愛盲時報 第200号(テキスト形式・全文)

2004年1月1日

   愛盲時報 第200号(平成16年1月1日)

 1.新春メッセージ 支援費制度より安定的に
 厚生労働大臣 坂ロ 力
 皆さん、明けましておめでとうございます。
 新年を迎えるに当たりまして、平素より障害保健福祉行政の円滑な
推進に格別の御支援を頂いておりますことに心からお礼を申し上げた
いと思います。
 昨年は、障害保健福祉行政において大きな転機となった年でありま
した。
 まず4月から、新しい「障害者基本計画」と「新障害者プラン」が
始まりました。「国民誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合う共生
社会」の実現を目指しまして、「新障害者プラン」では、情報バリア
フリー化の推進などの重点施策を定めております。
 同じく4月には、従来の措置制度を改め、障害者の方々が福祉サー
ビスを自ら選択し、利用する仕組みであります支援費制度が始まりま
した。これによりまして、福祉サービスの利用が進んでおり、概ね順
調に施行されていると思っております。今まで地域的に進んで、地域
によりましては遅れておりました障害者の施策が全国一律に行われる
ようになったと思っております。
 また、10月には「身体障害者補助犬法」が完全施行されまして、
視覚障害者の方々が、ホテルやレストランなど不特定多数の方が使い
ます民間施設を利用する場合にも盲導犬を同伴できるようになりまし
た。これによりまして、身体障害者の方々の自立及び社会参加の一層
の促進が期待されているところでございます。
 まだまだそうは言いますものの、ところによりましては、或いは又
施設によりましては、十分に理解をされていないところもありますけ
れども、これから全国すべての地域そして施設で、このことが十分に
理解されるように私達もより積極的に努めたいと思っております。
 本年は、昨年のこれらの成果を踏まえまして、障害保健福祉行政を
一層推進していくことが必要であると思っております。
 支援費制度につきましては、引き続きまして、制度の円滑な実施に
努めますとともに、障害者自らがサービスを選択して利用するという
制度の理念に則りまして、より安定的かつ効率的な制度となるよう更
に検討を進めてまいりたいと思います。
 また、障害者の方々が安心して地域で生活できるよう、在宅サービ
スを充実することが重要であります。「新障害者プラン」に基づきま
して、計画的かつ着実にサービス提供基盤の整備に取り組んでまいり
たいと思います。
 昨年は、身体障害者補助犬を伴った宿泊が断られるというような事
例もありましたけれども、今後はこのようなことが起こらないように
して行きたいと思っております。
 また、本年9月には、4年に1度のパラリンピック夏季大会がアテ
ネにおいて開催されることになります。我が国の選手が、世界の大舞
台で素晴らしい技と力を発揮して、感動と勇気を与えてくれるものと
期待を致しております。厚生労働省としましても、パラリンピック夏
季大会の成功に向けて努力をしたいと思います。
 最後になりますけれども、国民誰もが同等に参加、あるいは参画で
きる社会を目指しまして、引き続き障害保健福祉行政の推進に全力で
取り組んでまいる所存でございます。本年も、皆さんの一層の御支援
をお願いを申し上げたいと思います。本年1年の皆さん方のご多幸を
お祈りを申し上げております。

