愛盲時報 第188号(テキスト形式・全文)

2001年9月10日

 愛盲時報 第188号(平成13年9月10日発行)

 1.アハキ師法19条改正国会請願 秋の臨時国会に向けて
 鍼灸科新設絶対反対 決起評議員会も予定 日盲連理事会で決定
 日盲連(笹川吉彦会長)は8月17日、東京都中央区晴海の東京ホ
テル浦島で理事会を開催(写真)、村谷昌弘日盲連名誉会長の胸像製
作の経過及び翌日の除幕式、婦人協議会の女性協議会への名称変更等、
懸案事項の経過報告と、鍼灸師養成施設の問題に係わる国会請願・陳
情、および今後の事業推進などを討議した。
 注目のあはき師法第19条改正(鍼師、灸師を包含)については組
織の総力をあげて、秋の臨時国会に請願することにした。鍼灸師養成
施設問題による国会請願については、これを取りまとめてきた、アハ
キ協議会小委員会の関米一郎委員長(日盲連副会長)から6月以降に
行われた活動の報告があり、この中で35の加盟団体が地元選出国会
議員を通じての19条改正の陳情と、地方議会への請願運動を展開し
た事、また当日理事会に先立って行われたアハキ協委員会では、今後
の国会請願は、現在3項目ある請願項目を絞り法第19条の改正1本
で運動する事で決まったとの報告があった。他の2項目は、臨床研修
機関の設置とアハキ国家試験での視覚障害者への配慮。
 これを受けて、笹川日盲連会長は、これを実行するには日盲連加盟
58団体が一丸となる必要があるとし、地元での請願・陳情がまだ行
われていない23の団体に対し状況を確認し、本年5月、埼玉県で行
われた全国大会で決定した通り、積極的に請願・陳情を進めることに
した。なお、運動を盛り上げるため、9月に臨時の評議員会開催も視
野に入れることにした。
 請願・陳情の終了した都道府県市(7月末現在、日盲連への報告分)
は次の通り。北海道、青森、秋田、岩手、仙台市、茨城、群馬、埼玉、
東京、千葉、横浜市、長野、富山、石川、福井、静岡、岐阜、京都、
大阪市、奈良、神戸市、鳥取、島根、広島(広島市と共同)、香川、
徳島、愛媛、高知、福岡、福岡市、北九州市、長崎、熊本、宮崎。
 この他、理事会では、情報部からIT社会の中、視覚障害者と情報
の関わりについて近々アンケートを実施する事と、日盲連とNECが
テクノエイド協会の補助金で、視覚障害者のパソコン自習を目的とし
たソフトの研究開発事業を開始したとの報告があった。
 なお、その後、日盲連本部で検討されているアハキ師法19条改正
の国会請願の請願事項と請願の趣旨は次の通り。
 請願事項
 あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律(昭和
22年法律第217号、以下「法」と略称)第19条の「視覚障害者
の生計維持」に配慮した、本来的趣旨を実現するため、同条に鍼灸を
含める、法改正を行なってください。
 請願の趣旨
 古来、現在に至るまで、わが国の視覚障害者は、按摩マッサージ指
圧、鍼、灸(以下「鍼灸マッサージ」と略称)により、職業的自立と
国民の保健衛生に対する寄与、及び納税による社会貢献を果たしてま
いりました。
 これは外国に全く例を見ない、わが国独自の制度として、国家社会
が視覚障害者にも按摩師、鍼師、灸師の資格取得の道を保障して来た
からであり、そのことは、視覚障害者先達の努力と、立法機関、行政
機関のご配慮のお陰であるので、私ども視覚障害者は、敬意と感謝を
強く感じております。
 しかるに、近年、自立にとって唯一の適職であるこの職業が、晴眼
鍼灸マッサージ師激増の強い影響を受け、営業を継続することが極め
て困難となり、このままでは、遠からず視覚障害者自立更生の手段と
は成り得なくなる恐れが生じてまいりました。
 この職業に従事する約10万人の視覚障害者が、職を失う時の国家
経済的、社会的損失は計り知れません。
 古来、視覚障害者の間で、連綿として引き継がれて来たこの職業を、
確かな自立手段として、後世の視覚障害者にも継承するため、今こそ、
法第19条の改正により、晴眼者のための鍼灸養成学校等の無秩序な
新設・増設抑制策を講ずることにより、視覚障害者の職業的自立の基
盤整備を図り、国民医療への貢献と、社会参加意欲を支えて頂きたく、
法の改正を請願いたします。

