第68回全国盲人福祉大会(岐阜大会)

2015年6月10日

 日本盲人会連合の第68回全国盲人福祉大会最終日の5月31日は長良川国際会議場に全国から関係者約1,300名が参加して、盛大に大会式典並びに議事が行われました。
 第1部の式典では、清水和弘岐阜県視覚障害者福祉協会会長の歓迎挨拶、竹下義樹日本盲人会連合会長の主催者挨拶に続いて、日盲連顕彰等受賞者に表彰状、感謝状が贈られました。
 続いて、塩崎恭久厚生労働大臣の挨拶、野田聖子岐阜県顧問衆議院議員、下村博文文部科学大臣の挨拶を文部科学省初等中等教育局特別支援教育課青木隆一特別支援調査官が代読したのを皮切りに渡辺猛之岐阜県顧問参議院議員、古田肇岐阜県知事、細江茂光岐阜市長、足立勝利岐阜県議会議長、竹市勲岐阜市議会議長等の多数の来賓から祝辞が述べられました。

第68回全国盲人福祉大会で竹下会長の主催者挨拶

竹下会長の挨拶

日盲連顕彰等を受賞された方々のお名前は次のとおりです。
(敬称略)

 【村谷昌弘福祉賞】  萩原善次郎(静岡県)
 【 礎 賞 】  
(組織功労)
佐藤勇助(青森県)
長澤 誠 (山梨県)
 【青い鳥賞】  数野勝子(山梨県)
NTT東京福祉文化事業団「ゆいの会」(東京都) 
 【ブライトスター賞】    加藤 弘 (北海道)
 【光の泉賞】    
(内助等功労)
加藤幾子(北海道ブロック・北海道)
金子紀美子(東北ブロック・福島県)
石井洋子 (関東ブロック・群馬県)
齊藤菊江 (関東ブロック・千葉市)
石田洋子 (北信越ブロック・長野県)
塚原隆子 (東海ブロック・岐阜県)
原田和代 (近畿ブロック・滋賀県)
荒木みさゑ (近畿ブロック・兵庫県)
風間久子 (中国ブロック・広島市)
片山ミトキ (九州ブロック・福岡県)
小島ケイ子 (九州ブロック・宮崎県)
 (福祉貢献)    中川小枝(四国ブロック・徳島県)
 【 永年勤続表彰 】  木村雅子(日盲連・東京都)
【 感 謝 状 】   (一社)岐阜県視覚障害者福祉協会 
 (第68回全国盲人福祉大会開催) 

 

 第2部の大会議事では、平成26年度決議処理報告、平成27年度運動方針案を執行部の原案どおり全会一致で可決、宣言・決議も全会一致で採択されました。
 続いて次年度の第69回全国盲人福祉大会開催地団体を代表して青森県視覚障害者福祉会の佐々木秀勝会長が、全国の会員に向けて参加を呼びかけました。
 最後は365歩のマーチの合唱で大会の幕を閉じました。

平成27年度運動方針

1.障害者の権利に関する条約批准を受けて動き出した諸制度への対応

 わが国は、2014年2月19日障害者の権利に関する条約の141番目の締約国となった。それまでの約5年間、この条約批准に向け国内法の整備が続いた。
 条約の批准をもって、私たちの取り組みの重点は、成立した法律などを実施に移すための準備と未だ不十分な制度の見直しに移っている。
 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)に基づく基本方針は、ようやく本年2月に閣議決定され、本年3月には改正障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)を実施に移すためのガイドラインが確定した。
 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)の附則にある施行後3年内の見直し作業も昨年12月から開始され、本年はその作業が本格化する。
 本年度はこれらの法律の施行並びに改正に向けた最終段階である。
 また、国には条約批准国として批准後2年以内に国連権利委員会に対し条約の実施状況を報告する義務があり、期限である来年2月に向け監視機関としての「障害者政策委員会」や政府機関内でどのような議論がされるかが注目される年となる。
 2020年に予定されている東京オリンピック・パラリンピックを見据えた社会のバリアフリー化(あるいはユニバーサルデザイン化)についての検討も本格化してきている。
 そこで、本連合は、そうした国の動きに対し、次のような重点項目を掲げ活動する。

(1)各府省において本年度中に作成される、障害者差別解消法に基づく対応要領及び対応指針(いわゆるガイドライン)並びに各自治体が作成する対応要領に、視覚障害者の特性を理解し日常生活や社会生活における問題点を十分にふまえた内容が盛り込まれるよう、各種委員会で意見を述べ、あるいは本連合としての意見を積極的に提出する。