 2.平成16年度福祉関係予算案 障害保健福祉関係4.2%増で
6941.6億円
 平成16年度予算の政府案が12月24日、閣議決定された。年金
の物価スライド実施や課税強化、生活保護の引き下げなど、高齢者や
弱者にとって厳しい内容になった。
 年金は、消費者物価にあわせて給付額を変動する物価スライドを、
15年度に続いて適用。1月に確定する15年の下落分(マイナス0.
2~0.3%程度)を反映させる。児童扶養手当や各種福祉手当も同
様に物価スライドを適用する。
 厚生労働省の障害保健福祉関係予算は対前年度比4.2%増の69
41億6400万円、障害者雇用施策関係予算は6.5%増の184
億円が計上されている。
 主な身体障害者関連項目の平成16年度予算案は次の通り。
 【障害保健福祉関係】
 1、重点施策実施五か年計画(新障害者プラン)の推進:(1)訪
問介護(ホームヘルプサービス)事業291億1300万円を356
億6300万円に、(2)短期入所(ショートステイ)事業46億1
400万円を50億4300万円に、(3)日帰り介護(デイサービ
ス)事業130億2400万円を129億4800万円に、(4)障
害者ケアマネジメント体制支援事業1億4500万円を1億4400
万円に、(5)身体障害者福祉ホーム1億600万円を1億800万
円に、(6)身体障害者通所授産施設51億5300万円を61億2
600万円に、(7)小規模通所授産施設35億400万円を41億
5500万円に、(8)小規模作業所に対する助成27億5800万
円を24億8100万円に、(9)障害者就業・生活支援センター事
業5億6700万円を8億1700万円に、(10)施設外授産の活
用による就職促進事業を障害者自立支援・社会参加総合推進事業にメ
ニュー化。
 2、支援費制度の着実な実施:(1)支援費制度の着実な実施32
12億6700万円を3473億600万円に、(2)支援費制度施
行に係る事務の円滑化等の支援12億7300万円を5億7800万
円に、(一部を障害者自立支援・社会参加総合推進事業にメニュー化)
、(3)新規に支援費支給決定事務の適正化を図るための巡回指導事
業の実施と障害者地域生活推進特別モデル事業(障害者自立支援・社
会参加総合推進事業にメニュー化)、(4)新規に支援費事業経営実
態調査事業4千万円。
 3、障害者の社会参加の促進:(1)障害者自立支援・社会参加総
合推進事業(社会参加と自立支援の一体的な事業の推進、障害者IT
総合推進事業によるITを活用した情報バリアフリーの推進、身体障
害者補助犬の育成)48億円、(2)障害者スポーツ・文化芸術活動
振興事業9600万円(前年度と同額)、(3)身体障害者福祉促進
事業委託費(声の図書のCD化、インターネットを活用した情報提供
の導入)5億7500万円を5億1500万円に、(4)高度情報通
信福祉事業1億5千万円を1億4900万円に。
 4、その他の施策:(1)手当等の給付(特別児童扶養手当及び特
別障害者手当等)1193億4300万円を1211億8100万円
に、(平成15年の消費者物価下落分の額の改定を行う、0.2%の
見込み)(2)補装具の給付184億7100万円を178億720
0万円に、(3)日常生活用具給付等事業21億4100万円を22
億500万円に(視覚障害者用ポータブルレコーダーの追加)、(4)
障害関連研究経費(仮称、障害保健福祉総合研究経費と感覚器障害研
究経費を統合)8億5300万円、(5)補助犬トレーナー育成研修
事業等の実施800万円を1300万円に。
 【障害者雇用施策関係】
 1、雇用と福祉の連携による重度障害者対策の推進:(1)障害者
就業・生活支援センターの拡充による就業・生活の一体的支援の推進
4億4200万円を6億9500万円に。
 2、障害者の雇用機会の拡大:(1)障害者試行雇用事業の拡大4
億8千万円を6億3千万円に、(2)職場適応援助者(ジョブコーチ)
による人的支援事業の推進20億1700万円を18億7300万円
に、(3)求職者情報のインターネットによる提供(新規)8千万円、
(4)障害者の再就職支援の推進4億2200万円を5億1600万
円に、(5)ITを活用した重度障害者の職業自立の推進7700万
円を8700万円に、(6)当事者団体と連携した障害者の職業自立
等啓発事業の実施3600万円を3200万円に。
 3、多様かつ効果的な障害者職業能力開発の推進:(1)公共職業
能力開発施設における障害者訓練の拡充45億9100万円を52億
9600万円に、(2)多様なニーズに対応した委託訓練の実施(新
規)11億3千万円、(3)IT技術付与のための遠隔教育の推進
(新規)3200万円、(4)障害者の職域拡大のための訓練カリキ
ュラムの開発(新規)100万円。

