愛盲時報 第187号(テキスト形式・全文)

2001年6月10日

 愛盲時報 第187号(平成13年6月10日発行)

1.2001年はバリアフリー元年 第54回全国盲人福祉大会
  参加、平等、自立を求めて 2500人がさいたま市に
 希望に満ちた夢多き21世紀幕開けのこの年、第54回全国盲人福
祉大会埼玉大会(日本盲人会連合、埼玉県視力障害者福祉協会共催)
が5月18日、埼玉県さいたま市の大宮ソニックシティ大ホールで2
500人の視覚障害者代表と関係者が集まり開かれた。会場には「視
覚障害者の唯一の適職を奪うな 鍼灸養成施設新増設絶対反対」「サ
ービスの選択と契約の権利を保障 負担増は絶対反対」「自立と社会
参加に 交通バリアフリー法の積極活用を」「乗り遅れるな 乗り遅
らせるな IT革命」の4つの大会スローガンが掲げられ、参加、平
等、自立を求めてあらゆる場でのバリアフリー化を目指して大会会場
は熱気にあふれた。
 式典では、埼玉県視障協の高野宗吉会長、土屋義彦埼玉県知事ほか
の歓迎の挨拶、厚生労働大臣、文部科学大臣の祝辞が述べられた。席
上、東川信夫さん(北海道視力障害者福祉連合会会長)ら24人と3
団体に対し、日盲連顕彰(副賞・村谷賞)による表彰が行われた。
 引き続き行われた大会議事では、笹川吉彦会長が「血と心のかよっ
た21世紀をつくるため全力を注ぎたい」と挨拶、合わせて前日の第
38回全国盲人代表者会議で採択された平成13年度の運動の基本方
針と8項目の運動方針を力強く提案、万雷の拍手で承認した。このあ
と、大会宣言及び決議を満場一致で採択、3日間の大会の幕を閉じた。
なお、来年平成14年度の第55回全国盲人福祉大会は滋賀県で開催
される。

2.おめでとう 日盲連顕彰
 5月18日の第54回全国盲人福祉埼玉大会で視覚障害者福祉に貢
献のあった方々を表彰する日盲連顕彰が行われた。今回は、礎賞4人、
青い鳥賞6人、パイオニア賞1人、光の泉賞13人、感謝状3団体の
24人と3団体。お喜びの方々は次の通り。(敬称略・順不同)
 礎賞(組織功労):東川信夫(北海道)、佐藤徳男(札幌市)、古
屋保(山梨県)、槇野勝信(大阪府)
 青い鳥賞(福祉、文化功労):桜井政太郎(岩手県)、茂木浩市
(群馬県)、長根清平(埼玉県)、川崎カヅ子(福井県)、深山武治
(鳥取県)、岡田八郎(香川県)
 パイオニア賞:福島智(東京都)
 光の泉賞(内助等功労):山本弘子(北海道)、阿曽裕子(福島県
)、野田君子(東京都)、小谷みな子(横浜市)、鴛田喜久栄(福井
県)、中村みよ子(名古屋市)、濱家タミ子(大阪市)、岩本良枝
(京都府)、安田浅子(山口県)、大西栄(愛媛県)、石渕美井子
(熊本県)、野村久子(鹿児島県)、藤井忍(東京都)
 感謝状:光村図書出版株式会社(教科書出版を通じて視覚障害者の
点字の啓蒙に寄与)、池野通建株式会社(音声標識ガイドラインシス
テムの研究開発普及)、埼玉県視力障害者福祉協会(第54回全国盲
人福祉大会共催)。

