IPTVセミナー「バリアフリー社会の実現に向けて」開催、情報障害の解消目指す

2017年3月17日

【写真の説明】都営三田線「御成門駅」A2出口から。ライトアップされた東京タワーを見ることができました。

 インターネットが普及し、ナローバンドからブロードバンドと高速かつ大容量化した通信インフラは、多様な動画コンテンツを生み出しました。
 そして近年、IPTVと呼ばれる仕組みが注目されています。
 IPTVはTVとインターネットを接続することにより、地上デジタル放送では実現が困難だった情報の補完(手話・字幕・音声解説)の拡充を図るものです。視覚や聴覚障害者などへの個人の特性に応じた情報提供が期待されます。

 3月15日、一般社団法人情報通信技術委員会(TTC)が主催するセミナー「バリアフリー社会の実現に向けて~IPTVアクセシビリティ標準制定の意義と今後の展開~」が、東京都港区にある芝公園電気ビル2階AB会議室で開催されました。
 障害者権利条約の批准や障害者差別解消法の施行など、誰もが暮らしやすい共生社会の実現に向けた動きが加速する中、情報障害の壁を解消するために何ができるのか、参加者71名は真剣な面持ちで講演者達の報告に聞き入りました。

講演者の声から

【写真の説明】セミナー会場の模様

国の動き~内閣府政策統括官(共生社会政策担当)付参事官(障害者施策担当) 坂本大輔氏

【写真の説明】内閣府政策統括官(共生社会政策担当)付参事官(障害者施策担当) 坂本大輔氏

【発言要旨】
 第3次障害者基本計画で、差別解消法などの国内法の整備がなされ、権利条約の批准が実現しました。
 そして、批准後初の計画となる第4次障害者基本計画(平成30年~)では、骨子(案)の総論において、≪社会のあらゆる場面でアクセシビリティ向上の視点を「標準化」≫を記載。これが、障害者政策委員会で評価されました。

 今後の流れとしては、基本計画の骨格について議論(~4月)、基本計画の本文について議論(~9月)、障害者政策委員会で基本計画案を取りまとめ(~10月)、パブリックコメント等を経て閣議決定される予定です。

当事者の立場から~社会福祉法人日本盲人福祉委員会 常務理事 指田忠司氏

【写真の説明】社会福祉法人日本盲人福祉委員会 常務理事 指田忠司氏

【発言要旨】
 昨年10月に東京都千代田区の弘済会館で開催された「放送アクセシビリティ・シンポジウム」で、パネリストとして登壇した日本盲人会連合 三宅隆情報部長が、日盲連が行った調査「視覚障害者のテレビ視聴に関する調査」の集計結果を引用し、視覚障害者の9割がTVを利用していると報告したことに触れました。
 そこから、解説放送の充実・IPTVの活用について、視覚障害者の立場から要望しました。

 解説放送の活用について、「(1)生活情報の入手」と「(2)芸術鑑賞」に区分し、前者はパターン化が比較的容易で対策を講じやすいことに対し、芸術鑑賞は個人差が生じやすく解説放送の一定の規格化が困難としました。
 IPTVについては、音声解説を詳細・標準・簡易なものなど別パターンを何種類か用意することで、利用者が使いやすい解説を選択出来ることが強みだと具体例で示します。

支援する側から~日本DAISYコンソーシアム運営委員長・NPO法人支援技術開発機構 副理事長 河村宏氏

【写真の説明】日本DAISYコンソーシアム運営委員長・NPO法人支援技術開発機構 副理事長 河村宏氏

【発言の要旨】
 災害時における情報保障として、IPTVの可能性を論じます。

 東日本大震災において障害がある人々の死亡率は一般市民の2~4倍だったことにふれ、障害者権利条約の第11条では自然災害などにおける障害のある人の保護及び安全の確保が義務づけられていることから、災害対策には防災計画の作成と、発災以降は情報アクセスの確保が重要となると説明します。
 これらの情報保障の種類としては、放送などへのリアルタイム字幕・手話・解説音声やオンディマンドビデオなどが考えられますが、IPTVにより障害のある人が欲しい情報を望む手段で得ることができる、ニーズが開発に繋がるそんな礎が築かれたとIPTVの国際標準化規格であるITU-T Rec.H.702に期待を込めました。

IPTVデモンストレーション

 株式会社アステム映像メディア部 次長 中谷彰宏氏による、IPTVのデモンストレーションでは、実際にどのように操作をするのか、プロジェクターで映像を投影しながら、字幕の表示などが行われました。

 操作はリモコンで行い、画面を分割表示し、同一画面上で手話などを表示することが可能です。

【その他機能】字幕フォントサイズの変更、字幕の色の変更、字幕の背景色の変更、音声解説の表示/非表示、画面上の文字やボタンの音声読み上げなど。

 地上デジタル放送と比較してみると、地上デジタル波放送が表示できる字幕が1種類であることに対し、IPTVは複数の字幕を付与することができます(例:日本語と英語など)。
 音声解説などを映像に重ねる場合、地上デジタル放送はまとめて送らなければならないため、同じ場所からの送信が前提条件となりますが、IPTVではその制約がありません。
 また、地上デジタル放送における字幕や音声解説への第三者の関与は制作のみに限定され提供は不可能となっていますが、IPTVでは第三者が制作し提供することが可能となっています。このことにより、業者の参入も容易となっています。

 なお、サービスの実施・運用は、4月以降を予定しているとのことです。

【写真の説明】H.702を搭載した中継器です。TVとネットに接続します。