第64回障害者政策委員会開かれる

2022年5月27日

 令和4年4月26日、内閣府の「第64回障害者政策委員会」がTKP新橋カンファレンスセンター幸ビルディング13階ホール13Aをホスト会場としてオンラインにより開催され、日本視覚障害者団体連合からは竹下義樹会長が構成員として出席しました。

 今回の議題は議題1.基本方針改定、並びに議題2.国連障害者権利委員会の審査に向けた審議の2つで、それぞれ事務局の説明を踏まえて議論が行われました。

 議題1.では、竹下会長は3点の意見を述べました。その概要は次の通りです。

1.差別の定義で間接差別を明確化するため多くの事例を示すことを提案。例として採用試験における活字処理や自力通勤の要件とか補助犬の拒否等を提示。

2.正当な理由があるため不当な差別的取扱いに該当しないと考えられる例として、旅客船や航空機において、緊急避難の際にコミュニケーション障害があると対応できないことを理由に同伴者を求めることの事例の提示に反対。

3.障害の種類によって、豊富な具体例を示すこと、場合によっては基本方針に別表で事例を示すことを提案。

 石川准委員長からは7点の指摘があり、その概要は次の通りです。

1.差別解消法が対象とする障害者は障害者手帳所持者に限らないことを明確化するため「個々の障害者関連法の対象や指定範囲に限らない」と加筆することを提案。

2.差別解消法はオンラインの店舗における合理的配慮も対象にすることを強調・明確化することを提案。

3.車いす・補助犬その他の支援機器の利用や介助者の付き添い等社会的障壁を取り除くための手段を理由として行われる拒否や制限(サービス提供の強制的制限等)も不当な差別的取扱いに含まれることの明確化を提案。

4.「過重な負担の説明に当たっては、可能なかぎり資料を示すなどして丁寧に説明する」として、障害者の納得・理解を得る努力を事業者に求めることを提案。

5.環境整備につながる合理的配慮について、事務局案の「中・長期的なコストの削減・効率化につながる点は重要である」といった観点よりも、他の障害者が同じ障壁を経験せずに済むという波及効果に着目した記述が適切。

6.サービス提供の際に、公然と拒否する場合だけでなく、嫌な顔をするなどのハラスメント(二度といきたくないと思わせるような行為)も差別に当たることの明示を提案。

7.旅客船や航空機における対応の問題で、合理的配慮を尽くしても緊急時の避難指示を伝えることができないと判断するに当たり、どのようにして事業者が「できない」ことを知り得るのかが判然としない。移動の自由を制限する事例をこのように示すことは、差別解消法の趣旨に照らして適当ではない。

 それらに関連して内閣府からは次の回答がありました。
 採用の要件等雇用にかかわる差別は障害者雇用促進法で取り扱うことが差別解消法で明記されており、基本方針で取り上げることは差し控えたい。安全を理由とする取扱いについては、十分な考慮のない「漠然とした安全上の理由」による拒否等は差別であるとしている一方で、安全対策の重要性にかんがみ、差別に当たらない事例も取り上げて、両方を併記することが適当であると考えたものである。
 国土交通省からは、安全確保の観点から同伴者を求めるかどうかは現場責任者の判断であり、ケース・バイ・ケースになるとの回答がありました。
 これに対し竹下会長は、避難指示を伝えられるかどうかの判断が主観的であり、担当者の判断によって移動の自由が大きく左右される実態を述べた上で、不当な差別に当たらない事例として挙げることには弊害が大きいと述べました。
 国土交通省からは、移動の自由が確保されるよう配慮がなされることを前提にしつつ、緊急避難時を含む安全の確保については機長等の現場のトップに責任が課されており、その判断に任されているというのが現行の法制度であること、また、判断が妥当だったかどうかは相談窓口等に寄せられる意見を参考に事後的に確認したいことが説明されました。
 石川委員長は、移動の自由という重要な事柄となるため今後も議論していきたいと述べた上で、不当な差別に当たらない事例として掲げることには消極的もしくは反対の意見が多いことを確認し、内閣府からは事例について再検討したい旨の発言がありました。

 議題2.については、これまでの議論を踏まえて取りまとめられた事務局案に関して、微調整した上で最終確定とすることが承認されました。