第69回全国盲人福祉大会(青森大会)

2016年6月16日

 日本盲人会連合の第69回全国盲人福祉大会最終日の5月22日はリンクステーションホール青森に全国から関係者約1,100名が参加して、盛大に大会式典並びに議事が行われました。
 第1部の式典では、佐々木秀勝青森県視覚障害者福祉会会長の歓迎挨拶、竹下義樹日本盲人会連合会長の主催者挨拶に続いて、日盲連顕彰等受賞者に表彰状、感謝状が贈られました。
 続いて、塩崎恭久厚生労働大臣の挨拶を社会・援護局障害保健福祉部の品川文男自立支援振興室室長補佐、馳弘文部科学大臣の挨拶を文部科学省初等中等教育局特別支援教育課青木隆一特別支援調査官が代読したのを皮切りに、三村申吾青森県知事、鹿内博青森市長等の多数の来賓から祝辞が述べられました。

第69回全国盲人福祉大会

第69回全国盲人福祉大会式典の竹下義樹会長挨拶

 

 

日盲連顕彰等を受賞された方々のお名前は次のとおりです。
(敬称略)

 【村谷昌弘福祉賞】  小田垣 康次(青森県)
 【 礎 賞 】  
(組織功労)

小島 伸公(岩手県)
須藤 平八郎(栃木県)
藤田 正志(香川県)

 【光の泉賞】    
(内助等功労)

竹川 真澄(北信越ブロック・福井県)
佐藤 眞知子(近畿ブロック・大阪府)
福井 廣子(近畿ブロック・神戸市)
中澤 史子(四国ブロック・高知県)
藤井 幸代(九州ブロック・大分県)

 (福祉貢献)  

 内藤 夏子(関東ブロック・埼玉県)
南澤 純子(東海ブロック・名古屋市)
山本 篤子(中国ブロック・鳥取県)

 【 永年勤続表彰 】  小池 清(日盲連・東京都)
清水 智子(日盲連・東京都)
鷹林 智子(日盲連・東京都)
【 感 謝 状 】    一般社団法人青森県視覚障害者福祉会
  (第69回全国盲人福祉大会開催) 

 第2部の大会議事では、平成27年度決議処理報告、平成28年度運動方針案を執行部の原案どおり全会一致で可決、宣言・決議も全会一致で採択されました。
 続いて次年度の第70回全国盲人福祉大会開催地団体を代表して徳島県視覚障害者連合会の久米清美会長が、全国の会員に向けて参加を呼びかけました。
 最後はリンゴ歌の合唱で大会の幕を閉じました。

平成28年度運動方針

1.障害者差別解消法の施行を踏まえた取り組み

 本年4月1日から障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)が施行された。私たちは、長年にわたり日本における障害者差別をなくすための法律の制定を求めてきた。
 そして、平成25年にようやく障害者差別解消法が成立し、平成26年に障害者権利条約が批准され、本年4月を迎えたのである。この法律が施行されたからといって直ちにわが国の社会が変革されるわけではない。
 この法律が広く社会に浸透し、国民の意識が変わらなければ、わが国の社会から障害者差別はなくならないのである。そのためには、今後発生するであろう差別事象に対し、その解決のための組織的な取り組みをしなければならないのである。
 差別事案に対しては個人の努力に委ねるのではなく、本連合が加盟団体と連携して組織的に不当な差別的取り扱いを告発したり、合理的配慮が実現するように運動しなければならない。相談体制を充実させ、問題解決のための道筋を示すことが必要である。

2.障害者総合支援法の改正と制度改革に向けた取り組み

(1)同行援護事業の充実と地域間格差の解消
 同行援護事業は、視覚障害者の外出保障の重要な制度となっている。しかし、未だに私たちの望む制度としては不完全であり、地域間の格差も大きい状態が続いている。十分な支給量(利用時間数)の確保、入院時の利用、通勤・通学時への適用などを実現しなければならないし、自治体間における運用の格差も解決しなければならない。
 本年中には、制度改革の論議を踏まえた障害者総合支援法(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律)の改正と通知通達の改訂が予定されている。また、平成30年4月の報酬改定に向けた制度改革も検討されようとしている。そうした改正や制度改革において、私たちの要望が一つでも多く実現するよう働きかけなければならない。また、各自治体の運用における格差をなくすためには、本連合として厚生労働省に適切な対応を促すとともに、各加盟団体を通じて自治体に働きかけを行うことが必要である。

