視覚障害者の読書について
ここでは視覚障害者がどのように読書しているかについて解説します。
視覚障害者が利用する本の種類は、主に3つに分けられます。
点字図書、音訳図書、拡大図書の3つです。また、最近は電子書籍も読まれています。
1.点字図書について
通常の活字図書を点字に変換した図書は点字図書または点訳図書と呼ばれています。
以前は、点字図書は点字板や点字タイプライター、亜鉛板による点字印刷によって製作され、それが郵送などの方法により視覚障害者の手元に届けられていました。
その後、点字をデータとして保存できるようになり、点字プリンターを使って大量印刷もできるようになりました。また、インターネット上のデータベースから視覚障害者がダウンロードできるような仕組みも開発されました。
現在は、視覚障害者のための電子図書館であるサピエ図書館から、約15万タイトルの点字図書データがダウンロードできるようになっています。
点字データは、点字プリンターを使用して紙に打ち出すことも可能ですが、最近はパソコンに接続した点字ディスプレイや点字ディスプレイのついた小型の情報端末で読書する人も増えてきています。
※日視連で販売している点字ディスプレイの一覧はこちら
(新規ウィンドウで日視連の用具購買所のページに移動します)
2.音訳図書について
活字図書を音声により読み上げた図書を音訳図書、または録音図書と言います。
以前は点字図書館(視覚障害者情報提供施設)などで製作されたカセットテープが郵送などの方法で視覚障害者に届けられていました。今でも高齢の方を中心にカセットテープを使っている方はいますが、近年はDAISY(Digital Accessible Information SYstem)形式で製作されているのがほとんどです。
DAISY(デイジー)とは、デジタル録音図書の国際標準規格のことで、1枚のCDに50時間以上の録音が可能です。また、目次や見出しをつけることが可能なため、直接読みたい章やページに飛べるなどのメリットがあり、非常に重宝されています。
点字図書館や公共図書館からCDにより貸し出されることもありますが、今はサピエ図書館からダウンロードすることもできるようになっています。その数はおよそ5万タイトルです。
視覚障害者は、主に借りたCDやダウンロードしたデイジーデータをパソコンや小型のデイジープレイヤーで聞き、読書します。
また、最近はスマートフォンで再生できるアプリも開発されており、様々な方法で音声による読書が楽しめるようになってきています。
※日視連で販売しているデイジープレイヤーの一覧はこちら
(新規ウィンドウで日視連の用具購買所のページに移動します)
3.拡大図書について
活字図書の文字や図を拡大し、見やすく整えて出版した図書のことを、拡大図書といいます。
点字図書や音訳図書に比べ、拡大図書はあまり普及が進んでいません。これは、2010年(平成24年)の著作権法改正までは、自由に拡大写本にすることができるのが教科書に限られていたためです。一般図書の拡大写本化は、すべての出版社と著作権者の許可が必要だったため、あまり進められてきませんでした。
著作権法が改正されて以来、拡大図書は徐々に増えてきてはいるものの、未だに図書館などで借りられる拡大図書は、かなり少ないのが現状です。
拡大図書の普及率を補うため、一般の活字図書を拡大して読むための機械も流通しています。ルーペや電子ルーペ、拡大読書器などです。これらを使用することで、活字図書を拡大図書のように読むことが可能になります。
拡大図書は、弱視者だけでなく、視力の衰えた高齢者にとっても有用な媒体であるため、今後もさらなる発展が望まれます。
※日視連で販売している拡大読書器の一覧はこちら
(新規ウィンドウで日視連の用具購買所のページに移動します)
4.電子書籍について
近年は電子書籍が発売されるようになったので、弱視者の中にはインターネット上で購入した電子書籍を手持ちのタブレット端末で拡大したり、文字と背景の色を見やすく変更して読書をしている人もいます。
しかし、電子書籍は残念ながらスクリーンリーダー(パソコンや携帯で使用する画面読み上げソフト)による読み上げに対応しているものが少なく、音声でも読書できるアクセシブルな電子書籍の普及が期待されているところです。