自由民主党ユニバーサル社会推進議員連盟への要望書提出

2025年6月11日

 令和7年5月29日(木)、日本視覚障害者団体連合は「自由民主党ユニバーサル社会推進議員連盟」の総会に出席し、要望書を提出した。

【写真】要望書を説明する片岡副会長と三宅常務

 同議員連盟は、我が国における移動や情報のバリアフリーの推進を通して、ユニバーサル社会の実現を目指すために組織されたものになる。総会には、同議員連盟に所属する国会議員及び関係者、関係府省庁の担当者、障害関係団体が参加し、日視連からは副会長の片岡美佐子、常務理事の三宅隆が出席した。
 当日は片岡副会長及び三宅常務より要望書の説明を行い、情報アクセシビリティの確保に関する要望としてセルフレジとマイナ保険証に関すること、視覚障害者の移動の確保に関する要望として中山間地域における移動の確保と同行援護における自動車の利用に関することを強く求めた。

以下、要望書の本文貼り付け

要望書

1.情報アクセシビリティの確保に関する要望

 国は誰一人取り残さないデジタル社会の実現を目指している。そのため、様々な分野でデジタル化が進展し、さらにはAI(人工知能)の進歩によって社会の仕組みそのものが大きく変わりつつある。ところが、本来、デジタル化の進展は社会全体の利便性を向上させることが期待されているにも関わらず、現実にはあらゆる場面で無人化や省人化が進み、視覚障害者にとっては利便性の向上どころか日常生活や社会参加において新たなバリア(障壁)が作り出されている。以下の要望は、今後更にデジタル化が進展し、無人化や省人化が進められていく中にあっても、視覚障害者の利便性を欠くことがないよう、デジタル化におけるアクセシビリティの確保を求めるものである。

(1)セルフレジや注文端末等の店舗内に設置されているタッチパネル端末が、視覚障害者も利用できる仕組みになること、あるいは人的サポートを受けられる仕組みが作られることを求める。 【経済産業省・農林水産省】

 現在、スーパーやコンビニ、飲食店等の店舗内において、セルフレジや注文端末等のタッチパネル式端末の設置が進んでいる。しかしこれらの機器は、画面内容の読み上げ等、視覚障害者が利用するために必要なアクセシビリティの確保がされていないため、視覚障害者が取り残される状況がより深刻になっている。さらに、このような店舗の省人化により、視覚障害者が人的サポートを受けられない状況も生まれており、今まで利用していた店舗が利用できなくなっている。そのため、設置される端末のバリアフリー化はもちろん、端末を利用できない視覚障害者のことを考慮して、必ず人的サポートを受けられる仕組みが作られることを求める。
 なお、端末のバリアフリー化については、全盲・弱視(ロービジョン)を問わず、多くの視覚障害者から期待の声が寄せられていることを留意したい。それは、該当のシステムや機器に視覚障害者が利用する上で必要なアクセシビリティが確保され、視覚障害者も利用することができるようになれば、情報入手、移動、コミュニケーション等といった視覚障害者の多くの困り事を解決できる可能性を秘めているからである。そのため、視覚障害者のための情報アクセシビリティを確保するために、機器開発においては、開発当初から視覚障害者の意見を取り入れることを同時に求める。

(2)マイナ保険証が視覚障害者も確実に利用できるようにすることを求める。 【厚生労働省・デジタル庁】

 令和6年12月に紙による健康保険証の新規発行が廃止され、マイナ保険証の本格的な運用が行われている。すでに医療機関においては、マイナ保険証を利用するための端末の設置が進められているものの、これらの端末は顔認証またはタッチパネルでの暗証番号入力による認証方式、医療情報提供の同意もタッチパネルによる操作方式が採用されており、視覚障害者が利用できる仕組みにはなっていない。例えば、顔認証をしようとしても視覚障害者には顔を合わせる位置が分からない、位置を合わせられたとしても認証完了の確認音が鳴らない、タッチパネルの画面表示ではボタンの位置が分からないことから暗証番号や意思表示の入力操作ができない等、視覚障害者には確認・入力が困難な仕組みになっている。
 一方で、視覚障害者の多くはあん摩マッサージ指圧・はり・きゅうの業に従事しており、保険を取り扱う業務も行っている。この場合、患者から提示されたマイナ保険証に視覚障害者が対応できる端末がなければ保険の取り扱いが難しくなる。
 政府は、全ての国民がマイナンバーカードを取得し、保険証と統合することを目指している。そうであれば、視覚障害者も取り残されることのないよう、これらで使用する端末やシステムのアクセシビリティが早急に確保されることを求める。

2.視覚障害者の移動の確保に関する要望

(1)中山間地域における移動の確保を求める。 【国土交通省】

 過疎地に限らず、地方において公共交通機関の廃止や減便によって、視覚障害者を含む移動困難者、あるいは移動における要支援者への移動保障が重要な課題になっている。それこそ、こういった地域ではタクシーも不足しており、自動車を運転することができない視覚障害者の交通手段が失われつつある。また、高齢者を含む移動困難者のためのオンデマンド方式による移動支援が一部で検討され実現しているが、視覚障害者を対象とするそうしたシステムはほとんど実現していない。中山間地域を中心とする公共交通機関の利用が困難な視覚障害者の日常生活や社会参加を維持するためのオンデマンド方式か、それに代わる移動手段の早急な実現を求める。

(2)同行援護のガイドヘルパーが車を運転して支援を行う時間も報酬対象にすることを求める。 【厚生労働省】

 公共交通機関が減退している中山間地域に住む視覚障害者からは、自動車を利用した同行援護の利用を求める声が大きい。このことは、中山間地域に限らず、都市圏の視覚障害者からも声が挙がっている。
 一方で、近年、福祉有償運送、道路運送法における許可又は登録を要しない運送等により、自動車に利用者を乗せて移動する同行援護事業所が増えてきている。しかし、実際に自動車を利用したとしても、ガイドヘルパーが自動車を運転している時間は利用者に対する介助を行っていないとして、同行援護の報酬の対象外となっており、同行援護で自動車を利用する上で大きな障壁となっている。実際には、ガイドヘルパーは自動車を運転していても利用者の様子を確認し、時に情報提供を行うことができる。また、ガイドヘルパーが自動車を運転している時間を報酬対象にしなくては、同行援護事業所は安定した事業運営が維持できない。
 公共交通機関が乏しい地域等に住む視覚障害者の外出を保障するために、ガイドヘルパーが車を運転して支援を行う時間も報酬対象にすることを求める。