愛盲時報 第197号(テキスト形式・全文)

2003年6月10日

 愛盲時報 第197号(平成15年6月10日発行)

1.急げ支援費制度充実 許すな福祉の後退
  第56回全国盲人福祉大会 神奈川に2200人
  19条改正衆院採択に全力
 第56回全国盲人福祉大会・神奈川大会(日本盲人会連合、神奈川県
視覚障害者福祉協会共催)が5月15日から17日、神奈川県小田原市
の小田原アリーナ他を会場に、全国から2200人の視覚障害者、関係
者が参加して開かれた。
 「急げ 支援費制度の充実 許すな 福祉の後退」「守ろう はり師
きゅう師の道 養成校増設に規制法を」「社会への完全参加と平等に 
障害者差別禁止法で 共生社会を」「労働こそ生きる道 新障害者プラ
ンで 働く場の保障を」の4つの大会スローガンのもと、支援費制度や
新しい障害者基本計画・障害者プランがスタートし、福祉が新たな展開
に向けて動き出す平成15年度、最大の懸案であるあん摩師等法19条
改正問題等、課題解決に向け今後の運動方針を討議した。
 17日、小田原アリーナで開かれた大会式典では、大会実行委員長の
鈴木孝幸神奈川県視覚障害者福祉協会会長、松沢成文神奈川県知事、小
沢良明小田原市長による歓迎のことば、笹川吉彦日盲連会長の主催者挨
拶に続き、厚生労働大臣、文部科学大臣の祝辞が読み上げられた。又、
大藤武彦さんら20人と1団体に対し、日盲連顕彰による表彰が行われ
た。
 大会議事では、平成14年度決議処理報告に続き、前日の第40回全
国盲人代表者会議で採択された平成15年度運動方針案が承認された。
続いて大会宣言案及び決議案を満場一致で採択、3日間にわたる討議を
終了した。
 なお、平成16年度の第57回全国盲人福祉大会は石川県で開催され
る。

2.大会決議
 1、盲人の職業的自立と社会参加を堅持するため、はり師、きゅう師
養成施設の新増設を規制するとともに、無資格類似行為者の徹底取締り
を図るよう強く要望する。
 1、支援費制度の実施にあたっては、これまでの障害者福祉、特に移
動介護(ガイドヘルパー派遣)事業を後退させることのないようその運
営に万全を期するよう強く要望する。
 1、あらゆる分野におけるバリア、特に心のバリアを解消し、視覚に
障害があっても健常者並みの生活が確保されるよう環境整備の促進を要
望する。
 1、新しい障害者基本計画の実施にあたっては、障害の特性に配慮し、
実効性のある内容とするよう強く要望する。
 1、障害基礎年金を、1級は月額10万円以上、2級は月額7万5千
円以上に引き上げるとともに、所得制限を緩和し、更に、無年金問題の
早期解決を図るよう要望する。
 1、障害者に対するあらゆる差別を解消するとともに人権を保障する
ため障害者差別禁止法を制定するよう要望する。
 1、統合教育の推進を図るための諸条件を整備するとともに、高等教
育の充実のため、筑波技術短期大学を4年制大学に昇格するよう要望す
る。

