愛盲時報 第202号(テキスト形式・全文)
愛盲時報 第202号(平成16年6月10日)
1.第57回全国盲人福祉石川大会開催 養成校新増設阻止へ総力 支援費見直し緊急課題に
第57回全国盲人福祉大会・石川大会(日本盲人会連合、石川県視覚障害者協会共催)が5月19日から3日間の日程で石川県金沢市の金沢全日空ホテルと金沢市観光会館を会場に開催された。
昨年4月に期待のスタートを切りながら初年度から行き詰まり、介護保険との統合問題が浮上している支援費制度や、衆議院採択を目指し大詰めを迎えるあはき法19条改正請願運動など、重要課題が山積する平成16年度、全国から集まった視覚障害者代表が、問題解決に向け今後の運動方針を討議した。
初日の19日は理事会、評議員会、あはき協議会代議員会、スポーツ協議会代表者会議、20日は第41回全国盲人代表者会議と3つの分科会が開かれ、それぞれ熱のこもった論議が交わされた。
最終日の21日は金沢市観光会館ホールで約2千人の視覚障害者代表と関係者が参加して、第57回全国盲人福祉大会が開かれた。
会場には「許すな 福祉の後退 充実させよう 支援費制度を」「総力を挙げ はり師きゅう師養成校の 新増設を阻止しよう」「共生社会の実現は 心のバリアの解消から」「参政権の保証は 点字による 選挙公報の発行から」の4つの大会スローガンが掲げられ、視覚障害者の自立と社会参加促進に向け、総力を結集して強力な運動を展開して行くことを確認した。
式典では、開催地元石川県視覚障害者協会の田辺建雄会長、谷本正憲石川県知事、山出保金沢市長から歓迎のことばが述べられ、日本盲人会連合の笹川吉彦会長が主催者を代表して挨拶した。
続いて日盲連顕彰による表彰が行われ、静岡県の島津祐策さん(元音楽家協議会長、組織功労)ら18人と1団体に賞状と副賞が贈られた。(表彰された方々のお名前は2面に掲載)
大会議事では、平成15年度決議処理報告に続き、前日の第41回全国盲人代表者会議で採択された平成16年度運動方針が、大きな拍手をもって承認された。続いて大会宣言案及び決議案を満場一致で採択、3日間の大会の幕を閉じた。
なお、平成17年度の第58回全国盲人福祉大会は山口県で開催の予定。
2.大会宣言
日本海を間近に臨む大都市、古くから「小京都」と言われ、文化の薫り高いここ金沢市に、全国盲人団体代表並びに関係者約2000人が集い、第57回全国盲人福祉大会を開催し得たことは大きな喜びである。
開催に当たり厚いご援助を賜った石川県当局、金沢市当局、共催団体石川県視覚障害者協会並びに、ボランティア団体等、お世話をいただいた石川県民の皆様方に深い感謝を捧げるものである。
現在は日盲連活動にとって極めて重要なときであり、今こそ団結を強化し、総力を結集してすべての問題を解決するため、強力な運動を展開しなければならない。
その一は、はり師、きゅう師養成施設の新増設阻止である。参議院では一昨年、第154通常国会で「はりきゅうをあん摩師等法第19条に加える」請願が採択された。昨年、第156通常国会では全国各団体のご努力にも関わらず、衆議院での請願採択には至らなかった。今、第159通常国会衆議院の採択に向けて、同趣旨請願の法改正を強力に運動しなければならない。
その二は、介護施設機能訓練指導員、公共機関、民間企業等、ヘルスキーパーの優先採用等、雇用の確保を緊急に取り組まなければならない。そのため、適用年限延長、適応職種拡大等、ヒューマンアシスタント制度充実、その他就労条件改善運動が必要である。
その三は、ずさんな計画のため、今や破綻に瀕する支援費制度が発足1年にして介護保険制度に組み込まれようとしていることである。昨年4月1日から実施された支援費制度はガイドヘルパー派遣制限、家族所得による費用負担裁定等、盲人にとって極めて不都合な制度であり、非難が集中していたが、財源難により介護保険に組み込まれようとしている。私たちは社会的自立のための障害者福祉と、寝たきりの高齢者を対象とした介護保険を混同することに絶対反対し、従来どおりガイドヘルパー制度が利用できるよう改善を求めていく。