 2.功績を讃え胸像除幕を祝う 村谷日盲連名誉会長
 50余年にわたり“日盲連の顔”であり続けた村谷昌弘日盲連名誉
会長の功績をたたえる胸像の除幕式が54回目の結成記念日である8
月18日、東京・晴海のホテル浦島で元郵政大臣の八代英太衆院議員、
板山賢治日本障害者リハビリテーション協会副会長らの来賓及び日盲
連加盟の各団体長ら150人が参加して盛大に開かれ、祝った。ただ、
村谷名誉会長は体調がすぐれず除幕式には欠席、参加者から「元気な
あの大きな声が聞きたい」と村谷名誉会長の健康を気づかう声がわき
上がっていた。
 胸像は、おはぐろ仕上げのこげ茶色のブロンズ製。高さ45cmで、
ほぼ等身大。大変よく似ており、除幕式後は、東京・高田馬場の日盲
福祉センター会長室に置かれ、何時でも手で触って見ることができる。
 除幕式では笹川吉彦日盲連会長の胸像製作の経緯、そして18日に
除幕式を行う意義などの経過報告から始まった。日盲連が結成された
のは1948年(昭和23年)8月18日。村谷名誉会長は太平洋戦
争のインパール作戦で失明(1944年)、この日盲連結成にかかわ
った。以来、事務局長、常務理事、副会長、会長(1980年~20
00年)として、まさに今日ある日盲連の“顔”であり続けた功労者。
 式では八代英太、板山賢治氏らと日盲連の正副会長らの手で除幕が
行われ、胸像が披露された。この後、八代英太、板山賢治両氏それに、
日身連の兒玉明会長、日盲社協の本間昭雄理事長らがお祝いの言葉を
述べた。引き続き、除幕式では本人の謝辞が予定されたが、健康がす
ぐれず出席できなかったため、8月13日、JBS「日盲連アワー」
で放送された笹川会長との対談が流された。村谷名誉会長はその中で
「自分1人の力ではない。みんなの協力があっての今日の日盲連だ」
と強調、21世紀に向けてさらに団結、豊かで住みよい社会を作って
いってほしいと我々に熱い熱いエールを送っていた。
 村谷昌弘日盲連名誉会長胸像除幕式への来賓は次の方々。(敬称略、
順不同)
 八代英太衆議院議員、板山賢治日本障害者リハビリテーション協会
副会長、本間昭雄日本盲人社会福祉施設協議会理事長、兒玉明日本身
体障害者団体連合会会長、井手精一郎日本障害者スポーツ協会理事、
多田威夫日本盲人福祉委員会理事、木塚泰弘日本ライトハウス理事長、
加藤俊和日本ライトハウス常務理事、堀込藤一東京ヘレン・ケラー協
会理事長、光岡法之日本盲人職能開発センター常務理事、中尾忠雄東
京都視覚障害者生活支援センター所長、高橋実視覚障害者支援総合セ
ンター理事長、川越利信JBS日本福祉放送常務理事、杉田久雄全日
本鍼灸マッサージ師会会長、井口達也日本鍼灸師会会長、時任基清日
本あん摩マッサージ指圧師会会長、龍澤良忠全国病院理学療法協会会
長、神崎好喜日本理療科教員連盟会長、伊藤忠一日本視覚障害者柔道
連盟副会長、中山政義池野通建株式会社取締役福祉開発本部長、唐橋
邦美池野通建株式会社福祉開発本部システム部長、森基日盲連相談役、
田島豊秋日盲連相談役、加瀬三郎日盲連相談役、坂本良一日盲連相談
役、原田まさよ元日盲連婦人協議会会長、橋本龍太郎衆議院議員代理、
清水嘉与子参議院議員代理、中塩幸祐日盲連相談役代理。

