愛盲時報 第215号(テキスト形式・全文)

2007年9月25日

 愛盲時報 第215号(平成19年9月25日発行)

 ≪1.平成20年度 厚生労働省概算要求 障害福祉関係5.9%増の9532億円≫
 厚生労働省は8月28日、平成20年度予算の概算要求をまとめた。一般会計総額は22兆1604億円の前年度費3.2%増。障害保健福祉関係の要求額は9532億円(平成19年度予算額9004億円)、対前年度伸率は5.9%増。障害者雇用施策関係の要求額は176億6000万円(同138億8200万円)となっている。障害者関連の主な項目は次の通り(身体障害者関係以外は詳細を略す)。

 ≪2.第1項 障害保健福祉関係≫
 概算要求額:9532億円(対前年度伸率5.9%増)
 A.障害者の自立生活を支援するための施策の推進
 (1)良質な障害福祉サービスの確保:4882億円
 ホームヘルプ、グループホーム、就労移行支援事業等の障害福祉サービスについて、障害福祉計画に基づき、各市町村において推進を図る。
 (2)障害児施設に係る給付費等の確保:636億円
 知的障害児施設等の障害児施設において、障害のある児童に対する保護・訓練を行うために必要な経費を確保する。
 (3)地域生活支援事業の着実な実施:450億円
 障害者のニーズを踏まえ、移動支援や地域活動支援センターなど障害者の地域生活を支援する事業について、市町村等における事業の着実な実施及び定着を図る。
 *市町村事業…相談支援、コミュニケーション支援、日常生活用具給付等、移動支援、地域活動支援センター等
 *都道府県事業…専門性の高い相談支援(障害者就業・生活支援センター等)、広域的支援、サービス提供者等の育成等
 (4)障害者に対する良質かつ適切な医療の提供:1350億円
 障害者の心身の障害の状態の軽減を図るための自立支援医療(精神通院医療、身体障害者を対象とした更生医療、身体に障害のある児童を対象とした育成医療)を提供する。
 (5)障害者自立支援法の着実な施行の推進:82億円
 障害者自立支援法を着実に施行するために、必要な事業を推進する。
 *障害者保健福祉推進事業:25億円
 障害者自立支援法の着実な施行のための先駆的・革新的なモデル事業に対する助成を行い、障害者に対する保健福祉サービスの一層の充実を図る。
 *障害者就労訓練設備等整備事業:24億円
 既存の障害者施設等が就労移行支援等の新たな障害福祉サービスを実施するために必要な設備等を整備する場合の助成を行う。
 (6)障害者の社会参加の促進:28億円
 視覚障害者に対する点字情報等の提供、手話通訳技術の向上、ITを活用した情報バリアフリーの促進、障害者スポーツや芸術文化活動の振興等を支援し、障害者の社会参加の促進を図る。
 *北京パラリンピック競技大会派遣等事業の実施(新規):8300万円
 B.精神障害者の地域移行を支援するための施策の推進
 C.障害者の就労を支援するための施策の推進
 (1)福祉施設で働く障害者の工賃倍増5か年計画取り組みの推進:15億円
 (2)債務保証事業の創設(新規):4億円
 D.発達障害者支援施策の更なる拡充
 E.自殺対策の推進
 F.その他
 (1)障害者に係る手当の給付:1284億円
 特別児童扶養手当、特別障害者手当等に必要な経費を確保する。
 (2)障害福祉サービス提供体制の整備:90億円(保護施設等の整備費分を含む)
 生活介護、自立訓練、就労移行支援等の障害者の日中活動に係る事業所の整備を計画的に促進するため、社会福祉施設等施設整備費において、必要な経費を確保する(社会・援護局一括計上)。

