愛盲時報 第203号(テキスト形式・全文)

2004年9月15日

   愛盲時報 第203号(平成16年9月15日)

 1.平成17年度厚労省概算要求 障害福祉11.2%増 就労支援 福祉と雇用連携で
 厚生労働省は8月27日、平成17年度予算の概算要求をまとめた。総額は今年度当初予算比5.3%増の21兆2673億円。障害保健福祉関係予算は7719億7600万円(対前年比11.2%)。
 支援費制度の着実な実施を図ることを重点課題とした他、地域での生活の実現を図るため、福祉と雇用施策の連携をはじめとする就労支援策、発達障害者への支援、新障害者プラン等に基づくサービス基盤の整備推進にも重点を置いた。(主な障害保健福祉関係の項目は次の通り)
Ⅰ.重点施策実施5か年計画(新障害者プラン)の推進(1426億円→1834億円)
 1 在宅サービスの推進
(1)訪問介護(ホームヘルプサービス)事業[身体・知的・精神]:356億6300万円→495億6200万円
(2)短期入所(ショートステイ)事業[身体・知的・精神]:50億4300万円→87億3900万円
(3)日帰り介護(デイサービス)事業:129億4800万円→191億8100万円
 *身体障害者日帰り介護事業:75億5600万円→92億5800万円
 *障害児通園事業:30億3400万円→42億9700万円
(4)重症心身障害児(者)通園事業:25億8900万円→27億7200万円
(5)精神障害者地域生活支援センター:46億2300万円→48億4800万円
(6)障害者ケアマネジメント体制支援事業:1億4400万円→1億4600万円
(7)障害児タイムケア事業(新規):10億700万円
 2 住まいや働く場または活動の場の確保
(1)地域生活援助事業(グループホーム):105億8100万円→157億4千万円
(2)福祉ホーム:11億100万円→12億4500万円
 *身体障害者福祉ホーム:1億800万円→1億3400万円
(3)通所授産施設:492億2400万円→551億9200万円
 *身体障害者通所授産施設:61億2600万円→66億600万円
(4)小規模通所授産施設[身体・知的・精神]:41億5500万円→68億9100万円
(5)小規模作業所[身体・知的・精神]:24億8100万円(前年度と同額)
 4 保健福祉施策と雇用就業施策の一体的推進
(1)障害者就業・生活支援センター事業:8億1700万円→13億6600万円
 ①雇用安定等事業:6億9500万円→10億5500万円
 ②生活支援等事業:1億2200万円→3億1100万円
(2)施設外授産の活用による就職促進事業は、障害者自立支援・社会参加総合推進事業のメニューに
 5 施設整備費
 社会福祉施設整備費は社会援護局に一括計上
 Ⅱ.支援費制度の着実な実施
(1)支援費制度の着実な実施:3473億600万円→3854億2600万円
 *ホームヘルプサービスなどの居宅生活支援の推進:601億8800万円→871億4100万円
 *更生施設、授産施設などの施設訓練等支援の推進:2871億1800万円→2982億8500万円
(2)障害者地域生活推進特別モデル事業:5億7800万円→4億8800万円
(3)支援費事業経営実態調査事業:4000万円→2億2600万円
(4)サービスの支給決定等に関する検討会費(新規):700万円
 Ⅲ.就労支援の充実
(1)小規模作業所への支援の充実強化事業費(新規・仮称):15億円
(2)重度障害者在宅就労促進特別事業(バーチャル工房支援事業、新規・仮称):1億円
(3)障害者就業・生活支援センター事業:8億1700万円→13億6600万円
(4)福祉工場[身体・知的・精神]:19億3500万円→19億6600万円
(5)小規模通所授産施設[身体・知的・精神]:41億5500万円→68億9100万円
(6)小規模作業所[身体・知的・精神]:24億8100万円(前年度と同額)
(7)施設外授産の活用による就職促進事業は、障害者自立支援・社会参加総合推進事業のメニューに
 Ⅳ.発達障害に対する支援
(1)発達障害者支援体制整備事業(新規・仮称):3億9100万円
(2)自閉症・発達障害支援センター運営事業:2億4500万円→4億4300万円
(3)研修及び普及啓発等:700万円→1600万円
 Ⅴ.障害者の社会参加の促進
(1)障害者自立支援・社会参加総合推進事業(社会参加と自立支援の一体的な事業の推進、障害者IT総合推進事業によるITを活用した情報バリアフリーの推進、身体障害者補助犬の育成等):48億円→50億円
(2)障害者スポーツ・文化芸術活動振興事業:9600万円(前年度と同額)
(3)身体障害者福祉促進事業委託費:5億一五〇〇万円→5億3700万円
(4)高度情報通信福祉事業:1億4900万円(前年度と同額)
 Ⅵ.その他の施策
(1)手当等の給付:1211億8100万円→1238億1800万円
 *特別児童扶養手当862億2600万円
 *特別障害者手当等349億5500万円→349億8300万円
(2)医療費の公費負担:662億6200万円→787億6300万円
(3)補装具の給付等:200億7600万円→214億8000万円
 *補装具の給付178億7200万円→185億6500万円
 *日常生活用具給付等事業22億500万円→29億1500万円
(4)高次脳機能障害支援モデル事業:22億500万円→29億1500万円
(5)障害児施設措置費(重度重複障害児加算などを新規に創設):754億4300万円→753億2300万円
(6)知的障害児(者)基礎調査(新規):1億2100万円
(7)厚生労働科学研究費(厚生科学課に一括計上):27億1000万円→32億7200万円
 *障害関連研究経費8億5300万円→9億1600万円
 *身体機能解析・補助・代替機器開発研究経費1億円(前年度と同額)
(8)国立更生援護施設の運営費、整備費:98億5500万円→103億4600万円
 *補助犬トレーナー育成研修事業等の実施1300万円(前年度と同額)

