日盲連近畿ブロックが上新庄駅の事故現場の視察と阪急電鉄(株)との意見交換を実施 

2018年2月1日

 阪急京都線「上新庄駅」(大阪市東淀川区)で平成29年12月18日に発生した視覚に障害のある女性がホームから転落し死亡した事故を受け、平成30年1月29日、日本盲人会連合の橋井正喜常務理事と近畿ブロック協議会の辰巳寿啓会長並びに同加盟団体代表の8名と合計18名(付添含む)が調査のため事故現場を視察するとともに、阪急電鉄株式会社と意見交換を行った。
 18名は事故現場で黙祷を捧げ、冥福を祈るとともに悲しい事故が度重なりおきていることに悔しさをにじませた。その後各代表が同駅の安全性を確認した。その結果、ホームには内方線付き点字ブロックが敷設されているものの、柱が多くあること。また同駅は電車の本数が多く、相対式のホームでは、どちらの電車が到着及び通過したのかがわかりづらいため、ホーム上を歩く際に自分の位置及び方向を見失う恐れがあることが指摘された。
 上新庄駅での視察を終え、場所を梅田駅に移し、阪急電鉄株式会社と意見交換並びに視覚障害者が安全に駅を利用できるための環境の構築の要望書を提出した。意見交換では上新庄駅での事故に関することに加え、駅を安全に利用するための意見が双方から出された。
 日盲連の参加者からは、ホームドアの設置をすること。駅員及び乗客による声掛けや見守りのソフト面の理解・啓発をすること。また、音声や音響による案内は視覚障害者にわかりやすいものにして欲しいと求めた。
 阪急電鉄(株)からは、駅員による人的支援や、全駅に設置されている「駅係員よびだしインターホン」等の安全対策並びにホームドアの設置計画について説明を行い、今後も引き続き、安全対策に努めていくとともに一般の乗客にも協力を求めていきたいと考えを示した。

上新城駅の視察の様子

上新城駅の視察の様子

<近畿ブロックからの参加者>

①(一社)奈良県視覚障害者福祉協会 辰巳寿啓会長
②(福)滋賀県視覚障害者福祉協会 大橋 博会長
③(公社)京都府視覚障害者協会 田尻 彰会長
④(一財)大阪府視覚障害者福祉協会 高橋 あい子会長
                  宮林 幸子副会長
⑤(一社)大阪市視覚障害者福祉協会 山野一美会長
⑥(特)堺市視覚障害者福祉協会 外山龍子会長
⑦(福)兵庫県視覚障害者府福祉協会 田中 環会長

上新庄駅で黙とうしている様子

上新庄駅で黙とうしている様子

上新庄駅の視察の様子

上新庄駅の視察の様子

上新庄駅視察の様子

上新庄駅視察の様子

 

 

 

 

テレビ電話機能付きインターホン

阪急電鉄の全駅に設置されている「駅係員よびだしインターホン」。これは、テレビ電話機能付きのよびだしインターホンで、よびだしボタンを押すだけで、各駅の改札口や全線の主要8駅に設けられた「サポートセンター」につながり、画面に係員の顔が映し出され、会話することができる。視覚障害者にとっても利用しやすいインターフォンになっている。
これらの取組みは、コミュニケーションのバリアフリー化を果たしたと評価され、2014年1月、国土交通省バリアフリー化推進功労者大臣表彰を受賞されている。

 

