日視連発第37号
令和2年7月8日
厚生労働大臣 加藤勝信 殿
社会福祉法人日本視覚障害者団体連合
会 長 竹 下 義 樹
新型コロナウイルスに係る
視覚障害あん摩マッサージ指圧師・鍼師・灸師への支援に
関する要望書
日ごろより視覚障害者の雇用と福祉の向上にご尽力いただき厚く御礼申し上げます。
さて、あん摩マッサージ指圧・鍼・灸(以下、あはきとする)は、視覚障害者にとって自立した社会参加を実現できる重要な職業の一つになります。例えば、全国各地で治療院を開業する自営の視覚障害あはき師は、地域医療の一端を担う役割を果たすため日々研鑽を積み、治療を必要とする地域住民の支えになっています。また、現在のあはき業は、訪問型施術所に勤める者、介護施設において機能訓練指導員として勤務する者、ヘルスキーパーとして企業に雇用される者等、様々な形であはき業に従事し、国民のあはきに対するニーズに応えています。つまり、視覚障害あはき師は、国民の健康維持・増進に寄与する重要な役割を担っています。
しかしながら、新型コロナウイルス感染防止のため社会的距離(ソーシャルディスタンス)の確保が求められていること等から、別添の資料の通り、様々な問題が発生し、多くの視覚障害あはき師は満足に仕事ができず、収入が著しく減少し、窮地に立たされています。
このままでは、視覚障害あはき師は日々の生活もままなりません。また、自信をもって患者への施術ができません。
そこで、視覚障害あはき師の生活を支えるために、以下のとおり要望します。善処方を宜しくお願い申し上げます。
要望事項
1.あはき業にとって必要不可欠な物品(マスク・消毒用アルコール等)を、優先的に入手できるようにしてください。
【説明】
あはきの施術を行う上で欠かせない物品は大変入手しづらい状況が続いています。また、視覚障害あはき師の場合は、これらの物品を自らで探すことは難しく、入手できないために治療院を一時閉鎖する者もいます。そのため、視覚障害あはき師が安心安全に施術を行うために、これらの物品の優先的な入手を求めます。
2.各自治体が実施する休業補償においてあはき業が休業要請の対象外であったとしても、感染拡大防止の見地あるいは顧客の減少からやむを得ない事情で休業したあはき業者に対しては、休業補償と同等の支援を行ってください。
【説明】
一部の自治体では、新型コロナウイルスの感染拡大を防止する観点から独自に休業補償を行っています。しかし、あはき業は医療に含まれていることから休業補償の対象外としている自治体も多く、自営の視覚障害あはき師の中には休業補償を受けられない者が多数存在します。特に、患者への感染を懸念して自主的に休業した者の中では、無収入になった者も少なくはなく、全国の視覚障害あはき師からは休業補償を求める声が寄せられています。そのため、早急に支援を開始するよう求めます。
3.各種支援策(持続化給付金、休業補償等)の申し込みに関し、申請手続きの援助、申請手続きのための移動の支援、及び受付窓口における柔軟な対応を行ってください。
【説明】
視覚障害者は読み書きに大きな困難があり、これらの支援策の内容確認、申請書の作成が一人ではできない者がいます。また、申請手続きにおいて移動が必要になった場合、一人では移動できない者もいます。さらに、申請に必要な書類を探すことができず、申請を断念する者もいます。これらの者は、自営の視覚障害あはき師に多く該当し、全国から申請ができないことへの不安や苦情が寄せられています。そのため、申請を希望する視覚障害あはき師が必ず手続きを行えるよう、国や自治体による支援体制の確立を求めます。
4.中長期的に収入が減少した視覚障害あはき師に対して、継続的な経済支援を行ってください。
【説明】
あはき業の売上減少は、あはきの施術がいわゆる「3密(密閉、密集、密接)」に該当するため、利用者が治療を控えていることが原因の一つと言われています。そして、この3密は、今後も継続して国民全体が守ることになると、あはき業では中長期的に利用客が戻らないことが予想されます。しかし、視覚障害あはき師は、簡単に職種を変えることができず、この期間は少ない利用客の施術を行うのみとなり、生活をするために十分な収入を得ることができません。そのため、視覚障害あはき師があはき業を続けるために、売り上げ補填等の継続的な経済支援を求めます。
5.訪問型施術所等に雇用されている視覚障害あはき師が不当な取扱いを受けたり、窮地に追い込まれることがないよう、該当する施術所等に対する支援とともに、本人に対する柔軟な支援を行ってください。
【説明】
訪問型施術所や一部の施設等に雇用されている視覚障害あはき師の中では、新型コロナウイルスの影響による需要減少を理由に、勤務先から突然の自宅待機や配置転換が命じられ、慣れない環境の変化に苦痛を感じたり、解雇されるのではないかと不安になっている者がいます。また、勤務先から休業補償がない者、さらには給料が未払いになった者もいます。このような状況が続くと、安心して仕事をすることができないばかりか、自身の仕事を失う恐れがあります。そして、視覚障害あはき師は、一度仕事を失うと再就職することは容易ではありません。そのため、雇用されている視覚障害あはき師が今後も安定して雇用されるよう、該当する企業及び本人の状況に見合った柔軟な支援の実施を求めます。
6.企業等にヘルスキーパーとして雇用されている視覚障害あはき師の雇用環境がこれ以上厳しくならないよう、該当する企業等に対する支援とともに、本人に対する柔軟な支援を行ってください。また、ヘルスキーパーの一層の雇用促進を図ってください。
【説明】
現在、多くの企業等では、視覚障害あはき師がヘルスキーパー(企業内理療師)として従事し、マッサージ等を通して職員の健康の維持増進に寄与しています。ところが、新型コロナウイルスの感染拡大以降は、ヘルスキーパーの業務そのものが接触業務となるため、企業側より自粛を促され、多くのヘルスキーパーは自宅待機を余儀なくされています。また、一般職員のテレワーク化が進むと、職場に職員がいなくなることから、ヘルスキーパーが会社に在中する必要性が減ることが予想されます。そのため、多くの視覚障害のヘルスキーパーからは、雇い止めや解雇されるのではないかといった、今後の雇用に関する不安の声が多数寄せられています。企業等で働く者の健康の維持増進を図る上で、ヘルスキーパーの役割は非常に重要です。特に、社会全体で経済状況の回復を目指す今後においては、その役割の重要性は増していきます。そのため、現在のヘルスキーパーの雇用を安定させるための各種支援、さらに今後を見据えた雇用促進(企業等への導入、資質向上等)を求めます。
以上
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