教点連が令和7年度第1回セミナーを開催
「インクルーシブ教育の点字教科書保障を考える~点字製作の保障と製作調整への対策~」と題する、全国視覚障害児童・生徒用教科書点訳連絡会(教点連)主催の令和7年度第1回セミナーが、令和7年5月31日、新宿リサイクル活動センター会議室においてオンライン参加を交えたハイブリッドで開催され、日本視覚障害者団体連合(日視連)の三宅隆常務理事と、日本ライトハウスの竹下亘常務理事がシンポジストとして登壇しました。
開会に先立ち、教点連の野々村好三理事長から、これまでの一般校で学ぶ視覚障害のある児童・生徒の点字教科書の状況についてや、2005年に教点連が発足してからの役割や取り組みについて報告がありました。また、地域の学校に通う視覚障害のある児童・生徒が増えてきているにも関わらず、点字教科書が必要な生徒に対して、そのすべてが必ず提供されているとは言えない現状であると問題提起し、視覚障害のある児童・生徒がどこで学んでも点字教科書を使用して、当たり前に教育が受けられる環境を目指していきたいと趣旨説明がありました。
野々村理事長は問題提起の中で、
1.一般校で学ぶ視覚障害児童・生徒用の点字教科書については、多くを新たに点訳しなければならず、教育委員会が製作可能な施設・団体を探して依頼し、間に合わせていること、
2.点訳製作経費については、2004年から文部科学省の負担であるが低額なため、実質的に点訳ボランティアによってなんとか支えられている現状であること等が上げられました。
なお、教育委員会と各製作施設・団体との間の「点字教科書製作を調整する」作業において、重複製作を避け点字教科書製作を円滑に行う重要な役割を教点連の会員施設の中で担ってきたが、難しくなっていると報告がありました。
次に、三宅常務理事からは、視覚障害のある児童・生徒が、どこでどのような教育を受けるかは、本人とその家族の自由選択と自由決定によることが基本であり、全ての教育段階において、平等に教育を受ける権利があることを認識しなければならないとし、視覚障害のある児童・生徒とその家族が自らの選択により就学場所を決定し、障害者を受け入れた学校においては、必要とされる合理的配慮及び個別の支援が提供されることが重要であると述べました。そのためには、今まで各地の盲学校(視覚特別支援学校等)で培われてきた、視覚障害教育の専門性を大いに活用し、通常の学校で学ぶ視覚障害児童・生徒と担当教員を積極的に支援することが必要であることから、日視連では、本年度中に「インクルーシブ教育推進懇談会(仮称)」を立ち上げ、視覚障害児童・生徒の教育に関する関係者と共に、連携の在り方を検討し、さらに、検討内容を基に、インクルーシブ教育と視覚障害児童・生徒に対する専門教育が連携した教育体制の確立を求め、国に対して要望活動を行いたいと決意表明がありました。
次に竹下常務理事からは、全国の小・中学校で学ぶ点字使用生徒の教科書作成作業は点訳ボランティアが支えてきたこと、点訳ボランティアの高齢化が進み、新たに点訳ボランティアを始める継承者が減っていること等の報告がありました。今後、点字教科書の保障を実現するために求めることとして、
1.施設・団体等が点字教科書を安定的に製作できる基盤を作るとともに、点訳を職業に出来る専門技能にして、若年から中年層の参加を募るため、点字教科書製作費に対する公的補助を視覚支援学校(盲学校)と同等に引き上げること、
2.点字を公的文字とする法制化や自治体による点訳奉仕員養成講習会開催の義務化等を行い、点字の位置付けを高め、点字の市民権の確立・浸透を図ることが重要だとした。その後行われた参加者との意見交換では、教科書の点訳に携わっている方々から、3月に点字教科書を製作できないかと急な依頼が入り、何人かで手分けして製作して、何とか間に合わせることができたが、急な点訳の対応が難しかったことについて報告がありました。
最後に、一般校に通う児童・生徒の点字教科書の保障のために、教点連・全国視覚障害者情報提供施設協会、日視連等が連携していくとの挨拶が行われ、閉会となりました。