内閣府障害者政策委員会に要望書を提出しました

2024年6月13日

 令和6年6月10日、日本視覚障害者団体連合、全国盲ろう者協会、全日本ろうあ連盟、全日本難聴者・中途失聴者団体連合会の4団体は、連名の要望書を内閣府の障害者政策委員会に提出しました。

【写真】左から、ろうあ連盟 山根本部事務所長、日視連 竹下会長、内閣府 小林参事官、日視連 田中評議員、全難聴 宇田川副理事長

 

 この要望書は、4団体が集う情報コミュニケーション4団体連絡会において協議したもので、視覚または聴覚に障害のある者の要望をまとめたものになります。

 視覚や聴覚に障害のある者は、情報を取得すること、移動することの他、日常生活または社会生活を送る上で、様々な障壁に直面しています。そして、これらの障壁の解消をめざすためには、令和4年10月7日に国連障害者権利委員会から出された日本に対する総括所見の指摘を踏まえて、現在の日本における問題点を整理し、法整備を含めた制度の改善を検討する必要があると考えています。

 そこで、内閣府障害者政策委員会が障害者権利条約の国内実施を監視する役割を果たすために、本要望書を提出しました。当日は、内閣府の障害者施策担当の小林参事官に要望書を手渡し、障害者基本法の改正が必要なこと、裁判に関する情報保障を充実させること等を強く求めました。

 

以下、要望書の貼り付け

2024年6月10日

障害者政策委員会
 委員長 熊谷晋一郎 殿

社会福祉法人日本視覚障害者団体連合
会長 竹下 義樹

社会福祉法人全国盲ろう者協会
理事長 真砂 靖

一般財団法人全日本ろうあ連盟
理事長 石野 富志三郎

一般社団法人全日本難聴者・中途失聴者団体連合会
理事長 宿谷 辰夫

 

内閣府障害者政策委員会における検討項目に関する要望

 

 私たち視覚や聴覚に障害のある者は、情報を取得すること、移動することの他、日常生活または社会生活を送る上で、様々な障壁に直面しています。これらの障壁の解消をめざすためには、2022年10月7日に国連障害者権利委員会から出された日本に対する総括所見(以下「総括所見」といいます。)の指摘を踏まえて、現在の日本における問題点を整理し、法整備を含めた制度の改善を検討する必要があると考えています。

 そこで、内閣府障害者政策委員会においても、障害者権利条約の国内実施を監視する役割を果たすため、以下の事項について積極的に検討を行うことを求めます。

 そして、今後の内閣府障害者政策委員会の進め方について、熊谷晋一郎委員長と私たち4団体との間で協議の場を設けていただくことを要望します。

 

1 表現及び意見の自由並びに情報の利用の機会(条約第21条、障害者基本法第22条関係)

 私たち視覚や聴覚に障害のある者は、常に情報を取得することについて障壁に直面しています。2022年5月に「障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律」(通称:障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法)が施行されているところですが、総括所見の第46項で「あらゆる段階における法的拘束力のある情報及び通信の基準を開発整備すること」が勧告されていることからも明らかなように、未だ円滑な情報取得を実現するための課題は多く残されたままです。

 また、国内において、手話を言語として認める「手話言語法(仮称)」がまだ制定されていないため、手話言語の早期獲得、手話言語を学ぶ環境整備の拡充、手話言語による意思疎通支援の利用制限などの問題が取り残されています。

 そこで、現状の問題点を整理した上で、障害者基本法第22条3項が情報の提供に係る役務の提供を行う事業者及び情報通信機器の製造等を行う事業者に対して「障害者の利用の便宜を図るよう努めなければならない」と定めているところを「障害者の利用の便宜を図らなければならない」とすることを含めて、必要な施策を検討する必要があると考えています。

【総括所見第46項】

46.委員会は、締約国に以下を勧告する。

(a) ウェブサイト、テレビジョン番組、その他メディア様式で公衆に提供される情報の利用の容易さ(アクセシビリティ)確保のために、あらゆる段階における法的拘束力のある情報及び通信の基準を開発整備すること。

(b) 点字、盲聾(ろう)通訳、手話、「イージーリード」、平易な言葉、音声解説、動画の書き起こし、字幕、触覚、補助的及び代替的な意思疎通手段のような、利用しやすい意思疎通様式の開発、推進、利用のための予算を十分に割り当てること。

(c) 国として、日本手話が公用語であることを法律で認めること、あらゆる活動分野において手話を利用及び使用する機会を促進すること、有資格の手話通訳者の研修及び利用が可能であることを確保すること。

 

2 個人の移動を容易にすること(条約第20条関係)

 私たち視覚や聴覚に障害のある者が、自らの意思で自らの日常生活または社会生活を組み立てることを可能とするためには、自由な移動が確保されていること、すなわち、私たちが移動したいと思った時に、移動したい場所に移動できることが必要不可欠です。そのためには、私たちが希望する時点で必要な支援者が確保できることに加え、移動補助具、補装具及び支援機器の提供が十分行われていること、移動に関する情報が十分に提供されていること等が不可欠です。

