愛盲時報 第201号(テキスト形式・全文)

2004年4月25日

   愛盲時報 第201号(平成16年4月25日)

 1.日盲連理事会・評議員会開く 笹川体制3期目スタート 新副会長に時任基清氏
 日本盲人会連合(笹川吉彦会長)の理事会、指導者研修会が3月22日、定期評議員会が23日、いずれも東京・芝の東京グランドホテルで開かれた。
 役員改選では笹川現会長を再選。平成15年度補正予算案、平成16年度事業計画案、同予算案等について審議が行われ、厳しい財政状況の下、日本盲人福祉センターの移転問題、支援費制度と介護保険制度の統合問題など、緊急を要する案件に白熱した論議が交わされた。
 任期満了に伴う役員改選では、笹川吉彦会長が満場一致で再選され、3期目の続投が決まった。また、3人の副会長のうち、再任の齊藤績・札幌市視覚障害者福祉協会会長、田代浩司・福岡県盲人協会会長に加え、昨年10月逝去された猪俣功忠氏に替わり、新たに時任基清理事が選任された。
 平成15年度補正予算案、平成16年度事業計画案、同予算案は、いずれも本部提案通り承認されたが、平成16年度予算については、寄付金の減少や委託費の減額など厳しい状況を反映して、14会計、総額5億3778万3000円と前年度から1300万円近い減額となる。
(平成16年度事業計画は6.に掲載)
 新年度最大の課題である日本盲人福祉センターの移転拡張問題については、建設委員会を設置して新宿区西早稲田に確保した用地への1日も早い移転を目指す。すでに全国的に展開しているあん摩師等法第19条に関する衆議院議長宛ての請願運動については、今国会会期中の請願採択を目指し、組織を挙げて取り組む。
 また5月19日から3日間、石川県金沢市で開催される第57回全国盲人福祉大会については、開催県である石川県視覚障害者協会の田辺建雄会長から準備状況が報告され、第50回の節目を迎える全国盲青年研修大会と全国盲女性研修大会も、それぞれ東京、大阪での開催準備状況が確認された。
 理事会に先立って行われた指導者研修会では、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課の小田島明障害福祉専門官を講師に迎え、「支援費制度の課題とこれからの障害者福祉」をテーマに研修を行った。(指導者研修会資料の抜粋は7.に掲載)
 【日盲連新役員の顔ぶれ】(再は再任、新は新任)
 会長:笹川吉彦(東京・再)
 副会長:齊藤績(札幌市・再)、田代浩司(福岡・再)、時任基清(東京・新)
 理事:蒔苗實(東京・再)、小島伸公(岩手・新)、本多操(茨城・再)、室岡正司(千葉・新)、鈴木孝幸(神奈川・再)、田辺建雄(石川・再)、桜井俊二(長野・再)、橋井正喜(名古屋市・再)、福嶋愼一(京都府・再)、堀忠男(兵庫・再)、板垣成行(鳥取・再)、久米清美(徳島・再)、竹田寿和(佐賀・再)、渡辺哲宏(東京・再)、高橋一居(同・再)
 監事:槇野勝信(大阪府・再)、前川昭夫(広島・再)、井手精一郎(東京・再)

 2.日盲連女性協 50回記念大会大阪で 名取協議会長再選
 日本盲人会連合女性協議会(名取陸子協議会長)の常任委員会、全国委員会、代表者会議が3月23、24の両日、東京・芝の東京グランドホテルで開かれ、平成16年度の事業計画案、予算案、運動方針案等を審議、いずれも原案通り承認された。
 平成16年度の事業としては、8月24日~26日、大阪市の都ホテルで開催される第50回記念大会となる全国盲女性研修大会に向け、記念誌の発行や募金活動などの準備を進めること等を中心に、石川県金沢市で開かれる第57回全国盲人福祉大会への代表者派遣、会報「あかね」の発行などが審議された。
 任期満了に伴う役員改選では、常任委員を含め、全ての役員が再選された。名取協議会長は3期目となる。
 【女性協新役員の顔ぶれ】(すべて再任)
 協議会長:名取陸子(長野)
 副協議会長:西村敏子(京都府)、新城育子(熊本)、煙山秋子(秋田)
 常任委員:榎本和代(東京)、加賀谷睦子(同)

