【第二報】東京メトロ銀座線青山一丁目駅における盲導犬使用者の転落事故に関する声明

2016年8月20日

平成28年8月20日

東京メトロ銀座線青山一丁目駅における盲導犬使用者の転落事故に関する声明

社会福祉法人 日本盲人会連合
会長 竹下 義樹

 去る8月15日夕刻、東京メトロ銀座線青山一丁目駅ホームにおいて通勤帰宅途中の盲導犬使用の男性が線路に転落し死亡するという痛ましい事故が発生した。このような事故の報に接するたびに胸のつぶれる思いを抱くとともに、同じ仲間として強い憤りを禁じ得ない。
 通勤という日常の何気ない行動の途上、突然に人生を途絶されたご本人はもとより、ご家族の皆様に心から哀悼の意を表する。
 同時に、この度と同様に無念にも人生を閉じられた仲間の悲しみと痛みを共有し、二度とこのような事故が生じないよう全力を上げて取り組むことをここに表明する。

 視覚障害者にとって安全に移動することはあらゆる生活の基本である。
 安全は、生活のあらゆる場面で確保される必要があり、殊にホームからの転落事故は視覚障害者にとって最も避けなければならない問題の一つである。
 我が国においては、多くの視覚障害者の犠牲の上に、駅ホームの安全対策が進められ、近年は関係行政機関や鉄道事業関係者の努力により目覚ましい成果をあげつつあるが、視覚障害者がホームから転落する事故は後を絶たず、取り組みは今なお道半ばである。
 また、本連合の知る限り、盲導犬使用者が駅ホームから転落する事故が大きく報じられたのはこの度が初めてと思われ、改めて駅ホームの安全な歩行について検証が求められていると受け止める。

 本連合は、盲導犬使用者はもとより、その育成・貸与を担う関係諸機関、研修機関とも連携し、盲導犬使用中の安全について研究を進める決意である。
 関係機関、鉄道事業者に対しては、視覚障害者の安全な移動と歩く権利を保障するため駅ホームからの転落防止のための抜本的な対策を強く求める。

 当面の対応として以下のことを求める。

一 事故原因の究明にあたっては、本人の責任に転嫁しないことを前提に、盲導犬の使用並びに本人の歩行訓練の状況を含め事故原因を深く究明し、今後の施策に生かすこと
一 すべての駅ホームの危険箇所の実態を調査し、危険箇所(特に侠矮で障害物の多い駅ホーム)の優先的な対策を実施し、駅ホームのみならず鉄道駅全体の安全が確保できる対策を行うこと
一 計画対象駅ホームへの転落防止柵の設置を急ぎ、更なる計画拡大を求めること
一 すべての駅ホームに内方線付き点状ブロックを敷設すること
一 駅ホームへの警告用ブロックの敷設の在り方について改めて検討すること
一 駅ホームからの転落事故に備え、ホーム下等に転落者の退避空間を設けること
一 すべての駅に安全監視員を配置すること
一 法令によって駅ホームの安全対策を義務付けること
一 駅ホームでの歩きスマホを禁止すること
一 危険に遭遇しようとしている視覚障害者に対する適切な声かけ・援助の仕方について研究し啓発を促進すること
一 視覚障害者の安全な移動について国民全体の理解を高めること
一 歩行訓練士など視覚障害者の安全な移動を支援する専門家を育成し、視覚障害者自ら歩行能力を高められる施策を早期に実施すること
一 盲導犬育成・貸与を担う訓練機関等と連携し盲導犬の育成と使用者の訓練におけるホーム上の誘導内容、転落防止のための訓練等について改めて検証すること