3.第54回全国盲人福祉大会決議
 1、鍼灸をあん摩師等法第19条に加え、法律で野放しの新・増設
を規制するよう要望する。また、無資格の医業類似行為者を法的に取
り締まりができるよう、手技療法師法として法制化するよう要望する。
 1、視覚障害者の外出を保障するため、ガイドヘルプサービスをは
っきり制度化させるなど、その見直しを図るよう要望する。
 1、障害基礎年金を、1級は月額10万円以上、2級は月額7万5
千円以上に引き上げるとともに、所得制限を大幅に緩和するよう、ま
た、税制を改正し、障害者の経済負担を軽減するよう、要望する。
 1、視覚障害者の移動の自由を保障するため、点・線ブロックや、
音声誘導システムを設置、特にホームからの転落事故防止のため、ホ
ームドアの導入など、安全設備の全国統一とその普及を図るとともに、
機器、設備の研究・開発に当たっては、利用当事者の意見を尊重され
るよう、要望する。
 1、視覚障害者が使用できるパソコン・ソフト及び周辺機器、墨字
文書読み上げ装置、色彩識別装置など、日常生活に不可欠な情報を得
るための機器を「重度障害者日常生活用具」に指定し、給付されるよ
う要望する。
 1、視覚障害者の情報バリアを解消するため、機器の開発、普及、
機器・ソフト購入のための助成、講習会の開催、指導者の養成など、
視覚障害者に配慮したIT機器の実現を要望する。
 1、支援費支給制度が導入される。サービスの充実はもとより、選
択、契約に当たって視覚障害者が不利となることのないよう、弱い立
場のものに十分配慮した制度を実現されるよう要望する。
 1、「障害者プラン~ノーマライゼーション7か年戦略~」は平成
14年度で終了する。IT革命を始めとする急激な時代の変化に対応
し、また、障害の種別、程度に即したきめ細かな数値目標を設定した
新たな障害者プランを立てられるよう要望する。
 1、全ての法律、制度から「目が見えない者」など、障害を理由と
した欠格条項の削除を要望する。
 1、点字の普及、点字による情報の充実を図るため、点字技能師
(仮称)を制度化されるよう、要望する。

4.埼玉大会宣言
 〝働く自由〟〝知る自由〟〝歩く自由〟―この3つの自由、「バリ
アフリー」を求めて、我々はここ、誕生したばかりのさいたま市に集
まった。
 時あたかも2001年、幕を開けた21世紀最初の年に、全国各地
の代表2千人余りが一堂に会し、第54回全国盲人福祉大会をかくも
盛大に開催し、21世紀を見据えて、飛躍的に発展していくための成
果を収めたことは大きな喜びである。
 埼玉県はまた、我々の先達、「群書類従」を編纂した塙保己一の出
身地でもあり、この地で、この日を迎えることのできたのは、埼玉県、
さいたま市をはじめ、県民、さいたま市民、そしてボランティアの方
々の一方ならぬ熱意とご親切のお陰と、感謝とお礼を申し上げる。
 さて、日本盲人会連合は結成以来50余年、日本の障害者福祉の先
駆的役割を担い、あらゆる場でのバリアフリーを目指して歩んできた。
だが、道はほど遠い。
 特に、「働くことがその人の社会的地位を高める」とまでいわれる
が、〝働く自由〟〝自立〟が優先課題であり、鋭意全力で取り組んで
いる。とはいえ、我々の適職として伝統を築いてきた「はり、きゅう」
も晴眼養成学校が、昨年の9校(定員630人)開校に続き、今年も
また16校(定員780人)が開校、さらに今後も〝雨後の筍〟のよ
うに開設が予定され、我々の権益が大きく侵されようとしている。我
々は強く関係団体に理解を求め、あはき師法の速やかな改正によって
限度なき増大を防ぐことが急務である。
 さらに、介護保険制度にマッサージ師が組み入れられたが、特別養
護老人ホームやディサービスセンターに機能回復訓練指導員として雇
用されるよう、運動を全国に広げていかなければならない。なお、は
り、きゅう、マッサージの健康保険取り扱い拡大を求めていくことは
いうまでもない。
 一方、福祉は、措置制度から契約制度(利用者負担、選択へ)と変わ
って行こうとしているが、その際、特に利用者負担が障害者の生活を
圧迫することのないよう、求めていかなければならない。併せて、障
害基礎年金の大幅増額を要求し、無年金者問題の解決に努めなければ
ならない。
 〝知る自由〟の確保もまた大切である。IT情報技術の急激な進歩
により視覚障害者の情報環境は飛躍的に進むと考えられるが、取り残
されないよう、視覚障害者用の機器、ソフトの研究開発と実用化に努
め、購入費に対する補助、利用するための講習などに努めていかなけ
ればならない。
 さらに、〝歩く自由〟を勝ち取るため、交通バリアフリー法の施行
により、移動システムの安全に努めて行くことは当然で、「音声」を
利用した全国統一の誘導システムの構築を推進して行く。
 ところで、行政が地方分権、地方移行している。これに対応して、
我々は市区町村単位の組織を強化し、地域住民の理解と協力を得て
「共に生きるまちづくり」の普及に努めて行く決意である。
以上、ここに宣言する。