 3.日盲連あはき協委員会開く 新協議会長に桜井俊二氏
 日本盲人会連合あはき協議会の委員会が3月23日、東京・芝の東京グランドホテルで開かれ、平成15年度事業並びに決算中間報告と平成16年度事業計画案、同予算案等を審議、いずれも原案通り承認された他、開会中の第159通常国会でも引き続き展開されている、あん摩師等法第19条改正に関する衆議院議長宛請願運動等の経過報告が行われた。
 任期満了に伴う役員改選では、昨年11月の猪俣功忠協議会長逝去に伴い、副協議会長の桜井俊二氏が正式に協議会長に就任した。新しい副協議会長には渡辺哲宏氏が就任、常任委員には時任基清氏を再選、新たに本多操氏が選任された。
 【あはき協新役員の顔ぶれ】
 協議会長:桜井俊二(長野・新)
 副協議会長:渡辺哲宏(東京・新)
 常任委員:時任基清(同・再)、本多操(茨城・新)

 4.主な行事予定
 ・第30回全国盲人文芸作品募集(募集期間:7月1日~8月31日、成績発表:11月下旬)
 ・第50回全国盲青年研修大会(10月29日~31日、東京都)
 ・第50回全国盲女性研修大会(8月24日~26日、大阪市)
 ・第45回全国盲人音楽家福祉大会(未定)
 ・第28回全国盲人将棋大会(11月中旬、場所未定)
 ・第11回全国フロアバレーボール大会(10月23日~24日、名古屋市)
 ・第5回全日本グランドソフトボール大会(未定)
 ・第23回社会人サウンドテーブルテニス大会(未定)
 ・第19回全日本視覚障害者柔道大会(共催、11月7日、東京都)

 5.第57回全国盲人福祉大会は石川で 皆さん参加しましょう!!
 主催:社会福祉法人日本盲人会連合、社会福祉法人石川県視覚障害者協会
 会期:平成16年5月19日(水)~21日(金)
日程及び会場
 【第1日目】5月19日(水)
 ・日盲連理事会
 ・日盲連評議員会
 ・あはき協議会代議員会
 ・日盲連スポーツ連盟協議会代表者会議
 [会場]金沢全日空ホテル(〒920-8518 石川県金沢市昭和町16-3、電話076-224-6111)
 【第2日目】5月20日(木)
 ・第41回全国盲人代表者会議
 [会場]金沢全日空ホテル
 【第3日目】5月21日(金)
 ・第57回全国盲人福祉大会
 [会場]金沢市観光会館(〒920-0993 石川県金沢市下本多町6番丁27、電話076-220-2501)
 *大会事務局
 社会福祉法人石川県視覚障害者協会(〒920-0862 石川県金沢市芳斉1-15-26、電話076-222-8781、FAX076-222-1821)