 3.ぶつけよう若い力を 第47回全国盲青年大会
 第47回全国盲青年研修大会が8月24日から3日間、徳島市のホ
テルクレメント徳島で開かれた。日盲連、同青年協議会(金村厚司協
議会長)、徳島県視覚障害者連合会(久米清美会長)、同青年部が主
催、全国から約200人が参加した。1日目は常任委員会、大会運営
委員会、2日目は地方から提出のあった議題をテーマ別に第1(社会
)、第2(組織)、第3(スポーツ)の3つの分科会に分かれ、熱心
な研修討議が行われた。社会、組織では、駅の安全対策の充実、青年
協議会組織の強化と魅力ある協議会のあり方について議論が展開され
た。スポーツでは、ビームライフルの実技が披露され、出席者から喝
采を浴びた。
 2日目の代表者会議では、任期満了に伴う役員改選が行われ、新協
議会長に現副協議会長の西村秀樹氏(滋賀県)を満場一致で選出した。
任期は2年。これに関連したその他の役員人事は後日行われるが、3
年後の平成16年に開催する全国盲青年研修大会が50回目の記念大
会となることから、その準備を考慮した人選になる模様。
 最終日の26日には大会が開かれ、主催者代表として日盲連笹川会
長が「若い力を十分に発揮し、その力を日盲連発展のために役立てて
欲しい」と挨拶、8項目の決議を満場一致で採択した。来年度の第4
8回大会は福井県で開かれる。採択された要望事項は次の通り。
 (1)はり・きゅうをあん摩師等法第19条に加えるとともに、無
資格類似行為者一掃の手段として、手技療法師法に包括し、法的取り
締まりを実現(2)障害基礎年金の引き上げと所得制限の大幅緩和、
また、児童加算制度の復活(3)総ての市町村が、障害者施策推進協
議会を早急に設置し、障害者計画を策定するとともに、施策推進協議
会委員に障害種別代表者を加えるよう、また、市町村間格差が生じな
いよう要望(4)視覚障害者にも適したパソコンソフト及び周辺機器
を日常生活用具給付対象品目に加えるとともに、地方自治体が実施す
るIT講習会において視覚障害者が受講しやすい環境を提供(5)公
共交通機関・金融機関、そして家庭において使用されている総ての機
器が、触覚又は音声ガイドにより容易に操作できるよう、製品の開発
改善を各企業に要望(6)病院における視覚障害者マッサージ師の権
益を守るため、マッサージの保険点数の復活と雇用の安定化を図る
(7)視覚障害者の個々の能力に応じた業務内容の研究と、視覚障害
者を対象とする授産施設や福祉工場を積極的に増設(8)交通バリア
フリー法の施行に基づき、視覚障害者の歩行を容易にするため、安全
設備の一層の充実と、公共交通機関の職員への指導が十分になされる
よう関係機関に要望。