5.21世紀を切り開こう!! 第38回全国盲人代表者会議
 平成12年度の決算を含む事業報告と平成13年度の運動方針、ま
た加盟団体からの提案を討議する第38回全国盲人代表者会議が埼玉
大会2日目の5月17日、全国から約350人の代表者が参加し、さ
いたま市の大宮ソニックシティ市民ホールで開かれた。「21世紀を
切り開く大会」(笹川吉彦日盲連会長)と位置付け、(1)組織の拡
大と活動の強化(2)社会福祉基礎構造改革への対応(3)IT社会
への対応(4)移動の強化(5)ガイドヘルパー制度の確立(6)職
業対策(7)障害者プランの終了への取り組み(8)教育の振興、の
8項目を柱とした平成13年度の運動方針を本部提案通り承認、平成
12年度の決算、事業報告も承認された。また、各団体から提出され
た42項目に及ぶ議案もすべて採択され、全体会議の後、生活、バリ
アフリー、職業の3分科会に分かれ、参加代表者によって討議された。
 生活分科会では、介護保険と福祉サービス、日常生活用具給付制度、
医療等、20の議案が提出され、介護保険制度と障害者施策が混同さ
れている問題、視覚障害者に対する介護認定基準の問題、病院で治療
を受けた際の投薬等に際し視覚障害者が確認できない場合の対応等、
直接生活に結びついた問題を討議。
 バリアフリー分科会では、情報化社会、ITに関わるバリアフリー
化等13の議案が提出され、情報社会の中で国が行うIT施策に視覚
障害者がどう対応すればよいか等、討議内容は多岐にわたった。特に、
最近急速に普及する携帯電話の液晶画面情報は視覚障害者にとって認
識が難しいため、画面表示情報には音声化を検討、推進するよう、国
とメーカーに働きかけてほしいとの要望や、駅、道路、公的建物等の
バリアフリー化は視覚障害者の安全移動保障の観点から国、自治体等
に対し早急な改善を望むとの強い要望も出た。
 職業分科会では9つの議案が提出されたが、あはき師法第19条に
いかにして鍼師、灸師を含めるかが議論の中心となった。本部執行部
からは、これまでの運動の経緯と7団体の状況説明があり、議論が相
次いだが、鍼灸師の急増を防ぐには鍼灸養成施設の新・増設を阻止す
ること、また法第19条に鍼灸包含を再確認し、今後これらの問題解
決に向かって地方組織団体では署名運動を始め、地元選出の国会議員
及び県市町村の議員に対し陳情を行うと同時に、中央では関係7団体
を含む他団体に対しても同様の働きかけを行うこととなった。