 6.日本盲人会連合平成16年度事業計画
 (自平成16年4月1日 至平成17年3月31日)
 社会福祉基礎構造改革に伴う新定款に基づき、本年度はさらに大きく一歩前進するため事業計画を作成する。
 定款が改正されても、日本盲人会連合の本質も目的も変わらない。
 新しい障害者基本計画では、基本理念として「障害の有無に関わらず国民誰もが相互に人格と個性を尊重し、支え合う共生社会の実現」を目指している。
 日盲連はこの理念に基づき、特に視覚障害者の立場から社会の構成員の一人として、あらゆる分野に参加、参画すると共に、自立した生活を確保し、それぞれの地域で安定、安心して生活できる環境整備に全力を尽くす。
 本年度における最大の課題は、懸案となっていた日本盲人福祉センターの移転拡張問題であり、東京都新宿区西早稲田2-39-3に確保した用地に一日も早く新築、移転することである。建設資金の確保等難問は多いが組織の総力を結集し、早期実現を図る。
 また、既に全国的に展開されているあん摩師等法第19条に鍼灸を加え、はり師きゅう師養成施設の新・増設を阻止するための、衆議院議長宛ての請願運動にも全力を傾注する。
  Ⅰ 組織活動
 1、組織強化
 福祉行政の主体は各区市町村に移っており、これに対応するためのそれぞれの地域での組織作りが急務となっている。
 特に支援費制度においては、実施主体が各自治体であることから、各地域における団体活動を推進し、情報提供、連絡伝達等を強化して視覚障害者一人一人の福祉を確立する必要がある。また、日盲連の一層の団結強化を図って行かなければならない。
 2、情報技術(IT)等への対応
 情報技術の著しい進歩に対応するため、視覚障害者のIT利用を促進すると共に、視覚障害者用の機器の研究開発、購入費の補助等、情報環境の条件整備に努め、他の媒体による情報提供にも努力する。
 3、移動の保障
 視覚障害者の社会参加を促進するためには、安全かつ安心して活動できる生活環境の整備が必要である。
 交通バリアフリー法施行以来、公共交通機関を始め、道路環境の整備が進められているが未だ不十分であり、音響式信号機等音声誘導システム、JIS規格に基づく誘導ブロックの敷設、弱視者のための階段踏み面の一部色付けや、拡大文字による各種表示等、更には科学技術を駆使した補助装置開発等の促進に努める。
 また、視覚障害者誘導のための整備基準の全国統一も急務である。
 4、第57回全国盲人福祉大会開催
 5月19日から21日までの3日間、石川県視覚障害者協会との共催により、同県金沢市において、第57回全国盲人福祉大会を開催する。
 大会には全国各地域の代表多数が参加、日盲連の運動方針を決定すると共に、大会決議を採択するなど、内外に向け日盲連の活動を示す最大のデモンストレーションとなる。
 それと同時に組織強化を図る機会でもあり、石川県視覚障害者協会と共にその成功のため全力を挙げる。
 5、各種協議会の開催
 日盲連活動の一環として、加盟団体の協力を得て、研修、文化、スポーツなど、各種行事を実施する。
(行事予定は4.に掲載)
  Ⅱ 施設事業
 1、第2種社会福祉事業
 (1)全国の視覚障害者を主体として構成する団体に対する連絡及び助成事業:情報は随時団体に送付すると共に、「点字日本」「日盲連アワー」「点字JBニュース」「電話ナビゲーション」を始め、各種広報を通じて情報提供に努める。またブロック大会、会議、研修会には役員を派遣し、情報交換に併せ、組織の連携、強化に努める。さらに各団体及びブロック、各協議会に対し、助成を実施する。
 (2)日本盲人会連合更生相談所の設置運営:更生相談所に併せて厚生労働省委託の全国盲人生活相談事業を行う。電話、手紙、来所、電子メール等、随時相談に応じる。毎月1回、顧問弁護士による法律相談を行うと共に、年2回、眼科相談、生活相談を含む総合相談を実施する。
 (3)視覚障害者情報提供施設(点字図書館)日本盲人会連合点字図書館の設置経営
 ①蔵書の拡充、登録者の拡大を図り、視覚障害者への情報提供に努める
 ②デイジー図書の充実、マザーテープのデイジー化に努める
 ③東京都の委託による点訳・朗読奉仕員指導者等養成事業を実施
 ④全国視覚障害者情報提供システムとの連携、強化に努める
 (4)視覚障害者情報提供施設(点字出版施設)日本盲人会連合点字出版所の設置経営
 ①設備、機能の充実を図り、視覚障害者への情報提供に努める
 ②厚生労働省委託「点字厚生」「ワールド・ナウ」発行