(2)視覚障害者の働く権利は、あはきの分野をも含め依然として厳しい状況が続いており、視覚障害者が職業を通して経済的自立ができるための環境整備が必要である。その具体策として、以下のような活動を行う。
ア 視覚障害あはき師が開業するための支援や、自営業者として晴眼あはき師に互して不利にならないための支援策を明確にし、実現するための活動。
イ 厚生労働大臣免許としてのあはき制度を守り、国民が安心して有資格者による適正なあはきの施術が受けられるようにするために、無資格・無免許業者の取締りの強化を求める対策の一環として「厚生労働大臣免許保有証」の交付とその普及・啓発を推進する。
ウ 視覚障害者のあはき以外の職域の拡大と雇用の促進を図る活動。とりわけ、障害者差別解消法と改正障害者雇用促進法の来年4月の施行に向けて、視覚障害者がその適性と希望に沿って差別されることなく就職の機会が保障されるとともに、採用後においても視覚障害者がその能力を適正に発揮できるための合理的配慮が実現されるための活動。

(3)動き出した障害者総合支援法の見直しの中で、移動支援(同行援護を含む)、意思疎通支援(点訳、音訳などにおける環境整備を含む)及び高齢障害者に対する障害福祉サービスの在り方などの検討において、本連合がこれまで要求してきた内容が実現されるよう働きかける。
 具体的には、入所、入院中や通勤通学の際にも同行援護事業が利用できること、点訳者や音訳者を専門職として位置付けたうえで養成すること、65歳になっても障害福祉サービスが利用できるようにすることなどが特に重要である。

2.東日本大震災による被災者への支援と今後における防災減災に向けた活動を継続する

(1)東北3県を中心とした東日本大震災による被災障害者は、今なお困難な日常生活を余儀なくされ、自立と社会参加に向けた支援を必要としている。福島県においては、未だ復興はおろか復旧さえも半ばであるとしか言えない状態が続いている。視覚障害被災者の生活再建にとって必要な施策を明確にし、被災視覚障害者に寄り添い、十分な相談活動を行うとともに、就労問題をはじめ経済的自立に向けた新たな政策を実現するために全力を尽くす。

(2)懸念されている首都直下地震や東南海地震をはじめ大災害における被災弱者、あるいは被災時要援護者としての障害者に対する支援体制は未だ確立していない。国や地方公共団体に対し支援策を具体化させるとともに、国民、あるいは地域社会に対しては、被災時要援護者としての視覚障害者の存在及び緊急時における支援の必要性を啓発する。

(3)本連合は自らも災害時における緊急連絡網や安否確認のための体制を整えるとともに、個々の視覚障害者に対し、災害時に備え日頃から周囲への理解を求める行動や日頃の備えを怠ることのないように働きかけていくことが必要である。

3.外出保障としての環境の整備について

 視覚障害者には、単独で外出できる自由と同時に、常にガイドヘルパーなどの援助によって安全な外出を確保するなど、外出方法を選択できる条件が必要である。
 単独歩行を実現するためには点字ブロックの敷設、音の出る信号機の設置、エスコートゾーンの設置、鉄道ホームの転落防止柵の設置、あるいは転落のおそれのある側溝をなくすることなどの環境を整えるとともに、いつでも、どこに暮らしていても、歩行能力を獲得するための歩行訓練士による歩行訓練が受けられるようにしなければならない。
 ガイドヘルパーの支援を得て、日常生活や社会生活における自立と社会参加を実現するためには、地域格差を解消し十分なガイドヘルパーの派遣を受けることができる同行援護事業を実現しなければならない。障害者総合支援法の見直し作業において、移動支援事業が視覚障害者にとって十分なものとなるよう働きかけるとともに、障害者差別解消法5条に基づく環境整備が大きく前進するよう働きかけていく。

4.始まったばかりの弱視者(ロービジョン)に対する支援について

 弱視者をはじめ視覚障害者などの読書環境の整備と権利保障のためには、マラケシュ条約の批准は焦眉の課題である。
 著作権法の改正にとどまらず「読書バリアフリー法(仮称)」の制定など法律・制度の必要性とその内容について関係者を交えた検討を進める。

5.関係機関との連携・強化について

 視覚障害者問題を解決するためには、本連合が中心となって国や社会に働きかけを続けることが必要であるが、関係団体との協力や連携によって要求実現を図ることも必要不可欠である。
 そこで、以下のような関係団体との連携やネットワークづくりをさらに推し進める。

