愛盲時報 第223号(テキスト形式・全文)
愛盲時報 第223号 平成21年9月30日(水)
《1.第55回全国盲女性研修神奈川大会開催》
第55回全国盲女性研修大会(神奈川県大会)が、9月8日から10日の3日間、日本盲人会連合並びに同女性協議会、神奈川県視覚障害者福祉協会並びに同女性部の主催により、神奈川県大磯町にある大磯プリンスホテルを会場に開催されました。
大会第1日目は、常任委員会、全国委員会が相次いで開催され、9日の全国代表者会議並びに研修会の運営・進行について協議を行いました。
大会2日目の9日午前は、全国代表者会議が開催され、(1)平成20年度事業・決算・監査報告(2)平成21年度運動方針並びに事業計画・予算(3)代表者会議提出議題(4)大会宣言・決議(5)会報「あかね」(6)役員選挙規定、などの案件を討議しました。
午後からの研修会第1部の講演会では、女流講談師一龍斎春水師匠をお招きして新作講談「金子みすゞ ある童謡詩人の生涯」を演じていただきましたが、芸の力と感動的な内容に、会場中が涙を流して聴き入りました。また、日本盲人会連合も参加している点字ビッグイベントの一環として進められている、アジアの視覚障害者に点字器や点字用紙を送るプロジェクトに対して、5万円の寄付を行う事が決定されました。
第2部のレポート発表では「買い物をするときの工夫と失敗」をテーマに、笹川吉彦日本盲人会連合会長、七沢ライトホーム生活指導員の大浪信子氏のほか、神奈川COOPから2名の助言者を招き、各ブロック代表から赤裸々な体験を通じて感じた、さまざまな意見が発表されました。続いて行なわれた意見交換会では、フロアからも数多く手が挙がって、レポートに共感する声など多くの発言があり、活発な意見交換が行われました。
最終日の10日は、全国から関係者約600人が参加して、盛大に大会式典が開かれました。厚生労働副大臣の祝辞が代読されたのに続いて、県議会中の神奈川県知事に代わって副知事のご挨拶を頂き、続いて紹介された来賓の方々からも一言ずつ御挨拶を頂きました。また、女性協議会顧問の元法務大臣・南野知惠子先生からの祝電も披露されました。
また、主催者側からは笹川吉彦日本盲人会連合会長、新城育子女性協議会長ら、また開催地元を代表して鈴木孝幸神奈川県視覚障害者福祉協会会長、伴瀬美恵子実行委員長から挨拶がありました。
式典に続いて開催された議事では、代表者会議並びに研修会の報告を満場一致で承認し、大会宣言と決議も同じく採択されました。
次回の第56回全国盲女性研修大会は、平成22年9月1日から3日、長崎県で開催される予定で、挨拶に立った長崎県視覚障害者協会の野口豊会長が「『長崎に行くばい』を合言葉に、多くの皆さんに来てほしい」と述べられ、3日間にわたる大会は閉幕しました。
大会決議
1、世界的恐慌から生活を守るため、障害基礎年金を1級は月額12万円以上に、2級は月額8万円以上に引き上げるよう要望します。
1、障害者自立支援法見直しに当たっては、地域格差の解消、費用負担の軽減、調査項目に視覚障害特性を反映、支給量上限の廃止、以上のことを要望します。
1、視覚障害者本人が入院した際、ホームヘルプサービスを受けられるよう強く要望します。
1、急病や怪我など緊急時に、ガイドヘルプサービスが利用できるよう強く要望します。
1、障害者基本法の改正に当たっては、障害者権利条約の理念が反映されるよう、障害者権利条約が早期に批准されるよう要望します。
1、金融機関に設置のATMを、音声化するとともに、窓口での行員による代筆・代読を行うよう要望します。
1、情報バリアの解消を図るため、自治体が発行する文書には音声コードを貼付するよう強く要望します。
1、視覚障害者の生活環境充実を図るため、トイレ内の操作ボタン等を基準に合わせると共に、電化製品やリモコン等、操作しやすいようにし、食品の表示は内容を視覚障害者が分かるようにすることを要望します。
《2.第55回全国盲青年研修埼玉大会開催》
第55回全国盲青年研修大会埼玉大会が、日本盲人会連合並びに同青年協議会、埼玉県視力障害者福祉協会並びに同青年部の主催により、9月19日から21日の3日間、埼玉県熊谷市のホテル・ヘリテイジで開催されました。
初日の19日は常任委員会、実行委員会が相次いで開催され、翌日からの大会運営等について協議、夕食会では恒例のゲームなどを楽しみました。
