都内駅ホームにおける転落防止援助に対する視覚障害者の行動に関する考察と、声かけ・サポートへのご協力のお願い

2020年3月13日

令和2年3月13日

「一般市民から寄せられた駅ホームでの出来事を通して考える」

社会福祉法人 日本視覚障害者団体連合

 過日、本連合に対して、一般市民の人から、都内のある鉄道駅のホームでの出来事について、匿名で電話がありました。その内容は次のようなものでした。

 「ホームにいた通行人が、線路に転落しそうになった視覚障害者に気付いて、とっさに抱きかかえました。すると、助けようとした通行人が、逆に視覚障害者から怒鳴られました。その光景を見て、その場に居合わせた別の人が、『ありがとう』の一言があってもいいのではと、その視覚障害者に注意しました。」

 電話をしてくれた方は、このような態度をとる視覚障害者が一人いると、皆さんにとって、手助けしてくれる人が減ってしまうのではないかと思ったそうです。

 相変わらずなくならない駅ホームからの視覚障害者の転落事故、そして、様々な安全対策が取り組まれている中で、私たちは今回の出来事を深刻に受け止めています。よりよい社会にしていくためにも、今回の出来事を皆さんと共に考えたいと思います。

1. 視覚障害当事者の立場に立って考えると、突然抱きかかえられて、動転し、気を取りみだしたに違いありません。それがこのような「怒鳴る」という行為に繋がったのかもしれません。であるとしても、極めて残念な結果であり、遺憾であると言わざるを得ません。

2. しかし、このような光景は、助けようとした人だけでなく、周囲の人から見ても、視覚障害者に対する声かけサポートを躊躇することにもなりかねません。その意味で、電話をくださった市民の方には感謝いたします。

3. 鉄道を利用する視覚障害者は、日常的に利用しているところであっても、危険な場面に遭遇することが多々あります。視覚障害者の駅ホームからの転落を防止するためには、鉄道事業者による物理的設備だけでなく、声かけサポートのような、一般市民等による人的な支援が欠かせません。これらが相まって、視覚障害者は、安心・安全で、より快適に鉄道を利用することができます。

4. 私たち視覚障害当事者は、周囲からサポートがあった場合、心からの感謝の気持ちを「ありがとう」の態度で表明したいものです。同時に、一般市民の皆様にも、私たちが安全に交通機関を利用できるよう、引き続き、サポートをお願いします。

5. 最後に、私たちはこれまで、国土交通省や鉄道事業者が取り組んでいる利用者に対する啓発活動(「声かけ・サポート」運動)に協力しています。この活動により、声かけをされた視覚障害者から感謝の声も多く寄せられております。

 以上のように、私たちがこれからも安全に安心して鉄道を利用できるよう、引き続き皆様のご理解とご支援を心からお願いするものです。
(※資料「一般市民から寄せられた駅ホームでの出来事を通して考える」docx形式/15KB