 2.2004年版障害者白書
 政府は6月4日の閣議で、2004年版の障害者白書を了承した。障害者基本計画に基づき、住宅のバリアフリー化などの目標値を設定した「重点施策実施五カ年計画」の初年度である昨年度の取り組みを中心にまとめた。
 ハローワークを通じた障害者の就職件数は3万2885人と、2007年度を達成期限としていた年間3万人の目標を上回った。
 しかしバリアフリー化では、1日の平均利用者が5000人以上の主要な鉄道駅で障害者が利用できるエレベーターの設置などが全体の39.0%にとどまった。全国22カ所の空港で対策がとられたのは18.2%。
 政府は2010年までに主要な公共交通施設でのバリアフリー化の完全実施を目指しているが、取り組みの遅れが際だっている。

 3.障害者部会 各検討会のまとめ出揃う 移動介護など検討課題に
 第16回社会保障審議会障害者部会が8月6日、東京・霞が関の厚生労働省で開かれ「今後の障害保健福祉施策について 中間的なとりまとめ」「障害者(児)の地域生活支援の在り方検討会まとめ」「精神障害者の地域生活支援の在り方検討会まとめ」「精神病棟等に関する検討会まとめ」のほか、7月30日に開かれた介護保険部会の審議結果が報告された。
 それぞれ抱えている問題は大きく、共通の、あるいは個別の問題点について具体的に検討を継続することになった。
 障害者に関する二つのまとめでは、地域生活を確保するために必要な事項を提起、特に視覚障害者に関しては移動介護(ガイドヘルプ事業)、文書の代筆・代読、ホームヘルプ事業の単価の見直し、費用負担の在り方等が検討課題となっている。精神障害者については、10年計画で7万人の在宅生活を可能とするなどの具体策が示された。
 介護保険部会からの報告では、介護保険制度自体に課題が多いとし、支援費制度との統合問題については、結論を出すに至っていない。
 それぞれのまとめで共通して言えることは、諸施策を推進していく上で必要な財源をどう確保するかで、「広く議論を起こし、国民的な課題としていかに対応して行くべきか」を結論付ける必要があるとしている。
 なお、障害者部会は9月中旬から、地域生活を確保するための、より具体的な検討に入ることになった。