 4.来年から「女性協議会」に改称 第47回全国盲婦人大会
 第47回全国盲婦人研修大会が7月26日から3日間、日盲連、同
婦人協議会(名取陸子協議会長)と熊本県視覚障害者福祉協会連合会
(石淵貞次郎会長)、同婦人部の共催で、熊本市のニュー・スカイホ
テルに全国から約600人が集まり開かれた。1日目は全国委員会、
2日目は代表者会議と研修会が行われた。
 代表者会議では、日盲連婦人協議会を日盲連の理事会の承認を得て
「日盲連女性協議会」に改称することが決まった他、平成13年度予
算案、各ブロック提出議案などを審議。
 研修会ではシンポジウム「情報弱者(I・D)と生活・環境」に続
き、「心に残っている一言、伝えたい言葉」をテーマにレポート発表
と討論が行われた。レポーターは9人。中でも、「障害は個性だ」
(北海道・大浅馨さん)、「人前では腹を立ててはならぬ」(川崎市
・千葉はるみさん)、「自分が変われば、相手も変わる」(富山県・
日吾典子さん)など体験を通した言葉が心を打った。
 3日目の全国盲婦人大会で採択された決議は次の通り。
 (1)障害者が生活権を守るための障害基礎年金を1級は月額10
万円以上、2級は月額7万5千円以上に引き上げるとともに、特別障
害者手当を、現況の物価に即応した水準にまで引き上げることを要望、
(2)ユニバーサルデザイン化した日用品、音声機能つきの家庭電化
製品や携帯電話などの開発を、各メーカーに要望、(3)IT時代に
即応し、必要な情報を自由に入手するために、パソコン及び音声文字
読み取りシステムを、日常生活用具に指定されるよう要望、(4)介
護保険制度の実施にあたって、視覚障害者の特異性を理解し、要介護
認定やサービスなどが不利にならないような方策を要望、(5)視覚
障害者及びその家族が、長期療養を要する疾病にかかった際、医療と
福祉の間に苦しむことなく、同じ病院で質のよい安定した医療を受け
ることができるよう、打開策を要望、(6)視覚障害者が大会などの
公的行事に宿泊を伴って参加する場合の、ガイドヘルパー派遣の拡大
を要望。

 5.情報アンケート調査 青年協の協力で日盲連
 日盲連ではこの9月、青年協議会の協力を得て、情報系のアンケー
ト調査を実施する。これは、昨今のIT化時代、視覚障害者が将来も
コンピュータと関わりを持ち続けるため、現在、情報をどのような方
法で入手し、活用しているか、その実態を正確に調査し、日盲連が、
国の行う視覚障害者の情報政策にすばやく対応するため、また視覚障
害者から出されている各種の要望等を国に求める資料として使用する
ものである。
 アンケートの内容は、パソコンの使用状況(使用中、使用予定等)、
点字JBニュース、電話ナビ、IT講習、障害者バリアフリー化支援
事業について等、多岐にわたる。アンケート実施期間は、9月20日
から7日間。対象者は各団体11人で青年部長が人選。青年部長は必
ず記入する事になっている。100パーセントの回収をめざしている。
 福祉が措置制度から選択制度にかわる。この事は、個人が入手でき
る情報量が多い程、また情報スピードが速いほどその差がそのまま利
用者の格差となる可能性がある。国は健常者と障害者の間に情報格差
が出ないよう「IT政策」「障害者バリアフリー化支援事業」等、様
々な情報政策を実行中である。

 6.パソコン自習用CD 日盲連とNECで開発へ
 視覚障害者が自宅で繰り返し自習ができる「パソコン自習用CDソ
フト(基礎学習編)」の開発を進めている日本盲人会連合(笹川吉彦
会長)とNECのプロジェクトチームは7月30日、東京高田馬場の
日盲福祉センターで第1回の委員会を開催した。学識経験者としてメ
ンバーに加わっている国立リハビリテーションセンター障害福祉研究
部社会適応システム開発室の寺島彰室長と日本点字図書館の田中徹二
館長から、早速、同ソフトの開発目的の説明があり、スケジュールの
確認、ソフト開発概要などについて討議が行われた。
 この事業は昨年、日盲連とNECが平成13年度の助成事業として
テクノエイド協会に申請していたもので、本年4月、本事業の事業主
体をNECとする事で承認された。開発期間は2年間で、来年4月の
中間報告では、成果物の一部提出が求められている。急速に進歩する
IT社会の中、視覚障害者がスムースに社会参加するために必要なI
T学習をいかに行うか、問題はいくつもある。教育の基本となる視覚
障害者が必要とするコンピュータ操作マニュアルが少ないのもそのひ
とつ。画面の見えない視覚障害者がコンピュータ操作の知識を得よう
とする時、サポータの支援は必須だが、時間的、資金的な問題が横た
わっている。また、メーカーの電話サポートでは、画面中心の動作確
認に終始し、視覚障害者にとっては理解しにくい等の問題も指摘され
ている。
 このプロジェクトでは、視覚障害者が自宅で自習できるコンピュー
タ教育教材をいかに作るか検討を重ね、また情報機器操作を学習しよ
うとする目の不自由な高齢者にも配慮したパソコン自習用CDソフト
を平成14年度末までに、完成させ希望者に配布したいとしている。

