障害者自立支援法施行後3年の見直しに関するヒアリング
2015年3月16日
2015年3月12日、日本盲人会連合は厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部主催の「障害福祉サービスの在り方等に関する論点整理のためのワーキンググループ」における「手話通訳等を行う者の派遣その他の聴覚、言語機能、音声機能その他の障害のため意思疎通を図ることに支障がある障害者等に対する支援の在り方に関する論点整理のための作業チーム」(第2回)に、当事者団体として参加しました。
ワーキンググループは障害者総合支援法の附則の施行3年後の見直し規程を踏まえ、障害者福祉サービスの実態を踏まえ、その在り方等について検討するための論点を整理するために設置され、幾つかの作業チームに分かれて準備が進められているもので、今後の障害者総合支援法の流れを大きく左右するものです。
今回は、その内「意思疎通支援事業」の検討課題に対する課題について当事者団体からのヒアリングが行われ関係5団体が参加し意見を述べました。
日盲連からは竹下会長、藤井組織部長が参加し、当日は、以下の意見書を提出の上でヒアリングと議論を行い、①点訳・音訳者養成、②テキストデイジー制作者の養成、③代筆代読のための訪問サービスなどの事業などを中心に意見を述べ、討議に参加しました)
以下、提出した意見書
日盲連発第174号 平成27年3月12日
厚生労働大臣 塩崎恭久 様
社会福祉法人日本盲人会連合 会長 竹下義樹
意思疎通支援事業に関する意見書
視覚障害者の自立と社会参加、福祉の増進に対します弛まざるご尽力に心より敬意を表します。 さて、先般は障害者総合支援法見直しに際し、私ども視覚障害者の意見を聴取いただきましたことに感謝申し上げます。 このたびは、改めまして見出しに関する意見を次のとおり提出します。 なお、この度の意見書には、先般提出いたしました意見書(平成27年1月16日付、日盲連発第152号)と重複する部分もございます。 是非ともご検討の俎上に乗せていただき、実現に向け精力的にお取り組みいただきますようお願い申し上げます。
1.点訳・音訳者養成事業を意思疎通支援事業として明確に位置付けていただきたい。そのうえで、とりわけ英語・科学・数学などの専門分野の点訳者及び音訳者を養成し、それを専門職として位置付けていただきたい。 (説明) 障害者自立支援法の制定に伴い従来のコミュニケーション支援事業を意思疎通支援事業とされたのは、双方向のコミュニケーションを想定されたものと理解しております。 地域生活支援事業の中において「意思疎通支援を行う者の養成」とあります。意思疎通を支援する手段としては聴覚障害者の手話通訳・要約筆記の他に、盲ろう者の触手話・指点字や視覚障害者の代読・代筆などもその一部として説明されています。また、これまでは視覚障害者のための音訳・点訳もコミュニケーション支援事業として位置付けられてきました。しかし、音訳・点訳は娯楽や一般教養に加え専門分野の音訳・点訳も含まれているにもかかわらず、これまではボランティアの支援にのみ頼ってきました。点字図書館におけるボランティアの貢献は引き続き重要ですが、それに加えて、高等教育や職業の分野において情報保障を確実に伴うためには、専門書の点訳者や音訳者を養成し、それらの者を専門職として位置付け、学術書ないし専門書を録音書や点字書として製作することが必要です。それらは、極めて専門性の高い作業であり、いつまでも無償の奉仕活動では視覚障害者のニーズに応えることはできません。 点訳・音訳者養成事業を自立支援給付としての意思疎通支援事業に組み入れ、併せて専門分野や専門書などの点訳・音訳などによる情報提供を行うことが必要です。
2.全盲者に限らず弱視者への情報保障としてテキストデイジー制作員、マルチメディアデイジー制作員などの「データ作成の支援者の養成」を意思疎通支援事業として組み入れていただきたい。 (説明) テキストデイジー、マルチメディアデイジーは、弱視者が自分にあった文字の大きさで、音声を聞きながら活字を見ることのできる媒体です。聞きながら見ることにより、弱視者の読書環境は格段に改善されます。 2010年の著作権法の改正により「視覚著作物をそのままの方式では利用することが困難な者」として、サービス対象者を視覚障害者以外にも拡大されました。また、発達障害者などの読書にテキストデイジーなどが有用であることが指摘されるようにもなってきました。幅広い障害者が活用している媒体であり、情報保障の観点からデータ制作の支援者の養成も意思疎通支援事業に組み入れていただきたい。
3.代筆代読のための訪問サービスを同行援護事業もしくは自立支援給付としての意思疎通支援事業に組み入れていただきたい。 (説明) 同行援護事業と移動支援事業は外出時の支援事業に位置付けられています。 視覚障害者は、外出時においても、在宅時においても情報保障が必要ですが、在宅時における情報保障の仕組みがないため、郵便物や回覧板などを判読できないため、返信はおろか、その識別さえ困難な状況にあります。また、在宅時においても日常生活に関する各種の手続きを求められる場面も数多くあります。 そうした場面における支援を実現するためには、新たに代筆代読のための訪問サービスを独立した事業として位置付けることが理想ですが、それが困難な場合は「情報保障」を主眼に置いた同行援護事業の一環として位置付けることも考えられます。
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