 4.支援費との統合先送り 介護保険部会
 社会保障審議会介護保険部会は、来年の介護保険制度改革に向けての議論を行ってきたが、7月30日にまとめた報告書では、焦点だった障害者支援費制度との統合は賛否両論を併記、「現時点では一定の結論を得るには至らなかった」とし、方向性を示さなかった。
 積極的な意見としては「介護ニーズを年齢で区分する合理性は見出し難い」「財政が安定する」「障害者の福祉が改善される」など。
 消極的な意見としては「障害者施策は全額税金を基本とすべきだ」「若者や企業に新たな負担が生じる」「支援費導入から1年で、時期尚早である」などを記した。
 議論を先送りしたが、負担増となる企業や市町村からは反発も多く難航は必至。秋に改革案をまとめ、来年の通常国会に法案を提出する。

 5.障害者就労支援で有識者懇話会設置
 厚生労働省は障害者が働く授産施設や小規模作業所などの福祉施設を、機能に応じて三つに再編することを柱とする障害者の就労支援策をまとめた。
 障害者が各自の能力に応じて働ける仕組みを目指すもので、企業と福祉関係者で構成する有識者懇話会で具体的な施策を検討する。
 福祉施設は
 (1)一般企業への就職や離職後に再挑戦するために知識・能力を磨く施設
 (2)一般企業での就労が困難な人が支援を受けて継続的に働く施設
 (3)就労が困難な人が日中活動する施設
 の三つに再編する。
 このほか、障害者雇用の対象に新たに精神障害者を加えることや、在宅就業者に仕事を発注する企業に対する奨励策なども盛り込んだ。
 福祉施設を出て企業で働きたいと考える障害者が増えているのに働ける場が少ない現状を打開しようと、同省の福祉部局と職業安定部局が連携して今年2月に検討会議を発足。就労支援の方向性を探ってきた。

 6.内閣府 障害者団体にヒアリング
 内閣府は、すべての省庁の課長による「公共サービス適切対応推進チーム」を組織し、公共施設におけるハード面、ソフト面のサービスの在り方について検討を行っているが、その第2回会合が8月23日、東京・霞が関の内閣府会議室で開かれた。
 当日行われた障害者団体からのヒアリングで、日本盲人会連合(笹川吉彦会長)は、公共建造物、公共交通機関におけるサービスの在り方についての提言を行った。主な内容は次の通り。
 (1)誘導ブロックの普及に比べ整備が遅れている音声案内の充実(建物の入り口、エレベーター、エスカレーター等)
 (2)行政窓口における各種申請手続き等に対する対応(代筆、代読など)
 (3)ホームからの転落防止(可動柵や混合ブロックの敷設)
 (4)構内放送や車内での音声案内の明瞭化
 (5)弱視者を対象とした階段の縁の色付け、表示文字の大きさや読みやすさ(時刻表や料金表など)、構内や地下道などの照明度
 (6)必要に応じた人的対応、など
 また、ATMについても、視覚障害者が単独で利用できる機器の開発と整備について配慮を求めた。
 内閣府では各団体からの提言をもとに今後、改善に向けた検討を行う方針。

 7.障害者雇用促進法改正へ
 厚生労働省は8月6日、企業が在宅就業の障害者に仕事を発注した場合に障害者雇用率の未達成企業に支払いが義務付けられている納付金を減額することや、精神障害者を雇用率の適用対象にすることなどを盛り込んだ障害者雇用促進法の改正案を来年の通常国会に提出する方針を決めた。成立すれば、2006年度から施行される見通し。
障害者雇用促進法は、事業主に法定雇用率(1.8%)以上の身体、知的障害者の雇用を義務付けている。達成できない場合、301人以上の企業は不足1人あたり月額5万円の納付金を支払わなければならない。
 改正案では、雇用しない場合でも、障害者に仕事を発注すれば、納付金を減額したり、法定雇用率を達成した企業が受け取る調整金などを増額する仕組みを導入する。
 2003年の全国の障害者雇用率は1.48%にとどまっており、義務化された1976年以来、一度も法定雇用率に達していない。