その四は、IT社会への対応である。盲人対象のパソコン指導、各種サポート等、支援システムの確立を急ぐと共に、情報バリアフリーの推進を図らなければならない。
その五は、選挙公報の全文点字化の実現である。現在配布されている点字選挙公報は一般の選挙公報とはほど遠く、(お知らせとして)ごく一部が点字化されているに過ぎない。点字印刷技術の向上により、全文点字化が可能となった今、各都道府県選挙管理委員会が参政権を保証する立場からその配布に積極的に取り組むよう働きかけていかなければならない。
その他、第4種郵便物の無料扱いの継続、あらゆる面におけるバリアフリー、新たな特別支援教育制度、筑波技術短期大学の4年制への昇格、働く場の確保、失明の予防、地方分権に伴う地域組織の整そ備など、数多くの問題が山積している。
日盲連はこれらの諸問題の解決を図るべく、本大会を契機に組織を強化し、力強く運動を展開していくことをここに宣言する。
3.大会決議
1、盲人の職業的自立を確保するため、はり師、きゅう師養成施設の新増設を法的に規制すると共に、無資格類似行為者の徹底取締まりを強く要望する。
1、盲人の社会参加を保証するため、支援費制度、特に移動介護(ガイドヘルパー派遣事業)を一層充実すると共に、支給量の設定、費用負担、単価の引き上げ等、問題点を早急に改善するよう強く要望する。
1、障害者基本法を抜本的に改正すると共に、障害者に対する差別を排除するため、障害者差別禁止法を速やかに制定するよう強く要望する。
1、自立した地域生活を保障するため、障害基礎年金を1級は月額10万円以上に、2級は7万5000円以上に引き上げると共に、無年金者の救済策を速やかに講ずるよう要望する。
1、あらゆる分野におけるバリアフリーの基本となる心のバリアを解消するための諸施策を推進するよう要望する。
1、特殊教育の改革にあたっては、障害児一人一人の能力と個性が十分に発揮できるよう図ると共に、高等教育振興のため、筑波技術短期大学を4年制大学に昇格するよう要望する。
4.日盲連顕彰 18人と1団体 石川大会で表彰
第57回全国盲人福祉石川大会で組織功労など功績のあった方々に贈られる日盲連顕彰の表彰が行われた。今回表彰された方々は礎賞4人、光の泉賞14人の計18人と、感謝状1団体。お名前は次の通り(敬称略・順不同)。
礎賞(組織功労):浅香定雄(埼玉県)、島津祐策(音楽協)、由田稔(鳥取県)、前川昭夫(広島県)
光の泉賞(内助等功労):海野幸子(北海道ブロック・北海道)、佐藤郁子(東北ブロック・青森県)、田村千恵子(関東ブロック・川崎市)、岡田弘子(同・千葉市)、松永静江(北信越ブロック・新潟県)、下村光子(東海ブロック・静岡県)、宅和冨美子(近畿ブロック・大阪府)、中谷弘子(同・和歌山県)、渡邉和江(中国ブロック・鳥取県)、永尾美智子(四国ブロック・高知県)、榎幸(九州ブロック・佐賀県)、藤本千賀(同・長崎県)、関口玲子(日盲連・東京都)、北田陽子(同)。
感謝状:社会福祉法人石川県視覚障害者協会(第57回全国盲人福祉大会開催)
5.支援費充実など7項目 運動方針採択 第41回全国盲人代表者会議
大会2日目の20日、第41回全国盲人代表者会議が金沢全日空ホテルで、全国から約270人の代表者が出席して開かれた。
全体会議では平成15年度決議処理報告と平成16年度運動方針案の審議が行われ、(1)はり師、きゅう師養成施設新増設阻止運動(2)支援費制度への対応(3)雇用・就業の保障(4)交通バリアフリー対策(5)情報コミュニケーション対策(6)点字による選挙公報の発行(7)福祉関連法の整備促進、の7項目を柱とする平成16年度運動方針を本部提案通り承認。各加盟団体から提出された57項目の議案は、生活、バリアフリー、職業の3つの分科会で討議された。主な議案は次の通り。
生活分科会:(1)支援費制度については、介護保険に併合させないよう運動もしくは視覚障害者に配慮した見直しを行い、サービスの地域格差是正、ガイドヘルパー制度の充実などを要望(2)日常生活用具給付制度の拡充については、パソコン、カラートーク、音声タグなどを追加し、給付を家族によって左右されない制度に(3)投票については、電子投票の導入・普及と点字による郵便投票、在宅投票の認可を要望(4)福祉制度・サービスについては、有料道路料金割引の対象拡大、国による災害時避難援護対策策定などを要望。