 ③各自治体広報点字版の委託事業と共に各種点字パンフレット、点字表示等の受注に努める
 ④視覚障害者に関わる情報、移動等、各種バリアフリー化事業に参加、協力
 2、公益事業
 (1)福祉一般に関する調査、研究、改善普及、情報宣伝活動及び、文化向上に関する事業:各地域における視覚障害者の実態を把握し、情報を随時提供すると共に、事務局内に支援費制度・介護保険制度110番(電話:03-3200-3439)を設置し、随時会員からの相談に応じる。
 (2)業、職域拡大及びあん摩マッサージ指圧、はり、きゅう業の安定のための調査研究、改善普及並びに医療保険取扱い、業経営の指導普及
 ①あはき業従事者の権益を守るため、あん摩師等法第19条に鍼灸を加え、はり師きゅう師養成施設新・増設阻止のための衆議院議長宛て国会請願を強力に推進
 ②他団体と強調し、無資格類似行為者一掃のための諸施策推進
 ③はり、きゅう、マッサージの健保取扱いをより容易にするため関係団体と共に改善に努め、事務代行を実施
 ④あはき協議会の組織強化、資質向上のため日マ会との共催によりブロック研修会を開催
 ⑤新職域として特別養護老人ホームの機能訓練指導員に視覚障害マッサージ師が優先採用されるよう関係方面に積極的に働きかける
 ⑥あはき業の安定経営と発展を図るため、各種相談への助言、指導を行うと共に、三井住友海上火災保険株式会社と契約し、損害賠償保険を取扱い、国民の健康保持増進に一層貢献できるよう努力
 ⑦新職業の職域開発のため、関係方面に積極的に働きかける。 
 (3)国内及び海外の関係団体との相互交流、協力に関する事業
 ①関係省庁における審議会(分科会・部会)等に代表を派遣し、視覚障害者の意見要望の反映に努める
 ②日本盲人福祉委員会を介してWBU(世界盲人連合)及び、同東アジア・太平洋地域協議会に加盟し、国際的に活動。本年度は、5月2日から7日まで香港で開かれる東アジアマッサージセミナーと、12月開催予定のWBU第6回総会に代表者を派遣。また、国連特別委員会で協議中の障害者権利条約の制定促進にも積極的に参加協力するよう国際委員会を設置し、海外視覚障害者団体との連絡、情報交換、国際交流に努める③全国社会福祉協議会、日本身体障害者団体連合会、あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師等法推進協議会、鍼灸マッサージ保険推進協議会等、関係団体との連携を密にし、視覚障害者の権益擁護と福祉増進に努める。
 (4)その他の事業
 ①点字ニュース即時提供事業を厚生労働省から受託、全国62箇所で点字及び電話による情報提供に努める。新たに本年度からインターネットによる点字JBニュースの配信、各実施機関から自治体等の身近な生活情報の提供も付加された。
 ②録音製作事業
 (ア)設備、機能の充実を図り、視覚障害者への情報提供に努める
(イ)厚生労働省委託「録音声の広報『厚生』」、「厚生労働白書」(録音版)、「障害者白書」(同)の他、各自治体発行の広報(録音版)等各種録音物の作成、配布
(ウ)JBS日本福祉放送で毎週2本、30分枠ラジオ番組「セブンデイズ日盲連」「トーク!トーク!トーク!READY GO!!」を制作し日盲連の活動をいち早く紹介、会員相互のコミュニケーションを促すと共に、視覚障害者全体に役立つ情報提供に努める。
 ③盲人用具の研究開発、販売斡旋、普及:厚生労働省委託による盲人用具販売斡旋事業を行うと共に、各種機器の研究開発、普及、販売等視覚障害者の便宜を図り、サービスの提供に努めるため、購買事業を実施。
 ④東京都ガイドセンターの設置:東京都の委託を受け、広域ガイドヘルパーネットワーク事業を実施。
  Ⅲ 日本盲人福祉センターの移転拡充
 日本盲人福祉センターは、昭和46年5月に建設され、日盲連活動の拠点として、また、視覚障害者への各種サービスのセンターとして重要な役割を果たしてきた。しかし、30余年を経た今日、事業の発展により、施設は狭隘となり、建物の老朽化も進んできた。その後の建築基準法にも適合せず、また、消防署からは再三にわたり、防災上問題あり、として忠告を受ける結果となった。
 センター移転は、村谷前会長当時からの懸案であったが、幸いにも現在地から300メートル程の所に適当な土地が見つかり、これを確保、今年度からは建設資金の確保等に全力を挙げ、早期着工に取組むことになった。なお、建設促進を図るため、関係者による建設委員会を設置し、これに当たる。