3.大会宣言
 南に相模湾を望み、北に丹沢山塊、西に関所で名高い箱根連峰、霊峰
富士を仰ぐ温暖な気候の湘南の一角、ここ城下町小田原市において、全
国の盲人団体代表並びに関係者2千余名が相集い、第56回全国盲人福
祉大会を盛大に開催することができたことは、大きな喜びであり開催に
際し多大のご尽力ご援助を頂いた神奈川県、大磯町、小田原市をはじめ、
神奈川県視覚障害者福祉協会、並びに神奈川県民の皆様方に心より感謝
の意を表するものである。
 本年は日盲連にとってきわめて重要な年であり、今こそ団結を強化し、
組織を挙げて、強力な運動を展開していかなければならない。
 まず第1に、鍼灸師養成施設新増設阻止問題である。昨年第154通
常国会において、はり、きゅうをあん摩師等法第19条に加える請願が
参議院で採択された。今第156通常国会では、衆議院に向けて同趣旨
の請願と法改正を強力に運動を進めている。しかし、福岡地裁判決のあ
と4年間に、専門学校鍼灸専科生は3059人と言う定員増がなされ、
総定員3694人となり、2000年当時の約6倍という驚くべき急増
である。このような状況下では、視覚に障害をもつあはき師は生活出来
ない状態まで追い込まれており、養成施設阻止運動と共に、介護施設に
おける機能訓練指導員や、公共機関、民間企業等におけるヘルスキーパ
ーの優先採用など、就労の問題に緊急に取り組んでいかなければならな
い。
 第2は、4月1日から実施された支援費制度の問題で、現状を下回ら
ないと言う行政当局のふれこみであったにも関わらず、特に、ガイドヘ
ルパーの派遣事業では、事業所の立ち遅れが目立ち、各地で利用できな
い状況が発生している。それは介護のためのホームヘルパーより支給単
価が低く抑えられているため、事業所の経営が成り立たないことによる
ものである。自己負担額の算定は、本人の所得のみによるものとするこ
とと合わせて、ガイドヘルパー支給額の単価引き上げを早急に改善して
もらわなければならない。
 第3に移動の問題として、いわゆる交通バリアフリー法に基づき誘導
ブロックや、音声による案内、盲人にも分かる歩車道の段差、転落防止
の安全柵などの条件整備を進めると共に、音響信号の全国統一化を進め
ていかなければならない。合わせて改正ハートビル法に基づき、各地の
福祉のまちづくり条例の整備基準を見直すなどして、盲人が単独歩行で
も安全に移動でき、社会参加がしやすいように進めていかなければなら
ない。
 第4に、IT社会への対応として、盲人を対象にしたパソコンの指導
・相談など、支援システムの確立を急ぐと同時に、障害者情報バリアフ
リー支援事業における補助の増額など条件整備を進めていく必要がある。
 第5に、統合教育では、児童生徒の特性に応じた専門家による適切な
支援が保障されるよう、専門施設の構築とシステム化を急ぐ必要がある。
また、筑波技術短期大学を4年制大学に昇格させ、より多くの盲人が学
べるよう環境の整備を図らなければならない。
 第6に、郵政公社への移行に伴い、約款の中で盲人用郵便から点字用
郵便に表示の仕方が変わり、将来、盲人用録音物などへの不安が生じた。
注目していく必要がある。
 最後に、昨年示された障害者基本計画、並びに前期5ヵ年実施計画で
は、視覚障害など障害の特性に対応した施策が少なく、きめ細やかな政
策を講じてもらう必要がある。
 私たちは、これらの課題を具体的に検討し、日盲連の組織を挙げて強
力に運動していくことをここに宣言する。

4.日盲連顕彰 20人と1団体 神奈川大会で表彰
 第56回全国盲人福祉大会で視覚障害者福祉に貢献された方々に贈ら
れる日盲連顕彰の表彰が行われた。
 今回は、礎賞4人、青い鳥賞2人、光の泉賞14人、感謝状1団体の
20人と1団体。お名前は次の通り(敬称略・順不同)。
 礎賞(組織功労):大藤武彦(岡山県)、久米清美(徳島県)、柴田
文明(福岡市)、宮本侑記(熊本県)
 青い鳥賞(福祉・文化功労):鷹岡貞子(滋賀県)、石倉章男(奈良
県)
 光の泉賞(内助等功労):岩波喜江(北海道ブロック・北海道)、千
葉強子(東北ブロック・仙台市)、矢島千代子(関東ブロック・群馬県)
、長澤邦子(同・山梨県)、小林里恵子(北信越ブロック・富山県)、
大野俊子(東海ブロック・愛知県)、西田美和子(近畿ブロック・兵庫
県)、松本久子(同・神戸市)、川本敏子(中国ブロック・広島市)、
久米照美(四国ブロック・徳島県)、神田美代子(九州ブロック・福岡
市)、麻生日出子(同・大分県)、篠崎友光子(日盲連・東京都)、中
島千枝子(同)
 感謝状:神奈川県視覚障害者福祉協会(第56回全国盲人福祉大会共
催)