 ≪3.第2項 障害者雇用施策関係≫
 (カッコ内の数字は前年度)
 概算要求額:176億6000万円(138億8200万円)
 A.雇用、福祉、教育等の連携による地域の就労支援力の強化
 (1)ハローワークを中心とした、地域の関係機関との連携による「チーム支援(地域障害者就労支援事業)」の強化等:12億5100万円(1億2900万円)
 (2)障害者就業・生活支援センター事業の拡充:28億1200万円(12億4200万円)/設置箇所数135を235に
 (3)地域の福祉施設・特別支援学校における、一般雇用や雇用支援策に関する理解の促進(「障害者就労支援基盤整備事業」の推進):5500万円(前年と同額)
 (4)障害者の就労支援を担う人材の育成・確保のあり方に関する調査研究(新規):1200万円
 (5)障害求職者と企業とのマッチング支援ツールの整備(新規):障害者雇用納付金事業
 (6)障害者トライアル雇用事業の拡充:9億5900万円(9億200万円)/対象者数8000人を8500人に
 B.障害者雇用促進法制の整備(新規):2100万円
 C.障害者雇用の底上げのための関係者の意識改革
 (1)障害者雇用の底上げのための意識改革・支援ネットワーク形成推進事業(新規):2億3400万円
 (2)地域の事業主団体を活用した「障害者雇用に関する意識改革促進事業」の推進(新規):3億3800万円
 D.障害の特性に応じた支援策の充実・強化
 (1)精神障害者の特性に応じた支援策の充実・強化(「精神障害者ステップアップ雇用奨励金(仮称)」の創設等)(新規):2億9000万円
 (2)医療機関等との連携による精神障害者の就労支援の推進:4700万円(前年と同額)
 (3)若年コミュニケーション能力要支援者就職プログラムの推進:8600万円(8900万円)
 (4)発達障害者の就労支援者育成事業の推進:1200万円(1300万円)
 E.障害者に対する職業能力開発の推進
 (1)民間を活用した機動的かつ実践的な職業訓練の推進:18億円(14億8700万円)/対象者数6600人を8150人に
 (2)政令指定都市における職業能力開発推進基盤の強化:2億1700万円(5500万円)/実施箇所数6か所を17か所に
 (3)一般校を含めた公共職業能力開発施設における障害者職業訓練の推進:39億9000万円(42億8700万円)
 (4)発達障害者に対する職業訓練の推進:1億600万円(5300万円)

 ≪4.第53回全国盲青年研修富山大会報告≫
 第53回全国盲青年研修大会富山大会(主催:日本盲人会連合並びに同青年協議会、富山県視覚障害者協会並びに同青年部)が、7月14日~16日の3日間、富山市の呉羽ハイツで開催されました。台風の接近、新潟県中越沖地震の発生、それに伴う交通機関の混乱と想定外の事態が相次ぐ中、全国から約120名が参加して討議を重ね、盛会の内に無事閉幕しました。以下に、舟崎隆青年協議会長から寄せられた大会報告の抜粋を掲載させて頂きます。紙面の都合上、全文をご紹介できませんが、何卒ご了承下さい。
 *大会1日目
 常任委員会、大会実行委員会の諸会議を午後に開催し、懇親会は「第1回アームレスリング大会」を行いました。優勝者は広島県のKさんです。上位3位までの方に豪華富山の名産品を贈呈し、終了。1つの恒例行事になることを祈っております。
 *大会2日目
 代表者会議では、平成18年度事業報告、決算報告、会計監査報告を本部提案通り承認、平成19年度事業計画案、予算案の審議に入りました。
 メール版「いぶき」のあり方や、ホームページの活用法、特別会計の使い道などについて、積極的なご意見をいただき、本部提案通り承認されました。
 今年度の新たな事業としては(1)飲食店における点字あるいは拡大文字のメニュー設置状況調査(2)青年協議会のリーフレット作成(3)各団体青年部の実態調査の三つに取り組みます。
 次期青年協議会の役員選挙では、平成20年度からの協議会長に福井県の前田茂伸さん(現副協議会長)を選出、会計監査員に京都府の藤原健司さんと東京都の比企和昭さんが再任されました。
 第1「交通問題・生活一般」、第2「金融・情報問題」、第3「職業・組織」の三つの分科会では、各団体とブロックから提出された議題を審議。活発な意見交換を通して、全国委員会に付託する議題を絞り込みました。
 また、第1「視覚障害者の救急救命措置」(講師は日本赤十字社救急法指導員・松井武浩氏他)、第2「視覚障害者の音楽活動」(講師は歌手の大石亜矢子氏)、第3「キンボール」(講師は全国キンボール連盟マスター兼C級レフリー・中野悦子氏)の各研修会も行われ、いずれも大変熱心な参加者が集まり、有意義なものとなりました。
 全国委員会では代表者会議で付託された大会宣言案と決議案の審議を行い、本部提案通り承認。続いて各分科会から提出された議題を三つに絞り込む作業を行い、(1)自転車マナーの整備を要望する(鳥取県)
(2)シャンプーやボディーソープ等の「詰め替え用」商品に切れ込みなどを入れることにより、視覚障害者でも容易に識別できるような工夫をしていただきたい(京都府)(3)地上デジタル放送における文字放送の規格統一化と、全盲や弱視にも利用可能な受信端末機の開発を要望する(北信越ブロック)の3題を、来年度の第61回全国盲人福祉大会への提出議題に決定しました。
 *大会3日目
 前日の各種会議や研修会の報告後、大会式典が開かれましたが、開式の言葉に引き続き青年協議会の歌を斉唱中、シャンデリアが揺れ始め、会場はどよめきました(これが新潟県中越沖地震でした)。それでも最後まで歌い終え、予定通り式典は行われました。
 今回の式典の目玉は、スティービー・ワンダー氏の特別メッセージ放映。今年2月の来日に際し、実行委員長の濱野昌幸さんがインタビューしたものです。コーディネーターとして東京都盲人福祉協会青年部長の椎ヶ本剛志さんが労を尽くしてくれました。そして前協議会長の西村秀樹氏(滋賀県)からの祝電が披露され、次年度大会を共催する岡山県の福原隆行青年部長からご挨拶をいただき、大会は無事に閉幕しました。

