令和7年度第1回全国団体長会議開かれる

2025年6月6日

 令和7年度第1回全国団体長会議が、第78回全国視覚障害者福祉大会(千葉大会)の初日(5月25日)、TKP東京ベイ幕張ホール(千葉市)を会場として、全国の加盟団体の代表者等が参加して開催されました。

 橋井正喜日本視覚障害者団体連合(日視連)副会長の司会、今野正隆千葉県視覚障害者福祉協会会長と宇和野康弘宮城県視覚障害者福祉協会理事長の議事進行の下、令和7年度の運動方針(案)及び団体提出議案について議論が行われました。運動方針(案)の要点として日視連の竹下義樹会長は、次のことを説明しました。

 制度作りに向けた課題では、
 (1)社会の変化に対応した視覚障害者の社会参加を確保するための取り組み:制度等が設定されてから改善を求めるのでなく事前に在るべき基準を設けるよう働きかける。
 (2)障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法を個別にではなくあらゆる分野に反映させるよう議論を展開する。
 (3)視覚障害者の範囲を見直す:色覚や眼球使用困難症も視野に入れ、困難を抱える人たちが福祉支援策を受けられるよう障害者手帳の在り方を見直す。

 続いて個別課題では、
 (1)情報保障:点字考案200周年の仕上げを行う(点字の市民権を得るための取り組み)。また、放送分野におけるアクセシビリティの確保がなかなか進まない現状だが引き続き要求していく。
 (2)外出保障:無人駅問題、鉄道の利便性と安全の確保、安全安心にナビシステムを利用するための取り組み(歩きスマホとの違いやトラブル発生時の対処に関するマニュアルづくり)、中山間地域における移動の確保に向けた取り組み、同行援護のガイドヘルパーが車を運転する時間も報酬対象にする等を目指す取り組み(施設入所者の利用、地域格差の是正も)。
 (3)教育:インクルーシブ教育充実に向けた取り組み(将来ビジョン推進委員会においてインクルーシブ教育推進懇談会を設置して「インクルーシブ教育に関する指針」の作成を国等に求める)。
 (4)あはき:あはきと理療科教育の未来を考える懇談会の報告書を取りまとめ、それに基づく取り組みを行う。また、就労移行支援事業所を立ち上げる。
 (5)一般就労:重度障害者等就労支援特別事業の事例集の作成と拡大に向けた取り組み、視覚障害公務員の就労支援の確立に向けた取り組み、雇用の質の確立に向けた取り組み。
 (6)相談支援:日本版ECLO(視覚障害リンクワーカー)の確立に向けた取り組み、日視連の総合相談室の安定化(財政基盤、相談員の人材育成)。
 (7)災害対策:災害時における視覚障害当事者団体の連携強化に向けた取り組み(日本盲人福祉委員会等との連携)、個別避難計画を全国で制定させることを目指した取り組み(視覚障害者が取り残されることのないように)。
 (8)所得保障:障害年金制度の改革に向けた取り組み(基礎年金の底上げ等)。
 (9)障害福祉サービス:日常生活用具・補装具の基準額増額に向けた取り組み、地域生活支援事業の予算確保に向けた取り組み(地域格差是正等)。

 これに関連して参加者から次のような意見・質問がありました。
 (1)インクルーシブ教育については国連障害者権利委員会から日本政府に対して勧告が出されており、今後進めなければならないが、単に学習の場を共有すれば良いというものではない。教科書等の点訳や専門性のある教員の養成にかかわる体制が十分とはいえない現状にあり、整備・充実が必要。その一方で、好事例といえる教育委員会の取り組みがある。的確な現状分析に基づいて取り組みを展開してほしい。
 (2)あはきの今後については「あはきと理療科教育の未来を考える懇談会」が報告書の取りまとめを行っており、文案を読んだがかなり踏み込んだ内容になっている。早期に正式の報告書を公開し、日視連として議論を深めてほしい。
 (3)新たに始める就労移行支援事業について、日視連の近隣には東京都盲人福祉協会及び東京ヘレンケラー協会の就労継続支援事業所B型がある。そうした中で安定した運営について不安がないのかどうか。理事会でそうした議論が行われなかったかを質問したい。

 これに対して竹下会長は、インクルーシブ教育、あはきと理療科教育の懇談会については意見を踏まえて取り組みたいこと、3点目については、日視連が行う就労移行支援事業は、あはきに特化したものであり東京都盲人福祉協会のパイオニアと競合するものではなく、また、東京ヘレンケラー協会の事業とも異なり、就職をめざした学校卒業後の研修という位置づけであり、理事会で近隣の施設との関係についての議論はなかったことを説明しました。

 続く団体提出議案に関しては、直前に行われた生活、バリアフリー、職業の3つの分科会について各分科会の座長より報告が行われ、その後の質疑において特に質問・意見はありませんでした。

 最後に事務連絡として、能登半島地震被災視覚障害者支援のための義援金として、合計1854万円余がよせられ、被災視覚障害者に配布されたことが感謝とともに報告されました。また、人権啓発講演会講師の養成についてアンケート結果と前回の団体長会議で出された意見を整理してマニュアルを作成し、講師の養成講習会を8月9日に行うことが報告されました。