5.全国盲人代表者会議 7項目の運動方針承認
  各団体提出議案 3分科会で討議
 大会2日目の5月16日は、第40回全国盲人代表者会議が神奈川県
大磯町の大磯プリンスホテルで、全国から約220人の代表者が参加し
て開かれた。
 全体会議では平成14年度決議処理報告、平成15年度運動方針案に
ついて討議、(1)はり師きゅう師養成施設の規制(2)支援費制度へ
の対応(3)新しい基本計画と新障害者プラン(4)関係法令の改正
(5)あらゆるバリアの解消(6)教育改革と高等教育の推進(7)国
際化時代への対応、の7項目を柱とした平成15年度の運動方針は本部
提案通り承認された。
 各加盟団体から提出された50数項目の議案は、生活、バリアフリー、
職業の3分科会で討議された。主な議案は次の通り。
 生活分科会:(1)「支援費制度」について、移動介護やデイサービ
ス単価の増額、障害者本人の所得を基準にした自己負担額決定など(2)
「補装具・日常生活用具給付制度」について、指定品目の追加、支給・
所得制限撤廃、活字文書読み上げ装置スピーチオ用SPコード添付など
(3)「ホームヘルプ」について、業務範囲拡大、ガイドヘルパー利用
料の障害者本人所得での算定、支援費制度の移動介護事業費との格差是
正(4)「投票」について、電子投票、在宅投票の導入(5)「福祉制
度・サービス」について、無年金障害者の救済、JR運賃割引の距離制
限撤廃と特急料金割引、IT周辺機器への助成、視覚障害者対応ATM
設置と操作の統一化など。
 バリアフリー分科会:(1)「安全な移動の確保等」について、誘導
ブロック敷設、歩車道段差2センチ確保、音声誘導システムや駅ホーム
の可動柵整備など(2)「ITに関するバリアフリー」について、視覚
障害者ITサポートの充実、字幕スーパーや文字放送音声化、SPコー
ドの普及など。
 職業分科会:(1)「あん摩マッサージ、はり、きゅう」について、
あん摩師等法第19条を改正し鍼灸師養成施設の新増設規制と無資格者
の徹底取締り(2)「雇用・就労」について、雇用拡大のための目標設
定と基盤整備、特養への視覚障害あはき師雇用推進、ヒューマンアシス
タント制度の拡充など。

6.理事会・評議員会 19条改正請願 参院採択を報告
 大会初日の5月15日、大磯プリンスホテルで理事会が開かれ、提出
議案の確認、大会の準備・進行などについて審議、引き続き行われた評
議員会では平成14年度事業及び決算報告が行われ、本部提案通り承認
された。
 平成14年度事業については、日盲連加盟団体の結束により、はり師
きゅう師養成施設の新増設阻止に向けた、あん摩師等法第19条改正の
請願が参議院で採択されるという大きな成果をあげたが、保留となった
衆議院での採択実現が今年度の大きな課題として残されたこと、第55
回全国盲人福祉大会を始めとする諸行事を実施し成功を収めたものの、
音楽家協議会の大会・邦楽演奏会が開催できなかったことについては今
後の対策が急務であること、日本で開かれた「第6回DPI世界会議札
幌大会」、「アジア太平洋ブラインドサミット」、「アジア太平洋障害
者の十年最終年記念大阪フォーラム」、ESCAPの「アジア太平洋障
害者の十年最終年ハイレベル政府間会合」などの国際会議に代表を派遣
し、情報交換を行ったことなどが報告された。このほか、報告された主
な事業は次の通り。
 (1)第2種社会福祉事業として組織団体に対する連絡・助成及び、
更生相談所、点字図書館、点字出版所の設置・経営(2)視覚障害者に
対する事項として、各種調査の実施と情報宣伝活動、文化・スポーツ行
事の開催、職域拡大と生業安定への取り組み、国内外の関係団体との情
報交換・連携強化(3)日本盲人福祉センターにおける事業として、録
音製作、盲人用具の販売・斡旋、ガイドヘルパーネットワーク事業、点
字ニュース即時提供事業(昨年度まで点字情報ネットワーク事業)。