6.12年度事業報告等承認 日盲連の理事会と評議員会
 第54回全国盲人福祉大会初日の日盲連理事会では同大会に提案す
る議案の準備・進行について審議、また、評議員会では平成12年度
の事業報告、決算などを審議、いずれも本部提案通り承認された。
 事業報告では、福祉環境が大きく変わろうとする中、諸事業が計画
に沿って積極的に推進され、笹川新体制が順調な滑り出しとなったこ
と、また、日盲連が設置経営する第2種社会福祉事業が、当初の計画
通り実施終了したことが報告された。
 また、平成12年度の活動報告の中で、団体の支援強化が急務との
ことから、当面する課題に専門的に対処するため、総合企画審議会の
中に「あはき問題検討委員会」「視覚障害者のIT利用促進検討会」
「音響式信号機等検討委員会」の3委員会を設置し、その推進にあた
ったことも報告された。日盲連が行う4つの社会福祉事業、(1)組
織団体に対する連絡、助成(2)更生相談所の設置、経営(3)点字
図書館の設置、経営(4)点字出版所の設置、経営はいずれも順調に
推移した。
 また、視覚障害者に対する事業事項としては(1)福祉一般に関す
る調査、研究、改善普及、情報宣伝活動等(2)業職域拡大及び生業
の安定のための調査研究、改善、普及並びに医療保険取り扱い等(3)
国内及び海外関係、があるが、(2)に関しては、はり師、きゅう師
養成施設の乱立を防ぐべく運動を行ったが関係団体との足並みが揃わ
ず進展していないのが現状で、無資格者対策についても今後とも協議
を継続する事となった。また(3)については、昨年11月、メルボ
ルンで開催された第5回WBU総会に代表を派遣したこと等が報告さ
れた。
 次に、日盲連で委託を受けている事業では(1)録音図書製作(2)
ガイドヘルパーネットワーク(3)点字情報ネットワークがある。こ
の中で、厚生労働省の委託事業として実施している点字情報ネットワ
ーク事業は、開始されてから11年目。「点字JBニュース」は、土、
日、祝日を除く毎日発行、少しずつであるが読者は増えている。平成
12年度の記事本数は2208本で、その内、日盲連発を含む福祉関
連記事は458本となっている。
 その他、関連事項として、急速に進む情報社会の中、平成12年度
に国が予算化したIT基本法にからむIT講習会など国・自治体の政
策に視覚障害者自らが積極的に参加する必要があること、また日盲連
独自のIT対策として視覚障害者パソコン自習用CDソフトの作成を
メーカーと共同でテクノエイド協会に予算申請したことが報告された。

7.アハキ師の生業安定を 協議会代議員会 日盲連
 5月16日の日盲連アハキ協代議員会では、平成12年度事業報告、
同決算を執行部提案通り承認した。また、平成13年度の運動方針を
討議、視覚障害アハキ師の生業安定と権益擁護及び資質の向上、そし
て組織強化に向けて、さらに強力な運動を展開することなど、平成1
3年度の活動方針を含む事業計画、同予算を承認した。
 活動方針はいずれも前年度に引き続くもので(1)介護保険へのあ
マ指師参入運動(2)アハキ健保取扱い改善運動(3)無資格違法類
似業者一掃運動推進(4)法改正運動(第19条に鍼灸包含。手技療
法・鍼灸及び手技療法師・鍼灸師定義。法形態の整備等)推進(5)
視覚障害者が国試受験で不利とならない運動(6)学習運動(グラン
ドデザイン、学習資料提供、啓発活動等)強化(7)日マ組織強化運
動推進、の7項目。
 平成12年度の事業報告の中で関米一郎協議会長は、あはき師法第
19条にはり師、きゅう師を含む問題に触れ「日盲連として7団体と
の折衝は度々行っている。しかし問題解決への進展はない。未だに各
団体とも微妙な舵取りが続いている。日盲連としては今後とも会員か
らの知恵を拝借し、何らかの方法で早く解決の糸口をつかみたい」と
説明。これに対して代表委員の中から、方向転換するのではなく粘り
強い折衝を続けてほしいという意見や、日盲連会員の同意が必要では
あるが、視覚障害者のみの団体で問題解決の方法を見いだすことも選
択肢の1つとの意見も出た。
 また、笹川会長から「7団体の1つである全鍼師会の定期総会が先
日行われ、新会長に杉田久雄氏が就任した。日盲連としては早めに新
幹部と会い、従来からの考え方に変更があるのかどうかを確認したい」
との発言があった。今後の課題として委員の中から「今回のような大
きな問題に対し、新しい、また詳しい“生”の情報が地方には入って
こない。情報はできるだけすみやかに流してほしい。日盲連アハキ協、
日マ会とも、今まで以上に地方と接点を持つ事が大切、2つが一体と
なって技術の向上を目的とした講習会を地方で実施してほしい」との
要望もあった。

