第67回全国盲人福祉大会(大分大会)

2014年6月3日
第67回全国盲人福祉大会竹下義樹会長挨拶

竹下義樹会長挨拶

 日本盲人会連合の第67回全国盲人福祉大会最終日の5月31日はホルトホール大分に全国から関係者約1500名が参加して、盛大に大会式典並びに議事が行われました。
 第1部の式典では衛藤良憲大分県盲人協会会長の歓迎挨拶、竹下義樹日本盲人会連合会長の主催者挨拶に続いて、日盲連顕彰等受賞者に表彰状、感謝状が贈られました。
 続いて、田村憲久厚生労働大臣の挨拶を社会・援護局障害保健福祉部の竹垣守自立支援振興室長、下村博文文部科学大臣の挨拶を文部科学省初等中等教育局特別支援教育課青木隆一特別支援教育調査官が代読したのを皮切りに、広瀬勝貞大分県知事、近藤和義大分県議会議長、釘山盤大分市長、日盲連顧問の衛藤晟一参議院議員等の多数の来賓から祝辞が述べられました。

日盲連顕彰等を受賞された方々のお名前は次のとおりです。(敬称略)

 村谷昌弘福祉賞  笹川 吉彦(東京都)
 【礎賞】
(組織功労)
河上 義徳(熊本県)
 【ブライトスター賞】 清杉 政敏(札幌市)
 【光の泉賞】
(内助等功労)

中村 てる子(関東ブロック・山梨県)
山形 百合子(北信越ブロック・新潟県)
須藤 直美(東海ブロック・静岡県)
上田 まきこ(近畿ブロック・奈良県)
小川 志身子(中国ブロック・島根県)
井下 昭子(四国ブロック・香川県)
緒方 七子(九州ブロック・熊本県)
山田 時子(九州ブロック・沖縄県)

 (福祉貢献)  星 洋子(東北ブロック・宮城県)
中平 和子(近畿ブロック・大阪市)
 【感謝状】 社会福祉法人大分県盲人協会
(第67回全国盲人福祉大会開催) 

 第2部の大会議事では、平成25年度決議処理報告、平成26年度運動方針案を執行部の原案どおり全会一致で可決、宣言・決議も全会一致で採択されました。
 続いて次年度の第68回全国盲人福祉大会開催地団体を代表して岐阜県視覚障害者福祉協会の清水和弘会長が、全国の会員に向けて「熱烈歓迎」と参加を呼び掛けました。
 最後は荒城の月の合唱で大会の幕を閉じました。

平成26年度運動方針

1.障害者権利条約の批准を踏まえた取組

 わが国は、昨年12月にようやく障害者の権利に関する条約の締結を国会で承認し、本年2月19日に世界で141番目の締約国となった。また、昨年6月には、障害を理由とする差別の禁止と合理的配慮を内容とする「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(略称「障害者差別解消法」)が制定され、雇用分野での障害者差別の禁止と合理的配慮を全ての事業主に義務付けることを内容とする「障害者の雇用の促進等に関する法律」(略称「障害者雇用促進法」)の改正法が成立した。そして、障害者差別解消法は2016年4月の施行に向け、改正障害者雇用促進法は2018年4月の施行に向けた準備が進められている。
 そこで、本年は以下の5点についての取組が重要である。
(1)障害者差別解消法に基づく基本方針や対応要領及び対応指針(いわゆるガイドライン)が本年度中に確定される予定である。視覚障害者の日常生活や社会生活における改善に結びつけるため、具体的な差別事例や合理的配慮の好事例を示すなどして、視覚障害者の立場から積極的に意見を述べ、ガイドラインの内容となるよう働きかける。
(2)障害者雇用促進法の改正を受けて、事業主に義務付けられる障害を理由とする差別の禁止と合理的配慮に関する指針づくりが進められている。視覚障害者の就労の機会を拡大し働きやすい職場を実現させるため、具体的な差別事例や合理的配慮の好事例を示すなどして、視覚障害者の立場から積極的に意見を述べ、指針の内容となるよう働きかける。
(3)全国の自治体において、身体障害者を対象とした職員採用試験が実施されている。身体障害者を対象とした職員募集であれば当然に点字による試験は必要不可欠なものである。ところが、点字受験を認めていない自治体が数多く見られる。このような事例は視覚障害に対する新たな差別であると言わざるを得ない。自治体職員の採用試験は民間企業の模範ともなるものであり、全ての希望者に門戸が開かれ、点字受験が常に実施されるよう働きかける。
(4)「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」(略称「障害者総合支援法」)の附則第3項で、意思疎通支援や支給量の決定の在り方が3年内の検討課題とされている。視覚障害者の生活実態や障害の特性を十分に踏まえた制度となるために、検討会を立ち上げるよう働きかける。
(5)障害者の権利に関する条約や障害者差別解消法などは、未だ国民にほとんど理解されていな  い。他の障害者団体などとともに、広く国民に理解してもらうための啓発活動を行う。