7.あはき協代議員会 猪股氏が協議会長就任
  あん摩師等法の改正など討議
 5月15日に大磯プリンスホテルで開かれた、あはき協議会代議員会
では、平成14年度事業報告、同決算、平成15年度事業計画案、同予
算案を審議、いずれも執行部提案通り承認された。また、あはき協議会
長代行の猪股功忠氏が正式に協議会長に就任することが決まった。
 平成14年度事業報告では、関米一郎氏の協議会長辞任とその収拾、
第154通常国会へのあん摩師等法第19条改正の請願が参議院本会議
で採択されたこと、保険取扱い条件改善運動の成果として鍼灸保険施術
の期間・回数制限が事実上撤廃されたことなどが報告された。
 平成15年度の主な事業計画は次の通り。(1)昨年のあん摩師等法
第19条改正請願の参議院採択に引き続き、第156通常国会での衆議
院採択を目指す(2)組織強化対策として本部・会員間の情報交換を密
に(3)健保取扱い条件改善を引き続き運動(4)無資格、違法類似業
者一掃のための運動を更に強化(5)柔整名目のあはき保険施術への対
策(6)視覚障害者のあはき国家試験受験対策(7)資質向上のための
研修強化(8)日本あん摩マッサージ指圧師会の組織強化に協力(9)
友好団体との協同。

8.メーリングリスト開設など計画
  スポーツ連盟協代表者会議
 5月15日、大磯プリンスホテルでスポーツ連盟協議会(田代浩司協
議会長)の代表者会議が開かれ、平成14年度事業報告、同決算、平成
15年度事業計画案、同予算案が本部提案通り承認された。
 平成14年度事業では、幹事会、研修会等の開催、スポーツ連盟内に
ボウリング連盟が創設されたこと、全国障害者スポーツ大会開催要項の
改正に関する意見募集を行ったことなどが報告された。平成15年度事
業としては、幹事会、研修会等開催の他、スポーツ連盟協議会メーリン
グリストの開設などが計画されている。平成15年度の主なスポーツ行
事は次の通り。
 (1)第10回全国フロアバレーボール大会(9月13日~15日、
札幌市)(2)第22回全国視覚障害者社会人卓球大会(9月19日~
21日、仙台市)(3)第4回全日本グランドソフトボール選手権大会
(10月11日~13日、宇都宮市)(4)第18回全日本視覚障害者
柔道大会(11月2日、東京都)(5)第3回全国障害者スポーツ大会
「わかふじ大会」(11月8日~10日、静岡県)。

9.藤井氏に勲4等瑞宝章 春の叙勲・褒章受賞の方々
 2003年春の叙勲・褒章で次の方々が受章された(敬称略)。
 勲四等瑞宝章:藤井成幸(71、元全日本鍼灸マッサージ師会会長、
前岐阜県視覚障害者福祉協会会長)
 勲6等単光旭日章:岡田八郎(79、香川県視覚障害者福祉協会会長)
、中川几一郎(74、大阪府鍼灸マッサージ師会会長)
 黄綬褒章:猪股功忠(68、日本盲人会連合副会長・常務理事、横浜
市視覚障害者福祉協会会長)、隅田喜太郎氏(69、新宿区視力障害者
協会相談役、新宿区鍼灸按マッサージ師会会長)、数藤壮一(72、新
潟県十日町鍼灸師会会長)