8.各種競技の普及を スポーツ連盟協 日盲連
 5月16日のスポーツ連盟協議会代表者会議では、平成12年度事
業報告、同決算を承認、視覚障害者スポーツの一層の普及・振興を図
ることを確認した。田辺建雄協議会長は「視覚障害者のスポーツは、
まだ十分とは言えない。今年度は、登録会員を増やす努力は当然とし
て、視覚障害者の参加の機会をいかに作るか、リーダーの養成も視野
に入れて検討し、社会参加促進の一助としたい」と挨拶した。
 平成12年度のスポーツ連盟協議会の登録状況は、58団体、23
81人で、平成11年度より172人減。各種目別登録者数は次の通
り(重複登録がある)。グランドソフトボール55団体、1228人。
視覚障害者卓球51団体、937人。フロアバレーボール29団体、
638人。
 また、組織強化及び登録の促進、研修会・講習会の開催、競技ルー
ルの研究など13年度事業計画案は執行部原案どおり採択、承認され
た。
 平成13年度の主なスポーツ行事
 5月~6月:第1回全国障害者スポーツ大会グランドソフトボール
地区予選(全国7ブロックで)。9月22日~24日:第21回全国
視覚障害者社会人卓球大会(神奈川県座間市)。10月6日~8日:
第2回全日本グランドソフトボール選手権大会(愛知県一宮市)。1
0月27日~29日:第1回全国障害者スポーツ大会グランドソフト
ボール全国大会(宮城県・仙台市)。11月4日:第16回全日本視
覚障害者柔道大会(共催、東京都)。11月23日~25日:第8回
全国フロアバレーボール大会(岡山市)

9.NPO法人に 山形県視障協
 山形県視力障害者協会(渡辺敏蔵会長)は5月8日付けでNPO法
人格(特定非営利活動法人)を取得、合わせて名称を「山形県視覚障
害者福祉協会」と改めた。
 同協会はそれまで任意団体。社団法人の取得を目指したが、審査が
厳しいことなどから、社団法人のミニ版ともいわれるNPO法人を取
得したもので、同協会のさらなる活動が期待される。
 なお、日盲連加盟団体でいまだ法人格を持っていない組織が9団体
あり、法人格取得に苦慮しているこれらの団体にひとつの法人格取得
例を示したケースとして注目される。

10.人事
 *厚生労働省の障害者団体の窓口である障害保健福祉部企画課社会
参加推進室長に4月1日付で、片石修三前保護課長補佐が就任した。
なお、吉田秀博社会参加推進室長は監査指導課長に栄転した。
 *静岡県視覚障害者協会の役員改選で、23年間、同協会会長を務
めた萩原善次郎氏(70)が勇退し、4月1日付で松下信雄氏(57)
が新会長に就任した。
 *愛媛県視覚障害者協会の前会長菅正起氏の死去に伴い、4月1日
付で楠本光男氏(51)が新会長に就任した。菅氏には従6位勲5等
瑞宝章(死後叙勲)が贈られた。
 *富山県視覚障害者協会の役員改選に伴い、前会長田島豊秋氏(7
9)が勇退、新会長に二口信幸氏(64)が4月1日付で就任した。

11.鍼灸科新増設反対 北海道で総決起集会
 「無秩序な鍼師、灸師養成施設の新・増設反対連絡会 全道総決起
集会」が6月3日、札幌市内の北農健保会館で開かれた。札幌をはじ
め、函館、小樽、旭川など7地区の日盲連、日マ会、全鍼師会などの
代表約50人が集まり、会の名称を前記の通り決め、代表に北海道鍼
灸マッサージ師会の加藤力治会長を当てた。
 北海道では、昨年、新・増設各1校づつが認められ、そして来年の
4月開校を目指して2校から申請が出されており、すでに飽和状態、
このため総決起集会では次のアピールを採択した。
 「国民の鍼灸マッサージへの関心の高まりを背景に全国で養成施設
の新・増設申請が出されているが、このまま放置すれば視覚障害者の
唯一の自立手段ともいえる鍼灸マッサージの経営環境が悪化し、晴眼
業者も含めた業界そのものの危機を招きかねない。
 良好な治療環境確立のため、加盟団体の創意工夫と幅広い道民の支
援を力に壮大な運動を展開することを決意する」。