 3.謹賀新年
 年頭のごあいさつ
    日盲連会長 笹川吉彦
 新年明けましておめでとうございます。皆様お元気で平成16年、
2004年の初春をお迎えのことと、心からお喜び申し上げます。
 昨年は、国際的にはイラク戦争やSARS(サーズ)の大流行など
混乱に明け暮れ、一方、国内的には冷夏による農作物の不作や風水害、
さらには東北、北海道の地震と大荒れの1年でした。本年がすべての
人々にとって、平和で進歩のある年であるよう願って止みません。
 ところで日盲連は、社会福祉法や身体障害者福祉法の改正に伴い定
款改正を行い、本年から新たな一歩を踏み出すことになりましたが、
55年間にわたって培ってきた、全国組織としての本質を失うことな
く、一層団結を強化し、障害者福祉の増進に尽力しなければならない
と、決意を新たにしている所です。
 本年、日盲連が取り組むべき課題の第1は、昨年の第156通常国
会で、各団体の懸命なご努力を頂いた、はり師きゅう師養成施設の新
増設阻止に関する、衆議院議長宛の請願が保留となった問題を、再度
次期通常国会に提出し、その解決を図る事です。
 前回は257通の請願書が提出、受理されましたが、今回はそれを
上回るだけの請願書を衆議院議長宛に提出し、480名の衆議院議員
全員に、問題意識を持ってもらわなければと考えております。皆様の
一層のご理解とご支援を、切にお願い申し上げます。
 課題の第2は、昨年4月にスタートした支援費問題です。日盲連に
はこれまで、数々の苦情や要望が寄せられており、お世辞にも措置制
度より良くなったとは言えない状況です。検討会の場では視覚障害者
の立場から問題点を指摘し、改善を求めていますが、厚生労働省や一
部の障害者団体は、順調に進行し、定着しつつあるとの評価をしてい
ます。障害の特性によるものと思われますが、日盲連は視覚障害者の
社会参加を後退させないという立場から、早期改善を求めていく方針
です。
 課題の第3は、就労問題です。新障害者プランでは雇用の促進を打
ち出していますが、現実の問題として重度視覚障害者の雇用への道は、
ほとんど開かれていません。そうした中で唯一期待できるのは、特別
養護老人ホームにおける機能訓練指導員としての道です。本年は関係
方面に強力に働きかけ、安定した職場として、1人でも多く就労でき
るよう万全を期すと共に、新たな分野の開拓にも努力致します。
 課題の第4は、日盲連運動の拠点、日盲福祉センターの移転問題で
す。故村谷名誉会長から引き継いだ最大の課題で、何とか早期に目処
をつけなければと候補地を探しておりました所、現在地から300メ
ートル程の所に、今の敷地の倍以上250坪程の土地が見つかり、購
入致しました。1日も早く建設に着手したいと考えておりますので、
ご支援の程よろしくお願い致します。
 年頭に当たり、皆様のご健康とご多幸を、ご祈念申し上げます。

 3猿の教えは、封建思想のなごり
   日盲連副会長 齊藤 績
 私は、日盲連副会長の末席を汚している、札幌の齊藤です。昨年中
は公私にわたり、何かとお世話にあいなり、心から感謝いたしており
ます。本年も昨年同様宜しくお願いいたします。
 ところで、今年の干支は申とか?昔は、「見ざる、聞かざる、言わ
ざる」と言って、汚い物を見ても、見ないふりをする。また、嫌な事
を聞いても聞かないふりをする。この考え方は、封建時代からのなご
りかと思うのです。しかし、それでは物事は進歩しないと思うのです。
ですから、批判の目を養い適切な判断力を身につけ、ここぞと言う時
には積極的に発言し、改革に努める必要があると思うのです。
 この事は、我等日盲連についても同じことが言えると思うのです。
そのようにしてこそ日盲連は、発展・進歩・充実すること確実です。
経済情勢の厳しさは、日盲連にとっても同じことで、連続赤字決算を
強いられるなど、台所は火の車です。この苦境を会員の力により、乗
り切らなければならないと思っております。
 昨年の日盲連は、現職の副会長である猪俣氏を失ったり、私達にと
って最も重大な職業問題も思うようには行かなかったりの年でしたが、
今年こそは、いくらかなりとも上向きになるよう、会員皆の力を結集
されますよう願ってやみません。
 今年が、皆様にとりまして、最高の年になる事をお祈りいたし、私
の年頭のご挨拶とさせていただきます。