(1)眼科医会、ロービジョン学会、視覚リハビリテーション協会、盲学校、各種福祉施設などと常に情報交換ができ、個々の視覚障害者、とりわけ中途視覚障害者に対する支援が切れ目なく、あるいは抜け落ちることのない体制を作るために、都道府県ごとに関係機関によるネットワークを作る。

(2)あはき問題をはじめ職業問題を解決するため、あはき等法推進協議会などのあはき関係団体との連携や職業問題と取り組んでいる団体ないし施設との連携を強める。また、個々のニーズに応えるため、相談体制についても関係団体との連携を視野に入れて、その具体化を図る。

(3)個別の課題に対しては、必要に応じて検討チームを立ち上げ、そのメンバーとして外部関係者をも含めて具体策を検討する。

6.視覚障害者のスポーツや文化活動を活発にする

 スポーツや文化活動は、単に娯楽や趣味に止まるばかりでなく、人間としての生きがいや自己実現を図る重要な場面でもある。そのためには、これまで取り組まれてきたスポーツの各種別ごとの環境づくりや新たなスポーツの可能性についても、幅広く検討されなければならない。晴眼者とともにスポーツを楽しむことができる環境整備も重要である。
 文化活動においても、これまで視覚障害者には無縁と思われてきた分野において、固定観念にとらわれることのない取り組みが必要である。個々のニーズを実現するための工夫や新たな文化活動、あるいは芸術活動の可能性を具体化するための検討とその実践が求められている。

7.本連合の活動基盤の確立と加盟団体への支援

 本連合が加盟団体や個々の視覚障害者の声を受け要求を実現するためには、組織としての安定性と財政基盤は必要不可欠である。また、加盟団体の活動が活発となり、持続的な組織活動と個々の会員のニーズを吸収できる組織づくりも欠かすことはできない。加盟団体の会員の減少を食い止め、新たな会員を迎えるためには何が必要であるかを明らかにすることが緊急の課題である。本連合及び加盟団体の財政基盤を確立するため、どのような事業を実現させ、あるいは自主財源を確保するための方策を打ち出すことが必要である。
 引き続き視覚障害者が置かれている問題点を明確にするための情報収集、各府省への要求活動の継続と各種委員会に本連合の代表者を送り込むなどして、要求実現のため努力する。

8.国際交流

 私たちは世界に学ぶことも必要であるし、わが国の経験を世界に役立てることも求められている。

(1)引き続き韓国盲人協会との交流を継続するとともに、近隣諸国の視覚障害者団体との交流を模索する。

(2)災害に見舞われたネパールへの支援や発展途上国の視覚障害者に対し職業・文化・スポーツなどを推進するための支援を行う。

(3)研修のために来日する視覚障害者を受け入れる。

宣言

 峻険の山々より流れ出る木曽三川に育まれた、自然と歴史に彩られたここ岐阜県・岐阜市に全国の視覚障害者の代表が一堂に会し、3日間の討議を重ね、私たちの未来とその志を確認した。
 国連総会は、2006年12月に「障害者の権利に関する条約」を全会一致で採択し、2007年5月3日、条約としての効力を発した。私たちは、国に対し、拙速な批准は避け、しっかりとした内容のある国内法の整備を求めて働きかけてきた。その結果、「障害者基本法」の抜本的改正からはじまり、障害者虐待防止法の制定、障害者自立支援法から障害者総合支援法に改正され、障害者差別解消法の成立によって、国内法整備は一応の区切りをつけた。国は、国内法の整備を受けて、昨年1月に「障害者の権利に関する条約」を批准し、同年2月19日から締約国となった。そうした障害者制度に関する法律にはまだまだ不十分な点はあるものの、これらの法律によって、日本は初めて福祉と人権の両輪を整えた国となった。
 近年、福祉制度や社会インフラは次第に整備され充実してきたものの、私たち視覚障害者にとっては、日常の様々な場面で大きな社会的バリアが残存していることは否めない。
 私たちは、この大会で多くの課題について討議し、今後の方針と要望をとりまとめた。障害者の権利に関する条約や、来年4月から施行される障害者差別解消法などの理解を深め、視覚障害者の職域の拡大と、生活の安定のための方策を議論し、他方では、白杖の意義を啓発するとともに、社会インフラや公共機関のバリアフリー化を進めて行くことの必要性を確認した。
 私たちは、今こそ力を結集し、具体的に行動することにより、すべての人々が互いに尊重しあえる地域社会を構築しなければならない。
 そして、視覚障害者が、夢をもち、豊かな人生を築き、「自己実現」できる社会を求めて行動することをここに宣言する。