 7.支援費制度・今後の課題〈障害福祉専門官 小田島明〉
 支援費制度・今後の課題(厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課 障害福祉専門官 小田島明)
 ※平成16年3月22日、日盲連指導者研修会資料「支援費制度の課題とこれからの障害者福祉」抜粋
 1、制度の見直し
 平成12年6月に、社会福祉事業法が社会福祉法として改正され、その後平成15年4月の支援費制度施行までの約3年間が支援費制度設計に当てられた期間であった。
 これはある意味、かなり短い準備期間であり、社会保障審議会の障害者部会においても、「支援費制度は走りながら(運用する中で)、見直していくべきである。」との意見を基に制度がスタートしている。つまり、施設訓練等支援で見えてきた判定システムの改正や居宅支援で見えてきた、サービス利用の増加等に耐えうる仕組み作りを今後も続けていく必要がある。
 利用増加等に耐えうる仕組み作りについては、予算との問題もあり現在の税方式による財源確保自体が今後見直されずに済むのかどうかが問題である。平成15年度のホームヘルプサービスにかかる予算の不足分については、厚生労働省内部の予算のやりくりで何とか不足額を補うよう努力が払われているが、来年度もこのような方策で対応できるとは到底考えづらい。抜本的な財源のあり方を議論する必要があるといえる。
 2、サービスの伸びに対応できる財源の確保
 平成12年度社会保障費は、約16兆8000億円であったのに対して、社会保障費を除く他の一般会計は約31兆3000億円であり、35対65であった。これが16年度予算案においては、社会保障費約19兆6000億円に対し、その他一般会計が約28兆円であり、41対59に変化してきている。つまり、わが国全体の一般会計予算に占める社会保障費は年々増加し、予算の半数近くまで迫ってきているという実態である。
 社会保障費全体の中の障害福祉関係予算は小さな存在であるかもしれないが、予算を俯瞰的に眺めると、今、支援費制度が開始され、新たなニーズが増加する傾向にある状況や精神障害者の支援体制強化といったために今の税財源のみで支えることは難しくなってきていると考えられる。
 このため、福祉目的税や消費税の増税による対応も考えられないこともないが、既に年金や医療保険も苦しい状況にあり、これらの課題解決も視野に入れなければならず、簡単に増税ということで対応できるか難しい問題である。
 他の対応策としては、介護保険の財源を利用する、つまり障害者施策と高齢者の介護保険の一本化という方法である。しかし、障害者の生活ニーズと高齢者の介護ニーズの違いによる、サービスのあり方の相違点があることも事実であり、これらの検証をしっかり行なわなければならないという指摘を多くの利用者等から寄せられているところである。
 4、障害者施策の介護保険適用をめぐる状況
 介護保険制度については、介護保険法の附則第2条において、制度施行後5年を目途として制度の全般に関して検討を加え、必要な見直しを行なうこととされている。
 この附則第2条の中には、障害者の福祉にかかる施策との整合性についても検討をすることが謳われているが、そもそも介護保険の準備段階において障害者施策を介護保険の範疇に加えるか否かといった議論がされていた。介護保険が市町村を主体とした事業としてその体制準備が図られていたが、当時障害施策において、市町村を実施主体としていたのは、身体障害者施策のみであった。この点、整合性を図る意味で知的障害、障害児、精神障害者施策の実施主体を都道府県から市町村に委譲しなければならず、介護保険制度の準備には間に合わなかった。さらに、利用者である障害当事者から介護保険への移行に反対の声が多く、利用者の意向を無視した制度変更は不可能という判断に立たざるを得なかったのである。
 その後支援費制度の準備が行われ、平成15年4月の支援費制度施行が行なわれる過程において、行政側として障害者施策と介護保険の統合という議論が公式に行われたという事実はない。
