都内駒込駅前における視覚障害者の交通事故に関する 緊急声明

2018年12月25日

平成30年12月25日 

 

都内駒込駅前における視覚障害者の交通事故に関する
緊急声明

社会福祉法人 日本盲人会連合 
会長 竹下 義樹 

公益社団法人 東京都盲人福祉協会 
会長 笹川 吉彦 

 去る12月7日早朝、都内駒込駅近くの本郷通りの信号機のある横断歩道上を歩いていた視覚障害者の男性が、車にはねられて死亡するという痛ましくも悔しい事故が発生した。ご遺族には心からお悔やみを申し上げる。それと共に、またしてもという感でこの事実に接しなければならないことに哀しみと無限の憤りを禁じ得ない。改めて故人のご冥福をお祈りする。

 本年は改正バリアフリー法が施行され、ユニバーサル社会推進法が議員立法として可決されるなど、徐々に障害者の移動に関する障壁を取り除くための環境が整備されつつある。しかし、現実には健常者の視点から作られた施設や設備または利用条件が多く、それらの大半が視覚障害者にとっては利用しづらいことから、新たな社会的障壁ないし危険を惹起する要因となっている。

 この社会的障壁において、もっとも困難とされるのが「道路の横断」である。特に誘導音が鳴らない横断歩道等での横断は、常に危険と背中合わせの状況となっている。視覚情報から青や赤の判断がつかない視覚障害者にとっては、音での情報が必須であるが、青や赤を判断するための誘導音がない場合は、目の前の信号情報を正確に認識できず、十分注意した上でも危険を覚悟して道路を横断せざるを得ない。

 そうした中、今回の交通事故が発生した。事故現場の信号機に音響式信号装置は付いていたが、19時から翌8時までの夜間、早朝は周辺住民の要望で信号の状態を音で知らせる機能は停止されていた。音響式信号機の夜間・早朝の誘導音の停止は、私たち視覚障害者にとって極めて深刻な問題である。誘導音が停止されている時間帯は、車の走行音や人の動きなどの間接的な情報を頼りに横断することになり、危険この上ない。

 今回、事故に遭われ亡くなられた男性は、長く遠方の勤務先に通勤され、途中の混雑を避けるために早朝出勤をされていたと聞く。今回の事故でも明らかなように、視覚障害者も健常者と同様に、早朝や夜間にも仕事等の理由で単独の移動を行っている。しかも、見えない・見えにくいことによる危険を回避するため、細心の注意を払いながら移動している。それでも犠牲者が出てしまうことは、何と不条理なことか。

 広くこの事故を教訓とするため、下記要望を添えて以上のように声明する。

要望

1 音響式信号機は24時間誘導音を出すこと。

2 音響式信号機の誘導音を時間帯により停止する場合は、それに代わる代替機能を作動させ、視覚障害者が信号の色を認識できるようにすること。

3 運転者は、横断歩道を渡っている視覚障害者を視認したら信号の色に関わらず、まず、徐行、一時停止の道路交通法の規定を遵守すること。