12.歩きやすい道のガイドライン作り 懇談会発足
 障害者が歩きやすい道路はどうあるべきかを検討する国土交通省の
「道路空間のユニバーサルデザイン懇談会」(座長・久保田尚埼玉大
助教授)の第1回が4月25日、東京・九段の九段会館で開かれた。
 昨年9月施行された交通バリアフリー法(高齢者、身体障害者等の
公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律)における
道路構造基準の周知を図るためのガイドライン作りを目的として開か
れたもので、日盲連からは笹川吉彦会長(代理・牧田克輔情報部長)
が出席した。
 なお、メンバーは24人で構成され、障害者団体としては日盲連の
ほか、日身連、ろうあ連盟、全国脊髄損傷者連合会が委員を送ってい
る。
 同懇談会で検討されるガイドラインの内容は(1)歩道と車道との
段差切り下げ(2)誘導ブロックの敷き方(3)案内板標識の音声化
(4)エレベーター、エスカレーター等を利用した立体横断施設の在
り方(5)路面電車やバス停での案内の仕方などで、今年度中にこの
ガイドラインをまとめる予定。
 日盲連からは、歩道と車道の段差で2cmを確保すること、点ブロ
ック・線ブロックで誘導するほか、点字や音声案内、とくに音声案内
の充実を図ること、階段の段鼻の明示、さらにそれぞれの基準が全国
的に標準化されることなどが強く要望された。
 ただ、懇談会では歩道と車道の段差2cmが1973年(昭和48
年)に申し合わされているが、科学的根拠があるのかどうか、懇談会
として調査する必要はないかなどの意見が出されていたが、日盲連か
らは段差に行きつくまでの歩道の勾配と点・線ブロックを併せて視覚
障害者が判断して歩いており、絶対に段差2cmを守ってほしいと、
要望していた。
 次回は8月の予定。

13.視覚障害者もエスカレーター利用を JR目白駅実地点検
 日盲連の笹川吉彦会長と会員の代表ら5人が、5月28日、駅のプ
ラットホームと駅舎を結ぶエスカレータに視覚障害者用誘導ブロック
が敷設されているJR東京・山手線の目白駅を実地点検、改めて、視
覚障害者がエスカレータを利用できるように全国各駅で設備すること
を強くJRに申し入れた。
 目白駅では最寄りの筑波大附属盲学校や付近の視覚障害者の要望を
受けてホームと駅舎間の上りのエスカレータに誘導ブロックと手すり
を敷設した。
 ところが「法律のガイドラインでは視覚障害者は階段に誘導し、エ
スカレータには誘導しないことになっている」ことを理由に国土交通
省の担当者から取り外しを求められていた。本当にエスカレータが視
覚障害者にとって危険なのかどうかを実地に点検したものだ。
 笹川会長ら5人は異口同音に「常識となっているエスカレータを視
覚障害者が利用できないのは時代錯誤だ。早急にガイドラインを見直
し、利用できるようにしてほしい」と訴えた。
 具体的には点・線ブロックの敷設、手すりの点字表示、そして音声
案内で、これらを総合的に設備してほしいと申し入れた。
 なお、日盲連は5月31日にも目白駅を実地点検した。

14.周辺機器購入実施要項 情報バリアフリー
 視覚障害者等が利用する専用パソコンやソフト、周辺機器の購入費
用を、国と自治体が助成する「情報バリアフリー化支援事業」に平成
13年度予算で10億円が計上されているが、この事業の実施が決ま
り、厚生労働省(障害保健福祉部)は3月30日付で各都道府県知事
及び政令指定都市市長あてに文書「障害者生活訓練・コミュニケーシ
ョン支援等事業の実施について」で通知した。
 それによると、助成金額は機器等の購入に直接要した費用の3分の
2以内、ただし10万円が限度で、制度の利用は1個人1回限り。実
施主体は市町村となっている。
 この支援事業の利用を希望する場合は、市町村の障害福祉部又は総
務部に直接問合せ、申し込むことになる。現在、パソコンを所有して
いなくても申し込みは可能だ。

15.パソボラ育成に本腰 総務省研究会が提言
 高齢者や障害者がもっとインターネットを利用できるよう、パソコ
ンボランティアなど支援する人材を育成し、シニアネットなどと併せ
て全国的なネットワークを作るべきだとする提言が、総務省の研究会
でまとまった。
 提言をまとめたのは障害者団体の代表や社会福祉の専門家などで作
る総務省の「高齢者・障害者の情報通信利用を促進する非営利活動の
支援等に関する研究会」で、5月30日、片山総務大臣に報告書を手
渡した。
 日盲連からは笹川吉彦会長が同研究会のメンバーに加わり、パソコ
ン操作を視覚障害者に教えてくれる人材の養成と、その全国的なネッ
トワーク作りの必要性を強く訴えていた。報告書によると、インター
ネットを利用しようという高齢者や障害者を支援する活動は最近始ま
っているが、教える人材が各地で不足しているうえ、支援グループど
うしで横のつながりも十分取られていないことが大きな課題になって
いる。
 このため報告書では、支援する能力を持つ人を育成し認定する新た
な資格制度を作り人材を確保することや、支援グループどうしをネッ
トワーク化して全国的な非営利組織を作り、活動を広げるなどの対策
が必要だとしている。
 提言を受けた総務省では、全国の支援活動を紹介するホームページ
作りや新たな制度の検討を早急に始めるとしている。