2.被災者への支援と今後の大震災への備え

(1)東日本大震災による被災地においては、福島県をはじめとして未だ復興は十分なものとは言えない。生活支援とともに精神的な支えも必要となっている。就労問題をはじめ継続的で安定した支援体制を実現するために全力を尽くさなければならない。
(2)首都直下型地震や富士山の大噴火、さらには東南海地震など大災害の恐れが指摘されていることを踏まえ、大災害に備えた取組も急務である。
 本連合には、災害対策のための基金が設置されていない。平成23年3月に発生した東日本大震災では、震災発生直後、すぐに支援のための行動を開始することができなかった。本連合は、義援金を募り、集まった義援金によって被災者を支援するしかなかった。今後起こり得ることが予測される東海・東南海・南海地震等の災害発生時には、災害発生後、すぐに支援活動ができるよう、災害基金を設立する必要がある。

3.外出時の安全保障

 視覚障害者の日常生活や社会参加において、安全で快適な外出を保障するための総合的な外出保障の在り方を引き続き追及する。ホームドアの設置を急がせ、音の出る信号機やエスコートゾーンなどの普及を図るとともに、改めて白杖の重要性を認識した取組や同行援護事業をも含めた外出時の安全安心に向けた取組を強化する。

4.弱視者(ロービジョン)対策

 本連合としては、弱視(ロービジョン)問題に関する取組は緒についたばかりである。本年は、弱視者(ロービジョン)に関係する団体と連携し、さらに活動を強化するとともに、弱視者(ロービジョン)の人たちの実態やニーズの把握に努める。具体的には以下の活動に取り組む。
(1)広報誌などの拡大文字版が常に保障されるように努め、情報保障の一環として弱視者(ロービジョン)が読みやすい大きさで視認できるテキストデイジーを製作し、提供できるシステムを構築する。
(2)眼科医会、ロービジョン学会などと連携し、眼科診療所などに対し、視覚障害者福祉を理解  してもらうためのパンフレットなどを常備してもらうなどの情報提供を行う。また、視覚リハビリテーションの理解を深め、その普及を図る。
(3)交通問題における弱視者(ロービジョン)特有の問題を整理し、安全対策に力を入れる。

5.視覚障害者のスポーツと芸術

 視覚障害者のスポーツや文化活動に引き続き力を入れるとともに、芸術活動の振興にも力を入れる。例年通り、将棋大会、文芸大会及び各種スポーツ大会を開催するとともに、視覚障害者の芸術活動に対する支援のあり方を検討し、豊かな社会生活の実現に向けて事業を進めていく。また、日盲福祉センターの運営にあたっては、各部署が連携し事業を推進していくとともに、地域に密着したサービスを提供する福祉センターとなるよう努力する。

6.卒後研修の実施を目指した盲学校との連携など

 本連合と盲学校等が連携し、在学中の生徒や卒業後のあはき師の技術向上のため、生徒の職業体験や実習を実施する。
 また、本連合及び加盟団体が盲学校と連携し、社会に巣立つ若者が安心できる環境づくりを行うとともに、生徒に対し、積極的に情報提供を行ったり、気軽に相談できる環境の整備を目指す。

7.あはき問題戦略会議による無免許対策等の具体化

 これまでも無免許者の取り締まりを求める活動を行ってきたが、無免許者の取り締まりは遅々として進んでいない。視覚障害あはき師の職業的自立とあはき業そのものの将来性を考えた場合、無免許対策と免許所持者の優位性を確保することは必要不可欠である。外部の専門委員も加えたあはき問題戦略会議において、無免許問題の根源となっている昭和35年1月27日判決の問題点を分析し、判例変更をも視野に入れた取組の具体化が急務である。
 また、あはきの健康保険適用を拡大し、国民が一部負担のみであはきの施術が受けられる制度の実現を目指す。
 その他、資質向上に向けた研修のあり方を検討したり、柔道整復師による違法な保険取扱いの取り締まりの強化を求めることが必要である。