(2)意思疎通支援の拡大と確立
 意思疎通支援事業としての点訳・音訳者の養成を充実させるとともに、代筆・代読者の派遣事業を確立し、全国の自治体に拡大することが必要である。点訳・音訳者の養成を全国の自治体で実施するためには、全国的に統一されたカリキュラムが必要である。
 また、私たちが必要とするさまざまな場面において代筆・代読者が派遣されるようになるためには、全国の自治体において代筆・代読者の養成事業が行われなければならないし、厚生労働省の通達等によって派遣要件が示されることが必要である。

(3)65歳問題に対する対応
 障害者総合支援法7条は、65歳以上の障害者に対し、介護保険制度が優先的に適用されることを規定している。そのため、65歳までは障害福祉サービスを利用していた者が65歳になると、機械的ないし一律に介護認定を強要され、介護保険に基づくサービス利用を強制されることがある。
 これは明らかに制度を誤解した運用であって、65歳を過ぎても直ちに障害福祉サービスから介護保険サービスに切り替えられるわけではない。障害福祉サービス固有の制度は65歳以後も利用できるし、介護保険給付で足りない場合は障害福祉サービスをもあわせ利用できるのである。今後は障害者総合支援法の改正を注視するとともに、制度が正しく運用されるよう、加盟団体とともに自治体に働きかけなければならない。

(4)補装具・日常生活用具の拡大と地域間格差の解消
 私たちは補装具や日常生活用具の利用拡大を目指し、独自の事業として「補装具・日常生活用具に関する研修会」を実施してきた。その成果は徐々に現れつつあるが、引き続きこの事業を実施し、補装具や日常生活用具に対する正しい理解を拡げ、地域間格差をなくしていくための努力を続けなければならない。とりわけ、日常生活用具として私たちが求めている機器類が、自治体によって指定されるように繰り返し働きかけなければならない。

3.動き出したあはき問題への対応

(1)国民が一部負担であはきの施術が受けられる制度(療養費の受領委任払い)の制度化
 私たちは長年にわたり、あはきの施術において健康保険が広く適用されることを求めてきた。国民皆保険制度の下で、あはき業者が経済的に発展するためには、健康保険の適用は必要不可欠である。国は、ようやくあはきについても、柔道整復師に準じた健康保険適用を検討しようとしている。視覚障害あはき師の職業的自立を目指し、あはきが国民の健康管理に貢献するためにも、1日も早い制度確立を実現しなければならない。

(2)無免許・無資格対策
 無免許対策の一環として、免許保有者と無免許者との差別化が図られなければならない。その一環として、本年3月から「厚生労働大臣免許保有証」が交付された。今後は、圧倒的多数の有資格者がこの「免許保有証」を所持するようになり、他方で国民に対しこの「免許保有証」の存在を認識してもらうための啓発活動が必要である。また、無免許業者に対しては、引き続き保健所をはじめとする行政と警察による取り締まりを求めるとともに、その取り締まりを促すための裁判闘争を具体化することが必要である。

(3)あはき施術者(とりわけ自営業者)に対する支援としての合理的配慮の制度化
 私たちは、視覚障害あはき師の業権擁護のため、あはき法19条を死守しなければならないが、それだけでは視覚障害あはき師の職業的自立は実現しない。健康保険の適用をも視野に入れ、視覚障害あはき師が開業した場合などにおける支援としての介助者(補助者)の配置や資金的援助などを実現しなければならない。また、ヘルスキーパーなどをはじめとするあはきにおける職域拡大と身分保証も重要な課題である。

4.雇用・就労

(1)改正障害者雇用促進法の施行を踏まえた取り組み
 視覚障害者のあはき以外の職域の拡大と雇用の促進を図る活動については、本年4月からの障害者差別解消法と改正障害者雇用促進法の施行を受けて、視覚障害者がその適性と希望に沿って差別されることなく就職の機会が保障され、採用後においても視覚障害者がその能力を適正に発揮できるための合理的配慮の提供が行われるよう、即ち、法の目的が適正に執行されるようにする。そのためにも、ホームページ等を活用し、あるいは相談活動によって当事者の声を吸い上げ、実態を把握するとともに、問題点や改善点があれば、国に要求する。