 8.障害者差別禁止条例 千葉県制定へ 全国初
 千葉県の堂本暁子知事は7月8日の記者会見で、障害者への差別を禁止する全国初の条例を制定する考えを表明した。障害者や家族らを交え、禁止する具体的な差別行為などを1年ほどかけて詰め、2005年度にも条例案を県議会に諮り成立を目指す。条例提案に先だち今年10月にも、障害者からの相談を24時間受け付ける窓口を開設する。同時に、国に「障害者差別禁止法」(仮称)の制定を働きかける。
 障害者への差別禁止を定めた法律は現時点で欧米を中心に世界で40カ国以上が定めている。国連も2001年、日本に対して同様の法律制定を勧告している。千葉県独自の条例は、障害者差別禁止の理念を掲げるだけにとどめず、具体的な差別行為の禁止まで踏み込む見込み。具体的には就労時や職場での差別的処遇、障害を理由にレストランや宿泊施設、公共交通機関の利用を断るといった事例を対象にする方向だ。極めて悪質な差別行為には罰則の導入も検討する。

 9.障害者避難支援でガイドライン作り
 政府は7月26日、新潟、福島、福井3県の豪雨災害を受け、内閣府で国土交通、警察など関係省庁による局長級会議を開き、高齢者や障害者らの避難・誘導を支援するためのガイドラインや、自治体が避難勧告を出す際の判断の参考となるマニュアルを作成することを決めた。
 今回の豪雨災害の犠牲者が高齢者に集中したことや、避難勧告を出すタイミング、方法が自治体によって違ったことが問題となったのを踏まえ、各自治体が救助を必要とするとみられる高齢者・障害者らを事前に把握しておくことを検討。中央防災会議に報告し、年内をメドに結論を得る。

 10. あん摩師等法19条改正請願 衆院で再度保留 全会一致得られず
 第156通常国会で保留となったことを受けて、第159通常国会での採択に向け、日本盲人会連合を中心に組織を挙げて運動を展開していた、あん摩師等法第19条にはり・きゅうを加え、はり師、きゅう師養成施設の新増設を規制する衆議院議長宛請願は、請願件数349通、紹介議員238人と、前回を大きく上回ったものの、6月16日に開かれた衆議院厚生労働委員会で再度審議未了(保留)となった。理由は、同委員会で全会一致が得られなかったため。
 福岡地裁で平成10年秋に、柔道整復師養成施設の新増設が認められないのは法律違反という判決が出されて以来、はり師、きゅう師についても法的規制がないことから、その後、はり師、きゅう師養成施設は激増し、今では当時の定員の7倍にも達している。
 一方、はり・きゅう治療を必要とする患者は横ばい状態で、その結果、視覚障害を有するはり師、きゅう師の営業は著しく影響を受け、自立への道が厳しい状態となっている。
 日盲連は今回の結果を踏まえ、早急に今後の対策を協議することとした。