バリアフリー分科会:(1)安全な移動の確保等については、音声誘導装置などの統一と音声信号機の増設、駅ホームへのホームドア、可動柵設置、不法駐輪と無灯火自転車対策、公共施設の階段段鼻の色分け、列車乗降口のドア位置の音声案内などを要望(2)IT(情報技術)に関わるバリアフリーについては、障害者ITバリアフリー化支援事業の継続と拡充、電波障害地区の解消、テレビ放送の副音声化促進、視覚障害者にも活用できる地上波デジタルテレビ開発(3)その他、視覚障害者自立支援センターの設置などを要望。
職業分科会:(1)あん摩マッサージ、はり、きゅう関係については、あはき19条に鍼灸を加えるよう改正、無資格者徹底取締り、鍼灸師養成施設の新増設規制、雇用支援施策の強化、明確な取締りマニュアルの作成を要望(2)雇用・就労については、公共機関での産業マッサージ師配置と、個人自営業者のヒューマンアシスタント制度使用、視覚障害者の職業実態調査、晴眼はりきゅう養成学校の適切運営調査を要望。
6.社会参加・雇用に新たな展開 決算等承認 理事会・評議員会
大会初日の19日、金沢全日空ホテルで理事会、評議員会が開かれ、平成15年度事業及び決算報告が本部提案通り承認された。
平成15年度事業については、あん摩師等法第19条改正の衆議院議長宛請願運動や、4月から導入された支援費制度の問題点改善、障害者基本計画の具体化など16年度に持ち越しとなった課題はあったものの、4月1日からの改正ハートビル法施行や10月1日からの身体障害者補助犬法全面施行により障害者の社会参加が促進されると共に、視覚障害者機能訓練指導員の介護老人福祉施設への雇用促進や、在宅就業に関する研究など、雇用・就業施策に新たな展開が見られたことが報告された。
このほか、主な運動の成果としては、(1)社会保障審議会障害者部会、障害者(児)の地域生活のあり方に関する検討会、労働政策審議会障害者雇用分科会などのメンバーとして障害当事者の立場から意見提言(2)支援費制度110番の設置(3)活字文書読み取り装置スピーチオの日常生活用具指定と普及(4)交通安全のための機器等の統一・標準化や弱視者の環境整備等の一部具体化(5)選挙投票用紙の一部点字表示実現や比例区選挙公報全文の点字化・配布準備(6)新障害者の10年日本障害者フォーラム準備会への参加(7)障害者基本法の見直し、国連における障害者権利条約制定促進、障害者差別禁止法への取り組み(8)無資格者対策、健保取り扱い問題への取り組み(9)WBU東アジア太平洋地域協議会総会への代表派遣(10)平成16年度政府予算に対する諸要求。
7.19条改正衆院採択目指す あはき協代議員会
5月19日、金沢全日空ホテルで日盲連あはき協議会(桜井俊二協議会長)の代議員会が開かれ、平成15年度事業並びに決算報告、平成16年度事業計画案、同予算案が執行部提案通り承認された。
平成15年度事業報告では、あん摩師等法第19条改正請願の第156通常国会での衆議院採択は残念ながら保留となったが、引き続き運動を継続すること、介護老人福祉施設機能訓練指導員としての視覚障害マッサージ師採用運動等に努めたこと、無免許あはき業者の一掃を運動した結果、神奈川県警、東京警視庁などで摘発が相次いだことなどが報告された。
平成16年度の主な事業計画は次の通り。(1)あん摩師等法第19条に鍼灸を加える改正請願の第159通常国会での衆議院採択を目指し運動を継続(2)無免許あはき業者と無資格類似行為業者の一掃(3)タイ式マッサージの上陸阻止(4)視覚障害あはき師の自立確保のための方策の検討と運動展開(5)資質向上、競争力強化のための研修の検討と運動展開(6)健保取り扱い拡大強化のための条件整備等(7)損害賠償補償保険への加入促進(8)特養への就職斡旋と小規模授産所設置運動継続(9)養成校新増設に歯止めをかけるため、盲学校退職理療科教員に対し、現状を踏まえて新しい進路を決定するよう要望。