(2)中途視覚障害者の雇用の継続と合理的配慮
 中途視覚障害者がそれまで培ってきた多くの知識や経験を無駄にしないためにも、定年まで働き続けられるように雇用継続を図ることは、社会全体にとっても極めて重要な課題である。
 そのためには、在職中に、必要なロービジョンケアや在職者訓練等のリハビリテーションをはじめとする合理的配慮の提供が行われることが不可欠である。そのことがスムーズに行われるようにするために、国等に必要な要望・提案をする。

(3)好事例の収集と情報提供
 既に国等においても事例集を作成してホームページ等で公表しているが、それだけでは不十分な面があるので、当事者側で把握できた好事例についても、国等に提供し、事例集の充実に協力するとともに、当事者からの相談や要望にも応える。

5.大災害における減災と被災者対策

(1)東北3県に対する支援の継続と被害を風化させないための活動
 平成26年度には、復興庁・副大臣に対して被災地に住む視覚障害者から集められた意見を元に、被災地で生活をする視覚障害者の現状や要望を伝えており、このように現地の生の声を伝えることが重要であることから、引き続き現地の声を行政に伝え、必要な対策の実施を働きかけなければならない。
 語り部研修会を各地で開催し、支援者に対して災害時において視覚障害者が困難である事項を伝えることで、避難所における支援の充実を図るようにしていく。
 これに加えて、東日本大震災情報誌『友歩動』を引き続き発行・配布する。

(2)熊本大地震による被災者への支援
 今年度に入った直後である4月14日には熊本県を中心とした熊本大地震が発生し、多くの視覚障害者が被災した。安否の確認を含め早急に必要な支援を行わなければならない。

(3)都市直下型地震や東南海地震などに備えた対策
 災害が起きた時の対策として、まず予め被害を少なくするため、非常時持ち出し品、自宅の安全対策、避難・誘導対策などを促すとともに、避難所での生活について早急な対策を講ずることが必要なことから、対応マニュアルなどの普及啓発に努める。

6.外出における安全安心を確立するための活動

(1)環境の整備
 視覚障害者が安心して外出するための環境整備の一環として、音響信号機の設置はもとより、LEDによる補助信号機、エスコートゾーンの設置の拡大に向けた取り組みを実施する。
 また、時差式信号機などへの対応も積極的に行う。視覚障害者誘導用ブロックの普及においては、屋外用と屋内用を区別して設置されるよう運動する。

(2)歩行訓練士の配置基準を制定させるなどして単独歩行がより可能になる条件をつくる
 平成27年度において、全国の歩行訓練の状況を把握するため、3回にわたって各地の歩行訓練士が日本盲人福祉センターに集い、現状報告などを実施した。これを受けて今年度は、歩行訓練士の配置基準を作るための調査研究を行い、歩行訓練を含む生活訓練の報酬単価の見直しなどを提案し、全国どこででも歩行訓練が受けられるように働きかける。

(3)同行援護事業の拡充と地域間格差の解消
 同行援護事業所等連絡会が中心になって、ガイドヘルパー養成のための指導者を引き続き育成する。更に、前述したように、地域間格差を解消するため、制度の内容などを積極的に研修することも必要である。

7.弱視者(ロービジョン)対策

(1)弱視者問題を継続的に取り組むための体制の強化
 本連合として、弱視者懇談会を継続的に取り組む中で、弱視者問題の実態と様々な課題が明らかになりつつある。日本眼科医会研究班報告(平成19年調査)によると、国内の視覚障害者数を米国の基準を使って算出したところ、164万人にのぼっている。この多くが弱視者(ロービジョン)であるが、従来の私たちの活動ではカバーできなかった部分でもある。そのようなことも念頭に置きつつ、これまでの弱視者懇談会との整合性を図りながら、弱視者問題を継続的に取り組むための弱視者協議会(仮称)を設置するなど、体制の強化を図る。

(2)著作権法の改正を含むマラケシュ条約の批准に向けた取り組み
 弱視者(ロービジョン)をはじめ視覚障害者などの読書環境の整備と権利保障のためには、マラケシュ条約の批准は重要な課題である。著作権法の改正にとどまらず「読書バリアフリー法(仮称)」の制定などの必要性とその内容について関係者を交えた検討を進める。