10.障害者雇用対策基本方針 厚労省策定
  多様な就業形態の整備進める IT活用積極推進
 厚生労働省は3月27日、2003年度から5カ年の「障害者雇用対
策基本方針」を策定した。短時間労働や在宅勤務など、障害者が自分に
合った働き方を選べるよう、多様な就業形態の整備を進めることなどを
重点課題に据えた。特に、障害者が能力を発揮しやすい情報技術(IT)
の活用を積極的に図るとしている。
 方針には更に、厳しい雇用情勢で障害者の解雇が増加していることか
ら、在職中から雇用に関する相談に乗るなど、解雇を未然に防ぐ対策の
強化も盛り込んだ。障害者雇用対策基本方針の骨子は次の通り。
「障害者雇用対策基本方針」の骨子
 はじめに
 1、方針の目的
 この基本方針は、前回方針の運営期間における状況を踏まえ、今後の
障害者雇用対策の展開の在り方について、事業主、労働組合、障害者そ
の他国民一般に広く示すとともに、事業主が行うべき雇用管理に関する
指針を示すことにより、障害者の雇用の促進及び職業の安定を図ること
を目的とするもの。
 2、方針のねらい
 現状
 「新障害者基本計画」、「重点施策実施5か年計画」の計画に沿った
対策の推進。
 知的障害者において一定の雇用状況の改善が見られるが、実雇用率は
平成14年度に低下するなど、依然として法定雇用率以下。
 今後の施策の方向
[雇用率制度を柱とした施策の推進]
 精神障害者の就業環境を整備するとともに雇用率制度の対象とするた
めの検討。
 平成14年度の法改正を踏まえ、特例子会社の活用を促すとともに、
除外職員制度及び除外率制度を廃止に向けて段階的に縮小。
 企業名の公表を含めた雇用率達成指導の強化。
[総合的な支援施策の推進]
 障害の種類及び程度に応じたきめ細やかな対策を総合的かつ計画的・
段階的に推進
 経済情勢に配慮した施策の推進
 関係機関の連携の強化
 3、方針の運営期間
 平成15年度から平成19年度までの5年間
 第1 障害者の就業の動向に関する事項
 1、障害者人口の動向
 (1)身体障害者人口の動向 (2)知的障害者人口の動向 (3)
精神障害者人口の動向
 2、障害者の就業の動向
 (1)障害者の就業状況
 (2)障害者の雇用状況
 第2 職業リハビリテーションの措置の総合的かつ効果的な実施を図
るため講じようとする施策の基本となるべき事項
 障害の重度化や、障害者の高齢化、障害の多様化などに対応し、以下
に重点を置いた施策の展開を図る。
 (1)障害の種類及び程度に応じたきめ細かな措置の開発、推進(2)
一般雇用に就くために特に支援が必要な障害者に対する職業リハビリテ
ーションの推進(3)職業能力開発の推進(4)実施体制の整備(5)
専門的知識を有する人材の育成等(6)進展するITの積極的活用
 第3 事業主が行うべき雇用管理に関して指針となるべき事項
 事業主は関係行政機関等の援助と協力の下に、以下の点に考慮しつつ
適正な雇用管理を行うものとする。
 1、基本的な留意事項
 (1)採用及び配置(2)教育訓練の実施(3)処遇(4)安全・健
康の確保(5)職場定着の推進(6)障害及び障害者についての理解の
促進(7)障害者の人権の擁護
 2、障害の種類別の配慮事項
 (1)身体障害者(2)知的障害者(3)精神障害者(4)その他障
害者
 第4 障害者の雇用の促進及びその職業の安定を図るため講じようと
する施策の基本となるべき事項
 障害者雇用率制度を厳正に運用するとともに、障害者を雇用する事業
主に対する各種援助施策の充実、障害者の職業的自立に係る社会環境の
整備の推進等を積極的に行うことが重要。
 (1)障害者雇用率制度の達成指導の強化(2)事業主に対する援助
・指導の充実等(3)障害者雇用の維持、解雇の防止と再就職対策の強
化(4)重度障害者の雇用・就労の場の確保(5)精神障害者の雇用対
策の推進(6)多様な雇用・就労形態の促進(7)障害者雇用に関する
啓発、広報(8)研究開発等の推進(9)関係機関との連携(10)国
際交流、国際協力の一層の推進。

11.「盲人用」から「点字用郵便」に 郵便物の表示方法変わる
 4月1日からの日本郵政公社発足に伴って定められた郵便約款で、旧
郵便規則に定められていた盲人用郵便物の名称と表示方法の一部が次の
通り改められた。
 (1)第4種郵便物
 (ア)点字のみを内容とするものは名称を「点字郵便物」とし、封筒
などの表には「点字用郵便」と墨字で書く
 (イ)公社が指定する施設から(又は施設に)差し出される盲人用録
音物、又は点字用紙を内容とする郵便物の場合、名称は「特定録音物等
郵便物」とし、録音物であっても表には(ア)と同様「点字用郵便」と
書く。
 (2)盲人用点字小包郵便物は名称を「点字小包郵便物」とし、表に
は「点字小包」と書く。
 いずれも当面は「盲人用」など旧郵便規則による表示も認められると
のこと。
 また、料金については第4種郵便物が3kgまで無料、点字小包は3
kg以上が一般小包郵便料金の半額など、従来通りで変更はない。