 ≪5.大会決議≫
 1、多くの視覚障害者が生業としている鍼灸マッサージ師の権益と国民の安全を守るため、鍼灸マッサージは有資格者のみが行えることを広く社会に啓発すると共に、無資格類似行為者の一掃を強力に進め、合わせて法的整備を強く要望します。
 1、障害者自立支援法においては、地域間格差が生じないよう最大限配慮すると共に、個々の障害者の特性に応じた生活実態をふまえ、真の意味での障害者自立を支援する基本法になるよう強く要望します。
 1、公共交通機関や公共施設においては、音響や触覚または表示文字サイズや色彩など、視覚障害者の特性に配慮した案内システムの構築を進めると共に、駅におけるホームドアなどの安全柵の設置を強く要望します。
 1、ユニバーサルデザインの理念に基づき、家電製品やIT機器の開発においては、広く視覚障害者の意見を取り入れると共に、情報発信において、点字や拡大文字、読みやすいホームページの作成など、視覚障害者に最大限配慮したものになるよう強く要望します。
 1、多くの視覚障害者の情報源となっているテレビ放送においては、全ての番組に解説放送が付けられると共に、視覚障害者にとって有益な地上デジタル放送の構築がなされるよう強く要望します。
 1、銀行や保険会社などの金融機関においては、視覚障害者の利便性に最大限配慮すると共に、代筆サービスが容易に受けられるよう強く要望します。
 1、2009年から施行される裁判員制度においては、視覚障害者裁判員の移動や裁判資料の点字や拡大文字、データでの提供など、個々のニーズに応じた対応がなされるよう強く要望します。
 1、障害者ゆえに生じる経費負担を軽減するため、障害基礎年金の引き上げと、所得制限の大幅な緩和を計ると共に、在宅就労者に対する公的な支援を強く要望します。

 ≪6.第53回全国盲女性研修栃木大会報告≫
 第53回全国盲女性研修大会(栃木県大会)が日本盲人会連合並びに同女性協議会、栃木県視覚障害者福祉協会並びに同女性部の主催により、8月27~29の3日間、栃木県宇都宮市のホテル東日本宇都宮を会場に、全国から盲女性及び関係者など約600人が参加して開かれました。以下は、日盲連の鈴木孝幸情報部長による大会報告です。
 *大会1日目
 常任委員会では大会の運営方針等を検討、続いて行われた全国委員会では様々な内容が討議された。夜は夕食会が開かれ、久しぶりに会った友人達と楽しい一時を送り、大会の成功、協議会の発展、各自の健康に祝杯をあげた。
 *大会2日目
 午前中は全国代表者会議が開催され、(1)平成18年度の事業報告と決算(2)平成19年度事業計画と予算(3)会報「あかね」について(4)アンケート調査報告、など重要案件を討議した。
 午後からの研修会第1部は、下野民話の会代表・柏村祐司氏ほか語りべの皆さんが「明日をめざして、下野の語りべたち」を講演。第2部のレポート発表・意見交換では「輝いて生きる 私の失敗 笑いと涙」をテーマに、各ブロック代表による発表が行われたが、出席者は自分の事に置き換えて、うなずいたり感心したりと、いずれも共感を呼ぶ内容であった。また意見交換会では、フロアから活発な意見が数多く出され、実り多い研修会となった。
 *大会3日目
 最終日は栃木県宇都宮市のホテル東日本宇都宮に、全国から視覚障害女性及び関係者約600人が参加して、大会式典並びに議事が行われた。式典には地元栃木県知事をはじめ宇都宮市長、栃木県身体障害者団体連絡協議会代表など多くの来賓が出席して祝辞を述べたほか、日本盲人会連合の笹川吉彦会長、名取陸子女性協議会長ら主催者や、開催地元代表らが挨拶。続いて行われた議事では代表者会議、研修会の報告を承認し、大会宣言・決議を採択した。次回の第54回全国盲女性研修大会は、愛媛県で平成20年7月28日~30日に開催の予定。
 なお、大会期間中、会場に設置された日盲福祉センター建設募金箱には、14万8400円が寄せられ、関係者は「ご協力頂いた皆様に改めて感謝申し上げたい」としている。

