三団体で要望書を提出

2015年5月20日

 日本ライトハウス、日本点字図書館、日本盲人会連合の3団体は、2015年5月14日に厚生労働省を訪れ三団体連名の要望書を提出しました。
 日盲連からは、竹下会長、藤井組織部長が参加しました。要望書は、IT機器の指導員の育成、図書テキストデータの製作委託などの新たなサービスに対する支援、三次元プリンタなどの新技術を活用した情報提供の在り方の検討や歩行訓練士の養成と配置基準の策定等を求めるもので、今日まで視覚障害者向けのサービス提供機関として3団体で勉強会を重ね、取りまとめたものです。
 当日は、厚生労働省障害保健福祉部・藤井康弘部長、厚生労働省障害保健福祉部自立支援振興室・道躰正成室長をはじめとする担当者にご出席を頂き、要望書を提出すると共に、要望事項に関する議論を行いました。
 厚生労働省からは、本年度は障害者総合支援法の3年見直しの年度であり、同法の見直しと併せて、頂いた要望を検討し、実現できるよう努力したいとの回答を頂きました。
 なお、日本ライトハウス、日本点字図書館、日本盲人会連合の3団体は、今後もそれぞれの団体が持つ特性を活かした連携を進め、視覚障害者サービス提供機関として十全な役割を果たすための基盤の整備と新たな展開を求め、引き続き合同勉強会の開催などを予定している。

要望書を提出する様子

要望書を提出する様子

 

 

2015年5月13日

厚生労働大臣 塩崎恭久 様

要望書

社会福祉法人日本点字図書館   
理事長 田中 徹二   

社会福祉法人日本ライトハウス   
理事長 橋本 照夫   

社会福祉法人日本盲人会連合   
会長 竹下 義樹   

 平素は、視覚障害者の福祉増進にご尽力を賜り心より感謝申し上げます。
 さて、視覚障害者福祉の増進のための事業に関する下記事項につきまして、日本点字図書館、日本ライトハウス、日本盲人会連合の3団体による要望事項をとりまとめました。
 ご理解いただき実現に向けお取り組みくださいますようお願い申し上げます。

1.IT専門指導員の配置
 スマートフォンやタブレット端末をはじめとする電子機器は、今後、視覚障害者の情報活用に必須であり、多くの視覚障害者が利用を望んでいるが、実際に操作を継続的に学習できる機会や場所は非常に少ない。このようなIT機器やソフトウエアの利用支援と普及のために、IT専門指導員を配置し、機器の調査や検証結果の蓄積を行い、全国でIT指導員養成講習会を開催すると共に、IT指導従事者からの問い合わせに対応する。

2.図書テキストデータの製作委託事業【視覚障害者用図書の枠組拡大】
 視覚障害者が情報を入手する新たな媒体として、テキストデータ、テキストデイジー図書、マルチメディアデイジー図書の有用性が高まり、その製作に対する要求が拡大しているが、全国の点字図書館では製作ボランティアの養成・確保に苦慮している。これに対して、テキストデータがあれば、テキストデイジー図書、マルチメディアデイジー図書の製作の手間と時間を短縮することができる上、自動点訳後に校正して、点訳図書を製作することも可能である。そこで、点字図書館からの依頼に応えて、希望図書のテキストデータを製作するサービスを行うことにより、点訳、テキストデイジー、マルチメディアデイジーの製作を効率化し、拡大を図る。

3.3次元模型の研究・製作・提供事業
 近年、3次元造形装置(3Dプリンタ等)の低価格化が進み、視覚障害者関係施設や教育機関でも導入することが可能となってきた。これを用いて製作する3次元模型は、点字の文書や触図では表現しきれないさまざまな事物の「形状」に関する情報を視覚障害者に提供する手段として注目されており、災害・防災情報の提供方法としても非常に有用である。ただし、視覚障害者に真に役立つ3次元模型を製作するには、目的にあった適切な3Dデータの整備が不可欠である。そこで、視覚障害者に有用な3D模型データを製作して、説明文や関連情報とともに蓄積し、インターネットを通じてデータ提供するとともに、リクエストに応じて模型の製作・貸出をする事業を実施する。

4.歩行訓練士の養成と各都道府県・政令指定市等への配置の促進
 中途視覚障害者が年々激増する中、視覚障害者が日常生活及び社会生活を安全かつ自由に送るためには、当該分野の唯一の専門職である歩行訓練士による「生活・歩行訓練」が必要不可欠だが、歩行訓練士の配置基準が定められていないため、全く配置されていなかったり、歩行訓練が行われていない地域が数多く存在する。
 そこで、以下の2点を要望する。
①歩行訓練士の配置基準を設定する。
 視覚障害者、とりわけ中途視覚障害者が全ての都道府県及び政令指定都市等において、同行援護事業によりガイドヘルパーの援助を受け安全に外出できるようにするだけでなく、歩行訓練士の援助によって単独での歩行が可能になるように訓練をも受けることができるようにする。
②各都道府県・政令指定市等への歩行訓練士の配置を促進する。
 一部の自治体では「中途失明者等生活訓練業務」などの名称で、歩行訓練士の資格のある指導員が視覚障害者の家庭に出向いて単独歩行の指導や日常生活に関わる支援・指導を行う事業を制度化し、実効性を上げている。障害者総合支援法は「市町村及び都道府県は、地域で生活する障害のある人のニーズを踏まえ、地域の実情に応じた柔軟な事業形態での実施が可能となるよう、自治体の創意工夫により事業の詳細を決定し、効率的・効果的な取り組みを行います。」として地域生活支援事業に位置付けており、本事業に「歩行訓練士等の資格を有する指導員による生活訓練業務等」を明示してください。そして、視覚障害のある人が有する能力や適性に応じて自立した日常生活や社会生活を営むことができるよう、市町村や都道府県のしかるべき機関に歩行訓練士の配置を促し、視覚障害者の能力や適性に応じた円滑な地域生活の確立に資することができるよう配慮されたい。

以上