 それでは何故支援費施行後まだ1年も経過しない現時点で急遽介護保険との統合問題が浮上したのか。利用者をはじめとする多くの関係者がこの急な統合問題に不安を抱いているといえる。この理由は2点考えられる。
 先ず一つは、利用の伸び等に対応できる体制整備といういわゆる財源論である。前述のような利用の伸びや精神障害者の地域移行に向けた取り組み等を展開するためには、厳しい状況にある税財源では十分に対応できないというものである。
 税財源においては政府のシーリングにより大枠の予算が示され各省庁ともそれに基づいて概算要求を組み立てることとなり、今日のような厳しい国家予算においては、自ずとシーリングも低く押さえられることとなる。そのため、ニーズに基づくサービスの伸びを保障しようとしても、低く押さえられた予算の枠の中では自ずと限界がある。
 今一つは、政府の方針であるいわゆる「三位一体の改革」である。平成15年6月に閣議決定された、「経済財政運営と基礎構造改革に関する基本方針2003」において、平成18年度までに、国庫補助負担金については、概ね4兆円程度を目途に廃止、縮減等の改革を行なうとされている。この方針に則り、平成16年度から18年度までに、4兆円の国庫補助負担金が自治体への地方交付税として、税源委譲される見込である。
 これに対して、平成15年10月に全国市町村長会、11月に全国知事会から相次いで、税源委譲すべき主な補助金のリストが掲げられ、両会とも障害者施策にかかる国庫補助負担金をリストに挙げている。税源委譲は、地方分権を進める上で必要な措置ではあるが、現在の支援費制度を中心とした障害者施策は地域差が大きく、もし税源委譲により、自治体の裁量において障害者施策が進められるとするならば、苦しい地方自治体の台所状況からして、はたして、施策が充実されるかどうか、全く予測が立たないと考えられる。
 以上2点を考慮すると、税財源から保険財源へ切り替え、サービスの動向にあわせて柔軟に予算を確保できる仕組みを考えるべきとする意見が多くなってきている。
 本年1月8日には、厚生労働省内に厚生労働事務次官を本部長とする「介護制度改革本部」が設置され、その主な検討項目のトップに「介護保険と障害保健福祉施策の関係」が挙げられている。
 また、2月から週1回のペースで日本身体障害者団体連合会をはじめとする障害当事者8団体と厚労省障害保健福祉部との間で、介護保険に関する勉強会が行なわれている。さらに、社会保障審議会障害者部会が3月初旬から開催され、2週間に1回のペースで6月頃を目途にこの問題を検討することとなっている。
 そして、今夏前までには、大まかな方向性が出される予定である。いずれにしろ審議会での検討結果はもとより、利用者である障害当事者がどのような判断をするかが大きなポイントである。また、保険である以上、保険料を負担する国民や企業等の理解を取り付けることも忘れてはならない。
 おわりに
 支援費制度は、利用者である当事者の市民権を保障することを目的に掲げ、作られた制度である。願わくは、最低5年程度支援費制度を継続しながら検証を行ない、より良い制度へと進化させたいところである。しかるに、現在の状況はそのゆとりをなかなか与えてくれないものである。
 現時点でははたして介護保険という高齢者中心の制度と、社会参加を含め、自己実現をならしめるための障害者施策が本当に統合できるか、まだ明確な回答が出ていない。
 単に、財源や政府方針ということを理由に統合するのでは、支援費制度で掲げられた理念は守れない。できる限り、障害施策や運動の歴史の中で培われた、「ノーマライゼーション」や「エンパワメント」そして「自立」という理念や到達目標に向け、介護保険に統合するのではなく、介護保険の優れた部分と融合し、新たな自立支援を担えるような保険制度を創造するような努力が今後求められる。
 さらに言及すれば、所得保障や就労保障なども視野に入れ、障害者施策全般の方向性とあわせて、この問題を議論する必要があるといえる。

