旧優生保護法に基づく強制不妊手術等の調査について

2018年12月27日

 本連合は、本年9月より「旧優生保護法に基づく強制不妊手術等の調査」を進めてまいりました。

 このたび、調査結果と本連合としての今後の方針をとりまとめましたのでご報告いたします。

平成30年12月27日 

 

旧優生保護法に基づく強制不妊手術等の調査について(調査結果)

社会福祉法人 日本盲人会連合 

1.調査期間  
 平成30年9月7日(金)~10月31日(水)

2.調査依頼先  
 日本盲人会連合に加盟する視覚障害の当事者団体 計61団体

3.調査内容(依頼内容)
(1)調査1 都道府県(政令指定都市)に対する調査
 調査依頼先団体より、都道府県(政令指定都市)に対して、旧優生保護法の下で視覚障害者への不妊手術や断種手術が実施された事例が記録上残っているかどうかの事実確認を行う。併せて、都道府県(政令指定都市)内の病院ないし診療所において、同意の有無にかかわらず、妊娠中絶手術を強要された事例に関する記録が保管されているかどうかについても、都道府県(政令指定都市)から問い合わせてもらう。記録がある場合は、その記録を入手し、情報のとりまとめを行う。

 (2)調査2 地域の視覚障害当事者に対する調査
 調査依頼先団体の会員または元会員(既に死亡した者を含む)に対して、遺伝的眼疾患を理由に不妊手術や断種手術、あるいは妊娠中絶手術を強要された者の有無を確認し、被害者が存在した場合は、その被害者の情報を取りまとめる。なお、地域の非会員であっても、情報があれば、可能な限りの聞き取りを行うこととする。

 (3)調査3 視覚障害者入所施設に対する調査
 調査依頼先団体の地域に存する視覚障害者を対象とする施設(ハンセン病療養施設を除く)に対して、遺伝的眼疾患を理由に不妊手術や断種手術、あるいは妊娠中絶手術を強要された者の有無を確認し、被害者が存在した場合は、その被害者の情報を取りまとめる。特に、盲重複障害者の入所施設が存在する場合は必ず事実確認を行うこととする。

4.有効回答数
 36件/61件  回収率:59.0%(※1)

 (※1)本調査が個人のプライバシーに係わる等との理由で、調査の実施が困難であった団体が存在するため、回答率は59.0%になり、全国の実態を把握するまでには至っていない。

5.各調査の集計結果
(1)調査1 都道府県(政令指定都市)に対する調査
 「記録の有無」について(※2)
  ①ある  12件
  ②なし  14件
  ③不明   7件
  ④無回答  3件(※3)
   合計  36件

 (2)調査2 地域の視覚障害当事者に対する調査
 「被害者の有無」について
  ①ある   4件
  ②なし  17件
  ③不明  10件
  ④無回答  5件(※3)
   合計  36件

   「①ある」4件の内訳(被害者数)
    ・被害者として認定できた者           2件 2名
    ・被害者と断定できないが、被害の疑いがある者  2件 4名
                     合計        6名

(3)調査3 視覚障害者入所施設に対する調査
 「入所者における被害者の有無」について
  ①ある   0件
  ②ない  19件
  ③不明  11件
  ④無回答  4件(※3)
   合計  36件

(※2)掲載をした内容は「障害者が強制不妊手術を受けた記録」の有無についての集計であり、「視覚障害者の被害者がいるかどうかの記録」の有無についての集計ではない。ただし、「①ある」においては、視覚障害者の被害者は確認できなかった。

(※3)他の項目に回答はあったが、該当項目を空白(無回答)で回答をした場合、この「④無回答」に割り振る。

 6.調査から確認できたこと
(1)自治体向けの調査について
〇強制不妊手術に関する資料を開示した自治体は存在したものの、視覚障害の被害を確認することはできなかった。

〇資料では、障害の詳細な内訳が記載されていない資料(※4)が多く、自治体に対する調査からは、視覚障害者が被害にあった実例を把握することは難しい。

(※4)確認できた資料における障害の内訳について
例1)身体障害、精神障害、知的障害という分類があるが、身体障害の中で視覚障害の内訳が記載されていない。
例2)個人情報保護の観点から、障害の分類が開示されていない。

(2)視覚障害当事者向けの調査について
〇全国から集めた情報では、6名の視覚障害の被害者を確認した。しかし、確証を得られた事例は2名のみで、その他4名は関係者からの聞き取りないし伝聞であり、明確な被害内容は判明していない。

〇被害事例から得た情報では、女性の被害者が大半であり、学齢期に親の判断で不妊手術をさせられたり、成人して妊娠をした際に身内の判断で中絶手術を受けさせられる等、家族の判断で強制的に手術が行われた傾向があった。

〇強制手術を受けた可能性が高い盲重複障害者については、親族等から情報提供があり被害者の存在は確認できたものの、明確な被害内容は判明できなかった。重複障害であるがゆえに自身の意思を表明することが出来ず、盲重複障害当事者から被害内容を実証することが難しいという課題も判明した。

〇一方で、調査に協力した地域の当事者団体からは、会員等に情報提供の呼びかけやヒアリングを行ったが、プライバシーに係わる内容になるため、会員に対しての調査依頼がしづらいとの意見があった。被害者が安心して申し出ることができるようにするためには、プライバシーを守れる信頼性のある第三者機関が必要と思われる。

(3)視覚障害者入所施設向けの調査について
〇調査をした全国に点在する施設からは、被害者の情報は確認できなかった。強制手術が行われていた時期が50年近く前になることから、施設自体で情報を残していないこと、被害情報が引き継がれていないこと等が背景にあり、施設側は情報を把握していない傾向が見えた。

〇なお、仮に入所者に手術痕があり、この点を職員が把握したとしても、本人からの申し出や了解がない限り、個人のプライバシーの観点から施設として回答が出来ない部分もある。

(4)調査のまとめ
〇ごく少数の視覚障害者は被害にあったことは、不確定要素も含みつつも確認ができた。被害の傾向としては、親族の判断で学齢期の不妊手術、または成人後に妊娠したことによる不妊手術(中絶)を受けさせれていた可能性が高い。

〇しかし、強制不妊手術の被害にあったことを申し出ることは、個人のプライバシーに係わる内容を含むため、申し出ること自体が難しい背景がある。そのため、視覚障害のある被害者は、今回の調査で判明した人数よりも多い可能性はある。

(5)求められる被害者対応について
〇今後、視覚障害のある全ての被害者を救済するためには、まずは被害者のプライバシーが守られ、被害者が名乗り出やすい救済制度や救済窓口が必要になる。その上で、国からの適切な救済が行われるべきである。

(6)日本盲人会連合の今後の対応について
〇被害にあった視覚障害当事者については、本人の意思を尊重しながら、本連合として必要な支援を行っていく。

〇また、被害にあった視覚障害者が存在する可能性があることを踏まえて、本連合内に、被害者が安心して相談できる窓口を作ることを検討する。

【資料】
旧優生保護法に基づく強制不妊手術等の調査について(調査結果)(DOC形式/49KB)