8.青年層や女性の結集と後継者の養成

(1)青年層を取り巻く課題に対する取り組み
 本連合の会員は、わが国の高齢化に伴い、会員の高齢化が顕著になっている。また、30代~50代の青年層の入会は少なく、会員の高齢化に拍車をかけている。そのため、本連合の活動を未来にまで続かせるためには、青年層の取り込みが急務である。
 青年層を取り込むには、まず、様々な懇談会や意見交換会を開催し、青年層が抱える問題や悩みを吸い上げ、青年層が求める要求を実現するための運動を起こし、本連合が青年層にとって魅力がある当事者団体になる必要がある。
 そして、同世代の視覚障害当事者が積極的に運動を行っている姿が見えるようにするためにも、青年協議会の幹部役員などを、国や関係機関の検討会、本連合主催の大会などに積極的に登用する。それは、後継者作りにも繋がることであり、本連合の役員として積極的に指導と協力にあたらなければならない。

(2)女性の共同参画の実現
 人口の約半数は女性であり、視覚障害者においてもその比率は変わらないと思われる。これまでは、視覚障害女性の抱える問題は女性協議会を中心に取り組まれてきたが、今後は本連合の活動の柱の1つとして位置づけることも必要である。二重差別の問題や女性の社会進出をこれまで以上に推し進めるための方策が検討されなければならない。何よりも、女性会員が本連合の正副会長に就任していない現実を克服し、本連合においても男女共同参画を実現しなければならない。

9.情報保障

(1)点訳・音訳のための全国統一カリキュラムの作成
 障害者差別解消法が施行されたことに伴い、今後ますます視覚障害者に対する合理的配慮としての情報保障が重要となり、その手段である点訳・音訳の質と量が担保されなければならない。そのためにも、本連合が率先して全国統一カリキュラムを作成し、国等関係機関にその成果を提示し、全国統一を図る。

(2)代読・代筆制度の確立
 障害者差別解消法の施行に伴い、地方自治体や金融機関の窓口等における代読・代筆は、視覚障害者に対する合理的配慮としてますます重要である。特に金融機関においては、金融庁から代読・代筆については適切に対応するよう通知がされているにも拘わらず、未だに苦情が絶えない。とりわけ、マイナンバー制度がスタートした後、金融機関におけるマイナンバー登録に関しては、代筆が拒否されている事例が多い。そうした事態が起こらないようにするためにも、金融機関の窓口等のほか、入院中においても意思疎通支援としての代読・代筆が保障される制度の確立を強く求める。

(3)スマートフォンを中心としたICTの普及と研修
 スマートフォンなどICTの普及はとどまるところを知らず、とりわけ金融機関におけるインターネット利用等の場合においては、このままでは視覚障害者が取り残されることが懸念される。生活の様々な場面で、これまで視覚障害者が問題なく使えたものが、画像認証やタッチパネル等の方式になったために使えなくなるなどという事態も生じている。また、必要に迫られて使おうとしても、視覚障害者には確認作業ができず、使えないことも多い。このような問題を解消するためにも、スマートフォンを中心とした視覚障害に配慮したICTの普及とその使い方の研修に取り組むとともに、画像認証等の問題についても、視覚障害者が排斥されることのないように国等関係機関に改善を求める。

10.中途視覚障害者に対する支援

(1)地域リハビリシステムの確立
 視覚障害者の中で中途失明者が占める割合は増大しており、高齢化とともに中途視覚障害者に対する対策は重要課題である。中途視覚障害者が社会から離脱したり孤立することを防ぐためには、十分な情報提供と相談体制の確立が不可欠である。相談からはじまり歩行訓練を含む生活訓練が地元で受けられ、職場復帰や各地域の団体にアクセスできるようなシステムとしての地域リハビリテーションシステム(仮称)を確立しなければならない。

(2)地域包括ネットワークの立ち上げ
 わが国においては、すべての視覚障害者は眼科医での受診を経験していると言っても過言ではない。しかし、治療の終了によって、当該視覚障害者に必要な支援が途切れてしまうことが多い。必要な支援を中断させないためには、眼科医、教育機関、福祉施設、当事者団体などの関係者の連携ないしネットワーク化が必要である。そうした連携を実現するためのネットワークとしての地域包括ネットワーク(仮称)を各地に立ち上げていかなければならない。

