第57回障害者政策委員会開かれる

2022年2月3日

 令和3年9月27日、内閣府の「第57回障害者政策委員会」が中央合同庁舎8号館1階講堂においてオンライン参加を交えて開催され、日本視覚障害者団体連合からは竹下義樹会長が構成員として出席したほか、田中伸明評議員(名古屋市視覚障害者協会会長)が参考人として出席しました。

 今回は、障害者差別解消法の基本方針見直しに係る障害者団体(10団体)へのヒアリング、並びに障害者基本計画(第4次)の実施状況に関する行政サイドの説明があり、それぞれ質疑が行われました。

 障害者団体へのヒアリングにおいて、日視連の田中評議員は、

1.公務員採用試験において介助者なしで活字を処理できることといった条件を付けることなどを事例として上げ、それらを防ぐためには間接差別やハラスメントを含む差別の定義を明らかにすべきであること

2.セキュリティを理由に画面読み上げソフトの導入を拒否する事例を紹介し、安全性を正当な理由にする場合は事業者側の責任において具体的事情を示して立証すべきであること

3.合理的配慮に関連して、配慮を促すためにはその有無に応じて公的助成の増減を図ることも一つの手段であること、障害者側が努力を尽した上でないと配慮しようとしない考え方は誤りであること、配慮に係る過重な負担は障害者の権利の性質を踏まえて判断されるべきこと(生命にかかわる駅ホームでの転落防止はそれに見合う負担が必要)

4.建設的対話のためには障害者と事業者の間に立つ仲介者の育成が必要であり、ワンストップの相談窓口を設けるとともに情報共有により地域間格差を是正する必要があること

5.差別解消のためには意思疎通支援が不足してはならないことや、デジタル化で無人の店舗が増えると考えられるが支援を受けるためのチャンネルを確保すべきであることを述べました。

 これについて1.障害者の権利の性質をどう捉えるのか、2.経済的補助によって合理的配慮を促す考え方について環境整備との兼ね合いをどう考えたらいいのかという質問があり、田中評議員は、それぞれ1.憲法で定められている知る権利(点字等による情報保障やコミュニケーション支援)および生命の安全(駅ホームからの転落防止)などは基本的人権であることを考慮した上で過重な負担を判断すべきこと、2.不特定多数を対象にした環境整備と個別的な合理的配慮を整理する必要はあるが、広く適用できる合理的配慮は環境整備のテストケースになり啓発になることもあるため補助施策が有効な場合があることを回答しました。

 関連して竹下会長は、雇用において職場介助者に係る助成制度があるにもかかわらず介助者を配置しないのは合理的配慮に欠けるとの例を上げ、助成制度に基づく環境整備の上に立って合理的配慮を考える必要があり、単なる切り分けでは問題解決にならないことを述べました。

 後半は、障害者基本計画の実施状況について文部科学省、厚生労働省、国土交通省から説明があり、竹下会長は、文科省に対し、障害のある子供たちへの配慮やその学びの場の選択肢の拡大および特別支援学校以外で就学する子供たちへの支援についてどの程度進んだのかを質問しました。
 これに対し、就学奨励費の支給のほか、エレベータ設置等の学校のバリアフリー化や相談窓口の設置を進めている旨の説明があったが、竹下会長は、就学奨励費では介護者の交通費が支給されない場合があることなどを指摘し、各種支援が不十分であることを述べました。

 そのほか、慶應義塾大学教授の中野泰志構成員は、心のバリアフリーを単に優しい気持ちと捉えるのではなく障害者の人権や障害の理解を踏まえたものにすべきこと、視覚障害者をはじめとする障害者の通学・通勤の移動の安全確保において各省庁の連携が更に強化されるべきことを指摘しました。