12.第29回全国盲人文芸大会 作品募集
 日本盲人会連合は第29回全国盲人文芸大会(厚生労働省、文化庁他
後援)の応募作品を次の要領で募集します。
 部門:「短歌」「俳句」「川柳」「随想・随筆」の4部門で自作、未
発表の作品。
 応募資格:日盲連組織団体会員であること。
 応募方法:短歌、俳句、川柳は1人3首(3句)以内、随想・随筆は
点字で32マス250行以内(墨字で400字詰め原稿用紙10枚以内)
。川柳の課題は「支援費」と「海(うみ)」。
 書き方:部門ごとに別の用紙を用い、1行目に部門、2行目から住所
・氏名、その次の行から作品を書く。点字で応募する場合は固有名詞や
まぎらわしい言葉に墨字を書き添えるか注釈をつけ、墨字で応募する場
合は漢字にふりがなをつける。
 参加料:短歌、俳句、川柳は1部門1000円、随想・随筆は150
0円、2部門以上はそれぞれ加算し、送付方法は(1)応募作品と共に
現金書留で、(2)小為替又は切手で作品に同封、(3)郵便振替(文
芸大会参加料と必ず明記)のいずれか。
 募集期間:7月1日~8月31日(当日消印有効)。
 問い合せ・送り先:〒169-8664、東京都新宿区高田馬場1-
10-33、日盲連文芸係(電話03-3200-3439、郵便振替
00170-9-48326)。

13.短信
 *4月1日付厚生労働省人事異動で社会・援護局障害保健福祉部障害
福祉課長に高原弘海氏、同部企画課社会参加推進室長に金井博氏が就任
した。
 *社会福祉法人福井県視力障害者福祉協会(小山尊会長)は福井県視
覚障害者情報文化会館内に移転、会の名称を社会福祉法人福井県視覚障
害者福祉協会に変更した。新住所は〒910-0026福井県福井市光
陽2-17-8。電話・FAX番号に変更はない。
 *財団法人兵庫県盲人福祉協会(堀忠男会長)は、会の名称を財団法
人兵庫県視覚障害者福祉協会に変更。住所、電話番号等に変更はない。
 *仙台市視覚障害者福祉協会の千葉文児会長が及川久雄新会長に交代。
 *川崎市視力障害者福祉協会の大倉信一会長が高橋吉四郎新会長に交
代。
 *北九州市視覚障害者福祉協会の藤本英之会長が木下稔允新会長に交
代。

14.訃報
 日本盲人会連合相談役(元日盲連理事、元熊本県点字図書館館長)の
西之典氏が4月10日、午後10時ごろ、入院療養中の熊本市飽田病院
で逝去された。85歳。告別式は12日、南熊本玉泉院本館でしめやか
に営まれた。