 ≪7.大会決議≫
 1、すべての福祉サービスを受けるための費用負担を余儀なくされている現在、安定的生活財源である障害基礎年金を1級障害者では月額10万円以上を、また2級障害者では月額7万5千円以上の支給額を要望します。
 1、福祉サービス利用のために支払う費用の算定基準を家族所得ではなく、
利用者本人の所得のみを基準とするよう要望します。
 1、各市町村により福祉サービスの実施状況には大きな格差があります。居住する所によって受ける福祉の恩恵に不平等が生じないことを要望します。
 1、郵政民営化に伴い、点字郵便物や録音物の郵送において、遅配や粗雑な取り扱いがないよう要望します。
 1、視覚障害者が金融機関を利用しやすくするために、代筆や機器の音声化などを要望します。
 1、視覚障害者が医療機関を利用する場合のサポート態勢として、通院の際にはガイドヘルパーの院内での介助を、入院の際にはホームヘルパーの導入を要望します。
 1、視覚障害者がテレビ内容を正しく理解するために、ニュース速報や緊急放送の音声化と解説付ドラマの放送を増やすよう要望します。
 1、公共交通機関に対し、車内では明瞭な案内放送を、階段の段鼻には弱視者に分かりやすい色標示を、またホームからの転落事故防止のためのホームドアなどの設置を要望します。
 1、家庭電化製品や医薬品、缶詰、冷凍食品、レトルト食品など手に触れても内容の判別できない物への点字標示を要望します。
 1、視覚障害者は運転ができないので、視覚障害者が同乗しているすべての車両について、身体障害者手帳の提示のみで、高速道路の通行料金の割引が受けられるよう要望します。
 1、色や文字を音声で再生する機器を全国一律に日常生活用具に指定されるよう要望します。

  ≪8.日盲福祉センター建設2億円募金≫
 ご寄付いただいた方々のお名前(平成19年5月21日~同8月20日)8月20日現在 総額1億2905万5969円
 (敬称略)
 *会員及び一般個人・団体
 【100万円】竹村松男(石川県)
 【30万円】河田、国際観光交通株式会社(以上東京都)
 【16万7000円】長野県視覚障害者福祉協会役員一同(長野県)
 【15万円】森基(岡山県)
 【13万円】株式会社ブライユ(東京都)
 【10万円】加藤則夫(埼玉県)、川合ミツ、東京都盲人福祉協会多磨ブロック、匿名1件、野田守(以上東京都)、横浜市視覚障害者福祉協会(横浜市)、桜井俊二(長野県)
 【5万円】安藤澄子、金澤茂雄(以上東京都)、前川昭夫(広島県)
 【3万円】ともだちの会(東京都)
 【2万円】伊藤邦明、臼井健雄(以上東京都)、丸茂周二(長野県)、中村利則(鳥取県)、西条市視覚障害者協会(愛媛県)、大牟田視力協会(福岡県)
 【1万8543円】射水市視覚障害者協会(富山県)
 【1万5000円】野田一郎(東京都)、北添栄一(大阪市)
 【1万1000円】音訳サークルせせらぎ(茨城県)
 【1万円】煙山満(秋田県)、大塚郁代、上林政吉、星野晴雄、矢澤修二(以上東京都)、峯村和良(新潟県)、櫻井九萬男、中山吉泰(以上長野県)、安田庄内(富山県)、島袋茂信(大阪府)、柳生良雄(岡山県)、田尾秀春(広島県)、下松市視覚障害者協会(山口県)、菅原静子、住本広光、馬渡幸三郎、馬渡四郎、宮崎市視覚障害者福祉会(以上宮崎県)
 【7450円】映画「ヘレンケラーを知っていますか」東京上映を成功させる会(東京都)
 【5000円】菊池達夫(北海道)、関和子(茨城県)、松嶋明(栃木県)、四宮美代子、清水照子(以上東京都)、久野香津代、鈴木ミチ、松本康男(以上神奈川県)、星野りょう子(新潟県)、前山栄清、山﨑美恵子(以上長野県)、荒木美代子、岡崎勝代(以上富山県)、島田直、清静代(以上静岡県)、伊藤さとり、小野忠雄、佐藤美代子、田口紀代子、武田春信、田島洋子、福井由、山幡恭子(以上岐阜県)、川井登志子、北浦日出雄(以上大阪府)、奥平春子(和歌山県)、村上参吉(熊本県)、田爪畩弘(宮崎県)
 【その他】計2万6000円/10件
 *経済界 大日本印刷株式会社、日本証券業協会、NOK株式会社、キヤノン株式会社、KYB株式会社、社団法人生命保険協会