 あはき請願採択へ今こそ団結
   日盲連副会長 田代浩司
 日盲連副会長田代浩司です。
 全国日盲連会員の皆様、2004年、平成16年、謹んで新春のお
喜び申し上げます。日盲連も結成以来57年目を迎えることとなりま
した。常に日本の視覚障害者の福祉運動の中心に立ち、がんばってこ
られた先人達に深く敬意を表する次第であります。
 しかしながら、ここに来て社会福祉基礎構造改革が唱えられ、介護
保険、支援費制度の導入は、利用者サイドの改革とは名ばかりで、私
達視覚障害者にとって問題点も多く、必ずしも公的扶助が向上したと
は言い切れません。
 今、日盲連は全国の会員が一致団結、一丸となり当面の諸問題の解
決に当たらなければならない、最も重要な時期なのです。
 全国的にも会員の高齢化や組織力の低下は、やむを得ない事実であ
ります。とすれば、私達に続く後輩達のためにも、禍根を残さないよ
う危機感を持って、目標達成のため努力する必要があると思います。
 なんと言っても、伝統的に視覚障害者が守ってきた、あはきを守ら
なければなりません。とかく日盲連の運動の展開に、批判があるよう
ですが、結論が出る前に色々言わず、やるだけやってそれがだめなら、
また別の運動の仕方を考えれば良いと思います。法19条の改正が遅
きに失し、意味が無いように言う人もありますが、それは過去の歴史
を考えてみても、あんまマッサージの養成施設が抑制できたことは明
らかです。
 衆議院での請願採択を成し遂げ、まず法改正の一段階の達成に努力
しようではありませんか。

 4.日盲連理事会・評議員会等 正副会長選任方法等協議 日盲セ
ンター移転、あはき問題も
 日本盲人会連合(笹川吉彦会長)は12月4日、東京・高田馬場の
日盲福祉センターで正副会長会を開き、定款改正に伴う施行細則のう
ち一番問題となる正副会長の選任方法等について協議、総合企画審議
会への対応を話し合った。
 引き続き東京都盲人福祉センターで開かれた総合企画審議会では、
定款改正に至る経過について疑義が出され激論が交わされたが、最終
的には続いて行われる理事会で具体案をまとめることを前提に、選挙
管理委員会の設置等について答申することとなった。
 理事会では臨時評議員会に提出する案件について、総合企画審議会
からの答申を受け、評議員会で選任する理事の中に正副会長候補を含
むこととし、そのための選挙管理規定を整備、3月に予定している役
員改選に備えることとなった。
 また、日盲福祉センター移転用地の購入について承認、建物撤去の
ための費用捻出についても会長に一任することを決定した。
 あはき問題については、桜井俊二あはき協議会長代行から、11月
21日に開かれたあはき協小委員会の決定に基づき、1月に開催予定
の通常国会に向け再度提出する衆議院議長宛のあん摩師等法第19条
改正請願について詳細な報告があり、了承された。
 翌5日は、東京・永田町の衆議院第1議員会館会議室で指導者研修
会と臨時評議員会が開催された。
 指導者研修会では厚生労働省の担当者から、社会福祉法、身体障害
者福祉法の改正に伴う定款改正準則の説明があり、問題点についての
質疑応答が活発に行われた。
 引き続き開かれた臨時評議員会では、定款改正に伴う施行細則のう
ち、とりあえず正副会長候補の選任に関する規定を、齊藤績・総合企
画審議会会長のもとで、1月中にまとめることとし、その他について
は3月に開かれる定期評議員会に提案する事になった。
 また、日盲福祉センターの移転用地購入、建物の撤去費用の取り扱
い、用地購入に伴う定款の一部改正については、理事会の決定通り了
承された。