15.大会決議事項を7省庁に陳情
 日本盲人会連合(笹川吉彦会長)は5月27日、東京・霞が関の厚生
労働省など7省庁を訪れ、前日の総合企画審議会、理事会でまとめた第
56回全国盲人福祉大会・神奈川大会の決議に基づく要望事項を陳情、
平成16年度予算に盛り込まれるよう求めた。主な内容は次の通り。
 【内閣府関係】
 1、新しい「障害者基本計画」「障害者プラン」に基づく「共生社会」
の実現を目指す諸施策の推進。
 2、「障害者基本法」「社会福祉法」「身体障害者福祉法」「民法」
「障害者の雇用の促進に関する法律」「郵政関連法」の整備。
 3、「障害者雇用対策基本方針」に基づき、視覚障害者あはき師をヘ
ルスキーパー、機能訓練指導員として雇用促進。
 4、障害者差別禁止法の制定。
 【総務省関係】
 1、第3種、第4種郵便存続と、内国郵便約款への明記。
 2、情報バリア解消のため(1)ホームページに利用されるPDFフ
ァイルの音声化など視覚障害者向け情報システム確立(2)視覚障害者
の利用に留意した機器の開発、普及(3)機器・ソフト購入助成(4)
講習会開催、指導者養成(5)視覚障害者対象のITサポートセンター
設置。
 3、住民税の特別障害者控除現行30万円を70万円以上に、障害者
控除現行26万円を52万円以上に引き上げ。
 4、選挙投票に当たり(1)記入位置を示すサインガイドを投票所に
用意(2)在宅投票実施(3)選挙公報の点字・録音版発行、配布(4)
視覚障害者も利用できる電子投票実施(5)電子投票機器選定に視覚障
害者の意見反映。
 5、情報不足解消のため(1)テレビの解説放送促進(2)緊急字幕
放送音声化(3)外国語音声の日本語字幕音声化。
 6、携帯電話による通信、通話の利便拡充と利用しやすい機器開発。
 7、郵便貯金のATMを銀行との連携の際も残高音声表示。
 8、すべてのはがきに切り込みを入れユニバーサルデザイン化。
 9、金融機関に音声案内付きボタン操作のATM設置と操作の統一化
指導。
 10、行政機関の広報等への視覚障害者用活字文書読上げ装置用SP
コード添付を各行政機関に指導。
 11、難視聴地域解消(特にデジタル放送開始に当たって)。
 【厚生労働省関係】
 1、支援費制度の円滑な運営と視覚障害者のニーズに対応した制度見
直し(1)移動介助やデイサービス単価の早期増額(2)契約書等の内
容を音声で確認できるよう配慮(3)ガイドヘルパー派遣事業は現在実
施している事業者(自治体を含む)が継続実施。
 2、年金等について(1)障害基礎年金1級月額10万円以上、2級
月額7万5千円以上に引き上げ(2)特別障害者手当を常時介護を要す
る全盲等単一重度障害者にも給付、又は介護手当創設(3)所得制限緩
和(4)無年金者救済。
 3、視覚障害者に対するホームヘルプ・ガイドヘルプサービスの位置
づけを見直し、利用料は障害者本人の所得で算定。
 4、障害者に対する介護体制、介護サービス拡充のため(1)介護保
険の要介護認定で身体介護の必要な者として視覚障害を認定項目に(2)
障害者のホームヘルパー派遣事業に単価増額(3)自己負担の減免、負
担額は本人所得で算定。
 5、補装具、日常生活用具の給付品目拡充と制度改善のため(1)補
装具としてパソコン、活字文書読み上げ装置を給付品目に(2)日常生
活用具としてプレクストークポータブルレコーダー、色彩識別装置、視
覚障害者対応のパソコン・ソフト及び周辺機器など最新の情報機器を給
付品目に(3)実態とニーズに即して適用範囲拡大など制度改善(4)
自己負担額算定を本人のみの所得に、給付対象者の制限は撤廃(5)点
字図書給付事業を単独事業とし、雑誌等対象の拡大、給付限度撤廃、手
続き簡素化(6)携帯用盲人安全杖の基準改正。
 6、情報バリア解消のため(1)機器の開発、普及(2)機器・ソフ
ト購入助成(3)講習会開催、指導者養成(4)行政機関の広報等への
SPコード添付を各都道府県行政機関へ指導。
 7、身体障害者福祉法等施策拡充を図り(1)点字図書館職員に情報
処理担当者を加えるなど職員増員、補助金引上げ(2)点字ニュース即
時提供事業の端末機設置施設に補助金交付。
 8、視覚障害者の就業促進等(1)あはき関係では(ア)ヘルスキー
パー、機能訓練指導員(特別養護老人ホーム等)への優先採用(イ)介
護保険における介護サービスの一環としてあはきを加える(ウ)あはき
に類似、競合する行為の規制(エ)介護保険に関する講習、研修会開催、
テキスト等点字・録音版製作とそれに要する経費の補助等(オ)雇用主
