自由民主党ユニバーサル社会推進議員連盟への要望書提出
令和6年6月18日(火)、日本視覚障害者団体連合は「自由民主党ユニバーサル社会推進議員連盟」の総会に出席し、要望書を提出した。
【写真 要望書を説明する竹下会長と三宅常務】
同議員連盟は、我が国における移動や情報のバリアフリーの推進を通して、ユニバーサル社会の実現を目指すために組織されたものになる。総会には、同議員連盟に所属する国会議員、関係府省庁の担当者、障害関係団体が参加し、日視連からは会長の竹下義樹、常務理事の三宅隆が出席した。
日視連が提出した要望書は、駅の無人化に関すること、情報アクセシビリティの確保に関することに焦点を絞り、要望をまとめている。特に、情報アクセシビリティの確保においては、竹下会長より「視覚障害者はマイナ保険証を使いたくても使えない。国の責任の下で、視覚障害者がマイナ保険証を使えるようにしてほしい」と強く訴えた。
なお、後半の意見交換の時間では、同議員連盟会長の石破茂衆議院議員より、鉄道事業における省人化について意見があった。石破会長からは、みどりの窓口の閉鎖、新幹線の車内サービスの簡略化の流れを踏まえ「様々な理由で鉄道事業者が省人化を進めていることは理解できるが、視覚障害者のようなサービスを利用したくても利用できない人がいることは考えられているのか。国や鉄道事業者は、こういった人のことも考えて施策の推進や事業を進めるべきだ」との意見があった。
以下、要望書の貼り付け
日視連発第45号
令和6年6月18日
自由民主党
ユニバーサル社会推進議員連盟
会長 石破 茂 殿
社会福祉法人日本視覚障害者団体連合
会長 竹下 義樹
(公印省略)
要望書
日頃より、ユニバーサルデザイン社会の推進に向けてご尽力いただいておりますことに心より敬意を表します。
さて、近年は、視覚障害者の移動や情報取得を円滑にする様々な施策が推進され、視覚障害者に対するバリアフリーが全国で広がりつつあります。しかし、視覚障害者にとっては未だ解決されない課題が多く、全国の視覚障害者からはその改善を求める声が高まっています。ついては、これらの課題解決に向けた要望を取りまとめました。何卒、ご配慮の程、よろしくお願いいたします。
1.駅の無人化についての要望
(1)無人化された鉄道駅を視覚障害者も安全に安心して利用できる環境整備を進めるよう求める。
令和4年には全国の鉄道駅のうち51.1%が無人化され、この中には乗降客数10,000人以上の駅も含まれており、全国の視覚障害者から不安の声が寄せられている。このような状況であっても、視覚障害者が安全に安心して利用できるハード面、ソフト面での各種整備を進めることが必要である。
まず、ハード面においては、バリアフリー整備ガイドラインに示されている標準的な整備内容としての視覚障害者誘導用ブロック、ホーム縁端警告ブロック、音響案内等を、乗降客数ではなく、駅を利用する視覚障害者の実態も踏まえた上で整備されることが必要である。加えて、ホーム上の監視、ホーム縁端への立ち入りの検知と案内、転落に至った時の検知と通報等、安全対策を進めることも必要である。
また、利用する無人駅から誘導案内の依頼や各種問い合わせができるよう、音声や音響サイン等により視覚障害者にもその存在が認識でき、かつ操作もできるインターフォンの設置も必要であり、視覚障害者からの問い合わせにリアルタイムで応じられる整備を進めることを求める。
(2)鉄道駅での窓口の廃止並びに遠隔地オペレータとの対話型券売機の導入の推進においては、視覚障害者の利便性が低下することのないよう、各種対策の実施を求める。
昨年より、全国各地で鉄道駅の有人窓口の廃止、遠隔地オペレータとの対話型券売機の導入が進められている。この窓口の廃止、新たな券売機での切符購入等の対応は、視覚障害者にとって新たな課題となっている。