 7.訃報
 日盲連顧問・相談役で元高知県視力障害者協会会長の伊藤栄氏が8
月7日、逝去された。85歳。葬儀は9日、高知市のベルモニー会館
でしめやかに行われた。喪主は妻の千代美さん。自宅は〒780-8
072高知市曙町1-14-9(電話0888-44-1733)。

 8.電話ナビ設置完了 全国58カ所地方実施機関
 日盲連が厚生労働省の委託をうけて全国の日盲連加盟団体、点字図
書館等に展開している“電話ナビゲーションシステム”の58番目の
開始式が7月25日、函館市と社団法人函館視力障害者福祉協議会
(岩波勝二理事長)の共催で、函館市社会福祉協議会に同市幹部、福
祉関係団体幹部及び役員等約30人が出席し行われた。日盲連からは
笹川吉彦会長代理として牧田克輔情報部長が出席、お祝いをのべた。
 主催者側である函館市の梶原洋一助役は、式典挨拶の中で「障害者
の情報発信の基地として、ボランティアのみなさんが中心となりこの
システムを有効活用して頂きたい」、また、函館視障協の岩波勝二理
事長は「函館市の強力な支援のもとIT化時代にふさわしい電話ナビ
ゲーションシステムが本日スタートした。視覚障害者の情報バリアを
少しでも解消するため大いに利用したい」と挨拶した。この式典の様
子は早速、地元NHKおよびFM局で放送された。また電話ナビシス
テムの詳細説明は翌26日の地元新聞で大きく紹介されていた。
 これで日盲連が平成12年度より実施してきた、電話ナビゲーショ
ンシステム設置は、函館市を最後にすべて完了した。当初の導入予定
より幾分時間がかかった大きな理由の1つに地方実施機関の運用費用
負担の問題がある。機器導入後、月2万円の運用費の目途が立たず、
システムの稼動開始が遅れた所、運用費用を自治体にお願いし議会の
承認を得るために多くの時間を要した所などもある。
 しかし、時代は大きく、また急速に変わってきた。特に、このIT
化社会、視覚障害者は晴眼者に比べて情報入手の手段が限られている。
今回のこのシステムが多くの視覚障害者に利用され、我こそ、情報化
時代に遅れまじと果敢に挑戦する人が現れてくる事を期待している。

 9.日盲連から4項目要望 小泉総理との懇談会
 「小泉総理との障害者施策に関する懇談会」が7月30日、東京・
永田町の総理官邸で開かれた。招かれたのは、日盲連をはじめ、日身
連、全日ろうなどの障害者団体の代表と障害を持った個人など22人。
うち、7人がそれぞれの立場で障害者の置かれている現状を説明。こ
れに対し政府側からは、2002年で終了する障害者プランを引き継
ぎ、「新障害者プラン」を作成すること、ハートビル法の努力目標を
義務化すること、IT機器を活用した障害者雇用を促進することなど
の方針が明らかにされた。ただ、発言できたのは7人だけだったので、
終了間際に笹川日盲連会長が手を挙げ「今日、発言できなかった代表
者に発言の場を与えるため、もう一度、懇談会を開いてほしい」と要
求する一幕もあった。
 懇談会には、政府側から小泉総理、福田内閣官房長官、坂口厚生労
働大臣、各省庁の副大臣ら9人が出席、これに対して、障害者側から
は、日盲連の笹川会長をはじめ、兒玉明日身連会長、板山賢治リハ協
副会長、八代英太衆議院議員がアジア太平洋障害者の10年最終年記
念フォーラム組織委員会委員長の立場で出席するなど、22人が出席
した。冒頭、小泉総理は挨拶で、「障害者の方にはご苦労が多いと思
うが、目に見えないところで努力している姿は健常者にも大きな励み
になっている。ノーマライゼーションの理念に基づいた環境を整備し、
バリアフリー社会を構築しなければならない」と強く訴えた。首相が
障害者から直接意見を聞くのは今回が初めて。しかし、懇談会の時間
は1時間しかなく、障害者側からの意見陳述も政府側からの指名で行
われ、発言できたのは出席した22人のうち7人だけだった。このた
め、前述の一幕になったものだ。
 なお、笹川会長が小泉総理大臣に文書で提出した要望事項の要旨は
次の通り。(1)障害者プランは平成14年度で終わるが、それに引
き続き、障害種別や特性を加味した新障害者プランの策定(2)視覚
障害者の就労(雇用)の促進と視覚障害アハキ師の権益擁護(3)視
力がなくても利用できるIT環境の整備、とくに音声機器の実用化と
指導員の養成(4)聖域なき構造改革は進めるべきだが、障害者団体
に委託している各種障害者向けサービス事業は後退させないよう特段
の配慮。