8.スポーツ連盟協代表者会議開く 新協議会長に鈴木氏
日盲連スポーツ協議会代表者会議は5月19日、金沢全日空ホテルで開かれ、平成15年度事業及び決算報告と平成16年度事業計画案、同予算案が原案通り承認された。また、4月の同協議会理事会で改正が承認された新しい規約に基づく初めての役員改選が行われ、新会長に鈴木孝幸氏が就任した。選出された新役員は次の通り。
協議会長・鈴木孝幸(神奈川県)。副協議会長・大橋博(滋賀県)、濱野昌幸(富山県)。事務局・平子浩(愛媛県)、加藤弘(北海道)。会計・土崎庸子(神奈川県)。会計監査・勢力慶太郎(三重県)。
平成16年度の事業計画では、新たな主催事業として陸上、水泳、ボウリングの3競技について通信(記録の報告)による大会を開くことなどを決定した。平成16年度の同協議会主催行事及び、その他の主な障害者関係スポーツ行事は次の通り。
(1)全国視覚障害者通信陸上競技大会(未定)(2)全国視覚障害者通信水泳大会(未定)(3)全国視覚障害者通信ボウリング大会(未定)(4)2004年アテネパラリンピック競技大会(9月17日~9月28日、ギリシア)(五)第11回全国フロアバレーボール大会(10月23日~24日、名古屋市)(6)第23回社会人サウンドテーブルテニス大会(未定)(7)第5回全日本グランドソフトボール大会(未定)(8)第19回全日本視覚障害者柔道大会(11月7日、東京都)(9)第4回全国障害者スポーツ大会「彩の国まごころ大会」(11月13日~15日、埼玉県)。
9.改正障害者基本法施行へ 差別禁止明記 計画策定義務に
「障害者基本法の一部を改正する法律」が5月28日の参院本会議で全会一致で可決、成立、一部を除き6月4日から施行される。
主な改正点は次の通り。
1、「差別禁止」の理念の明示
(1)基本的理念:何人も、障害者に対して、障害を理由として、差別その他の権利利益を侵害する行為をしてはならない旨を規定。
(2)国及び地方公共団体の責務:障害者の権利の擁護及び障害者に対する差別の防止を図りつつ障害者の自立及び社会参加を支援すること等により、障害者の福祉を増進することを明記。
(3)国民の責務:社会連帯の理念に基づき、障害者の人権が尊重され、障害者が差別されることなく、社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加することができる社会の実現に寄与するよう努めなければならない旨を明記。
2、障害者週間の設置
「障害者の日」(12月9日)を「障害者週間」(12月3日から9日まで)に改める。
3、障害者基本計画等
都道府県及び市町村の障害者計画の策定について、努力義務規定から義務規定に改める(都道府県分は公布日施行、市町村分は平成19年4月1日施行)。
四、障害者の福祉に関する基本的施策
(1)教育における相互理解の促進:障害のある児童及び生徒と障害のない児童及び生徒との交流及び共同学習を積極的に進めることによって、その相互理解を促進する旨を規定。
(2)地域の作業活動の場等への助成:障害者の地域における作業活動の場及び障害者の職業訓練のための施設の拡充を図るため、これに必要な費用の助成その他必要な施策を講じる旨を規定。
5、難病等の調査研究の推進等
障害の原因となる難病等の調査及び研究を推進するとともに、難病等に起因する障害があるため継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者に対する施策をきめ細かく推進する旨を規定。
6、中央障害者施策推進協議会の設置
障害者基本計画の策定に関し内閣総理大臣に意見を述べることを任務として、障害者、障害者の福祉に関する事業に従事する者及び学識経験者30人以内で構成される「中央障害者施策推進協議会」を内閣府に設置(交付1年内に政令で定める日施行)
7、検討
この法律の施行後5年を目途として、この法律の改正後の規定の実施状況、障害者を取り巻く社会経済情勢の変化等を勘案し、障害者に関する施策の在り方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずる。
