「視覚障害者誘導用ブロックに関する研究発表」に関する申し入れ
平成29年12月22日に「視力の低い人への視認性と景観との調和の両立をめざし、車椅子やベビーカー利用者のバリアになりにくい、視覚障害者用点字誘導ブロックの開発」について東京大学分子細胞生物学研究所所属の准教授伊藤啓氏が研究の成果を公表されました。
しかし、伊藤准教授が公表された内容には複数の疑問点があり、日本盲人会連合は平成30年2月16日付で以下のとおり申し入れいたしました。
日盲連発第150号 平成30年2月16日 東京大学 分子細胞生物学研究所 所長 白髭 克彦 殿
社会福祉法人日本盲人会連合 会長 竹下義樹
視覚障害者誘導用ブロックに関する研究発表について(申し入れ)
貴研究所におかれましては、視覚障害者に関する並々ならぬご関心を寄せていただいていることに敬意を表します。 さて、平成29年12月22日に貴研究所所属の准教授伊藤啓氏が「視力の低い人への視認性と景観との調和の両立をめざし、車椅子やベビーカー利用者のバリアになりにくい、視覚障害者用点字誘導ブロックの開発」について、研究の成果を公表されました。しかし、伊藤准教授が公表された内容には、疑問点がありますので、以下のとおり申し入れます。
【申し入れ事項】 1.研究発表資料の謝辞にあたる部分に本連合の名称が記載されていますが、研究内容・研究結果について協力した事実はなく、また名称記載についても本連合の了解もなく記載されており、視覚障害者及び福祉関係者に誤解を与えています。そのため、該当部分の削除を要請します。 2.視覚障害者誘導用ブロックにつきましては、JIS化された経緯からも明らかなように、現行規格に準拠した視覚障害者誘導用ブロックは車いすやベビーカー利用者の意見を十分に反映されたものです。にもかかわらず、これら利用者が不便を感じていると断定的に結論づけることは不正確なものであり、誤解をまねくおそれがあるので、該当部分の表現の再検討を要請します。 3.公共空間においては、視覚障害者誘導用ブロックは、広く現行規格に即したものが敷設されており、一般的にも周知されています。にもかかわらず、そうした規格と異なるさまざまな色や形状のブロックが敷設されると視覚障害者に混乱を与える恐れがあります。研究内容の広報にあたっては、混乱が起きないような表現にしていただくことを要請します。 4.一部の新聞報道の中で、本連合相談員の発言を取り上げ、あたかも伊藤准教授の研究内容を容認したかのような報道をされています。そして、そのことを前提として、貴研究所及び関係者より各自治体・関係機関に働きかけが行われていると聞き及んでいます。本連合の相談員は、適切な研究がされることを希望する旨の発言をしたに過ぎません。もちろん、本連合としての見解でもありません。このような働きかけが事実であれば、即時にそうした行動を自粛することを要請します。
【申し入れ事項に関する補足】 視覚障害者誘導用ブロックは、1967年にわが国で最初に発明・設置されて以来、視覚障害者が安全安心して移動するための最も有効な設備となっています。そして、当初さまざまな視覚障害者誘導用ブロックが製作されたため、2001年に視覚障害者、研究者、車椅子利用者、ベビーカー利用者等の意見を反映して、ブロックの大きさや突起の形状・数がJIS化されています。 また、ブロックの色として用いられている黄色についても、ロービジョン者から容易に視認しやすく、移動する際の道しるべにもなっているという現状があり、視覚障害者及び福祉関係者は当然のことながら、一般的にも黄色が周知されています。 そのため、本連合においては、現状のJISならびに視覚障害者の移動円滑化のために整備された各種ガイドラインにおいて示されている視覚障害者誘導用ブロックの規定に即した内容を、屋内外を問わず普及してもらいたいと望んでいます。 今回、伊藤准教授が研究された視覚障害者誘導用ブロックについては、デザインを重視した色を用いた敷設に繋がることが懸念され、その結果、視覚障害者の安全安心な移動を保証するものとはなっていないことを付記します。 なお、本連合は、今後も、視覚障害者、車椅子利用者、ベビーカー利用者など、多数の方々のご意見を伺い、伊藤准教授の提案された視覚障害者誘導用ブロックをも含め、具体的な検証作業をも行った上で、より適切な視覚障害者誘導用ブロックを含む安全安心な公共空間が前進するよう活動していく所存です。 |
- 申し入れ書
1)東大伊藤准教授点字ブロック発表に関する申し出について(日盲連発第150号)
(ワード形式/18KB)
2)東大伊藤准教授点字ブロック発表に関する申し出について(日盲連発第150号)
(PDF形式/301KB)