 そこで、現状の問題点を整理した上で、障害者基本法に移動に関する基本的な施策の実施を定める条項を新設することを含めて、必要な施策を検討する必要があると考えています。

【総括所見第44項】

44.委員会は、締約国に以下を勧告する。

(a) 全ての地域における障害者の移動が制限されないことを確保するために、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律の下での制限を排除すること。

(b) 地域での修理の促進、政府や税による補助金の提供、税金や関税の免除等を含め、必要な移動補助具、支援機器、支援技術が全ての障害者にとって負担しやすいことを確保するための努力を強化すること。

 

3 施設及びサービス等の利用の容易さ(アクセシビリティ)(条約第9条、障害者基本法第21条関係)

 私たち視覚や聴覚に障害のある者が、日常生活または社会生活を円滑に送るためには、公共的施設のバリアフリー化を含む情報及び通信に利用の容易さ(アクセシビリティ)の確保が必要です。総括所見第22項においても、下記のような勧告が出されていることを踏まえると、「公共的施設のバリアフリー化」を定める障害者基本法第21条1項が事業者に対して「計画的推進に努めなければならない」と定めているところを「計画的推進を図らなければならない」とすることを含めて、必要な施策を検討する必要があると考えています。

【総括所見第22項(a)】

22.一般的意見第2号(2014年)施設及びサービス等の利用の容易さ(アクセシビリティ)を想起しつつ、委員会は締約国に以下を勧告する。

(a) 障害者団体と緊密に協議しつつ、全ての政府の段階における施設及びサービス等の利用の容易さ(アクセシビリティ)を調和させるとともに、ユニバーサルデザインの基準を導入し、特に、建物、交通機関、情報及び通信及びその他公衆に開放又は提供される施設・サービス(大都市以外のものを含む)の利用の容易さ(アクセシビリティ)を確保するために、行動計画及び戦略を実施すること。

 

4 司法手続の利用の機会(条約第13条、障害者基本法第29条関係)

 裁判手続きは、障害の有無に関わらず、誰もが自らの権利自由を守るために障壁なく利用できる制度として構築されなければなりません。このような視点からすれば、現在、各種裁判手続きのIT化が進められているところですが、このIT化に伴い導入されるシステムは、私たち視覚や聴覚に障害のある者が、自ら利用し得るだけのアクセシビリティを備えたものである必要があります。また、聴覚に障害がある者が裁判手続きを利用する場合に必要となる手話通訳者を確保するための費用が訴訟費用とされている現状についても、裁判手続きの利用における障壁の要因となり得るものであり、総括所見第30項(b)でも指摘されています。

 そこで、総括所見第30項の勧告事項を踏まえて、現状の課題を整理した上で、障害者基本法第29条が「個々の障害者の特性に応じた意思疎通の手段を確保するよう配慮する」と定めているところを「個々の障害者の特性に応じた意思疎通の手段その他の手続上の配慮を確保する」とすることを含めて、必要な施策を検討する必要があると考えています。

【総括所見第30項】

30.委員会は、障害者の司法を利用する機会に関する国際原則及びガイドライン(2020年)並びに持続可能な開発目標のターゲット16.3を想起し、締約国に以下を勧告する。

(a) 障害者が司法手続に参加する権利を制限する法的規定の廃止。他の者との平等を基礎として、あらゆる役割において、司法手続に参加するための完全な能力を認識すること。

(b) 障害者の全ての司法手続において、本人の機能障害にかかわらず、手続上の配慮及び年齢に適した配慮を保障すること。これには、配慮に要した訴訟費用の負担、情報通信機器、字幕、自閉症の人の参考人、点字、「イージーリード」及び手話を含む、手続に関する公式情報及び通信を利用する機会を含む。

(c) 特に、ユニバーサルデザインにより、裁判所、司法及び行政施設への物理的な利用の容易さ(アクセシビリティ)を確保し、障害者が、他の者との平等を基礎として、司法手続をひとしく利用する機会を保障すること。

 

5 政治的及び公的活動への参加(条約第29条、障害者基本法第28条関係)

 選挙権及び被選挙権は、私たちが政治に参加するための重要な権利です。したがって、障害の有無に関わらず、障壁なくその権利を行使することが可能でなければなりません。ところが、現行の公職選挙法上の一部の規定には、私たちの障害特性からすると、この選挙権、被選挙権の行使を制約する可能性がある規定も存在します。このことは、総括所見第62項(a)においても「公職選挙法を改正すること」として指摘されています。

 そこで、現状の問題点を整理した上で、障害者基本法第28条及び公職選挙法の見直しを含めて、必要な施策を検討する必要があると考えています。

【総括所見第62項】

62.委員会は、以下を締約国に勧告する。

(a) 投票の手続、設備及び資料が、適当かつ利用しやすいものであり、全ての障害者にとってその理解及び使用が容易であることを確保するため、政見放送及び選挙活動を含む選挙関連情報についての配慮を提供するとともに、公職選挙法を改正すること。

(b) 障害者、特に障害のある女性の政治的活動及び公共運営への参加の促進が確保され、支援技術及び新規技術の利用促進、及び個別の支援の提供により、効果的に役職に就き全ての公的機能を政府のあらゆる段階で果たすことができること。

以上

 

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