11.政策能力の強化としての総合企画審議会の充実

(1)重点項目を継続的に取り組むための委員会やプロジェクトの立ち上げ
 これまでも新たなテーマや課題と取り組むために、総合企画審議会に専門委員会やプロジェクトチームを設置してきた。本連合としての政策能力を高め、重点項目を継続的に取り組むために、外部委員の登用も含めたチームを設置しなければならない。

(2)実態調査や事故事例などの収集を含めたデータの蓄積
 本連合として会員の要求を実現するためには、その裏付けとなるデータが必要である。実態調査のためのアンケートを実施したり、差別事例や安全を脅かす事故やヒヤリハット事例を収集し蓄積するとともに、必要に応じてそれを情報として発信していかなければならない。

12.スポーツや文化活動を拡げるための活動

(1)2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けた取り組み
 平成32年(2020年)の東京オリンピック・パラリンピックを前に、パラリンピック競技の啓発活動を推進するとともに、パラリンピック以外の視覚障害者スポーツ競技を紹介するイベントの開催に向けて、関係機関と当事者によるプロジェクトチームを作り活動する。

(2)ニュースポーツを含めたスポーツの裾野を拡げるための活動
 視覚障害者の体位向上と社会参加を目指し、既存のスポーツだけにとどまらず、新しいスポーツなどの展開に取り組む。このような活動を通じて視覚障害者のスポーツの普及振興を図る。

(3)文化芸術活動の充実
 音楽を通じて日本文化の発展に寄与しつつ、会員の一層の技芸向上を図るため全国三曲演奏会を開催するとともに、生活の質を高めるための視覚障害者による芸術文化活動を支援する。
 全国盲人文芸大会として、俳句、川柳、短歌、随想・随筆を募集する。更に、全国盲人将棋大会を第40回記念大会として開催する。

13.財政基盤の確立

(1)安定した財政運営
 国の補助金や委託事業が縮小し、あるいは毎年のように実施される「一割カット」が財政運営を困難にしている。本連合はこれまで補装具・日常生活用具の販売による利益を日本盲人福祉センターの経営と本連合の活動の重要な財源としてきたが、これも毎年のように売上げが減少しており、極めて厳しい状況が続いている。そうした中にあっても、単年度における赤字を出すことなく、退職金や建物管理費等の積立を行っていくことが必要である。そのためには、経費の節減だけでなく、新たな財源を生み出す事業を検討するとともに、日常生活用具や補装具の売上げを伸ばすための方策を講じなければならない。

(2)財政運営における透明化
 社会福祉法の改正によって、これまで以上に財政の透明化や公正さが問われることになる。また、加盟団体や会員にもわかりやすい財政報告(決算書など)を検討することも必要である。

14.国際交流と国際貢献

 本連合は、日本盲人福祉委員会を介してWBU(世界盲人連合)やWBU-AP(世界盲人連合アジア太平洋協議会)に参加し、国際交流と情報収集を行っていくことになる。また、隣国である韓国との定期的な交流を継続するとともに、可能な範囲でスポーツを通じた交流も検討する。

15.法人改革に備えた取り組み

 社会福祉法等の一部を改正する法律(改正社福法)が平成28年3月31日に公布された。これに伴い当法人においても平成29年4月1日には新体制に完全移行しなければならない。理事会、評議員会の構成をはじめその選任方法や責任についてもガバナンス強化の観点から大幅な組織変更が必要となる。ワーキンググループ等を設置し、準則等が示され次第、当法人の特性に合致した定款や定款細則をはじめ諸規定の制度設計を進めるとともに、次年度以降の体制を整える。