 11.請願運動継続せず 臨時評議員会で対策を協議
 日本盲人会連合(笹川吉彦会長)の臨時評議員会と日本盲人福祉センター建設委員会が9月6日、東京・永田町の衆議院第1議員会館で開かれた。
 臨時評議員会では、あん摩師等法第19条にはり・きゅうを加え、はり師、きゅう師養成施設の新増設を規制する衆議院議長宛請願が、第159通常国会で保留となったことを受け、今後の対策を協議した。
 請願運動は継続しないことを決定したが、試案として提示された改正案のあん摩師等法挿入を図ることについて、今後さらに協議を続ける他、ヘルスキーパー、機能訓練指導員等の職域開拓確保に努めるとともに、無資格類似行為者の徹底取締り運動を引き続き推進することとした。
 また、10月31日の日本障害者フォーラム(JDF)発足に合わせ、本年度をもって日本身体障害者団体連合会から退会(中央のみ)することを決定。各都道府県・政令指定都市については、各団体の判断に委ねるとした。
 引き続き開かれた日盲福祉センター建設委員会では、委員長に笹川吉彦日盲連会長が就任。建設費は約4億円で、日本財団に助成金申請を行うが、不足約1億円については、建設常任委員会で検討の上、会員ならびに関係各方面への協力を仰ぐことになった。

 12.50周年記念全国盲女性研修大会 大阪に1300人
 第50回全国盲女性研修大会(日本盲人会連合、同女性協議会、大阪府視覚障害者福祉協会、同女性部主催)が8月24~26の3日間、大阪市の都ホテル大阪で開催された。
 今大会は50周年を記念する節目の大会ということもあり、全国から視覚障害女性及び関係者約1300人が参加する大変な盛況となった。
 24日は常任委員会と全国委員会が開かれた。25日午前の全国代表者会議では各ブロック提出議案などを審議、午後の研修会では「かしまし娘」でおなじみの女優、正司歌江さんが「笑いと涙と希望の人生ドラマ」を講演、続いて「白杖とともに」をテーマにレポート発表と意見交換が行われた。
 26日は大会式典が開かれ、笹川吉彦日盲連会長、名取陸子女性協議会会長らの挨拶、功労者の表彰などが行われ、続く議事では10項目の決議を採択し閉幕した。決議された要望事項は次の通り。
 (1)支援費負担額の算定基準を利用者本人の所得のみに
 (2)支援費の介護保険への導入が検討されつつある現状で、視覚障害者の命の守りともいうべきガイドヘルパー制度を一本化し、機能が低下することのないよう要望
 (3)障害基礎年金の支給額を1級月額10万円以上、2級月額7万5000円以上に引き上げ
 (4)色や文字を記憶させ音声で再生する器械を日常生活用具に指定
 (5)金融機関での代筆やサインが必要な場合、視覚障害者を理解しサポート精神で対処されるよう要望
 (6)IT時代に即応し、視覚障害者に使いやすい機器の開発と、適切な指導者の養成
 (7)居住する場所によって福祉の恩恵に不平等がないよう打開策を
 (8)交通機関に対し、段鼻への鮮明な色表示と、駅名が聞こえやすい鮮明な車内放送の配慮を
 (9)家庭電化製品に、点字表示や音声誘導など視覚障害者が使いやすいような配慮を
 (10)テレビのニュース速報など字幕の音声化と音声解説付き番組を増やすよう要望
 なお、次回の第51回全国盲女性研修大会は平成17年8月25日から3日間、広島県福山市の福山ニューキャッスルホテルで開催の予定。

 13.中国ブロック大会 広島に300人
 第53回日本盲人会連合中国ブロック盲人福祉大会が8月29、30の両日、広島県福山市の福山ニューキャッスルホテルを会場に、日盲連中国ブロック会と広島県視覚障害者福祉協会の主催で、約300人が参加して開かれた。
 29日は一般、青年、女性、スポーツの4つの分科会に続いて、全体会での分科会報告とシンポジウム「IT機器を活用して情報格差の克服」などが行われた。30日は日本盲人会連合の笹川吉彦会長による中央情勢報告に続いて大会式典及び議事が行われ、7項目の決議を採択した。次年度は岡山県で開催の予定。
 決議された主な要望事項は次の通り。
 (1)針灸按摩及び類似行為の無資格営業徹底取締りと、視覚障害者の就労保障施策の確立
 (2)障害年金(基礎年金)の拡充を図り障害者の生活確立を
 (3)支援費制度と介護保険の統合による施策の後退が派生しないよう当事者の声を反映した適切な措置を
 (4)公共交通機関のバリアフリー化を促進し、駅、バス停等の音声案内、点字表示の充実と、車両の改善等きめ細かな対策を
 (5)特急料金等交通機関の付加料金の半額化、高速道料金割引の車両指定撤廃等移動の自由を保障
 (6)パソコンソフト、もの知りトークなどの情報機器を日常生活用具に指定し、情報保障を
 (7)テレビ放送全ての字幕の音声化と難視聴地域の解消