8、施行期日
公布日(平成16年6月4日)施行。ただし3及び6を除く。
10.支援費と介護保険統合問題 社保審中間報告素案
社会保障審議会(厚生労働相の諮問機関)の障害者部会は6月4日、介護保険制度の見直しで焦点になっている障害者の支援費制度との統合を「有力な選択肢」と結論付けた中間報告素案を提示した。同部会は障害者団体のヒアリングなどを経て6月末に報告書をまとめる予定。
中間報告素案の概要は次の通り。
「 支援費制度と介護保険制度をめぐる論点の整理と対応の方向性」
1、障害者福祉制度と介護保険制度の経緯
(1)介護保険制度に於ける障害者の位置づけ:当初から若年障害者を対象とするかどうかは課題として積み残されており、介護を要する高齢障害者は介護保険を既に利用している。
2、契約制度に転換した支援費制度の財政方式の在り方
福祉サービスの利用は、障害者福祉も高齢者福祉も支援費制度及び介護保険制度によって措置制度から契約制度となった。契約制度を維持していくためには、税方式、社会保険方式いずれがより望ましいのかが問題となる。
2、支援費制度をめぐる状況の変化
(1)平成15年4月からの支援費制度導入により、ホームヘルプ等サービス利用が急速に伸び、今後も利用者の増加が予想されるが、これに確実に対応する必要がある。また、地域差の縮小も課題である。
(2)三位一体改革による地方分権推進のため、平成16年度からの3年間で4兆円の国庫補助負担金を削減し、権限と財源を地方に移譲する方向が打ち出され、福祉施策の国庫補助負担金について、全国市長会等から一般財源化が求められている。
3、制度的な課題
①精神障害者、障害児(施設サービス)は支援費制度の対象に含まれていない②税方式を基本としたままでは障害者問題が国民的議論の対象となりにくく地域生活支援の展開が図りにくい③支給量等の決定に詳細な基準がない④ケアマネジメントが制度化されていない⑤福祉制度の縦割り(障害種別、年齢)により高齢者介護サービス資源等の有効活用が難しい⑥安定的な財源が確保されておらずサービスの伸びへの対応が難しい⑦権利擁護の仕組みが不十分⑧地域生活の保障や就労支援、重度障害者への対応が進んでいない。
4、支援費制度改革の方向性
課題解決のためには、客観的な制度上の基準や手続きを定めるとともに安定的な財源確保を図り、ケアマネジメント制度導入、精神障害者や障害児等を対象とする、計画的なサービス提供体制の整備、政策課題への対応などを進める必要がある。
5、介護保険制度との関係
支援費制度の改革の方向性を考えた場合、自己決定の尊重などの理念を堅持しつつ、制度的な諸課題を着実に解決していくためには、支援費施行後の状況の変化も勘案すると、介護のサービスを介護保険制度に組み入れる方向が有力な選択肢である。
その場合、介護保険制度で対応する「介護」の範囲を整理するとともに、この「介護」の範囲に収まらない施策については介護保険制度とは別立ての施策体系を構築し、両者があいまって、障害特性を踏まえた障害者福祉の制度体系を構成する必要がある。
制度設計に際しては、例えば、①現行の要介護認定基準で、知的障害者や精神障害者等についての介護の必要度が適切に反映されるか②支給限度額内では必要なサービス給付をまかなえない場合の対応は③低所得者についての対応(介護保険制度は応益負担が原則)、扶養義務者の負担をどう考えるか④適切な内容のケアマネジメントをどのように保証するか⑤権利擁護の仕組みや成年後見制度の活用、契約制度が機能しない場合の制度の在り方等を検証・議論し、適切な結論を得る必要がある。
なお、障害者福祉制度のあり方とともに、保健医療、住宅や所得保障、就労支援、バリアフリーの推進等の総合的施策の推進が必要なのはいうまでもない。
11.第30回全国盲人文芸大会作品募集
日本盲人会連合は第三十回全国盲人文芸大会(厚生労働省、文化庁他後援)の応募作品を次の要領で募集します。
部門:「短歌」「俳句」「川柳」「随想・随筆」の4部門で自作、未発表の作品。