 10.参加者募集 マレーシアのマッサージセミナー
 第6回WBU東アジア・太平洋地域マッサージセミナーが今年の1
1月12日から15日まで、マレーシアのクアラルンプールで開かれ
る。代表団を派遣する日本盲人福祉委員会は、多くの方々の参加を呼
びかけている。セミナーのテーマは「プロとしての盲人マッサージ師
」。旅行の日程等は次の通り。
 会場:ワールドトレードセンター
 宿泊:パン・パシフィック・ホテル
 費用:1人17万円(登録料、航空運賃、宿泊及び食事代)
 日程:11月11日成田出発。12~13日開会式、全体会議、技
術講習会など。14日マラッカへの日帰り観光。15日全体会議、技
術講習会の後、さよならパーティー。16日成田帰着。
 申し込み締め切りは9月20日。問い合わせ先、申込書請求・送り
先は日本盲人会連合事務局・唐沢(電話03-3200-3439、
FAX03-3200-7755)。

 11.支援費支給制度を勉強 日盲連の指導者研修会
 日盲連(笹川吉彦会長)は8月17日、東京中央区晴海の東京ホテ
ル浦島で指導者研修会を開催、厚生労働省から講師を招き、「支援費
支給制度」について熱心に研修、加盟団体長等約120名の参加があ
った。講師は厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課支援費制
度施行準備室室長補佐の長田信一氏。支援費支給制度は福祉法の改正
で平成15年度から現在の措置制度から、選択制度に変わる。研修の
内容は現行の仕組み、新しい支援費制度の趣旨、支援費制度の内容等
多岐にわたった。

 12.盲人野球大会
 第1回全国障害者スポーツ大会が10月27日~29日、宮城県・
仙台市で開かれるが、同大会に出場するグランドソフトボールの代表
9チームが、それぞれ地区予選を勝ち抜き、次の通り決まった。
 岩手県(北海道・東北地区)、山梨県(関東地区)、三重県(北信
越・東海地区)、大阪府(近畿地区)、徳島県(中国・四国地区)、
鹿児島県と福岡市(九州地区)、宮城県と仙台市(全国大会開催地元
)。
全国障害者スポーツ大会は、これまで別々に開催されていた「全国
身体障害者スポーツ大会」と「全国知的障害者スポーツ大会」を統合
したもので、今回が第1回大会となる。

 13.第9回アハキ師国家試験合格者(省略)