 5.支援費制度の予算不足とりあえず解消 16年度以降は見通し
立たず
 平成15年度予算で大幅な赤字を生ずる恐れのあった支援費につい
て、厚生労働省と障害者団体の話し合いが12月10日、東京・霞が
関の同省内で開かれたが、席上、社会援護局障害保健福祉部障害福祉
課の高原課長から、「なんとか支援費制度の予算不足解消に目処がつ
いた」との報告があった。
 同課長の説明によると厚労省内各部局から掻き集めたとのことで、
とりあえずは問題解消という結果になったが、平成16年度以降につ
いては全く見通しは立っておらず、今後に大きな問題を残しそうだ。
 日本盲人会連合からは笹川吉彦会長が出席し、今後の障害者(児)
の地域生活支援の在り方に関する検討会での取り組みについて質問し
た。

 6.民間企業の障害者雇用 法定雇用率依然下回る
 厚生労働省が12月22日発表した平成15年6月1日時点の民間
企業の障害者雇用率は、前年比0.01ポイント改善し、1.48%
だった。
 ただ、障害者雇用促進法に基づき企業に雇用を義務付けている障害
者の割合、法定雇用率1.8%は大幅に下回る水準。同省はハローワ
ークに相談窓口を設けたり、業界団体を通じた指導を強化したりして、
引き上げを図るとしている。
 産業別にみると、医療・福祉(2.02%)や電気・ガス・熱供給
・水道業(1.80%)が高く、情報通信業(1.08%)や卸売・
小売業(1.16%)は低い。
 2.1%の法定雇用率が適用される特殊法人の雇用率は、0.13
ポイント上昇して2.09%。同じ雇用率が適用される国・地方自治
体も、0.05ポイント高い2.40%だった。

 7.駅ホームの転落防止柵 設置促進へ国交省検討会報告書
 駅ホームからの転落防止柵設置の促進を目指す国土交通省の検討会
は12月5日、列車の非常停止ボタンなど緊急時の通報システムを設
置した駅は整備対象の54%(2002年度末現在)にとどまってい
るなどとする最終報告書を発表。視覚障害者が対象のアンケートで5
0%が「転落経験がある」と回答したとのデータも示した。
 報告書は「一部駅で導入されている転落防止柵は、コストや車両に
よって異なるドア位置への対応などの課題があるが、各事業者が設置
を検討する必要がある」と指摘。同省は鉄道事業者に実現性の調査を
指示した。
 検討会は2001年、東京のJR新大久保駅でホームから転落した
乗客を助けようとした韓国人留学生らが死亡した事故を受けて設置。
併せて国交省はホームに入る列車の速度が速く、運転本数の多い全国
の2077駅を対象に「非常停止ボタンか転落検知マット」と「ホー
ム下の避難スペースか脱出用ステップ」の設置を指導した。
 報告書によると、2002年度末現在、避難スペースかステップを
設置済みは1922駅(93%)に上ったが、非常ボタンか検知マッ
トの設置は1129駅だった。