 8.ホームヘルプサービス 補助金14億円不足 
 厚生労働省は3月24日、支援費制度の予想を上回る利用により身体介護などのホームヘルプサービスで国の補助金が14億円不足する見通しだと発表した。
 ホームヘルプサービスの当初予算額は278億円だったが、利用実績から試算すると必要額は368億円と90億円上回る見込み。社会福祉関連のほかの予算の流用や経費節減で76億円をねん出するものの、なお14億円が足りないという。
 不足分は自治体に穴埋めを求めるが、自治体の判断によっては支給額の一部カットもあり得るとしている。

 9.ブロック大会各地で開催
 ●第38回日盲連関東ブロック群馬大会開催
 第38回日盲連関東ブロック協議会群馬大会が日盲連関東ブロック協議会と群馬県視覚障害者福祉協会(関米一郎会長)の主催で2月10日、11日の両日、群馬県・伊香保町の「ホテル木暮」で11団体から約400人が参加して開かれた。
 10日は大会式典に続き、日盲連の笹川吉彦会長による講演「中央情勢について」と、福祉・文教、職業・経済、青年、女性の4分科会に分かれての討議が行われた。11日の全体会議では前日の分科会報告に続いて、支援費制度の抜本的改正の要望など9項目の決議を採択し閉幕した。次回は埼玉県で開催の予定。
 ●日盲連北信越ブロック大会 新潟で開催
 平成16年度の日盲連北信越ブロック大会が日本盲人会連合と新潟県視覚障害者福祉協会(松永秀夫会長)の主催で2月14、15の両日、新潟市の新潟東急インで開かれ、新潟、長野、富山、石川、福井の5県から関係者約140人が参加した。
 14日は開会式と代表者会議、青年部女性部の協議会、研修会が行われ、今年の5月に石川県で開かれる全国大会の提出議題を協議した他、各県の情報交換などを行った。15日は全体会議と各協議会の報告が行われた後、日盲連の笹川吉彦会長が「最近の中央情勢」を講演した。
 ●日盲連四国ブロック協議会・研修会 徳島で開催
 日盲連四国ブロック協議会並びに研修会が2月14、15の両日、徳島市幸町のホテル千秋閣を会場に、日本盲人会連合と徳島県視覚障害者連合会(久米清美会長)の主催で開かれた。四国4県の代表者ら約120人が参加、14日は開会式に続き、日本盲人会連合の笹川吉彦会長による「中央情勢報告」の講演や各県からの活動状況報告などが行われた。
 15日は各県提出議題の審議と並行して青年、女性、スポーツの各協議会で審議が行われた。引き続き開かれた全体会議で、点字用郵便物無料化の法的裏付け要望と、支援費制度と介護保険制度の統合反対が決議された。
 ●第57回九州盲人福祉大会 宮崎で開催
 第57回九州盲人福祉大会が2月15、16の両日、九州盲人会連合会(会長・田代浩司福岡県盲人協会会長)と宮崎県視覚障害者福祉協会(馬場弘会長)の主催で、宮崎市のシェラトン・フェニックス・ゴルフリゾートを会場に、7県2市から約500人が参加して開かれた。
 15日は福祉、職業対策、体育の3つの分科会と代議員総会などが行われた。16日は大会式典に続き平成16年度運動方針を審議、国連障害者の権利条約及び我が国障害者差別禁止法の早期制定の要望など5項目を決議した。記念講演は、笹川吉彦日本盲人会連合会長による「移動介護サービスの現状と課題」。