 14.14年度予算の概算要求 障害者プランは7.6%増
 厚生労働省は8月28日、2002年度予算の概算要求をまとめ、
自民党厚生労働部会などに報告した。
 総額は今年度に比べ3.9%増の18兆7455億円。高齢化の進
展で当初、1兆円程度の伸びを想定していた社会保障関係費は、年末
の医療制度改革による医療費抑制などを見込み増加額を7千億円程度
に抑える。それでも伸び率は高く、一段の制度改革を求める声が出そ
うだ。
 社会保障関係費(施設費を除く)は17兆9445億円。このうち
最も金額が大きいのは医療費の国庫負担で7兆4783億円。今年度
に比べ3.8%増える。年金の国庫負担は5兆5170億円で3.3
%増。保育所の「待機児童ゼロ作戦」で児童の受け入れ数を5万人程
度増やすほか、保育所への送迎サービスをする駅前送迎保育ステーシ
ョンも拡充する。情報技術(IT)など7分野への「構造改革特別要
求」ではゲノム(全遺伝情報)医療の充実など401億円を要求する。
雇用の安全網(セーフティーネット)を拡充するため「就職支援特別
対策パッケージ」に2058億円を充てる。中高年のホワイトカラー
の離職者約7万人の職業訓練に取り組む。一方、最終年を迎える平成
14年度の障害者プラン推進概算要求額は3098億5800万円と
対前年度比7.6%増(前年度5.7%増)だった。
 主な新規概算要求は、精神障害者社会復帰対策の充実と、障害者生
活訓練・コミュニケーション支援等事業。同支援事業では、かねて日
盲連が要望していたパソコンボランティア養成・派遣事業及び、パソ
コンリサイクル事業を新規に創設。このほか、アジア太平洋障害者の
10年最終年記念事業の支援として4千万円要求されている。
 障害保健福祉関係予算の主な概算要求は次の通り。
 1.障害者プランの推進:(1)身体障害者福祉ホーム8600万
円を1億100万円に、(2)身体障害者通所授産施設50億750
0万円を52億5900万円に、(3)小規模作業所に対する助成
(在宅重度障害者通所援護事業費等)30億6400万円を29億3
200万円に、(4)市町村障害者生活支援事業17億4800万円
を22億2800万円に、(5)訪問介護(ホームヘルプサービス)
事業200億2500万円を211億4800万円に(ホームヘルパ
ーの増員、ホームヘルパー養成研修事業の実施)、(6)短期入所
(ショートステイ)事業35億4700万円を40億1600万円に、
(7)日帰り介護(デイサービス)事業92億3900万円を106
億6300万円に、(8)身体障害者療護施設457億5800万円
を489億200万円に、(9)市町村障害者社会参加促進事業24
億600万円を27億5600万円に(440カ所を510カ所に、
1カ所当たり事業費1500万円)
 2.障害者プラン関係以外の施策:(1)障害者ケアマネジメント
体制整備推進事業5億3100万円を4億9200万円に、(2)手
当等の給付(特別児童扶養手当及び特別障害者手当等)1121億4
700万円を1158億4900万円に、(3)障害者生活訓練・コ
ミュニケーション支援等事業12億4500万円を13億6500万
円に(ア.手話通訳の派遣、盲導犬の育成等、イ.障害者の情報バリ
アフリー推進のうち障害者情報バリアフリー化支援事業は継続、パソ
コンボランティア養成・派遣事業とパソコンリサイクル事業は新規、
ウ.盲ろう者向け通訳・介助員派遣施行事業)、(4)「障害者の明
るい暮らし」促進事業13億7千万円を13億7千万円に、(5)バ
リアフリーのまちづくり活動事業1億1500万円を1億1500万
円に、(6)高度情報通信福祉事業(身体障害者福祉促進事業委託費
の一部事業の組み替え等を図り、障害者のデジタル・ディバイドの是
正を推進、新規)1億5100万円、(7)国連・障害者の10年記
念施設運営委託費4億600万円を4億600万円に、(8)補装具
の給付170億600万円を176億1千万円に、(9)「アジア太
平洋障害者の10年」最終年記念事業の支援(新規)4千万円、(1
0)日常生活用具給付等事業24億7900万円を24億7900万
円に、(11)支援費制度の施行準備(新規)5億7200万円
 3.保健福祉施策と雇用就業施策の一体的推進:(1)障害者就業
・生活支援センター(仮称)による就業・生活支援の一体的推進(現
行のモデル事業25カ所を47カ所で実施)7100万円を1億27
00万円に、(2)施設外授産の活用による就職促進モデル事業83
00万円を8500万円に、(3)職場適応援助者(ジョブコーチ)
による就業支援事業の実施(職業安定局で要求)