、人命にかかわる所業であり、このような犯罪には憤りを超えて戦慄さえ覚える。

 私たち視覚障害者は、それぞれ自己実現を目指して、学業や職業においても、また日々の生活においても、努力を重ね社会参加をしてきたと自負する。しかし、心無い差別行為により、社会参加への意欲が削がれ、新たな心のバリアになることを危惧する。盲導犬に対する傷害事件の犯人もいまだ逮捕されていないが、被害女子生徒の心のケアも含め、これらの事件の一日も早い真相の究明を願うものである。

 また、2014年1月に、我が国は障害者権利条約を批准している。批准に先立って、障害者基本法の改正や障害者虐待防止法(2011年)、さらには障害者差別解消法の成立(2013年)をはじめとする制度改革もなされたところであり、政府には新法の周知徹底に加え、なお一層の啓発事業の展開を希望するとともに、障害者への差別行為の再発防止を強く訴える。ここに重ねて抗議の意思を示し、誰もが安心して住みやすい社会づくりに尽力することを表明する。

社会福祉法人日本盲人会連合