 14. スポーツ協常任委開く
 日盲連スポーツ協議会(鈴木孝幸協議会長)の第1回常任委員会が7月3日、東京・高田馬場の日盲福祉センターで開催され、各団体のスポーツ及び競技別担当者の再調査を実施し、合わせて全国9ブロックの監事の確認を行うことや、10月31日までの記録を収集し、第1回通信大会を実施することなどを決定した。
 今後の日程としては、10月9日に横浜ラポールで視覚障害者関係スポーツ競技団体連絡会、2月5日に戸山サンライズでスポーツシンポジウム幹事会などを予定している。
 その他、全国身体障害者スポーツ大会などできるだけ多くの競技会に役員を派遣、後援申請が出された場合は常任委員会で決定することとした。また、機関誌の作成についても審議が行われた。

 15.テレビ副音声充実へ 視覚障害者向け解説放送研究会発足
 視覚障害者向け解説放送開発調査研究会が7月5日発足、初会合が開かれた。平成15年4月1日にスタートした新しい障害者基本計画の中で、重点施策に取り上げられている「視覚・聴覚障害者に対する情報コミュニケーションの充実」の一環として、テレビ放送に解説(副音声)を付け、ラジオ同様重要な情報源として、その充実を図ろうというもの。聴覚障害者に対しては、すでにCS障害者放送(テレビ)が実施されている。
 この事業は日本盲人会連合の福祉医療機構への助成金申請が認められて具体化したもので、本年度は視覚障害者のニーズ調査が行われる。

 16.選挙公報を完全点訳 日盲委選挙プロジェクト
 日本盲人福祉委員会(笹川吉彦理事長)の「視覚障害者選挙情報支援プロジェクト」は、7月11日に投開票された参議院議員選挙で、比例代表の選挙公報を完全点訳した「参院選比例代表選出議員選挙のお知らせ」(政見入り、56ページ)を作成した。選挙公報全文の点訳は国政選挙では初めて。
 日盲連点字出版所をはじめ、同プロジェクトに加盟している全国19の点字出版施設で点訳・印刷された「選挙のお知らせ」は、全国自治体の選挙管理委員会が買い上げ、担当地域の視覚障害有権者に配布した。今回は19府県から約1万部の受注があった。

 17.豪雨・台風被害日盲連会員にも 新潟・福井に見舞金
 7月から8月にかけて日本列島を襲った豪雨災害や台風は、多数の死傷者や浸水などの被害をもたらしたが、日本盲人会連合の加盟団体・会員にも多くの被害が出ている。
 日盲連では、7月中旬のの豪雨災害で床上浸水の被害を受けた新潟、福井の会員にそれぞれ見舞金を贈った。
 また、8月末に日本列島を襲った台風16号では、香川県視覚障害者福祉協会(岡田八郎会長)が高潮の被害を被った。
 同協会では9月3日、4日の両日に行う予定だった新しい施設への移転作業を前に、資料や資材などを1500個のダンボール箱にまとめて準備していたが、2.5メートルほどの高潮に襲われ、その多くが水浸しになったとのこと。また岡田会長自身も床下浸水の被害を受けた。