平成27年(2015年)5月31日
第68回全国盲人福祉大会 岐阜大会

決議

一、 視覚障害者が入院中も、ガイドヘルパーを利用でき、身辺の世話を看護補助者が確実に実施するよう教育と制度の充実を要望する。

一、 補装具並びに日常生活用具の給付においては、品目の指定や耐用年数を国が一定の指針を示すとともに、自治体職員の教育を充実させ、当事者のニーズに合った品目の支給ができるように要望する。

一、 同行援護事業における利用者負担を廃止し、ニーズに応じた支給決定がされ、質の高い従業者の育成を義務化するとともに、有償運送協議会の許認可が容易に受けられるよう制度の改善を要望する。

一、 視覚障害者に対する選挙公報をはじめとする情報提供は、障害者権利条約や障害者差別解消法などの理念に基づき、点字、音声、拡大文字など、当事者の必要な媒体で作成し、提供されるよう要望する。

一、 災害時における支援体制を確立し、福祉施設を福祉避難所に指定するとともに、福祉避難所に白杖や防災ベストなどの必要な物品を備蓄するよう要望する。

一、 弱視者のために、公共施設や交通機関の照明・表示・サインを見やすくするとともに、各地の医療機関及び訓練施設においてロービジョンケアを実施するよう要望する。

一、 視覚障害者の安全な移動を確保するため、誘導用ブロック、エスコートゾーン、音響式信号機、LED信号機のさらなる設置を要望する。

一、 テレビのニュースや緊急放送における字幕スーパー及びテロップの音声化と、外国語の日本語吹き替えを要望する。

一、 視覚障害者の就労を拡大するため、改正障害者雇用促進法に基づき、点字やパソコンを使用した採用試験を実施するとともに、就労が継続できるように、合理的配慮を実施するよう要望する。

一、 あん摩・マッサージ・指圧、鍼、灸の定義を明確にし、免許証を携帯方式に切り替えることにより、無資格医業類似行為者の取り締りを強化するとともに、無資格業者の養成所を排除し、柔道整復師による違法な保険取扱いを規制するよう要望する。

一、 視覚障害者の自立と社会参加を促進するため、歩行訓練士の増員をするとともに、配置基準を定め、どこででも歩行訓練が受けやすい環境を整備するよう要望する。

以上決議する

身体障害者手帳等級認定基準見直しに関する特別決議

 厚生労働省は、本年3月、障害者手帳の視覚障害の認定基準について「視力における両眼の視力の和による等級認定基準のあり方」の検討に着手したことを障害保健福祉関係主管課長会議の場で明らかにした。
 私たち日盲連は、かねてより「両眼の視力の和」とする現行の視覚障害に関する身体障害者手帳等級の認定基準には合理的理由がなく、「良い方の眼の視力」とするよう求めてきた。
 このことは、私たち視覚障害当事者のみならず、多くの眼科医、研究者も求めてきたところである。
 片眼失明者には明確な生活困難が生じているにもかかわらず、現行の下ではこれを認定する基準がない。また、視野欠損者の認定基準も障害による困難に比して厳しく、生活の実情に応じた基準とは言えない現状にある。
 身体障害者手帳は、障害者が「社会参加」をするために欠かせないものである。障害の等級によって享受できる内容には差があり、その認定基準は合理的なものでなければならない。
 にもかかわらず、現行の認定基準では、視覚障害が存在するにもかかわらず制度の狭間に置かれた当事者や枠外に置かれた者が多数存在する。
 視覚に関する認定基準を見直しこれまでの矛盾を是正解決すべきである。障害者基本法の改正や障害者差別解消法を受けて障害者権利条約を批准した我が国としては、2020年に東京で開催されるオリンピック・パラリンピックをも見据えて、国際的にも通用する認定基準を確立すべき段階にある。
 認定基準の見直しにあたっては、「盲、極度のロービジョン、重度のロービジョン、中等度のロービジョン」という国際的にも通用する国際障害分類とその基準に準拠し、視覚障害当事者の実情と声を反映した制度となるよう強く求めるものである。
 このことによって、私たち視覚障害者は、今日までに実現されてきた社会福祉制度を利用し、教育的、職業的にも平等な社会生活を営むことができるようになるのである。
 認定基準の見直しの検討にあたっては、視覚障害者の自立と社会参加を促進し、視覚障害の困難さに即した制度が確立されるよう強く望むものである。

以上決議する。