 8.各地で福祉大会・記念大会開く
 ●第四回神奈川県視覚障害者福祉大会
 神奈川県視覚障害者福祉協会(鈴木孝幸会長)の第四回神奈川県視
覚障害者福祉大会が11月16日、大和市の勤労福祉会館で約140
名が参加して開かれた。開会式典では、5月に開催された第56回全
国盲人福祉神奈川大会に貢献のあった団体や個人に感謝状を贈呈、
「NPO法人とは」と題する記念講演などが行われた。午後からは、
第1(福祉制度・支援費)、第2(バリアフリー)、第3(職業・経
済)の3分科会に分かれての討議に移った。閉会式では、分科会報告
に続いて大会宣言・決議が採択された。
 決議された主な要望事項は(1)日常生活用具の支給について、負
担額の算定は受給者本人のみの収入で決定し、品名は事例とするなど、
(2)支援費制度について、負担額の算定は受給者本人のみの収入で
決定し、事業者に契約内容の配布(点字・録音物)とヘルパーの研修
を義務付けるなど、(3)音響信号機の設置について、最低限各市町
村ごとに毎年1機以上とし、設置箇所は当事者団体の意向を尊重、
(4)駅・鉄道利用について、ホームに可動柵を設置し、ホーム要員
を増員、また弱視者が見やすい表示等、当事者団体の意向を尊重、
(5)ヘルスキーパーや各市町村福祉窓口に視覚障害者を雇用、(6)
あはき業について、無資格従業員、広告違反、違法行為等の取締り強
化。
 ●第7回茨城県視覚障害者福祉大会
 茨城県視覚障害者協会(本多操会長)の第7回茨城県視覚障害者福
祉大会(創立70周年記念)が12月7日、県内各地から約350人
が参加して土浦市のホテルマロウド筑波で開かれた。笹川吉彦日盲連
会長による記念講演「最近における中央情勢について」に続く式典で
は、組織の発展に尽くした方への感謝状贈呈などが行われ、議事では
5項目の決議が採択された。大会閉会後、創立70周年並びに本多会
長叙勲祝賀会が開かれ、昭和7年の設立に始まる同協会の歴史をふり
返るとともに、本多会長の旭日双光章受章を祝った。
 決議された要望事項は(1)「茨城県、人にやさしいまちづくり条
例」に基づき、全市町村において視覚障害者も参加した地域社会づく
りの早期実現、(2)点字・録音等による図書及び情報の充実、文化
面、体育面における生涯学習の充実、生活自立のための訓練と支援の
充実を図る拠点となる新しい視覚障害者情報文化センターの早期建設、
(3)点・線ブロックの普及と音声誘導システムの大幅導入、(4)
補助犬法に関する社会の理解と盲導犬の育成事業、及びアイバンク事
業の充実、(5)就業困難な視覚障害者のための療護施設、授産施設、
特別養護老人ホーム等の新・増設。
 ●兵庫県視障協法人設立25周年記念大会
 兵庫県視覚障害者福祉協会(堀忠男会長)の法人設立25周年記念
大会が12月12日、神戸市の兵庫県民会館で435人が参加して開
催された。式典では、来賓の方々の祝辞に続いて協会の事業に協力さ
れた方や点訳・朗読ボランティアなどへの感謝状贈呈、長年苦楽を共
にしたご夫婦や永年勤続職員への表彰状贈呈が行われた後、児童館の
内藤勝館長が「ほほえみの小道」を記念講演した。
 同協会は昭和21年に発足、同53年に財団法人兵庫県盲人福祉協
会として認可を受けた。平成15年4月には名称を財団法人兵庫県視
覚障害者福祉協会と改め、今回25周年記念大会を迎えた。

 9.『点字JBニュース』 個人利用者登録も可能に
 日本盲人会連合が厚生労働省からの委託を受けて発行している「点
字JBニュース」の利用は、平成15年度の新システム導入により、
これまでの点字版(郵送)と電話音声に加え、視覚障害者個人が直接、
インターネットを介して点字データをダウンロードできるようになっ
た。利用に当たっては、もよりの地方実施機関への利用者登録が必要。
 登録方法は、パソコンでインターネットに接続し、「点字JBニュ
ース」のホームページ(http://www.jbnews.or.
jp)にあるメニューから「利用者登録について」を選択、画面の指
示に従って手続きを行うと、IDとパスワードを取得できる。

 10.全日本ろうあ連盟 日身連を退会
 社会福祉法人日本身体障害者団体連合会(兒玉明会長)の理事会が
12月19日、東京・千代田区永田町の衆議院第1議員会館会議室で
開かれ、財団法人全日本ろうあ連盟から提出されていた退会届を受理、
ろうあ連盟は日身連を退会することになった。
 ろうあ連盟は本年1月に、障害の特性を重視し、独自の活動を推進
したいとして退会の意志を表明、これに対し日身連は、慰留に努め話
し合いを続けてきたが、意見の一致が見られず、また、ろうあ連盟か
ら出ていた3人の役員から辞表が提出されたことから退会届を受理す
ることになったもの。
 日身連は各都道府県と政令指定都市の障害者を中心とする当事者団
体と、中央団体である日本盲人会連合、全日本ろうあ連盟から構成さ
れており、ろうあ連盟の退会は、今後に波紋を広げるのではないかと
懸念されている。
 なお、同日の理事会で、さいたま市身体障害者福祉協会と社団法人
日本オストミー協会が来年4月1日から、日身連に加盟することが承
認された。