宣 言

 本年4月14日に、熊本県・大分県を中心に大地震が発生し、甚大な被害が発生した。多数の視覚障害者も被災し、避難生活を余儀なくされている。まずは、地震により亡くなられた方々のご冥福を祈るとともに、被災された方々にお見舞い申し上げる。
 本年は奇しくも東日本大震災から5年の節目の年に当たる。今こそ私たちは東日本大震災の経験を活かし、直ちに熊本・大分の被災者の緊急支援に取り組まなければならない。国及び関係自治体に対し、今なお東日本大震災により被災し、避難生活を余儀なくされているたくさんの仲間と併せて、一日でも早く生活再建ができるように必要な支援を強く求める。
 さて、今から4千年ないし5千年前。ここには確かに私たちの祖先の熱い息吹があった。日本人の生活文化の底流にある、縄文文化の繁栄を今に伝える三内丸山遺跡を擁するここ青森市に、全国の視覚障害者が一堂に会し、3日間にわたり討議を重ね、私たち視覚障害者の未来について語りあった。
 本年、4月1日「障害者差別解消法」「改正障害者雇用促進法」が施行され、私たちは、新しい世界に一歩を踏み出すこととなった。私たちは、この好機を捉え、「青森大会は、障害者の権利が飛躍的に発展した契機であった。」と振り返れるだけの力強い取り組みをしなければならない。
 更なる雇用の場の確保、職域の拡大を図るとともに無資格者・無免許者が横行する厳しい競争社会の中、私たちの伝統的職業であるあん摩・鍼・灸の権益を擁護し、国民保健衛生の一翼の担い手として、その立場を確立しなければならない。加えて私たちの先人達が継承し発展させてきた邦楽についても、引き続き視覚障害者によって伝承されていくことを強く望むものである。
 また全国どこへでも、自由に、安全に行動できるシステムの確立を求め、後を絶たない駅ホームからの転落や、列車との接触事故を防止するため、鉄道駅のプラットホーム可動柵設置を強く求める。
 また、介護保険法改正の審議過程を注視し、要介護度1あるいは2の認定者への生活援助(家事援助)の保険外しや、介護認定の判定基準の引き下げを中止させ、私たちの生活が維持できるよう取り組むことを求める。
 私たちは、多くの課題について討議し、今後の方針と要望を取りまとめた。また、合理的配慮を義務付けた「障害者差別解消法」の理解を深め、生活の安定のため、方策について議論を深めた。
 そして今、私たちは、社会の構成員として社会に貢献し、生きがいのある生活を送ることを求め、本大会を機に力強く前進することをここに宣言する。

平成28年5月22日
第69回全国盲人福祉大会 青森大会

決 議

一、 視覚障害者が入院中もガイドヘルパーを利用でき、身辺の世話を看護補助者が確実に実施するよう教育と制度の充実を要望する。

一、 補装具並びに日常生活用具の給付においては、地域間格差を解消するために、品目の指定や耐用年数を国において指針を示し、当事者のニーズに合った品目の支給ができるように要望する。

一、 同行援護事業の充実を図るため、利用者負担を廃止し、ニーズに応じた支給決定がされ、有償運送協議会の許認可が容易に受けられるよう要望する。

一、 選挙公報をはじめとする情報は、点字、音声、拡大文字、テキストデータなど、当事者の必要な媒体で作成し、提供されるよう要望する。

一、 災害時における支援体制を確立し、福祉避難所に白杖や防災ベストなどの必要な物品を備蓄するよう要望する。

一、 弱視者のために公共施設や交通機関の照明・表示・サインを見やすくするよう要望する。あわせて、各地の医療機関及び訓練施設においてロービジョンケアが実施されるよう要望する。

一、 視覚障害者の安全な移動を確保するため、誘導ブロック、エスコートゾーン、音響式信号機、室内用誘導ブロックなどの拡大を要望する。

一、 テレビのニュースや緊急放送における字幕スーパーの音声化と外国語の日本語吹き替えを要望する。

一、 視覚障害者の就労を拡大するため、改正障害者雇用促進法に基づき、点字やパソコンを使用した採用試験の実施や就労を継続できるための合理的配慮が提供されるよう要望する。

一、 無資格医業類似行為者を取り締まるため、鍼、灸、マッサージの定義を明確にし、無資格業者の養成所を排除するとともに、柔道整復師による違法な保険取扱いを規制するよう要望する。
一、 視覚障害者の自立と社会参加を促進するため、歩行訓練士を増員し、配置基準を定め、どこででも歩行訓練が受けやすい環境を整備するよう要望する。

一、 インターネット取引などにおける個人認証やセキュリティー対策のための画像認証、分かりにくいID、パスワードなど実質的に視覚障害者を排除する効果のある認証方式を改め、視覚障害者も利用できるインターネット環境の整備を図るよう要望する。

以上決議する