応募資格:日盲連組織団体会員であること。
応募方法:短歌、俳句、川柳は1人3首(3句)以内、随想・随筆は点字で32マス250行以内(墨字で400字詰め原稿用紙10枚以内)。川柳の課題は「支える」と「集う」。
書き方:部門ごとに別の用紙を用い、1行目に部門、2行目から住所、氏名、電話番号、その次の行から作品を書く。点字で応募する場合は固有名詞やまぎらわしい言葉に墨字を書き添えるか注釈をつけ、墨字で応募する場合は漢字にかなをふる。
参加料:短歌、俳句、川柳は一部門千円、随想・随筆は千五百円、二部門以上はそれぞれ加算し、送付方法は①応募作品と共に現金書留で、②小為替または切手で作品に同封、③郵便振替(文芸大会参加料と必ず明記)のいずれか。
募集期間:7月1日~8月31日(当日消印有効)。
問い合せ・送り先:〒169―8664、東京都新宿区高田馬場1―10―33、日盲連文芸係(電話03―3200―3439、郵便振替00170―9―48326)。
12.大会決議事項各省庁に陳情
日本盲人会連合(笹川吉彦会長)では、第57回全国盲人福祉大会で決議・採択された要望事項を5月27日の総合企画審議会並びに理事会で陳情書にまとめ、翌28日、3班の陳情団を編成し陳情した。
今回は、特に閉会の迫った第159通常国会を意識し、大詰めを迎えたあん摩師等法第19条改正問題に重点を置き、衆議院厚生労働委員全員に陳情した。
また、日本郵政公社や、金融庁、総務省に対しても陳情、諸案件について早急に対処するよう強く要請した。その他の省庁についても近々陳情の予定。
要望された主な陳情内容は次の通り。
【内閣府関係】
1、視覚障害者のための東海地震・東南海地震等災害時避難援護対策を策定。
【総務省関係】
《選挙》
1、視覚障害者にとって使いやすい電子投票の導入を普及。
2、点字による郵便投票。
3、視覚障害者の在宅代理記載投票の手続きを簡素化。
4、選挙公報の全文を点字化及び音声化。
《郵便》
1、点字用郵便物の無料化を存続し、法的裏付けを明確に。
《放送》
1、テレビ放送、特に緊急放送、選挙速報、解説放送に副音声を導入。
2、ラジオ受信困難地域等電波障害地区を解消。
【厚生労働省関係】
《あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律第19条改正関係》
1、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律第19条に鍼灸を加えるよう改正し、鍼灸師養成施設の新増設を規制。
2、晴眼者のはり師きゅう師養成施設の運営状況が適正かどうかを調査。
《無資格類似行為者の取締り》
1、あんまマッサージ指圧、はり、きゅう無資格類似行為者の取締りを徹底。
《支援費制度》
1、支援費制度を介護保険に統合しない。
2、認定基準の標準化を図り、福祉サービスの地域格差を是正。
3、支援費サービスは家族の状況によって左右されず自ら内容を選択。
4、居宅生活支援事業の単価を引き上げ。
5、視覚障害者移動介護は身体介護の単価にあわせて。
6、視覚障害者である場合の事務手続きを簡素化。
7、介護保険の認定項目に視覚障害を加えて。
《ガイドヘルパー》
1、ガイドヘルパー制度を拡大、充実。
2、ガイドヘルパーの自家用車使用を認めて。
3、一般のガイドヘルパーを通院に利用できるように。
《補装具、日常生活用具》
1、視覚障害者の補装具にパソコンを加えて。
2、日常生活用具にカラートーク、大型ディスプレイ、ものしりトークを加えて。
3、視覚障害者が使用するIT周辺機器の購入支援事業を継続し、拡充。
《視覚障害者の就業および就労促進》
1、公共機関(役所等)にヘルスキーパーを配置する等視覚障害者の雇用拡大。
2、介護老人福祉施設に機能訓練指導員を、及び各公共機関や一般企業にヘルスキーパー等の雇用を具体的に推進。
3、個人自営業者にヒューマンアシスタント制度を適用。
4、ヒューマンアシスタント制度の期間延長。
《その他》
1、障害者施設指定管理者の選定基準は適切なものに。