 11.第53回厚生労働大臣表彰 視覚障害関係18人 浦友亮大
阪府視障協会長ら
 障害者週間(12月3日~9日)の厚生労働省における行事の1つ
として、第53回障害者自立更生等厚生労働大臣表彰の表彰式が12
月3日、東京・霞が関の中央合同庁舎第5号館で開かれた。今回表彰
されたのは70人と1団体で、そのうち視覚障害関係(ボランティア
を含む)は18人。お名前は次の通り(敬称略)。
 【自立更生者】(職業はいずれも鍼灸マッサージ関連)多田彌太郎
(101、岩手県)、横山實(64、千葉県)、宮地昭雄(76、東
京都)、熊田實(74、東京都)、加藤良男(54、神奈川県)、織
田みち子(86、福井県)、鷹岡貞子(74、滋賀県)、伊藤孝之
(57、札幌市)、三輪秀夫(76、名古屋市)、須藤光雄(67、
郡山市)、稲城榮一(64、岐阜市)、浦友亮(73、堺市)、日和
佐一美(72、松山市)
 【更生援護功労者】郡司寅松(85、茨城県、元高萩市視覚障害者
福祉協議会会長)、佐々木源之佐(81、仙台市、仙台市身体障害者
福祉協会理事)、関山進(54、川崎市、川崎市視覚障害者福祉協会
副会長)、竹田稔(68、金沢市、元石川県視覚障害者協会理事)
 【社会参加促進功労者】大河内シヅ子(77、熊本県、人吉地区点
字講習会指導者)

 12.第29回日盲連全国盲人文芸大会
 日本盲人会連合(笹川吉彦会長)主催の第29回全国盲人文芸大会
の入選者が決まった。今回の応募者は、短歌71人(210首)、俳
句102人(304句)、川柳73人(218句)、随想・随筆18
人(18編)。審査員は短歌が佐佐木幸綱、俳句が田沼文雄、松林尚
志、加藤あきと、川柳が福田案山子、金子蛙次郎、随想・随筆は高橋
秀治の諸先生で、厳正な審査が行われた。
 作品は各部門別の作品集に掲載(随想・随筆は入賞作品のみ)。応
募者に郵送される他、応募者以外には実費で頒布(点字版・墨字版と
も短歌、俳句、川柳は各1千円、随想・随筆は1500円)。入選さ
れた方々は次の通り(敬称略)。
 【短歌】1位・小渡ハツヨ(札幌市)、2位・柳沼友治(福島県)、
3位・野中利秋(福岡県)
 【俳句】1位・今井健二(新潟県)、2位・山田健弘(岡山県)、
3位・平田茂夫(土岐市)
 【川柳】1位・西村文美恵(大阪府)、2位・庄司玉江(岡山県)、
3位・石塚三雄(秋田市)
 【随想・随筆】1位・長尾榮一(東京都)「琵琶談義」、2位・清
水幸代(兵庫県)「思いこみ」、3位・柳沼友治(福島県)「時間差
のある世界」

 13.第27回全国盲人将棋大会 A級優勝は東京の福岡さん
 第27回全国盲人将棋大会が日本盲人会連合(笹川吉彦会長)と佐
賀県視覚障害者団体連合会(竹田寿和会長)の主催で11月16、1
7の両日、佐賀市の佐賀県青年会館で開かれた。
 大会にはA級11人、B級20人の合わせて31人が出場し、初日
の予選、2日目の決勝トーナメントと熱戦を繰りひろげた。A級(有
段者の部)は、東京都の福岡繁さん(4段)が優勝し、厚生労働大臣
杯を手にした。B級は長崎県の小林剛さんが優勝した。準優勝以下は
次の通り(敬称略)。
 【A級】準優勝・立石智(福岡市)、3位・山本栄治(熊本県)
 【B級】準優勝・松尾省吾(福岡市)、3位・今井勝治(佐賀県)