大会2日目の20日は、午前9時から全国代表者会議が開催され、(1)平成20年度事業・決算・監査報告(2)平成21年度運動方針並びに事業計画・予算(3)選挙規定の検討(4)平成22年度からの役員選挙が行われました。選挙の結果、前田茂伸現青年部長(福井県)が引き続き協議会長に、監査には武山静江(神奈川県)、渡辺博和(静岡県)の両氏が選任されました。
引き続き開かれた分科会では、第1「交通問題、日常生活一般」、第2「バリアフリー・ユニバーサルデザイン」、第3「職業・組織」の3分科会に別れて、それぞれ提出された議題について討議を行いました。
昼食・休憩をはさんで午後からの研修会では、第1「埼玉の偉人、国学者塙保己一の生涯に学ぶ」に40名、第2「視覚障害者用パソコン体験」に30名余り、第3「小川和紙体験」に20名余りが参加しました。
研修会終了後に行われた全国委員会では、各分科会で採択された提出議案を3本選び、来年行われる全国盲人代表者会議に提出する件と、代表者会議から付託された宣言案と決議案の2つについて討議を行い、原案のとおり採択されました。
懇親会では、WBUAPの会長・指田忠司氏から、来年10月に行われるWBUAPの会議でも青年フォーラムが開催されるので、多くの出席を求めたいとの提案がありました。アトラクションでは「秩父夜祭屋台囃子」が演奏され、勇壮な祭囃子を体験するコーナーも設けられて、会場は大いに盛り上がりました。
最終日は、会議等報告会に引き続いて大会式典が行われ、宣言・決議が採択されると共に、埼玉県視力障害者福祉協会に青年協議会から感謝状が贈呈されました。次いでアトラクションとして、綱川泰典氏によるフルート演奏が披露され3日間の大会を終了しました。次回、平成22年の研修大会は7月17日から3日間、福岡県で開催される予定となっています。
大会決議
1、多くの視覚障害者が生業としている鍼灸マッサージ師の権益と国民の安全を守るため、鍼灸マッサージは有資格者のみが行えることを広く社会に啓発し、無資格類似行為者の一掃と法的整備を強く要望します。
1、障害者自立支援法が真の意味での障害者の自立を支援する基本法になるよう、現在生じている地域間格差を解消すると共に、個々の障害者の生活実態をふまえた改正を強く要望します。
1、公共施設や交通機関において、音響や触覚または表示文字サイズや色彩など、視覚障害者の特性に配慮した案内システムの構築を進めると共に、駅におけるホームドア設置などの安全対策を強く要望します。
1、家電製品やIT機器の開発において、操作しやすいスイッチ類や音声ガイドの充実に加え、点字や拡大文字、見やすいホームページによる情報発信など視覚障害者の意見を取り入れたものになるよう強く要望します。
1、多くの視覚障害者の情報源となっているテレビ放送において、全ての番組に音声解説を付加すると共に、視覚障害者に利用可能な地上デジタル放送受信端末の開発を積極的に行うよう強く要望します。
1、金融機関や保険会社などにおいて、代筆サービスを容易に受けられるなど、視覚障害者の利便性に最大限配慮することを強く要望します。
1、裁判員制度において、視覚障害者裁判員の移動や裁判資料の点字や音声、拡大文字やテキストデータでの提供など、個々のニーズに応じた対応がなされるよう強く要望します。
1、障害者ゆえに生じる経費負担を軽減するため、障害基礎年金の引き上げと、所得制限の大幅な緩和を強く要望します。
《3.第4回全国視覚障害者スポーツ研修大会 長崎の海でペーロン体験》
日本盲人会連合スポーツ協議会の第4回全国視覚障害者スポーツ研修大会が、長崎県視覚障害者協会との共催により、9月5日、6日の両日、長崎県で開催されました。第1日目の「ペーロン(競技用の手こぎの船)」体験では、県内の牧島漁港において「ペーロン保存会」の指導のもと、25名の参加者が長さ約13メートルの「ペーロン船」に乗船し、幅約1.3メートルのところに2列で縦に並び、全員同時に櫂をこいで船を進めました。
この時、太鼓や鉦に合わせて一緒に漕ぐのですが、最初はなかなかそろわなかったのが、時間がたつにつれ息も合うようになり、最後の頃には「ペーロン保存会」の先生からもお褒めにあずかるまでに上達、暑い中にも、さわやかな運動で充実した時間を過ごすことができました。
