機能訓練事業所・非機能訓練事業所の厳しい実態が浮き彫りに~≪シンポジウム 視覚障害者の生活訓練(歩行訓練)のあり方を考える≫を開催~

2017年3月1日

 日本盲人会連合主催「シンポジウム 視覚障害者の生活訓練(歩行訓練)のあり方を考える」が、2月25日、日本盲人福祉センターにおいて開催されました。

 このシンポジウムは、厚生労働省 平成28年度障害者総合福祉推進事業「視覚障害者のニーズに対応した機能訓練事業所の効果的・効率的な運営の在り方に関する調査研究」のなかで実施されたアンケート・現地調査などの結果を踏まえ、機能訓練事業所の現状と課題を整理、視覚障害者への訓練が全国で安定的に実施されるためには何が必要かを考える場として設けられ、当日は全国から関係者ら約80人もの参加者がありました。

調査概要

事業所向け調査

調査1 特定の機能訓練事業所に対する運営状況の調査
 調査方法:アンケート調査・現地調査
 対象:5事業所(東京都、神奈川県、愛知県、京都府、大阪府)
 回収結果5件(回収率100.0%)
調査2 特定の非機能訓練事業所に対する運営状況の調査
 調査方法:アンケート調査・現地調査
 対象:7事業所(千葉県、東京都、岐阜県、大阪府、徳島県、鹿児島県、福岡県)
 回収結果7件(回収率100.0%)
調査3 全国の機能訓練事業所に対する運営状況の調査
 調査方法:アンケート調査
 対象:全国に点在する機能訓練事業所 50事業所
 回収結果29件(回収率58.0%)

当事者向け調査

調査4 視覚障害当事者団体に対するニーズ調査
 調査方法:アンケート調査
 対象:日本盲人会連合に加盟する団体 61団体
 回収結果59件(回収率96.7%)
調査5 視覚障害当事者に対するニーズ調査
 調査方法:アンケート調査
 対象:全国の視覚障害者 400名(日本盲人会連合及び日本網膜色素変性症協会の会員)
 回収結果:225件(回収率56.2%)

開会挨拶~基調報告

 竹下義樹会長は冒頭の挨拶で、歩行訓練を「自己実現の面だけではなく、安全という意味でも重要」と説くも、基調報告で名古屋市総合リハビリテーションセンター視覚支援課長 田中雅之氏から伝えられたのは、人員不足で疲弊した施設と厳しい経営状況、地域間で開く格差に胸を痛める現場の声を集約したものでした。
 田中氏から報告された主な問題点は以下の通りです。

基調報告要旨~報告者:名古屋市総合リハビリテーションセンター視覚支援課長 田中雅之氏~

職員数1人あたりに対する利用者数
 職員配置(常勤換算)は、機能訓練事業所では6人以上、非機能訓練事業所は1~8人となっていて、この数字から職員1人あたりに対する延べ利用者数を算出すると、機能訓練事業所では職員1人あたり利用者1.5人、非機能訓練事業所では職員1人あたり利用者1.1人となります。

利用者について
 機能訓練事業所の利用者は県外約2割も含め40~60代が中心で、「7ヶ月以上」の利用者が7割を占めます。
 対して、非機能事業訓練所は県内市内50~70代が(内、60代以上が5割超)中心です。さらに「6ヶ月以内」の利用者が7割以上で、特に「3ヶ月以内」の利用が半数近くともっとも多くなっています。

職員が訓練に充てられる時間について
 通所・入所中心の機能訓練事業所では41%でした。非機能事業訓練所では33%となりましたが、訪問の際の移動時間が16%を占めることが問題点として指摘されました。

課題

【機能訓練事業所】
 通所が中心だが同行援護の利用に制限あり・人員配置基準が実態にあっておらず経営難・利用手続きが煩雑など

【非機能訓練事業所】
 訪問が中心のため移動時間がネックに・地方自治体に裁量が委ねられる面が多いため格差が生じるなど

パネルディスカッション~閉会挨拶

 基調報告の後、4人のパネリストと司会に成蹊大学理工学部学科 大倉元宏教授を迎え、パネルディスカッションが行われました。
 登壇したパネリストと、発言の主な要旨は以下の通りです。

  • 社会福祉法人 京都ライトハウス 鳥居寮 牧和義所長
     施設を経営する立場から発言。常勤職員や利用者の定員など、事業について具体例な数値や事例を交えて説明しました。
  • 公益社団法人 東京都盲人福祉協会 山本和典事務局長
     歩行訓練士・事務局長として発言。東京都の補助事業「中途失明者緊急生活訓練事業」についてふれ、歩行訓練・日常生活訓練などに加え、iPhoneなどの訪問指導を新たに開始したと報告。反対に、後継者の育成には苦心していることが伝えられました。
  • 視覚障害リハビリテーション協会 吉野由美子会長
     歩行訓練士だけでなく眼科医や視能訓練士などが入会する協会の会長として問題点に言及。ロービジョンや視覚障害リハビリテーションに対し、社会の認知度が低いことを課題として示しました。
  • 日本盲人会連合総合相談室 工藤正一室長
     厚生労働省入省時代に失明、生活訓練を通して自立・職場復帰した経験から発言。千葉県中途視覚障害者連絡会やNPO法人タートルにおける、中途視覚障害者への就労相談や支援について取り組みを紹介しました。

 続く質疑応答でも活発な意見が交わされ、藤井貢組織部長の閉会の挨拶をもってシンポジウムは閉幕しました。なお、組織部団体事務局は今回の調査およびシンポジウムで行われた意見交換の内容などをまとめ、3月下旬から4月初旬までに報告書として刊行する予定です。

本調査についてのお問い合わせ

【お問い合わせ】(福)日本盲人会連合 組織部団体事務局
 電話:03-3200-0011(代表) FAX:03-3200-7755 E-mail:jim@jfb.jp