8.団体活動と加盟団体組織の強化

 要求実現のための団体活動を続けるには、加盟団体の協力が不可欠である。しかし、近年は各加盟団体の入会者が減少するなど、組織活動が困難となっているのが実情である。各加盟団体の組織の強化や団体活動を活発にするため、本連合の役員を加盟団体に派遣し、助言や相談に応ずるとともに、地域の視覚障害者福祉を推進するための事業化を提案するなどして組織強化に努める。
 また、視覚障害者を取り巻く環境の改善のため、省庁への陳情活動を継続するとともに、行政が主催する障害者施策の検討会に委員を派遣し、視覚障害の特性に応じた制度の実現に努力する。

宣言

 九州の北東部に位置し、九重連山を背に東の瀬戸内海に面する陽光に満ち溢れた穏やかな気候。そして、今に南蛮文化の豊かな歴史を刻む大分県大分市に全国の視覚障害者の代表が一堂に会し、私たち視覚障害者の自立と社会参加、自己実現可能な社会を求めて討議を重ねた。
 諸課題と目標、取り組むべき課題を明らかにし、そして何よりも私たちの未来について語らい、その志を確認するなか向う一年間の取り組みを取りまとめた。
 本年は私たち障害者にとって銘記すべき年となった。日本が「国連・障害者の権利に関する条約」の141番目の締約国となったのである。
 2006年国連は、総会において「障害者の権利に関する条約」を採択した。政府は翌2007年この条約に署名をし、2009年に批准に動き始めた。
 私たちは「拙速な批准は避け、しっかりとした内容のある国内法の整備が先」とし、基本的な法制度の検討を政府に求めた。政府は、これを受け、「障害者制度改革推進本部」を設置し、その下に当事者の代表で構成する「推進会議」を置き国内法整備の検討に入ることとなった。日盲連も委員とし、検討に加わった。
 まず「障害者基本法」が改正され「障害者総合支援法」、「改正障害者雇用促進法」、「障害者差別解消法」等の法律が制定や改正された。
 これ等の法律の成立及び改正は、私たち障害者にとって初めて「福祉」と「権利(人権)」の両輪を備えた体系的な制度が成立したことを意味している。特に「障害者差別解消法」は障害者にとって初の「権利に関する法律」である。
 私たちは、これらの法律を活用し、暮らしに活かす取り組みから始めなければならない。近年、様々な福祉制度や点字ブロック・音響信号機などの社会インフラも次第に整備され、充実しつつあるとはいえ、私たち視覚障害者にとっては、なお自由な移動、情報、職業、教育をはじめ日常の様々な場面で大きな社会的バリアが存在している。私たちは、「差別解消法」を活かし、視覚障害者の諸権利の確立とその実現を強く関係機関に働きかけていく。
 私達はこれらの取り組みを通じ、一人ひとりが「自己実現」できる社会の実現を目指すためにも日盲連の下に結集しまい進することを宣言する。

大会決議

一、 障害者権利条約の理念を広く国民に広めると共に、さまざまな場面での合理的配慮が行われるよう要望する。

一、 入院時に病院内においてもガイドヘルパー及びホームヘルパーが利用できるよう、制度の改正を要望する。

一、 同行援護事業における利用者負担の廃止、ニーズに応じた支給決定、質の高い従業者の育成を要望する。

一、 視覚障害者に対する適切な障害福祉サービスが受けられるよう、ケアマネージャーや相談支援員、ホームヘルパー等への職員教育を徹底するよう要望する。

一、 日常生活用品の給付品目の指定や、対応年数などは、国が一定の指針を示し、当事者のニーズに応じた品目の支給ができるよう要望する。

一、 災害時における視覚障害者に対する支援体制の充実を要望する。

一、 行政機関からの情報、選挙公報などを権利条約の理念に基づき、点字・音声・拡大文字など必要な媒体で作成するよう要望する。

一、 ロービジョン対策として、階段の段鼻の色づけ、時刻表や電光掲示板などの文字サイズ、設置位置、コントラストを工夫すると共に、駅などの照明を明るくするよう要望する。

一、 安全な移動を確保するため、誘導用ブロック、エスコートゾーン、音響式信号機等の普及を要望する。

一、 障害者用交通系ICカードの作製と、鉄道駅におけるホーム柵及び内方線の計画的な設置を要望する。

一、 テレビ放送におけるニュース番組の字幕スーパー、テロップ及び緊急臨時放送の字幕スーパーの音声化と、外国語の吹き替えを要望する。

一、 あん摩・マッサージ・指圧師、はり師、灸師の定義を明確にし、免許証を携帯方式に切り替え、無資格類似業者の取締りと、養成所の排除、柔道整復師の違法行為の取締りを要望する。

一、 視覚障害者の雇用拡大のため、介護保険施設の機能訓練指導員や、企業、自治体等におけるヘルスキーパーの雇用と職場介助者の広範な適用を要望する。

以上決議する