2日目の研修会第2部では、長崎県視覚障害者情報センター研修室において、理学療法士の濱野昌幸青年協議会副会長が「筋力UPとメタボリックシンドローム予防」と題し、約90分にわたり講演を行いました。
さすがに日頃スポーツに親しんでいるメンバーだけに、質問が数多く出され有意義な研修会となりました。なお、当日配布された資料については後日、加盟団体を通じてデータで送信されることとなっています。
《4.特別対策に係る「視覚障害者移動支援事業従事者資質向上研修事業」の状況について》
平成20年度の補正予算により、障害者自立支援対策臨時特例交付金に基づく事業として、日本盲人会連合による「視覚障害者移動支援事業従事者資質向上研修事業」が4期にわたって実施されました。
実施されるに至った経緯としては、各地で行われている移動支援(ガイドヘルプ)の技術が、地域や従事者によって差が出てきている問題について、日本盲人会連合が再三にわたる働きかけを行った結果、平成20年度からの開始が実現したものです。
平成20年度は、6月から8月にかけての4日間、東京・西早稲田の日本盲人福祉センターを会場に、当事者を含む284名が参加して実施され、実技認定と講義認定を行わせていただきましたが、これは資質向上を目指すという目的から、実技的な面での一定水準を確保する意味で、技術的なレベルが満たされない受講生の場合は、実技講師としての認定を見送ったものです。しかし、一部の受講者に関しては、実技の補講を実施することにより、その技術水準が確保されるとして、平成21年1月から3月にかけて、全国10か所において「補講研修」を実施しました。
この研修会につきましては、障害者自立支援対策臨時特例交付金の特別対策に係る基金の延長及び積増しが行われ、平成23年度まで継続して実施することとなりました。現在、平成21年度の研修会が、全国10か所において、12期それぞれ4日間の日程で実施されており、9月末時点では第4期まで終了したところです。
なお、平成22年度におけるこの講習会の日程は、10月中旬に発表され、受講生の募集については、平成22年4月より受け付ける予定となっています。
《5.政権交代で新年度予算白紙見直し 厚労大臣自立支援法の廃止明言》
8月30日に投開票された第45回衆議院議員選挙では、民主党が308議席を獲得して圧勝、9月16日に招集された第172特別国会で、民主党の鳩山由紀夫代表が第93代、60人目の首相に選出された。
同日、鳩山首相は新閣僚を任命、民主・社民・国民新3党連立による新政権が正式に発足した。厚生労働大臣には民主党の長妻昭氏(49歳、衆院当選4回、東京7区)が就任した。
政府は9月29日の閣議で、平成22年度予算編成の基本方針として、麻生内閣が決めた概算要求基準を廃止し、10月15日までに各省庁が新たな予算要求を提出することを決めた。また、21年度補正予算の見直しも進める方針という。
一方、長妻厚生労働大臣は9月19日、厚労省内で記者団に、障害者自立支援法を廃止する方針を明らかにした。民主党は同法の廃止を衆院選のマニフェストに掲げており、民主、社民、国民新3党は連立政権の政策合意で「応能負担」を基本とする総合的な制度をつくることを盛り込んでいる。
また、厚生労働省の政務三役は9月28日の会議で、障害者自立支援法廃止後、新たな法律が整備されるまでの期間について、新たな負担軽減策の先行実施を検討することを申し合わせた。
《6.短信》
厚生労働省人事
7月24日付けで次の方々が新たに就任(敬称略)
社会・援護局長:清水美智夫
社会・援護局障害保健福祉部企画課長:藤井康弘
社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課長:中島誠
職業安定局高齢・障害者雇用対策部長:熊谷毅
職業安定局高齢・障害者雇用対策部企画課長:吉永和生
職業安定局高齢・障害者雇用対策部障害者雇用対策課長:奈尾基弘
団体名称・住所等変更
熊本県視覚障害者福祉協会連合会の新団体名と連絡先は次の通り
社会福祉法人熊本県視覚障がい者福祉協会
住所:〒861-8039熊本市長嶺南2-3-2
電話・FAX:096-383-6833
訃報
日本盲人会連合婦人部(現女性協議会)で、昭和36年から49年にかけて婦人部長を務めた中村歌子さんが9月1日、逝去された。享年95歳。
葬儀は9月4日、静岡市の「セレモニーホール葵豊田」でしめやかに営まれた。