斉藤国土交通大臣に駅の無人化に関する要望書を提出

2023年10月20日

 令和5年10月11日、日本視覚障害者団体連合、全国盲ろう者協会、全日本ろうあ連盟、全日本難聴者・中途失聴者団体連合会の4団体は、斉藤鉄夫国土交通大臣に対して「無人化された駅を視聴覚障害者も安全安心に利用できることを求める要望」を提出し、併せて意見交換を行いました。

【写真】左から盲ろう者協会 門川理事、全難聴 宇田川副理事長、日視連 三宅常務理事、斉藤国土交通大臣、ろうあ連盟 石野理事長・山根理事、公明党 山本参議院議員

 全国の半数の鉄道駅が無人駅となり、有人駅であっても無人になる時間帯がある中にあっても、視覚や聴覚に障害のある者が安全に安心して無人化された駅を利用できるために取りまとめた内容となっており、前文においては、障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法の基本理念にあるように、緊急情報を含めた情報提供ならびにコミュニケーション手段の確保についても触れています。
 また、駅の無人化を進める際には、必ず当事者参加も行うことにも触れています。

 要望した項目は、次の4項目です。

 1.無人状態の鉄道駅であっても視覚や聴覚に障害のある者が安全に安心して移動できるよう要望します。

 2.必要なときに鉄道事業者職員等に確実に問い合わせられる仕組みを要望します。

 3.有人窓口の廃止と、それに代わる券売機の設置については、視覚や聴覚に障害がある者にも配慮されることを要望します。

 4.必要な情報を確実に得られるよう整備することを要望します。

 加えて、意見交換に同席した三宅隆常務理事からは「本年3月よりJR東日本管内で運用が開始された障害者用ICカードは大変便利に多くの視覚障害者が利用している。しかし、更新手続きをするには有人窓口に行く必要があり、そのためだけに遠く離れた有人窓口のある駅まで出向く必要がある。話せる券売機の設置も進んでいないし、対応についても明確になっていない。せっかくの有用なサービスが、このような不便さなく利用できるよう、さらなる検討をお願いしたい」と述べました。
 斉藤大臣からは「今回のように、視覚や聴覚に障害のある当事者団体が一丸となって要望されたことは始めてのことだと思います。今回の要望書の内容、また意見交換の内容を踏まえて、鉄道局を中心に、局長クラスの会議や意見交換への同席をはじめ、しっかり取り組んでいきたいと思います。」と述べられました。

 要望書の内容は以下のとおりです。

令和5年10月11日

国土交通大臣
 斉藤 鉄夫 殿

社会福祉法人日本視覚障害者団体連合
会長 竹下 義樹

社会福祉法人全国盲ろう者協会
理事長 真砂 靖

一般財団法人全日本ろうあ連盟
理事長 石野 富志三郎

一般社団法人全日本難聴者・中途失聴者団体連合会
理事長 宿谷 辰夫

 

無人化された駅を
視聴覚障害者も安全安心に利用できることを求める要望

 

 全国の鉄道駅の半数が無人駅となり、有人の鉄道駅であっても無人になる時間帯が増えてきている昨今、私たち視覚や聴覚に障害のある者は今までのように安心して鉄道駅を利用できなくなってきています。
 昨年5月に施行された「障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律」(通称:障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法)第3条の基本理念3項に、「障害者が取得する情報について、可能な限り、障害者でない者が取得する情報と同一の内容の情報を障害者でない者と同一の時点において取得することができるようにすること。」と示されており、緊急時を含めた情報を、障害の有無にかかわらず同一時点で得られることも必要です。
 また、駅の無人化を進める際は、移動や情報入手、コミュニケーション等の支援に関する必要な整備について、視覚や聴覚の障害当事者団体との建設的対話を行うことも必要です。
 現状の困難を解消するため、また今以上に駅の無人化が進んでも、引続き私たちが安全に安心して利用できるよう、以下のことを要望します。

 

1 無人状態の鉄道駅であっても視覚や聴覚に障害のある者が安全に安心して移動できるよう要望します。

 視覚に障害がある者あるいは盲ろう者が無人状態の鉄道駅を安全に安心して移動できるよう、要請により人的対応が確実に受けられる仕組みが必要です。
 また、バリアフリー整備ガイドラインで示されている視覚障害者誘導用ブロックや音サインなど、鉄道駅で必要とされる整備を行うことが必要です。
 加えて、ホームからの転落など、危険な状況にならないよう、監視カメラやホーム縁端に近づいたときの注意喚起を促す案内、万が一転落した際の対策等、必要な安全対策を講じることも必要です。

 

2 必要なときに鉄道事業者職員等に確実に問い合わせられる仕組みを要望します。

 現在鉄道駅に設置されているインターフォンは、視覚に障害のある者にとってはその設置場所が分からない、聴覚に障害がある者にとっては、音声のみで対応する形式となっているなど、容易に鉄道事業者職員等に問い合わせられるようになっていません。
 そのため、視覚に障害がある者がその設置位置が分かるよう、音声あるいは音サインなどで示すことが必要です。
 また、聴覚に障害がある者が円滑に問い合わせられるよう、モニター付きのインターフォンの設置と手話言語や筆談で対応できる職員を配置することが必要です。なお、スマートフォン等の利用者にとっては、担当職員と視聴覚的にアクセス可能な二次元バーコードを、駅構内の要所に貼付する対応も有効です。
 さらに、画面表示は弱視者(ロービジョン)や弱視の盲ろう者も見やすい表示であること、難聴者や難聴の盲ろう者が明瞭に聞き取れるような機器を整備する必要があります。

 

3 有人窓口の廃止と、それに代わる券売機の設置については、視覚や聴覚に障害がある者にも配慮されることを要望します。

 駅の無人化が進むとともに有人窓口の廃止も進んできています。また、それに伴い、遠隔のオペレータと対話しながら利用する自動券売機の設置も進められています。そこで、有人窓口が廃止されても、今まで行えてきた手続きが変わらずできるよう早急な対応が必要です。
 遠隔のオペレータと対話しながら利用する自動券売機については、視覚や聴覚に障害がある者も円滑に操作したりコミュニケーションが取れるよう、必要な点字表示や音声案内の実装と、視覚や聴覚、盲ろう者等の重複障害者に対応できるオペレータを増やすことが必要です。

 

4 必要な情報を確実に得られるよう整備することを要望します。
 視覚に障害のある者が列車遅延などの必要な情報を音声案内等で得られるよう整備することが必要です。
 また、聴覚に障害のある者が全ての音声情報を文字等の案内で得られるよう整備することも必要です。

 

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