 14.世界盲人連合・アジア太平洋地域協議会(WBU-AP)中
期総会決議
 世界盲人連合・アジア太平洋地域協議会(WBU-AP)中期総会
決議[2003年11月17日、18日、シンガポールにて]
 我々この総会に参加したすべての視覚障害者団体の代表者、および
関係者は、視覚障害者の人権に根ざした自己実現とアジア太平洋地域
でのこの協議会の更なる発展を目標にこの決議を宣言する。
 アジア太平洋地域での視覚障害者、および弱視者が政府機関、およ
び視覚障害者関係のNGO組織などの多大の努力にも拘わらず、いま
だに日常生活面で大きな不利益を被っており、かつまた視覚障害者の
人権が侵害され、あるいは無視されていることを確認する。
 具体的には、情報・コミュニケーションに関する知識や技能などを
含め、教育、就労の面でさまざまな不利益を受けているし、単独歩行
での安全確保はもとより、スポーツやレクリエーション活動の面でも
「完全参加と平等」という観点から見ると問題が山積している。
視覚障害者関係団体の連携の下、視覚障害者の団結力と行動力は、世
界盲人連合の掲げる 「視覚障害の意味するもの」というテーマに大
きな影響を与えている。
 1、世界人権宣言や人権に関するすべての条約に規定されているよ
うに、ひとりの人間として人格と尊厳を持った視覚障害者は、人権の
尊重と自由と責任を健常者同様に有ることを再確認する。
 2、アジア太平洋地域の政府は、障害者の人権と尊厳を保護し、更
に推進するために、国連に対し、更なる努力を促す。
 3、情報化社会のワールド・サミット(World Summit
 on Information Society, WSIS)の
決定がすべての人の生活に波及することを念じると共に、その重要性
を認識する。また、視覚障害者が各種情報・コミュニケーション技術
に健常者と等しくアクセスできるようなユニバーサル・デザイン、あ
るいは補助機器の開発を促す。
 4、びわこミレニアム・フレームワークの行動計画がこの地域内の
障害者の人権への理解の促進に重要な役割を果たしていることを確認
する。
 5、WBU、WBU-APの目的を達成するために、それぞれの規
約、政策、決議、その他の決定事項を遵守することを確認する>
 6、2001年バンコクで開催された第1回WBU-AP総会にお
いて合意されたすべての計画を実行することを確認する。
 7、2002年大阪市で開催されたアジア太平洋ブラインド・サミ
ット会議の成功をここに感謝をこめて記し、この会議で決議されたも
のすべてを真摯に受け止め、今後のWBU-APの政策に反映させる。
 8、アジア太平洋地域の視覚障害者の生活実態調査の結果を認識し、
その勧告を遵守し、目標に向かって努力する。
 9、障害者団体や組織において、男女平等の役割を持つことを確認
し、WBU-APの女性委員会、並びにWBU女性フォーラムから出
された勧告や諸活動を支持する。
 10、視覚障害を持つ青年たちのバイタリティーとWBU-AP青
年委員会の成果を評価し、今後の運動を進めてきた若いリーダーたち
の可能性を信じ、さまざまな活動の場で青年たちのニーズや意見を採
り入れることを確認する。そのために、青年たち自身の決定や社会資
源の割り当て、将来の行動計画、政府および国連機関や各障害者団体
との連携など、WBU-AP青年委員会と相談をした上で決定する。
 11、アジア太平洋地域のなかで、とくに開発途上国や戦場となっ
た国においては、視覚障害者団体を設立したり、強化する必要がある
ことを認識し、WBU、WBU-APが当事者の声として視覚障害者
自身が正当に取り扱われるように更に力強く訴えることを主張する。
 12、WBUとIBSA(国際視覚障害者スポーツ協会)との相互
理解に関する覚え書きを尊重し、視覚障害者スポーツ団体の設立や地
域での参加を支援する。さらに、IBSAが身体障害者スポーツ団体
のなかにある視覚障害者部門を、代わりにメンバーとして認めるよう
に最大限努力することを促す。
 13、政府、ならびに視覚障害者にサービスを提供しているすべて
のNGO団体に対し視覚障害者の固有のニーズにもっと注意を払うこ
とを要求する。また、人権に根ざした包括的なバリア・フリー社会の
なかで、視覚障害者の日常の生活に多大な影響をもたらすような政策
立案過程や決定段階で、視覚障害者が真に平等のパートナーとして働
く環境作りをするために、あらゆる段階でWBU-APと関連組織を
通じて協力することを要求する。
 (訳:日盲連国際委員山口和彦)