16.WBUAP役員会 日本で開催
 東アジア・太平洋地域(WBUAP)の新役員による第1回の役員
会が4月23、24の両日、東京・竹橋のKKRホテルで開かれ、今
後の同地域会議の進め方などについて検討が行われた。
 WBUAP会長のクワ・チン・ホック氏(シンガポール)をはじめ、
村谷昌弘日盲委理事長、モンティアン・ブンタン氏(タイ)の両副会
長等、新役員が顔を揃えた。
 WBU東アジア地区は、昨年11月より、活動エリアが拡大され、
加盟国は20カ国になったことから同地域の活動をスムーズに行うた
め、規約の作成と具体的な行動計画(案)の作成が急がれていた。
 なお、WBUAP地域会議総会は今年9月下旬に、タイのバンコッ
クで予定されており、検討された規約および行動計画はこの総会に提
案される。

17.第27回全国盲人文芸大会作品募集
 日盲連は厚生省、文化庁などの後援で今年も全国盲人文芸大会を実
施、その作品を次の要領で募集している。
 作品の種類:「短歌」「俳句」「川柳」「随想・随筆」の4部門で
自作、未発表の作品。
 応募資格:日盲連組織団体会員であること。
 応募方法:短歌、俳句、川柳は1人3首、または3句以内、随想・
随筆は点字で32マス250行以内(墨字は400字詰め原稿用紙1
0枚以内)。川柳の課題は「選挙」と「バリアフリー」。
 書き方:応募用紙は部門ごとに別々の用紙を用い、1行目に部門、
2行目に住所、氏名、そして次の行から作品。なお、墨字版・点字版
作品集に掲載する際の正確を期するため、点字で応募する場合は、固
有名詞等にできるだけ墨字(漢字)を書き添え、墨字で応募する場合
は漢字にふりがなをつけること。
 参加料:短歌、俳句、川柳は1部門1千円、随想・随筆は1500
円、2部門以上はそれぞれ加算し、現金書留か小為替又は切手で応募
作品に同封する。郵便振替の場合は「文芸大会参加料」と必ず明記す
る。
 締切り:8月31日(当日消印有効)。
 入選者発表:日盲連機関誌「点字日本」、機関テープ「日盲連アワ
ー」の11月号で発表。
 送り先・問い合せ先:〒169-8664、東京都新宿区高田馬場
1-10-33、日盲連文芸係(電話03-3200-0011、直
通03-3200-3439、郵便振替00170-9-48326
)。