2、障害基礎年金を1級10万円以上、2級月額7万5千円以上に。
3、都道府県に視覚障害者の自立支援センターを設置。
4、障害者差別禁止法を制定。
5、歩行訓練士及び生活訓練士の国家資格認定制度を創設し、視覚障害者施設等に配置しその機能を強化。
【文部科学省関係】
《学校教育》
1、学校教育の必須科目に福祉教育を取り入れ。
2、特殊教育から特別支援教育に移行しようとしている障害児教育に、親や当事者の意見を反映。
3、統合教育を積極的に推進。
【国土交通省関係】
《移動》
1、有料道路料金割引について割引対象を障害程度等級一級から六級まで拡大し、身体障害者手帳を提示するだけで適用できるように。
2、視覚障害者が単独歩行するための安全施策の充実と、全国統一を図って。
3、音声による誘導システムの開発普及をすすめて。
4、エスコートゾーンにおける誘導ブロックの研究開発、国際基準制定への対応をすすめて。
《鉄道・駅》
1、鉄道のホームにホームドアもしくは可動柵を設置。
2、駅等公共施設の階段の段鼻にコントラストのある色をつけて。
3、列車乗降口のドアの位置を音声で明確に。
4、公共交通機関における車内放送が聞き取れないので明瞭化。
《割引・カードシステム》
1、101km未満にも障害者鉄道割引を適用。
2、新幹線『のぞみ』にもジパング割引制度を適用。
3、鉄道のプリペードカードに障害者割引を実施。
4、鉄道共通カードシステム制度化を確立。
《その他》
1、自動回転ドアを事故がないよう改善。
2、公共施設などの水洗トイレのボタンの配置を統一。
【経済産業省関係】
1、視覚障害者にも十分活用できるような地上波デジタルテレビを開発。
【金融庁関係】
1、銀行等に視覚障害者対応のATM設置を促進。
【警察庁関係】
《道路交通》
1、鳴き交わし方式による音響式信号機の整備や信号延長装置等の全国的統一と音声信号機の増設。
2、不法駐輪の取り締まりを強化するとともに、自転車の無灯火走行を無くするため、自動点灯式前照灯設置を義務化(法定)。
《無資格者の取締り》
1、あんまマッサージ指圧、はり、きゅうの無資格類似行為者の取締りを徹底。
【日本郵政公社関係】
1、すべての葉書に切り込みを入れて。
2、郵便小包などの不在者連絡票に、触ってわかるような印をつけて。
13.第7回マッサージセミナー 香港に11か国・地域から
第7回アジア太平洋地域マッサージセミナーが、5月3日から3日間、香港のハーバープラザホテルで、11の国と地域から約200名が参加して開催された。
同セミナーは2年に1回開かれ、各国のマッサージ事情を紹介すると共に、新しい知識や技術の交換が行われている。昨年11月に開催を予定していたが、SARSの流行で延期され、今回の開催となったもので、空港では厳しい健康チェックも行われた。
セミナーでは25のカントリーレポートと臨床研究報告、そして実技のデモンストレーションが行われ、充実した3日間となった。
カントリーレポートで注目されたのは、日本と同様、中国、韓国、台湾でも無資格類似行為者が増えていることで、何らかの対策を早急に講ずる必要があるとの主張は各国とも共通だった。特に韓国、台湾は、マッサージが盲人の専業となっていることから、その影響が大きいとのことだった。
4日に開かれたアジア太平洋地域盲人マッサージ委員会で行われた役員改選では、香港のグレース・チャン女史が再選され、向こう4年間会長の任にあたることになった。また、副会長には日本の笹川(再任)、中国のリー(新任)、両氏が選任された。
今回のセミナーには、盲学校の理療課教員や筑波大、筑波短大の助教授ら多数が出席、また本年9月から第2期目の研修を迎える沖縄プロジェクトのPRが中本事務局長も出席して行われ、各国から高い関心が寄せられていた。
14.春の褒章・叙勲
2004年春の褒章・叙勲受章者の内、視覚障害者関係では次の方々が受章された(敬称略)。
旭日双光章:金子光明(77、大分県盲人協会会長)、鬼塚孝(75、元熊本県視覚障害者福祉協会連合会会長)。
旭日単光章:賀川義治(70、元徳島県視覚障害者連合会副会長)。