 18.新紙幣の触察会日盲連で 識別マークなど確認
 今年の11月から流通予定の新しい1万円札、五千円札、千円札が、触覚でどの程度区別できるかを確かめる触察会が8月27日、東京・高田馬場の日本盲人福祉センターで行われた。
 財務省理財局、印刷局代表者の持ち込んだ見本を、モニターとなった視覚障害者(全盲7名、弱視2名)が実際に手に取って、大きさや手触りなどを確かめた。
 新紙幣は1万円札と千円札が現在のものと全く同じサイズで、5千円札だけが1ミリメートル横幅が長い。
 視覚障害者用識別マークは、おもて面、下側の左右両角につけられており、形は1万円札がアルファベット大文字のL型、五千円札は丸型(メッシュで潰したもの)、千円札は横棒となっている。
 参加者から指摘された点は(1)識別マークの厚さが不十分、(2)切り込みを入れるなど、もっと分かりやすい識別方法が望ましい、(3)5千円札(紫色)と千円札(青色)が暗いところでは区別しにくい、などだった。

 19.福祉分野から初の参議院議員誕生 中村博彦氏 自民比例区
 7月11日に行われた第20回参議院議員選挙で、福祉分野から初の参議院議員が誕生した。比例区に立候補した自民党公認の中村博彦氏(徳島)で、全国老人施設協議会会長として同協議会をバックに当選。「福祉の現場の声を政治に反映させる」がキャッチフレーズだ。
 これまでいわゆる福祉の専門家といわれる政治家は国会には不在だったが、中村氏の当選により福祉に関する生の声が政治に反映されるものと期待される。中村氏は社会保障審議会介護保険部会の委員にも指名されており、今大きな問題となっている介護保険と支援費制度との統合についても重要な役割を果たすことになると見られている。

 20.大阪ITステーションオープン 障害者のIT利用支援
 大阪府は障害者向けの情報技術(IT)利用支援の拠点施設「大阪ITステーション」(樋口四郎所長)を9月1日、大阪市天王寺区オープンした。
 パソコン300台のほか、障害者向けに開発されたマウスや音声ソフトなどを配備。障害者が就職に必要な知識や技能を習得できるよう職業訓練や講習会を随時開催するほか、民間業者に委託して就職希望者へのカウンセリングや職業紹介など、障害者向けの就職支援も行う。
 交通アクセスは地下鉄谷町線「四天王寺前夕陽ケ丘駅」下車、1番出口徒歩1分、電話06―6776―1221(代表)。

 21.障害者権利条約 国連で実質協議
 世界各国における障害者に対する差別を禁止し社会参加の機会拡大につなげる「障害者権利条約」の制定を目的に、ニューヨークの国連本部で開かれていた特別委員会が6月4日、早ければ来年秋の制定を目指して作業を加速することなどを確認し閉会した。
 3回目となった今回の特別委は、日本を含む障害者の非政府組織(NGO)が各国政府代表団のメンバーとして参加。今年1月に作成した条約草案を基に初の実質協議を行ったが、条約加盟国に課される財政支援への懸念や、障害者差別の監視システムを構築する問題などで意見が対立、8月に4回目の特別委を開くことを決めた。

 22.短信
 厚生労働省の7月23日付人事異動で新たに就任された障害福祉関係等部局の方々は次の通り(敬称略)。
 社会・援護局総務課長:椋野美智子
 同 地域福祉課長:北村彰
 同 福祉基盤課長:矢崎剛
 同 障害福祉課長:松嶋賢
 職業安定局高齢・障害者雇用対策部長:金子順一
 同 企画課長:宮川晃
 同 障害者雇用対策課長:土屋喜久
 医政局医事課長:中垣英明

 23. 訃報
 日本盲人会連合女性協議会相談役の原田マサヨさんが7月20日夜、東京都内の参育会病院で逝去された。79歳。葬儀は近親者のみで行われた。
 原田さんは昭和63年4月から平成11年3月まで同協議会(当時は婦人協議会)の協議会長として活躍、東京都盲人福祉協会など地域の団体でも役職を務め
貢献された。平成12年春、勲六等宝冠章を受章している。