 10.学生無年金障害者訴訟で判決 不支給は違憲 国に賠償責任
 大学生時代に任意加入制だった国民年金に加入しなかったため、障害基礎年金を支給しないのは憲法に違反するとして、事故や病気で障害を負った4人が国家賠償などを求めた訴訟の判決が3月24日、東京地裁であった。判決は、原告3人について国に計1500万円の支払いを命じ、他1人に対する社会保険庁長官の不支給処分を取り消した。
 同様の立場である障害者26人が大阪、札幌など全国8地裁で同種の訴訟を起こしており、初の司法判断となった今回の判決は、他訴訟の行方や政府の対応にも影響を与えそうだ。

 11.重度身体障害者の代筆郵便投票が可能に
 平成15年7月の改正公職選挙法成立により、郵便による不在者投票制度が改正され、平成16年3月1日から施行される。この改正によって、重度の身体障害を持つ選挙人について、郵便による不在者投票の対象者が免疫機能に障害を持つ人や、要介護5と認定された人にも拡大された。
 また、郵便による不在者投票対象者のうち、上肢または視覚の障害程度が1級の重度障害者で、自ら投票用紙に記載ができない場合について、代理記載制度が設けられ、代筆による郵便投票も認められる。
 郵便による不在者投票には郵便投票証明書が必要で、選挙管理委員会に申請し、交付を受ければ7年間有効。また、代筆での投票には、あらかじめ代理記載する人を届け出る必要がある。詳細については、地元市町村の選挙管理委員会まで問い合わせを。

 12.ニュー福祉定期 金利引き下げ
 日本郵政公社は3月1日から、障害基礎年金や老齢福祉年金、児童扶養手当などの受給者を対象とする「ニュー福祉定期郵便貯金」(預け入れ限度額300万円、期間1年)の上乗せ金利を現行の年1.0%から0.5%に引き下げる。取扱期間は来年2月末までの1年間。民間金融機関が同種の預金で金利を引き下げたのに伴う見直し。
 ニュー福祉定期郵便貯金は昨年12月末現在、預け入れ件数は約139万件、金額は約2兆4770億円となっている。

 13.年金0.3%減 物価スライド分
 2003年の消費者物価指数が確定したことを受け、今年4月からの国民年金や厚生年金などの公的年金額が0.3%引き下げられることが決まった。本年度分のマイナス0.9%に続き、2年連続の引き下げとなる。総務省が1月30日、減額幅を決める03年の消費者物価指数を公表。政府は関連特例法案を2月6日に閣議決定し、今国会に提出した。障害基礎年金や各種福祉手当なども同様に0.3%引き下げられる。

 14.日マ会理事会開く 会費変更等を確認
 社団法人日本あん摩マッサージ指圧師会(時任基清会長)の今年度第2回理事会が3月24日、東京・永田町の衆議院第1議員会館で開かれた。
 議論が集中した問題は、(1)経過報告では、無免許業者・無資格類似業者取扱問題(2)鍼灸専門学校急増問題、特に退職理療科教員の行動への批判や意見(3)会費変更については「日盲連から事務職員給与分担増額を求められたからと言うのでなく、あマ指師の将来のため、事業・運動を強化するため、と方向を示して会費を変更せよ」との意見があったが、平成16年度定期代議員会・総会に本部年会費1000円引き上げを提案することに決定(4)役員改選では、昨年10月に死去された猪股功忠監事の代行として、当面(平成16年度代議員会・総会までの間)、山本弘氏(栃木県)を充て、理事職辞退者補充については正副会長に立案を一任。

 15.無資格業者相次ぎ摘発 あはき法違反 東京・神奈川で
 厚生労働省は昨年2月、各都道府県担当課長に対し、あん摩師等法違反行為者の取り締まりについて指示、これを受けた日盲連は加盟各団体に対し、無資格者の徹底取り締まりについて通達、結果をまとめていたが、今年に入って同法違反による大規模な摘発が相次いだことが新聞等で報道されている。
 神奈川県警と厚木署は1月14日、わが国最大手のマッサージルーム経営会社「エーワン」(東京・新宿)の会長鈴木輝男容疑者(51)と、社長鈴木明容疑者(48)の2人を、あん摩師等法違反容疑で逮捕。同社は無許可で横浜市に施術所を開設し営業したほか、全国の健康ランド等に無資格のマッサージ行為者を派遣し、約7億円の不正利益をあげていたとみられており、在籍している約700人のマッサージ師のうち522人が無免許という。
 一方、警視庁生活環境課は、2月29日、新宿区中落合の「早稲田鍼灸整骨院」経営者、森侃二容疑者(56)と従業員ら20数人をあん摩師等法違反容疑で逮捕した。森容疑者は都内に計23店舗、約150人の従業員を抱えているが、従業員の大半は免許を持っておらず、「かえって腰を痛めた」などの苦情も寄せられていた。
 従業員の中には、就学ビザなどで来日していた中国人もおり、同課ではこれらの店舗が外国人の不法滞在の温床になっている疑いもあるとみて、さらに実態の解明を急いでいる。