に対する各種助成制度充実(2)雇用関係では(ア)授産所、福祉工場、
第3セクター方式による企業の増・開設促進(イ)情報機器の活用によ
る重度視覚障害者の社会参加を図るため通所授産施設の事業を「就労支
援事業」として実施(ウ)パソコン等職業訓練充実、就業の際のパソコ
ン等貸与(エ)就職した障害者の資料を作成、公表し雇用促進に役立て
る。
 9、障害者差別禁止法制定。
 【文部科学省関係】
 1、筑波技術短期大学を4年制大学に昇格。
 2、統合教育の推進にあたって専門教師の配置、公費による教科書、
教材の整備等条件整備。
 3、統合教育の推進とともにノーマライゼーションの理念を指導要領
に組み入れ、点字、手話などを含む福祉教育を行う。
 4、盲学校教育を充実し職業課程、交流教育、成人障害者の生涯社会
教育普及。
 5、あん摩師等国家試験の実態に鑑み盲学校教育を点検、改善。
 6、すべての教員養成課程に視覚障害者の理解を深めるような講座を
設ける。
 7、道路交通法違反の「自転車の無灯火」「歩道の走行禁止」の教育
の場での周知徹底を各都道府県教育委員会に通達、指導。
 【国土交通省関係】
 1、交通機関関係では(1)JRの新幹線を含む特急料金を障害者・
介護者とも5割引、JR運賃割引の距離制限撤廃と障害者本人の負担軽
減(2)鉄道駅の誘導ブロック敷設と段差、階段の色分け、音声ガイド
システムの全国統一と設備・普及、駅構内における安全誘導を点検、見
直し(3)駅・ターミナルの施設整備、案内・誘導等、障害者に配慮
(ア)ホームドアなど転落防止柵設置を交通機関事業者に指導(イ)電
波で作動する音響・音声ガイドシステムを全国統一して設備、普及(ウ)
階段の手すりにホーム番号、行き先を点字表示し、音声誘導システムを
設置(エ)階段の段鼻を踏み面と明度差のあるものにし段鼻全面に(オ)
車内、駅構内の案内放送は適切な場所で明解な音量で(カ)公共交通機
関車内の座席番号や時刻表を読みやすい文字で(キ)介護、誘導等人的
介助体制の充実(4)航空運賃を障害者、介護者とも双方5割引(5)
バス停留所、標柱の誘導・案内設備の基準設定・指導・普及、定位置で
の停車の指導(6)バスの車内・車外向け行先案内放送を義務付け、明
解な放送を指導、徹底(7)安全設備の全国統一と普及、機器・設備の
研究・開発に当たって利用当事者の意見を尊重。
 2、まちづくり・道路・建築物関係では(1)「住みよいまちづくり」
の全国、全地域への一斉普及(2)歩車道の段差最低2cm確保と誘導
ブロック設置(3)道路等の基準改定に当たって(ア)基準の全国統一
(イ)住みよいまちづくりの整備にあたり、誘導ブロックについての国
・都道府県・市町村間道路連関を普及・促進、横断歩道等への音響・音
声機器を加えた立体的誘導システム整備(誘導ブロックは黄色と規定、
階段段鼻の色分け、照明に配慮)(4)有料道路通行料金割引制度の適
用範囲拡大(5)公共建築物の点字・触覚案内表示のガイドライン作成
(6)ITS(高度交通システム)の研究、開発促進。
 【経済産業省関係】
 1、家庭電化製品や自動券売機、ATM、電子マネー等の表示を音声
に、スイッチやボタンは触れて判るものにするよう各企業に指導し、改
善のための研究システム設置、家電製品のユニバーサル基準化。
 2、製品仕様書等印刷物へのSPコード添付を各企業に指導。
 3、視覚障害者向け情報伝達システム確立、簡便で安価な情報機器開
発、製作、普及促進。
 4、インターネットに接続可能な情報端末機開発に当り視覚障害者に
配慮。
 5、視覚障害者対応の機器・ソフト研究開発、購入費補助、講習会開
催、指導者養成など情報環境充実。
 6、交通バリアフリー法を基本とした安全確保のための視覚障害者用
IT機器開発。
 7、弱視者、高齢者の夜間歩行安全のため自転車の自動点灯装置の開
発研究・普及を図り設備義務化。
 【財務省関係】
 1、新しい「障害者基本計画」「障害者プラン」具体化促進に係る各
省庁の予算要求を全額確保。
 2、所得税の特別障害者控除現行40万円を70万円以上に、障害者
控除現行27万円を54万円以上に引き上げ。
 3、補装具、日常生活用具、介護等費用、障害者自身が運転する自動
車、重度障害者介助用自動車にかかる消費税は非課税に。
 4、固定資産税、相続税、贈与税、障害者が主体となる用地を含む住
居、小規模店舗等は非課税に。
 5、すべてのATMを音声対応にするよう金融機関に指導。
 6、金融機関などの申請事務の際、代筆による申請も受け付け。