18.61項目を国に要望 日盲連埼玉大会決議
 日盲連(笹川吉彦会長)は6月1日、前日の総合企画審議会、理事
会でまとめた埼玉大会の要望61項目を中央省庁に陳情した。陳情団
は4班に分かれ、厚生労働省、総務省、国土交通省などの各省を訪ね、
それぞれの要望が来年度(平成14年度)予算に盛り込まれるよう、
強く要望した。陳情した61項目の主な内容は次の通り。
 内閣府:(1)キメ細かな新障害者プランの策定(2)欠格条項の
見直し。
 警察庁:(1)誘導ブロック上の放置自転車などの徹底撤去(2)
利用当事者の意見を取り入れた音響式信号機の全国統一。なお、今普
及している電波式の信号機が望ましい(3)カイロ等無資格業者の取
締り強化。
 総務省:(1)市町村障害者施策推進協議会の設置を義務付け、そ
の委員に障害種別の代表を加え、キメ細かな対策を立案(2)交通バ
リアフリー法の運用に当たっては、点・線ブロックと音響・音声誘導
を併用(3)視覚障害者の情報バリアを解消するため、機器の開発・
普及、購入のための助成、講習会の開催、指導者の養成などを実施
(4)住民税の特別障害者控除、障害者控除の大幅引き上げ(5)公
職選挙法を改正して、点字で選挙公報の発行(6)テレビの解説放送
の充実。併せて、緊急字幕放送や外国語音声の日本語字幕の音声化
(7)個人相互間の盲人用録音図書の郵送料無料化(8)IT化社会
に対応した視覚障害者用情報通信技術の開発・実用化。
 厚生労働省:(1)支援費支給制度実施に当たっては、サービスの
充実はもとより、選択契約で視覚障害者が不利とならないよう配慮
(2)障害基礎年金1級は月額10万円以上、同2級は7万5千円以
上に引き上げ、高齢者のための特別障害者手当の創設(3)無年金者
の救済(4)ホームヘルパー、ガイドヘルパーを明確に制度化し、介
護サービスの拡充(5)介護保険法による要介護認定に当たっては、
視覚障害者の特性に配慮(6)介護保険と障害者プランの整合性を図
り、サービスが受けやすい体制づくり(7)補装具、日常生活用具の
給付品目の拡大、例えば、パソコン、同周辺機器、ソフトなど(8)
点字図書給付事業の単独化とその充実(9)点字技能士の制度化(1
0)点字情報ネットワークの事業「点字JBニュース」「電話ナビゲ
ーションシステム」端末器設置の施設に対して運用資金の補助(11)
視覚障害者の移動を保障するため、点・線ブロック、段差2cm切り
下げ、音響・音声誘導の徹底(12)歩行訓練士の制度化(13)生
活福祉資金の金利引き下げ(14)晴眼養成施設の「はりきゅう科」
新・増設をアハキ師法第19条を改正し規制(15)ヘルスキーパー
や特養老人ホームの機能回復訓練指導員に視覚障害者の優先雇用(1
6)介護保険、介護サービスにあん摩マッサージ指圧、はり、きゅう
を参入(17)無資格者を一掃するため、手技療法師制度の実現(1
8)一般雇用が困難な視覚障害者に対する授産所、福祉工場等の設置
(34カ所)(19)大企業の特殊子会社の設置(109カ所)(2
0)就労支援事業の充実(21)就労促進のためのパソコン訓練実施
(22)キメ細かな就労実態調査を行い、雇用・就労の拡充。
 文部科学省:(1)筑波技術短大の4年制大学昇格(2)盲学校の
理療科教育の充実(3)一般小・中学校での福祉教育の充実(4)総
合教育を進めるための点字の教科書づくり、教材づくりなどの環境整
備。
 国土交通省:(1)新幹線特急料金、航空運賃の5割引(2)駅舎
ではエスカレーターが利用できるよう、点・線ブロック、点字表示に
加えて、音響・音声誘導を全国統一で徹底(3)ホームからの転落事
故防止のため、ホームドア、ホーム柵の必置(4)ホームの警告ブロ
ックの改善と人的な介助体制づくり(5)弱視者のため、階段の段鼻
の識別徹底(6)バス停での行き先案内等を音声で明示(7)ハート
ビル法の100%実施と既設建築物への適用拡大(8)歩道と車道の
段差2cmを徹底(9)地方の街づくり条例の基準全国統一(10)
点・線ブロックの色は黄色で統一(11)触知案内板等の全国標準化。
 経済産業省:(1)家庭電化製品、乗物の自動券売機、現金自動預
け入れ支払い機、ICカード等が視力がなくても使えるように改良・
改善(2)情報バリアフリー推進のため、操作が簡単で廉価な機器の
開発・実用化(3)すべての情報機器は音声で操作可能に(4)点・
線ブロック、音響式信号機等のJIS規格化(5)電子投票機器の開
発・実用化(6)IT社会に対応するため、視覚障害者が利用できる
機器、ソフトの研究開発、購入費補助、利用講習会開催、指導者の養
成など情報環境の充実。
 財務省:(1)障害者プラン予算の全額確保(2)所得税の障害者
控除引き上げ(3)障害者用日常生活用具の消費税非課税(4)固定
資産税、相続税、贈与税の非課税(5)ATMの音声化。