例えば、障害者や高齢者が加入して利用するJRグループのジパング倶楽部は、割引切符の購入に際し、窓口での会員手帳の提示と係員による押印が必要である。しかも、視覚障害者は購入証への自筆記入が困難なため、窓口係員による代筆対応が必要である。そのため、有人窓口が最寄り駅にない場合、日頃行き慣れていない遠隔地の有人窓口がある駅まで出向かなければならない。また、有人窓口に代わる遠隔地オペレータとの対話型券売機を利用しようとしても、購入証への自筆記入が困難なため、この対話型券売機は利用できない。
一方で、遠隔地オペレータとの対話型券売機は、全国的にまだまだ設置が進んでおらず、有人窓口だけでなく、この券売機を利用するために、わざわざ遠隔地の駅まで行かなければならないこともある。
これらのように、鉄道駅での窓口の廃止の促進並びに遠隔地オペレータとの対話型券売機の導入の遅れにより、視覚障害者の利便性が損なわれていく一方である。そのため、視覚障害者の鉄道利用の利便性が低下することがないよう、利用者の利便性を考慮した窓口の配置及び人員の配置、そして切符購入における各種機器のアクセシビリティの確保とそれらの機器の設置を求める。
2.情報アクセシビリティの確保に関する要望
(1)マイナンバーカードによる健康保険証が視覚障害者も確実に利用できるようにすることを求める。
令和6年12月に紙による健康保険証が廃止されることに伴い、マイナンバーカードと健康保険証との統合が進められている。
すでに医療機関においては、マイナ保険証を利用するための端末の設置が進められている。しかし、これらの端末は顔認証またはタッチパネルでの暗証番号入力による認証方式、医療情報提供の同意もタッチパネルによる操作方式が採用されており、視覚障害者が利用できる仕組みにはなっていない。
例えば、顔認証をしようとしても顔を合わせる位置が分からない、位置を合わせられたとしても認証完了の確認音が鳴らない、タッチパネルでの画面表示ではボタンの位置がわからないため、暗証番号や意思表示の入力操作ができない等、視覚障害者には確認・入力が困難な仕組みになっている。
一方で、視覚障害者の多くはあん摩マッサージ指圧・はり・きゅうの業に従事しており、保険を取り扱う業務も行っている。この場合、患者から提示されたマイナ保険証に視覚障害者が対応できる端末がなければ、保険取り扱いが難しくなる。
政府は、すべての国民がマイナンバーカードを取得し、保険証と統合することを目指している。そうであれば、視覚障害者も取り残されることのないよう、これらで使用する端末やシステムに早急なアクセシビリティが確保されることを求める。
(2)セルフレジや注文端末等の店舗内に設置されているタッチパネル端末が、視覚障害者も利用できる仕組みになること、あるいは人的サポートを受けられる仕組みが作られることを求める。
現在、スーパーやコンビニ、飲食店等の店舗内において、セルフレジや注文端末等のタッチパネル式端末の設置が進んでいる。しかし、前述したマイナンバーカードに関する端末と同じく、ここでも視覚障害者が利用できない端末の整備が進んでおり、視覚障害者が取り残されている状況がより深刻化されている。さらに、このような店舗の省人化により、視覚障害者が人的サポートを受けられない状況も生まれており、今まで利用していた店舗が利用できなくなっている。そのため、設置される端末のバリアフリー化はもちろん、端末を利用できない視覚障害者のことを考慮して、必ず人的サポートを受けられる仕組みが作られることを求める。
なお、端末のバリアフリー化については、全盲・弱視(ロービジョン)を問わず、多くの視覚障害者から期待の声が寄せられていることを留意したい。それは、該当のシステムや機器に視覚障害者のアクセシビリティが確保され利用することができるのであれば、情報入手、移動、コミュニケーション等といった視覚障害者の多くの困り事を解決できる可能性を秘めているからである。そのため、視覚障害者のための情報アクセシビリティを確保するために、機器開発においては、開発当初から視覚障害者の意見を取り入れることを同時に求める。