阪急電鉄京都線『上新庄駅』ホームからの視覚障害者の
転落死亡事故に関する原因究明と安全対策を求める要望書

社会福祉法人 日本盲人会連合 
近畿ブロック協議会
委員長  辰巳 寿啓

< ホーム転落、はねられ死亡 視覚障害者、また犠牲 大阪 >

 私達視覚障害者にとって、最も危険と恐怖を感じる鉄道駅ホームからの転落死亡事故がまた報じられました。理由は何であれ、実に視覚障害ゆえの悲しみと不条理を禁じ得ません。
 報道によれば、事故は、『18日午前9時20分ごろ、大阪市東淀川区上新庄2丁目の阪急京都線上新庄駅で、大阪府豊中市新千里北町2丁目、薬剤師上杉輝子さん(89)がホームから線路に転落して回送電車(8両編成)にはねられ、搬送先で死亡が確認された。上杉さんには視覚障害があり、大阪府警は過ってホームから落ちたとみている。…』
 このニュースは、新聞各社でも報じられ、同じ視覚障害を持つ私達にとっては、身の縮む思いと繰り返される惨劇に心痛む一瞬となりました。相次ぐ事故の繰り返しにやり場のない苦悩と怒りを感じたことは言うまでもありません。
 日本盲人会連合 近畿ブロック協議会に加盟する9団体は、昨年度から相次ぐ鉄道駅死亡事故を繰り返さないこと、何よりも鉄道事業者は、乗客の安全・安心な駅ホームの究極的な目標として、ホーム柵の設置を目指しつつ、それまでの間においては、駅員の配置や利用される市民のご支援を得ながら、声かけ等の啓発広報に力をいれることなどを強く要請して参りました。このような要請行動は、昨年度東京や大阪府内で起こった事故を受け、近畿運輸局をはじめ、近畿圏内の各鉄道事業者に対して、要望書を提出すると共に、直接担当部局へ私達の声を届ける形で取り組んで参りました。
 私達視覚障害者は、日々公共交通機関である鉄道駅を利用する一人の乗客であり、たまたま視覚に障害のある市民でもあります。日常の外出で自由に駅ホームを利用することは、障害のあるなしに関わらず平等な権利であり、安全は、生活のあらゆる場面で確保される必要があり、殊にホームからの転落事故は、多くの市民同様視覚障害者も当然安全対策の中で合理的配慮事項として守られなければならない存在です。
 この間、我が国においては、多くの視覚障害者の犠牲の上に、駅ホームの安全対策が進められ、近年は関係行政機関や鉄道事業関係者の努力により目覚ましい成果をあげつつあるものの、視覚障害者がホームから転落する事故は後を絶たず、取り組みは今なお道半ばであると言わざるを得ません。
 今回の事故に際しましても、貴社として、事故に至った経過や背景を精査され、原因の究明と今後への具体的な改善への手立てを講じられますよう、重ねてお願い申し上げ、当面のこととして、以下のことを求めます。
 
一 事故原因の究明にあたっては、本人の責任に転嫁しないことを前提に、駅員の配置、構造上の問題点などについて原 因究明を行い、今後の施策に生かすこと
一 とりわけ、本駅は、近隣にある大阪府立北特別支援学校の通学路でもあるところから、早急な改善と原因究明を急がれること
一 すべての駅ホームの危険箇所の実態を調査し、危険箇所(特に狭隘で障害物の多い駅ホーム)の優先的な対策を実施し、駅ホームのみならず鉄道駅全体の安全が確保できる対策を行うこと
一 計画対象駅ホームへの転落防止柵の設置を急ぎ、更なる計画拡大を求めること
一 すべての駅ホームに内方線付き点状ブロックを敷設すること
一 駅ホームへの警告用ブロックの敷設の在り方について改めて検討すること
一 駅ホームからの転落事故に備え、ホーム下等に転落者の退避空間を設けること
一 すべての駅に安全監視員を配置すること
一 法令によって駅ホームの安全対策を義務付けること
一 駅ホームでの歩きスマホを禁止すること
一 危険に遭遇しようとしている視覚障害者に対する適切な声かけ・援助の仕方について研究し啓発を促進すること
一 視覚障害者の安全な移動について国民全体の理解を高めること
一 盲導犬育成・貸与を担う訓練機関等と連携し盲導犬の育成と使用者
  の訓練におけるホーム上の誘導内容、転落防止のための訓練等について改めて検証すること

 以上、早急な改善への取り組みにより、全ての鉄道を利用される乗客一人一人の安全を守る視点からの抜本的な対策が講じられますよう、強く要請いたします。